この記事でわかること
- 清潔な肌にもいる菌の数と、常在菌・通過菌の違い
- 体の場所によってすむ菌が変わること
- 常在菌が皮脂を分解して肌の表面をつくるしくみ
肌に菌がすんでいると聞くと、どんな菌が、どこに、どれくらいいるのか気になりますよね。
結論から言うと、健康な肌にも1cm²あたり約100〜1,000万個の菌がいて、皮脂を分解するなどして、肌の表面の環境づくりに関わっています。こうした菌を皮膚常在菌と呼びます。すむ菌の顔ぶれは、皮脂の多い場所、湿った場所、乾いた場所で変わります。まずは、どんな菌がいるのかから見ていきましょう。
清潔な肌にも、1cm²あたり約100〜1,000万個の菌がいる
洗ったあとの清潔な肌にも、菌はいます。健康な肌の表面には、目に見えない菌がふだんからすみついているからです。
これを皮膚常在菌、または皮膚定住菌と呼びます。一見清潔に見える健康な皮膚にも、1cm²あたり約100〜1,000万個の微生物がいるとされています。主な顔ぶれは、表皮ブドウ球菌、アクネ菌、酵母の仲間などです。
肌にいるのは細菌だけではありません。カビの仲間では、マラセチアという酵母の仲間が、場所によって肌のカビの仲間の53〜80%を占めます。顔の毛穴の中には、毛包虫(毛穴にすむ、ごく小さなダニ)もすんでいます。
菌がいることは、健康な肌のふつうの状態です。
常在菌はすみついている菌、通過菌は一時的についた菌
肌の上の菌は、すみついている常在菌と、一時的についているだけの通過菌に分けられます。同じ肌の上の菌でも、肌との関わり方が違うからです。
通過菌には、大腸菌や緑膿菌、黄色ブドウ球菌などがあり、ふつうは一時的についているだけです。いっぽうで、鼻の穴の入口あたりは、ブドウ球菌などの細菌がすみやすい場所です。
ひとまとめに「菌」と考えず、すんでいる菌と、通りすがりの菌がいると分けて見るとわかりやすいです。
すむ菌は、皮脂の多い場所・湿った場所・乾いた場所で変わる
肌の上の菌の顔ぶれは、体の場所によって変わります。皮脂の量や湿り気が場所ごとに違い、菌にとってのすみやすさが違うからです。肌は、場所ごとに環境の違う、広さ約1.8m²のすみかの集まりだといえます。
すむ菌の顔ぶれは、皮脂の量や湿り気で変わります。
湿った場所では、ブドウ球菌の仲間と並んで、コリネバクテリウムの仲間も多くすんでいます。反対に、皮脂の多い場所は、菌の種類がいちばん少ない場所です。アクネ菌は毛穴を中心にすみ、皮脂を好み、酸素が少なくても増えられる、棒の形をした菌です。分類が見直されて学名が変わったため、資料によって新しい名前と古い名前の両方が使われています。
どの菌がすむかは、その場所の皮脂と湿り気で決まってくるのです。
常在菌は皮脂を分解して、ほかの菌が増えにくい状態をつくる
常在菌は、皮脂を分解してできたもので、ほかの菌が増えにくい状態をつくっています。肌から出る皮脂を分解して、肌の表面の環境を変えているからです。
皮脂の主な成分は、トリグリセリドという油で、平均すると皮脂の約40%を占めます。トリグリセリドは、皮脂腺の出口や常在菌がもつリパーゼ(油を分解する酵素)によって分解され、脂肪酸などができます。アクネ菌が出す脂肪酸は、肌の表面のpH5前後の酸性にも関わっています。
皮脂の分解物が、ほかの菌を増えにくくします。
出る
分解する
できる
増えにくい
皮脂は、常在菌が肌の表面の環境をつくるための材料でもあります。
表皮ブドウ球菌は、ほかの菌を抑える物質を出す
表皮ブドウ球菌は、肌の表面でほかの菌が増えるのを抑える物質を出しています。肌に広くすむ常在菌が、外から来た菌とすみかを争っているのです。
この菌がつくる物質の中には、黄色ブドウ球菌や、のどの病気の原因にもなる溶連菌を選んで抑えるものがあります。肌そのものも抗菌ペプチド(菌を抑える小さなたんぱく質)をつくっていて、菌の出す物質と一緒に働くと考えられています。
さらに常在菌は、角層の水分や塩類、皮脂などと関わり合いながら、外からの刺激や細菌などから肌を守る働きの一部を担っていると考えられています。常在菌は、肌が自分でつくる守りと組み合わさって働く仲間です。
菌は生まれた直後からすみはじめ、皮脂や毛穴とつながっている
肌の常在菌は、生まれた直後からすみはじめます。おなかの中の赤ちゃんの肌には菌がいなく、生まれるときや、生まれて数分のうちに菌がつき始めるからです。赤ちゃんの肌のつくりは赤ちゃんの肌の記事で解説しています。
常在菌の暮らしは、ほかの肌のしくみともつながっています。菌が分解する皮脂のでき方と肌のpHは皮脂とpHの記事、アクネ菌や毛包虫がすむ毛穴のつくりは毛穴のつくりの記事で読めます。常在菌は、皮脂・pH・毛穴と一緒に、肌の表面の環境をつくる存在です。
まとめ
- 清潔な健康な肌にも、1cm²あたり約100〜1,000万個の菌がいます
- 肌の菌は、すみついている常在菌と、一時的についた通過菌に分けられます
- 皮脂の多い場所はアクネ菌の仲間、湿った場所はブドウ球菌の仲間などが多く、乾いた場所は種類がいちばん多くなります
- 常在菌は皮脂を分解し、できた脂肪酸などがほかの微生物が増えるのを抑えます
- 表皮ブドウ球菌はほかの菌を抑える物質を出し、菌は生まれた直後から肌にすみはじめます
常在菌は、皮脂を材料にして肌の表面の環境をつくっている仲間です。どこにどんな菌がいるかを知ると、肌が小さな生き物のすみかでもあることが見えてきます。
よくある質問
洗ったあとの清潔な肌にも菌はいる?
います。清潔に見える健康な肌にも、1cm²あたり約100〜1,000万個の微生物がいるとされています。
常在菌と通過菌はどう違う?
常在菌は肌にすみついている菌、通過菌は一時的についているだけの菌です。通過菌には、大腸菌や緑膿菌、黄色ブドウ球菌などがあります。
体の場所によってすむ菌は違う?
違います。皮脂の多い場所ではアクネ菌の仲間、わきの下などの湿った場所ではブドウ球菌やコリネバクテリウムの仲間が多く、乾いた場所はすむ菌の種類がいちばん多くなります。
常在菌は肌の役に立っている?
肌を守る働きの一部を担っていると考えられています。皮脂を分解してできた脂肪酸などは、ほかの微生物が増えるのを抑えます。
肌に菌がすみはじめるのはいつ?
生まれた直後からです。おなかの中の赤ちゃんの肌には菌がいなく、生まれるときや、生まれて数分のうちに菌がつき始めます。
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