この記事でわかること
- ミノキシジルがどんな薬で、髪にどう働くのか
- 効果の根拠と、副作用・初期脱毛の実際
- 使えない人と、4か月・6か月の決まり
薬局の発毛剤を見るとミノキシジルという成分が出てきますが、本当に髪が生えるのか、副作用は大丈夫なのか、迷う人は多いと思います。
結論から言うと、ミノキシジルは日本の市販薬のなかで唯一「発毛」をうたえる有効成分で、短くなった髪の成長期を長くして働きます。ただし誰にでも同じように生えるわけではなく、少なくとも4か月は毎日塗り、6か月で見直すという使い方の決まりがあります。まずは、どんな薬なのかから見ていきましょう。
ミノキシジルは、市販薬で唯一「発毛」をうたえる第1類医薬品の成分
ミノキシジルは、薬局やドラッグストアで買える発毛剤の有効成分で、区分は第1類医薬品です。日本の市販薬で「発毛」の効能をもつ有効成分は、ミノキシジルだけです。
効能は、第1類医薬品として「壮年性脱毛症における発毛、育毛及び脱毛(抜け毛)の進行予防」が認められています。医薬部外品の育毛剤が言える「発毛促進」「育毛」や、化粧品が言える「頭皮、毛髪をすこやかに保つ」とは、区分も言葉も違います。第1類医薬品は薬剤師が情報を提供することが義務づけられた区分なので、棚から自分で取るのではなく、薬剤師の説明を受けて買います。
濃度は男性用が5%、女性用が1%で、男性用の5%製剤は女性には使えません。日本では1999年に1%の製剤が、医療用の薬を経ずに最初から市販薬として承認され、5%の製剤は2009年に承認されています。もとが循環器の薬で、市販後に心不全などの重い副作用の報告もあったことから、循環器系の副作用に注意すべき薬として、区分は第1類医薬品のまま置かれています。
ミノキシジルは、薬剤師の説明を受けて買う、「発毛」の薬です。
ミノキシジルは、短くなった髪の成長期を長くする
ミノキシジルは、休止期にとどまる毛包を成長期へ早く移らせ、成長期そのものを長くする薬です。壮年性脱毛症は、髪の毛周期の成長期が短くなることで進むからです。
壮年性脱毛症は、一般に遺伝的な薄毛や抜け毛で、何年もかけてゆっくり進みます。学会のガイドラインでは、成長期が短くなって休止期にとどまる毛包が増え、前頭部や頭頂部の髪が細く短くなっていく状態とされています。日本人男性では全年齢の平均でおよそ30%に見られ、20代で約10%、30代で20%、40代で30%、50代以降で40%台と、年齢とともに増えます。
ミノキシジルは、休止期にとどまる毛包を成長期へ早く移らせ、成長期を長くします。
短くなる
とどまる
短くなる
ミノキシジルは、この流れの「休止期にとどまる」ところに働きます。毛包にある酵素でミノキシジル硫酸という形に変わり、主にこの形が発毛に働くとされます。毛乳頭細胞に働きかけて毛の成長を促す薬、というのが皮膚科の学会による説明です。
もともとは、重症で治りにくい高血圧の飲み薬として登場した成分です。末梢の動脈の筋肉にあるカリウムチャネルを開いて血管を広げる強い薬で、飲んでいた人に全身の毛が濃くなる副作用が偶然見つかり、頭皮に塗る薬の開発につながりました。ただ、「血の巡りがよくなるから生える」という単純な話ではなく、代謝された形やカリウムチャネル、毛周期への働きが重なった結果と考えられています。
ミノキシジルは、髪が育つ期間を取り戻す側に働く薬です。
塗るミノキシジルは学会のガイドラインで推奨度A。飲む薬はD
日本皮膚科学会のガイドラインでは、ミノキシジルを塗る治療は、男性型脱毛症に5%、女性型脱毛症に1%で「行うよう強く勧める」推奨度Aです。偽薬と比べて、髪の本数が増えたという結果が重なっているからです。
たとえば男性では、偽薬でも平均3.9本増えたのに対し、2%で12.7本、5%で18.6本増えたという結果があります。
偽薬でも少し増えるので、効果は差で見ます。
別の結果では、脱毛部1cm²あたりの太い毛が、1%で平均21.2本、5%で平均26.4本増え、5%のほうが多く増えました。女性では、1%を使うと、偽薬の平均2.03本に対して8.15本増えたという結果があります。多くの試験をまとめた分析でも、女性で偽薬より平均13.18本多く増え、2%と5%では効果に差がありませんでした。
図のように偽薬でも少し増えるので、効果は差で見ます。増えるのは1cm²あたり十数本から二十数本の平均で、誰にでも同じだけ生えると約束できる薬ではありません。
一方、飲むミノキシジルは推奨度D「行うべきではない」です。日本では血圧の薬としても承認されておらず、脱毛症の治療薬として承認している国もありません。飲み薬の添付文書には、胸痛や心拍数の増加、うっ血性心不全などの重大な心血管系の障害が記載されています。使うなら、承認された塗る薬です。
副作用は頭皮のかぶれが多く、胸の痛みなどが出たらすぐやめる
ミノキシジルでいちばん多い副作用は、頭皮のかゆみやかぶれです。胸の痛みや動悸などが出たら、すぐに使うのをやめて相談します。塗る薬でも、もとは血圧に働く成分だからです。
