この記事でわかること
- においができる流れと、制汗剤の成分の3つの働き
- 汗を抑える成分と、においを変える成分のしくみ
- 「制汗」とうたえる製品の見分け方と、使うときの注意
制汗剤やデオドラントの成分表には聞きなれない名前がたくさん並んでいて、それぞれ何をしているのか、どれを選べばいいのか迷いますよね。
結論から言うと、制汗剤の成分は、汗を減らす収れん、においのもとを変える中和・吸着、においを作る菌を抑える働きの3つに分けて見るとわかりやすくなります。1つの成分が2つ以上の働きをもつこともあります。まずは、においができる流れから見ていきましょう。
制汗剤の成分は、汗・菌・においのもとの3か所に働く
制汗剤の成分は、においができる流れの3つの段階のどこかに働きます。汗のにおいは、汗そのものではなく、汗や皮脂が肌の菌に分解されてできる脂肪酸などが中心だからです。
収れんは1つ目、菌を抑える成分は2つ目、中和・吸着は3つ目の段階に働きます。
出る
分解する
できる
広がる
そのため、汗を減らす収れん、においを作る菌を抑える働き、できた脂肪酸を変えたり閉じ込めたりする中和・吸着の3つに分けられます。この分け方は、化粧品の技術者の学会がまとめた用語集にある、腋臭防止剤の説明と同じです。このほかに、香料でにおいを覆う方法もあります。
成分表を見るときは、どの段階に働く成分が入っているかを見ると、その製品が汗を減らすことを狙っているのか、においを抑えることを狙っているのかがわかります。
汗を抑える成分は、汗の出口に一時的な栓をつくる
汗を抑える成分は、汗の出口を一時的にふさいで、汗を出にくくします。収れんという、汗腺の出口にあるたんぱく質と結びつき、固めて縮ませる性質を使っているからです。
収れん剤には、作用のおだやかなクエン酸やタンニン酸などの有機酸と、作用の強い酸化亜鉛や硫酸亜鉛などの金属塩があります。制汗剤の中心になるアルミニウム塩は、汗の中のたんぱく質などと反応してゲルになり、皮膚の表面近くで汗の出口をふさぎます。栓は汗の通り道の壁からできはじめ、中心へ広がっていくことが観察されています。
アルミニウム塩は、汗の出口の皮膚の表面近くに一時的な栓をつくり、汗を出にくくします。
代表的な成分はクロルヒドロキシアルミニウムで、水分があるとゲルになる性質をもちます。パラフェノールスルホン酸亜鉛も制汗剤の主な有効成分の一つで、化粧品では洗い流さないものに100g中2.0gまでという上限があります。アメリカでは制汗剤の有効成分はすべてアルミニウム塩で、汗が20%減れば標準的な効き目と認められる基準です。
医療でも同じ働きが使われています。多汗症の診療ガイドラインでは20〜50%の塩化アルミニウムの液や軟膏を塗る方法が示され、保険のきく塗り薬はないため、病院の中で調製した薬として処方されるのが一般的です。医療用の薬のミョウバン、つまり硫酸アルミニウムカリウムも、たんぱく質と結びついて沈殿させる収れん薬で、効能は局所多汗症と臭汗症です。
汗腺を壊すのではなく、出口を一時的にふさぐしくみなので、汗がまったく出なくなるわけではありません。
においを変える成分は、脂肪酸を飛ばないようにする
においを変える成分は、菌がつくった脂肪酸を別の物に変えたり閉じ込めたりして、においが飛ばないようにします。わきのにおいの主な成分も、多くはイソ吉草酸などの酸の仲間だからです。
汗がにおうしくみのとおり、においの正体は菌が分解してできる脂肪酸などです。酸化亜鉛などの金属酸化物は、この脂肪酸と化学反応を起こして固体の金属せっけんに変えます。酸を別の物に変えてしまう、中和にあたる働きです。酸化マグネシウムや、ポリフェノールやフラボノイドを含む緑茶エキスなども、においの成分と化学的に結びついてにおいを抑えると考えられています。
吸着は、においの成分を捕まえて閉じ込める方法です。ゼオライトは規則正しく並んだ細かい穴をもつ物質で、その穴ににおいの成分を取り込んで閉じ込めます。
たとえば、酸化亜鉛1.1%の乳液をわきに塗ると、においを作る菌が減り、自分で感じるにおいも弱くなったという結果があります。酸化亜鉛は、においを変える働きと菌を抑える働きの両方をもつ成分です。
菌を抑える成分は、医薬部外品なら有効成分、化粧品なら防腐剤
においを作る菌を抑える成分は、医薬部外品と化粧品で役目が変わります。同じ成分でも、国が認めた使い方と効能の範囲が違うからです。
