この記事でわかること
- 化粧品のハチミツが、角層でどう働くのか
- はちみつパックや医療用のはちみつと、化粧品のハチミツの違い
- はちみつで肌荒れする理由と、食べる話の注意
はちみつは肌にいいと聞く一方で、塗ったら肌荒れした、肌に悪いのでは、という声もあって、どちらを信じればいいのか迷いますよね。
結論から言うと、化粧品に入っている「ハチミツ」は、肌にうるおいを与えて乾燥を防ぐ保湿成分です。ただし、台所のはちみつを顔に塗るはちみつパックや、傷に使う医療用のはちみつは、化粧品とは別の話です。まずは、肌の乾燥がどう起きるのかから見ていきましょう。
乾燥は、角層から水分が逃げて足りなくなること
肌の乾燥は、いちばん外側の角層から水分が逃げて、うるおいが足りなくなることで起きます。ハチミツがどこで働くのかを知るために、まず角層のうるおいのしくみを見ておきましょう。
角層は、この3つのバランスでうるおいを保っています。
- 1皮脂膜 肌の表面をおおう、皮脂と汗の膜
- 2天然保湿因子 角層の細胞の中で、水を抱える
- 3細胞間脂質 細胞のすき間を埋めて、水分を逃がさない。約50%はセラミド
角層では、皮脂膜が表面をおおい、天然保湿因子が細胞の中で水を抱え、細胞間脂質が細胞のすき間を埋めて水分を逃がしません。このバランスが崩れると、角層の水分が逃げて、かさつきや肌荒れにつながります。
だから乾燥の手入れでは、角層に水分を抱えさせることが大事になります。ここで働くのが、ハチミツのような水を抱える保湿成分です。
化粧品の「ハチミツ」は、糖が水を抱える保湿成分
化粧品のハチミツは、糖が水と結びついて、角層の水分を保つのを助ける保湿成分です。成分表では「ハチミツ」と書かれ、リップクリームや保湿クリーム、化粧水、シャンプーなどに配合されます。
はちみつは、ミツバチが花の蜜などを集めてつくる天然の甘い物質です。中身の約8割が糖で、その多くが果糖とブドウ糖です。水分は2割に満たず、糖がとても濃くとけた状態になっています。この糖が水と結びつくことで、角層の水分を保つのを助けると考えられています。少しだけ含まれるアミノ酸や、グルコン酸などの有機酸も、うるおいを保つのに役立つとされています。
ハチミツの糖が水を抱えて、角層の水分を保つのを助けます。
水を抱えこんでうるおいを保つ点で、ハチミツは保湿成分の中でも、グリセリンなどと同じ水を抱えこむタイプの仲間です。
アメリカの化粧品成分の専門家委員会は、ハチミツなど、はちみつからとる成分を評価し、今の使い方と濃度であれば化粧品に使っても安全と結論づけています。そのうえで、原料には農薬や細菌由来のエンドトキシンが混ざる可能性があるとして、製造の品質管理で抑えるよう注意をうながしています。品質を管理した原料を、化粧品としての濃度で使うことが前提の評価です。
乾燥が気になるときに、角層に水を抱えさせる役目として入っている成分だと考えておけば十分です。
化粧品で言える効果は、うるおいと肌荒れを防ぐ範囲
ハチミツを配合した化粧品で言える効果は、皮膚にうるおいを与える、皮膚の乾燥を防ぐ、肌荒れを防ぐといった範囲です。これらは国が決めた化粧品の効能の範囲の中の言葉で、ハチミツだけでなく製品全体として表すものだからです。
たとえばリップクリームなら、口唇にうるおいを与える、口唇の乾燥を防ぐといった表現になります。一方で、はちみつが肌にいいと紹介されるときによく出てくる、ニキビに効く、傷の治りが早い、シミが薄くなるといった話は、化粧品の効果としてはうたえません。ニキビについて化粧品で言えるのは、洗顔料が洗うことでニキビを防ぐ、というところまでです。
化粧品のハチミツに期待できるのは、うるおいを与えて乾燥や肌荒れを防ぐこと、と覚えておきましょう。
はちみつパックは、化粧品のハチミツとは別もの
はちみつパックは、台所のはちみつを顔にのせて、しばらくおいてから洗い流す方法として紹介されることがあります。手軽なので試してみたくなりますよね。でも、食品のはちみつをそのまま塗るのは、化粧品のハチミツを使うのとは別のことです。
化粧品のハチミツは、品質を管理した原料を、ほかの成分とまぜて処方の一部として配合したものです。食品のはちみつとは、濃さも、品質の管理も、肌に使う前提も違います。はちみつは花粉やハチ由来のたんぱく質を含み、これがアレルギーのもとになりうることや、ボツリヌス菌の芽胞を含むことがあることも知られています。糖が濃いのでベタつきが残りやすく、洗い残しが肌の負担になることもあります。
パックという化粧品の種類や使い方は、パックとシートマスクの記事にまとめています。はちみつ入りのパックを使いたいなら、化粧品として売られている製品を、表示どおりに使うのが基本です。肌が荒れているときに手作りのはちみつパックを試すのは避けましょう。理由は、このあとの肌荒れの章で説明します。
ニキビには、石けん洗顔だけと差がなかった
はちみつがニキビにいいと聞いて、試したくなる人は多いと思います。けれど、人でニキビに使った結果は、石けんでの洗顔だけと差がありませんでした。