添付文書では、使ったあとに次の症状が出たら副作用の可能性があるので、直ちに使用を中止して医師や薬剤師に相談するよう決められています。皮膚では頭皮の発疹・発赤、かゆみ、かぶれ、ふけ、使用部位の熱感、精神神経系では頭痛、気が遠くなる、めまい、循環器では胸の痛み、心拍が速くなる、代謝系では手足のむくみ、原因のわからない急激な体重増加です。
たとえば、5%製剤を使った人の約8.8%に副作用が見られたという調査結果があります。いちばん多いのは、かゆみとフケのような落屑を伴う刺激性の接触皮膚炎で、2%より5%で多いとされます。顔などの多毛も濃度によって増え、5%で最も多く見られます。日本では発売直後から、動悸や胸痛の報告が薬局を通じて寄せられていて、こうした異常があれば直ちに使用を中止することが必要とされています。
「初期脱毛」と呼ばれる現象もあります。初期脱毛はガイドラインの言葉では休止期脱毛で、男女ともに塗り始めの時期に抜け毛が増えることがあります。これで使うのをやめてしまう人もいるため、前もって知っておくことが大切とされています。ただし、6か月以内であっても、頭髪以外の脱毛や斑状の脱毛、急激な脱毛が見られた場合は、初期脱毛と決めつけずに使用を中止して医師や薬剤師に相談します。
頭皮の変化と、胸や心臓のサインの両方に気をつけるのが、安全に使うコツです。
女性は1%製剤を使い、血圧や心臓が気になる人は先に相談する
女性が使えるのは1%の製剤で、血圧や心臓、腎臓が気になる人は、使う前に医師や薬剤師に相談します。この薬は、血圧に影響を及ぼす可能性が考えられるからです。
男性用の5%製剤の添付文書で「使用しないでください」とされているのは、この薬や成分でアレルギー症状を起こしたことがある人、女性、20歳未満の人、壮年性脱毛症以外の脱毛症の人です。女性が5%を使えないのは、日本人女性での5%の安全性が確認されていないためで、効かないからではありません。女性で2%と5%の効果に差がなかったという分析もあり、日本で女性に使えるのは1%の製剤です。
壮年性脱毛症以外の脱毛症とは、円形脱毛症や甲状腺の病気による脱毛などで、この薬は壮年性脱毛症でのみ有効です。使う前に相談することになっているのは、高血圧または低血圧の人、心臓や腎臓に障害のある人、むくみのある人、65歳以上の高齢者、甲状腺機能障害の診断を受けている人です。
女性用の1%製剤では、妊娠中や妊娠している可能性のある人、授乳中の人も使わないことになっていて、海外の総説でも、妊娠中と授乳中は安全のため避けるべきとされています。頭皮にだけ使って飲まないこと、ほかの育毛剤や外用剤を頭皮に一緒に使わないことも決まりです。迷ったら、買う前に薬剤師に相談しましょう。
4か月続けて6か月で見直し、やめると戻る
ミノキシジルは、1日2回、1回1mLを脱毛している頭皮に塗り、5%製剤では少なくとも4か月、1%製剤では6か月続けて効果を見きわめます。毛髪が成長するには時間がかかるからです。
少なくとも4か月続け、6か月で変化がなければ、やめて相談します。
1回1mL
続ける
見直す
相談
定められた用法と用量を守ることが前提で、多く塗っても早く生えるわけではありません。6か月使っても、脱毛の程度、生毛や軟毛の発生、硬毛の発生、抜け毛の程度のどれにも変化が見られないときは、使用を中止して説明書を持って医師や薬剤師に相談することになっています。太い毛だけでなく、細く短い抜け毛が減ることも変化の目安です。これは「6か月で生える」という約束ではなく、効果が出ない人が使い続けないための線引きです。
「やめたら戻る」と心配な人も多いと思います。製品の使い方の説明では、使用を中止すると3〜6か月ほどで使う前の状態に戻ることが報告されているとされ、海外の総説でも、やめてから12〜24週のうちに髪は再び抜けていくとされています。
ミノキシジルは、使い続けることが前提の薬だと考えておきましょう。
まとめ
- ミノキシジルは、市販薬で唯一「発毛」をうたえる第1類医薬品の有効成分で、効能は「壮年性脱毛症における発毛、育毛及び脱毛(抜け毛)の進行予防」です
- 壮年性脱毛症は髪の成長期が短くなって進み、ミノキシジルは休止期の毛包を成長期へ移らせ、成長期を長くします
- 塗る治療は学会のガイドラインで推奨度A(男性5%・女性1%)、飲むミノキシジルは推奨度D「行うべきではない」です
- 副作用は約8.8%で、頭皮のかぶれが多く、塗り始めに抜け毛が増える休止期脱毛もあります。動悸や胸痛があれば直ちに中止して相談します
- 女性と20歳未満は男性用5%を使えず、少なくとも4か月続けて6か月で見直し、やめると数か月で戻ると報告されています
ミノキシジルは、薬剤師の説明と添付文書を読んだうえで、決まりどおりに使い続けることが前提の薬です。気になることがあれば、使う前に皮膚科や薬局で相談してみてください。
よくある質問
ミノキシジルの効果はどのくらいですか?