菌に対する働きには、菌を死なせる働きと、菌が増えるのを抑える働きの2つがあります。医薬部外品では、菌を抑える成分を有効成分として使え、薬用石けんでは「皮膚の清浄・殺菌・消毒」と、体臭・汗臭を防ぐことが国の認めた効能です。薬用化粧品の有効成分のリストには、イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンザルコニウム、トリクロサンなどが載っています。
同じ成分が化粧品に入っているときは、製品の中で微生物が増えるのを抑える防腐剤として扱われ、洗い流さない化粧品では100g中、イソプロピルメチルフェノールは0.10g、塩化ベンザルコニウムは0.050gまでという上限があります。化粧品の効能の範囲に、菌を抑えることは入っていません。
トリクロサンは、アメリカでは家庭用の抗菌せっけんに使えない成分とされ、日本でも国が薬用石けんの切替えを促しましたが、この製品による健康被害は報告されていません。トリクロサンは日本で禁止されてはおらず、化粧品基準では100g中0.10gまで認められています。ヨーロッパでは、スプレーでないデオドラントに0.3%まで使えます。
また、成分の働きは1つとは限りません。塩化アルミニウムをわきに1回塗ると、菌の増殖が3日以上抑えられたという結果があり、汗を抑える成分が菌も抑えることがあります。菌を抑えるとうたえるのは、医薬部外品だけと覚えておきましょう。
「制汗」「わきが」とうたえるのは、医薬部外品の腋臭防止剤
汗やわきのにおいを抑えるとうたえるのは、医薬部外品の腋臭防止剤です。国が認めた効能は「わきが(腋臭)、皮膚汗臭、制汗」の3つで、「制汗」は「あせどめ」と言い換えてもよいことになっています。
一方、化粧品の効能56項目には、汗や体のにおいを抑える項目がありません。においにかかわるのは、香りで頭皮の不快なにおいを抑えることと、芳香を与えることだけです。
汗を減らしたいのか、においを抑えたいのかをはっきりさせて選ぶなら、パッケージの「医薬部外品」の表示を見るのが確実です。
使うときは、傷のある肌とスプレーの吹きつけ方に注意
傷やはれもの、湿疹など異常のある部位には使わないのが基本です。汗の出口をふさいだり、酸性の強い成分が触れたりする製品なので、弱っている肌には刺激になりやすいからです。
スプレーは肌から約10cm離して使い、同じ場所に3秒以上続けて吹きつけないこと、ガスを直接吸い込まないことも大切です。塩化アルミニウムは酸性が強いため、肌の刺激や服の傷みが出やすく、アメリカの制汗剤の表示では、腎臓病の人は使う前に医師に相談するよう求められています。
アルミニウムが体に悪いのでは、と心配になる人も多いと思います。アメリカの国立がん研究所は、制汗剤やデオドラントを使うことと乳がんを結びつける科学的な根拠はないとしています。ヨーロッパの消費者安全科学委員会も、化粧品を毎日使うことで体の中のアルミニウムが大きく増えることはないとしました。ただし、食べ物などと合わせた量では、特に多くとる人で安全の目安を超えるおそれがあるとも述べています。
なお、アルミニウムの%は、基準によって何の量かが違うので、並べて比べることはできません。この委員会が示したスプレー以外で6.25%、スプレーで10.60%という安全の目安はアルミニウムそのものの量、アメリカの上限25%は成分の塩としての量、多汗症の治療の20〜50%は医療で使う液の濃さです。
使うときは、傷のある肌に使わない・スプレーは離して短くの2つを守りましょう。
まとめ
- においは、汗や皮脂が菌に分解されてできる脂肪酸などが中心です
- 制汗剤の成分は、汗を抑える収れん、においのもとを変える中和・吸着、菌を抑える働きの3つに分けられます
- アルミニウム塩は汗のたんぱく質とゲルになり、皮膚の表面近くで汗の出口に一時的な栓をつくります
- 菌を抑える成分は、医薬部外品では有効成分、化粧品では上限つきの防腐剤です
- 「制汗」「わきが」とうたえるのは医薬部外品の腋臭防止剤で、傷のある肌には使わないのが基本です
成分表の名前を、においができる流れのどこに働くかに当てはめてみると、その制汗剤が汗とにおいのどちらを狙っているのかが見えてきます。
よくある質問
制汗剤の成分にはどんな働きがありますか?