ニキビにいいと言われる背景には、はちみつの菌が増えにくい性質があります。糖が濃く水が少ないこと、酸性であること、はちみつの中の酵素から過酸化水素ができることが組み合わさって、菌が増えにくくなると考えられています。ただし、これははちみつそのものの性質の話で、化粧品のハチミツの効果としてうたえるものではありません。
実際に、抗菌石けんで洗顔したあとに医療用のはちみつを主にしたものを顔にのせて洗い流しても、抗菌石けんでの洗顔だけと比べて、ニキビがよくなった人の割合は変わらなかったという結果があります。しみる、乾燥する、かぶれるといった困りごとも、同じくらい起きていました。
ニキビが続くときや、赤く腫れたニキビが多いときは、食品を塗って様子を見るより、皮膚科に相談しましょう。
傷に使うはちみつは、医薬品や医療機器の話
医療の場で使われるはちみつは、化粧品とは別の区分のものです。品質の規格や使い方を、医療の決まりのもとで管理しているからです。
日本では、日本薬局方という医薬品の規格書に「ハチミツ」が載っていて、医療用の医薬品として扱われます。その効能には、薬の味をととのえる、丸薬を固める、栄養剤として調剤に使うことのほか、皮膚や粘膜の保護剤として使うことが含まれます。この医薬品のハチミツをほかの軟膏とまぜてやけどの傷に使う病院もありますが、日本でのハチミツの適応は皮膚の保護剤までで、やけどの傷への使用は保険の適応外だと患者に案内しています。傷にしみて痛みが出ることも説明されています。
アメリカでは、傷にあてる医療用のはちみつの被覆材が、医療機器として販売を認められています。医療の研究をまとめた総説では、皮膚の浅い層までのやけどで、はちみつを使うとふつうの被覆材より傷の治りが早いという結果が示されています。
これらは、規格を管理した医療用の製品を医療者が扱う話です。食品のはちみつを傷に塗ってよいという意味ではないので、傷ややけどは医療機関に相談しましょう。
肌荒れの理由は、アレルギーと荒れた肌への刺激
はちみつを塗って肌荒れしたら、自分の肌に合わないのかと不安になりますよね。考えられる理由は主に3つで、はちみつへのアレルギー、荒れた肌に食品を塗ることによる刺激や食物アレルギーのおそれ、ベタつきや洗い残しです。はちみつが誰にとっても肌に悪いわけではありませんが、天然のものだから、食べられるから肌にも安全、とは限らないからです。
はちみつのアレルギーはとてもまれと考えられていますが、報告はあります。自分で集めたはちみつを手で扱った直後に、触れたところに蚊に刺されたような膨らみが出た接触蕁麻疹の例や、はちみつを食べて重いアレルギー反応が出た例です。キク科などの花粉や、ハチ由来のたんぱく質が関わることがあるとされています。接触蕁麻疹は、物質が触れたところに、すぐに膨疹が出るのが特徴です。
気をつけたいのは、食品を肌に塗ることで、その食品の食物アレルギーになることがある点です。肌のバリアが弱っていると、アレルギーのもとが入りこみやすいと考えられています。
荒れた肌に食品を塗ると、その食品の食物アレルギーにつながることがあります。
乾いている
塗る
入りこむ
症状が出る
食品が肌に触れて接触蕁麻疹が出ていた人が、のちに同じ食品を食べて症状が出るようになった例が報告されていて、きゅうりのパックがきっかけになった人もいました。はちみつでも、はちみつを使ったスキンケアのあとに、食べて症状が出た例が報告されています。
はちみつと同じくミツバチがつくるプロポリスは、かぶれの原因を調べる検査で陽性になる人の割合が、年を追って増えたと報告されている成分です。これは皮膚炎があって検査を受けた人の中の割合で、一般の人がかぶれる割合ではありません。
はちみつで肌荒れが出たら、赤みやかゆみ、ぶつぶつが出た時点で使うのをやめ、続くときは皮膚科に相談しましょう。
食べる話は別。1歳未満には与えない
はちみつを食べると肌荒れにいい、という話を聞いたことがある人もいると思います。ただ、食べる話は、肌に塗る化粧品の話とは経路が違います。この記事で見てきた保湿の働きは、肌に塗ったときの話です。
食べる話で必ず知っておきたいのは、1歳未満の赤ちゃんには、はちみつや、はちみつ入りの飲み物・お菓子などの食品を与えないことです。厚生労働省は、乳児ボツリヌス症を防ぐためにこう呼びかけています。ボツリヌス菌は熱に強く、ふつうの加熱や調理では死にません。1歳以上の人にとっては、はちみつはリスクの高い食品ではないとされています。
これは食べる話で、はちみつ入りの化粧品を塗る話とは分けて考えましょう。
まとめ
- 乾燥は、角層から水分が逃げて足りなくなることで起きます
- 化粧品の「ハチミツ」は、約8割を占める糖が水を抱えて、角層の水分を保つのを助ける保湿成分です
- 化粧品で言える効果は、うるおいを与える、乾燥を防ぐ、肌荒れを防ぐといった範囲です
- はちみつパックは食品を顔に塗ること。ニキビへの結果は石けん洗顔だけと差がなく、傷に使うはちみつは医薬品や医療機器の話です
- 肌荒れの理由はアレルギーや荒れた肌への刺激など。食べる話は別で、1歳未満には与えません
はちみつは、化粧品ではうるおいを保つ保湿成分のひとつです。食品のはちみつを塗るのとは分けて考え、はちみつ入りの化粧品を、製品の表示どおりに使ってみてください。
よくある質問
はちみつを肌に塗ると、どんな効果がありますか?