脱毛部1cm²あたりの太い毛が、1%で平均21.2本、5%で平均26.4本増えたという結果があります。偽薬でも少し増えるので効果は差で見るもので、誰にでも同じだけ生える薬ではありません。日本皮膚科学会のガイドラインでは、塗る治療は推奨度Aです。
ミノキシジルの副作用にはどんなものがありますか?
添付文書には、頭皮の発疹・発赤、かゆみ、かぶれ、ふけ、頭痛、めまい、胸の痛み、心拍が速くなる、手足のむくみなどが挙げられています。5%製剤を使った人の約8.8%に副作用が見られたという調査結果があります。症状が出たら直ちに中止して医師や薬剤師に相談します。
ミノキシジルの初期脱毛とは何ですか?
塗り始めの時期に一時的に抜け毛が増える現象で、ガイドラインの言葉では休止期脱毛です。男女ともに起こることがあります。ただし、斑状の脱毛や急激な脱毛が見られた場合は、使用を中止して医師や薬剤師に相談します。
ミノキシジルは女性でも使えますか?
女性に使えるのは1%の製剤で、男性用の5%製剤は女性には使えません。理由は日本人女性での5%の安全性が確認されていないためで、女性では2%と5%の効果に差がなかったという分析もあります。妊娠中や授乳中の人は1%製剤も使いません。
ミノキシジルをやめたらどうなりますか?
製品の使い方の説明では、使用を中止すると3〜6か月ほどで使う前の状態に戻ることが報告されているとされます。海外の総説でも、やめてから12〜24週のうちに髪は再び抜けていくとされ、使い続けることが前提の薬です。
この記事で参照した情報
- 日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版」(日本皮膚科学会雑誌 127巻13号 2763-2777)
- PMDA 一般用医薬品 添付文書(ミノキシジル5%外用液・大正製薬)
- PMDA 一般用医薬品 添付文書(ミノキシジル5%外用液・他社製剤)
- 厚生労働省「ミノキシジルのリスク区分について」
- 厚生労働省 医薬品等安全対策部会 安全対策調査会 資料1-1(ミノキシジルのリスク区分)
- PMDA 再審査報告書(ミノキシジル5%外用液、2014年)
- PMDA 医薬品等安全性情報 No.157(1999年11月)「ミノキシジルと動悸・胸痛等について」
- 大正製薬 製品ページ(ミノキシジル1%配合 女性用発毛剤の成分・用法・使用上の注意)
- 大正製薬 発毛剤の使い方に関するよくある質問(中止後の経過・使用期間の目安)
- Suchonwanit P, Thammarucha S, Leerunyakul K. Minoxidil and its use in hair disorders: a review. Drug Des Devel Ther 2019;13:2777-2786
- 米国FDA Drugs@FDA NDA 019501(ミノキシジル2%外用液の承認履歴)
- 米国FDA Drugs@FDA NDA 020834(ミノキシジル5%外用液の承認履歴)
- Olsen EA, et al. A randomized clinical trial of 5% topical minoxidil versus 2% topical minoxidil and placebo in the treatment of androgenetic alopecia in men. J Am Acad Dermatol 2002;47(3):377-385
- van Zuuren EJ, Fedorowicz Z, Schoones J. Interventions for female pattern hair loss. Cochrane Database Syst Rev 2016;(5):CD007628
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「脱毛症」Q7 男性型脱毛症の治療
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「脱毛症」Q9 女性型脱毛症の治療
この記事が入っているテーマ別まとめ