汗を抑える収れん、においのもとの脂肪酸を変えたり閉じ込めたりする中和・吸着、においを作る菌を抑える働きの3つです。1つの成分が2つ以上の働きをもつこともあります。
制汗剤はどうやって汗を抑えるのですか?
アルミニウム塩が汗の中のたんぱく質などとゲルになり、汗の出口を一時的にふさぎます。栓は皮膚の表面近くにでき、汗腺そのものを壊すわけではありません。
化粧品のデオドラントで「殺菌」とうたえますか?
うたえません。化粧品の効能の範囲に菌を抑えることは入っておらず、化粧品に入る菌を抑える成分は、製品を守る防腐剤として上限つきで使われます。うたえるのは医薬部外品です。
トリクロサンは日本で禁止されていますか?
禁止されていません。国が薬用石けんの切替えを促したことはありますが、化粧品基準では100g中0.10gまで認められています。
制汗剤のアルミニウムは乳がんと関係がありますか?
アメリカの国立がん研究所は、制汗剤やデオドラントと乳がんを結びつける科学的な根拠はないとしています。ヨーロッパの委員会も、化粧品を毎日使うことで体の中のアルミニウムが大きく増えることはないとしています。
この記事で参照した情報
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「腋臭防止剤」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「デオドラント化粧品」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「収れん」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「制汗剤」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「消臭」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「殺菌剤」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「クロルヒドロキシアルミニウム」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「塩化アルミニウム」
- 厚生労働省「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」(平成29年9月29日 薬生監麻発0929第5号)別掲「医薬部外品の効能・効果の範囲」
- 厚生省薬務局長通知「医薬部外品等の取扱いについて」(昭和37年9月6日 薬発第464号)
- 厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年7月21日 薬食発0721第1号)
- 化粧品基準(平成12年9月29日 厚生省告示第331号)
- 厚生労働省「いわゆる薬用化粧品中の有効成分リストについて」(平成20年12月25日 薬食審査発第1225001号)
- 厚生労働省 報道発表「トリクロサン等を含む薬用石けんの切替えを促します」(平成28年9月30日)
- 日本化粧品工業連合会「化粧品等の適正広告ガイドライン 2020年版」
- 日本化粧品工業連合会「化粧品の使用上の注意表示に関する自主基準」(2016年12月1日)
- 日本化粧品工業連合会「医薬部外品の成分表示名称リスト」(平成20年3月25日版)
- 日本皮膚科学会「原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版」
- 医療用医薬品添付文書「純生」ミョウバン(硫酸アルミニウムカリウム水和物、2023年11月改訂 第1版)
- 米国連邦規則 21 CFR Part 350「Antiperspirant Drug Products for Over-the-Counter Human Use」
- FDA「Consumer Antiseptic Wash Final Rule Questions and Answers」
- Commission Regulation (EU) No 358/2014(2014年4月9日)
- SCCS「Opinion on the safety of aluminium in cosmetic products – Submission II」SCCS/1613/19(2020年)
- SCCS「Safety of aluminium in cosmetic products – Submission III」SCCS/1644/22(2023年)
- 米国国立がん研究所「Antiperspirants/Deodorants and Breast Cancer」
- Cosmetic Ingredient Review「Zinc Phenolsulfonate」再評価要約(2023年12月)
- Sakhawoth Y, et al. Real time observation of the interaction between aluminium salts and sweat under microfluidic conditions. Sci Rep 2021;11:6164
- Teerasumran P, et al. Deodorants and antiperspirants: New trends in their active agents and testing methods. Int J Cosmet Sci 2023;45(4):426-443
- Ågren MS, et al. Zinc Oxide Inhibits Axillary Colonization by Members of the Genus Corynebacterium and Attenuates Self-perceived Malodour: A Randomized, Double-blind, Placebo-controlled Trial. Acta Derm Venereol 2020;100(10)
- Hölzle E, Neubert U. Antimicrobial effects of an antiperspirant formulation containing aqueous aluminum chloride hexahydrate. Arch Dermatol Res 1982;272:321-329
- Fujii T, et al. A newly discovered Anaerococcus strain responsible for axillary odor and a new axillary odor inhibitor, pentagalloyl glucose. FEMS Microbiol Ecol 2014;89(1):198-207