化粧品として言えるのは、うるおいを与える範囲です。ハチミツは糖が水を抱えて角層の水分を保つのを助ける保湿成分で、配合した化粧品では、皮膚にうるおいを与える、乾燥を防ぐ、肌荒れを防ぐといった効果が言えます。ニキビや傷への効果は、化粧品の効果としてはうたえません。
はちみつで肌荒れするのはなぜ?肌に悪いのですか?
アレルギーや、荒れた肌に食品を塗る刺激が考えられます。はちみつのアレルギーはとてもまれですが、触れたところに膨疹が出た例があります。また、荒れた肌に食品を塗っていると、その食品の食物アレルギーにつながることがあります。赤みやかゆみが出たら使うのをやめ、皮膚科に相談しましょう。
はちみつパックは肌にいいですか?
食品を顔に塗ることで、化粧品とは別の話です。化粧品のハチミツは品質を管理した原料を処方の一部として配合したもので、食品のはちみつそのものとは濃さも品質の管理も違います。はちみつ入りのパックを使うなら、化粧品として売られている製品を表示どおりに使い、肌が荒れているときの手作りパックは避けましょう。
はちみつはニキビに効きますか?
医療用のはちみつを顔にのせて洗い流しても、抗菌石けんでの洗顔だけと比べて、ニキビがよくなった人の割合は変わらなかったという結果があります。化粧品で言えるのは、洗顔料が洗うことでニキビを防ぐというところまでです。続くときは皮膚科に相談しましょう。
はちみつを食べると肌荒れにいい?赤ちゃんは?
食べる話は、肌に塗る化粧品とは経路が違う別の話です。また、1歳未満の赤ちゃんには、乳児ボツリヌス症を防ぐため、はちみつやはちみつ入りの食品を与えないよう厚生労働省が呼びかけています。
この記事で参照した情報
- CIR Expert Panel. Safety Assessment of Honey-Derived Ingredients as Used in Cosmetics. Int J Toxicol 2025;44(2 suppl):5S-18S
- 文部科学省 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年「はちみつ」(食品番号03022)
- 国立健康・栄養研究所「健康食品」の素材情報データベース「ハチミツ」
- FAO/WHO Codex Alimentarius. Standard for Honey (CODEX STAN 12-1981)
- Burlando B, Cornara L. Honey in dermatology and skin care: a review. J Cosmet Dermatol 2013;12:306-313
- Semprini A, et al. Randomised controlled trial of topical kanuka honey for the treatment of acne. BMJ Open 2016;6:e009448
- PMDA 医療用医薬品情報「ハチミツ」(日本薬局方 ハチミツ)
- 京都第一赤十字病院「ハチミツの適応外使用についてのお知らせ」(2023年)
- U.S. FDA 510(k) Premarket Notification K072956(医療用はちみつの創傷被覆材)
- Jull AB, et al. Honey as a topical treatment for wounds. Cochrane Database Syst Rev 2015;CD005083
- González-Bravo L, et al. Hives After Handling Honey. Actas Dermo-Sifiliográficas 2021;112(4):371-372
- Honey as a rare cause of severe anaphylaxis: case report and review of literature. JEADV Clinical Practice 2025;4(1):273-276
- 食品による接触蕁麻疹と経皮感作による食物アレルギーの症例報告(PMID 25572560)
- FAU(エアランゲン=ニュルンベルク大学)「Increase in allergies to a natural skincare product」(2020年3月)
- 日本皮膚科学会「接触皮膚炎診療ガイドライン2020」
- 国民生活センター「国民生活」2025年9月号 松永佳世子「化粧品を選ぶ前に知っておきたい知識 最終回 化粧品を安全に選ぶには」
- 厚生労働省「ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから。」
- 厚生労働省 感染症エクスプレス@厚労省「あさコラム vol.50」(2017年4月14日)
- 大阪府「化粧品の効能の範囲」(平成12年12月28日 医薬発第1339号、平成23年7月21日 薬食発0721第1号)