この記事でわかること
- 赤・黄・黒の酸化鉄とベンガラの違いと、肌色のつくり方
- 日本と米国で、酸化鉄がどう決められているか
- MRI検査の前に化粧を落とす理由
成分表示でよく見かける「酸化鉄」。鉄と聞くと、何のために入っているのか、肌に影響はないのか気になりますよね。
結論から言うと、酸化鉄は鉄からできた赤・黄・黒の色の粉で、ファンデーションの肌色やアイシャドウ、マスカラの色をつくるために入っています。溶けない粉なので肌の表面にのって色をつけ、米国では目のまわりを含む化粧品全般に使える色として認められています。気をつけたいのはMRI検査を受けるときで、病院の案内に従って、目元の化粧を落としてから検査を受けます。まずは、酸化鉄がどんな粉なのかから見ていきましょう。
酸化鉄は、赤のベンガラ・黄・黒の3つの色の粉
酸化鉄は、鉄と酸素が結びついてできた無機の顔料で、化粧品では赤・黄・黒の3つの色が使われます。どれも同じ鉄の仲間ですが、鉄と酸素の結びつき方の違いで色が変わるからです。
無機の顔料とは、水にも油にも溶けない色の粉のことです。赤は赤褐色のベンガラ、黄は黄酸化鉄、黒は黒酸化鉄と呼ばれます。黄酸化鉄はオキシ水酸化鉄、黒酸化鉄は四三酸化鉄がおもな成分です。
同じ黄酸化鉄でも、粒が大きいものはオレンジがかった黄色で、粒が小さくなるほど黄色が強くなります。黒酸化鉄は熱や光、薬品に強い粉とされます。どれも溶けない粉なので、肌の表面にのって色をつけます。
全成分表示では「酸化鉄」とまとめて書かれていることも、「ベンガラ」「黄酸化鉄」「黒酸化鉄」と分けて書かれていることもあります。海外の製品では、5けたの色の番号を使った名前で書かれていることもあり、ベンガラは77491、黄酸化鉄は77492、黒酸化鉄は77499です。
成分表示に並ぶ名前は違っても、どれも鉄からできた色の粉と覚えておけば大丈夫です。
ファンデーションの肌色は、3つの酸化鉄を混ぜてつくる
ファンデーションの色が肌色に見えるのは、黄・赤・黒の酸化鉄を組み合わせているからです。白い顔料の酸化チタンも合わせて割合を変えることで、いろいろな肌の色に合う色がつくられます。
黄・赤・黒の酸化鉄と白の酸化チタンの割合を変えて、いろいろな肌色をつくります。
化粧品の色材のなかでも無機の顔料は、色の鮮やかさでは有機の色素に及ばないかわりに、光や熱で色あせしにくいのが持ち味です。黄酸化鉄とベンガラはファンデーションなどに、黒酸化鉄はアイシャドウなどに使われています。マスカラも、多くの銘柄が酸化鉄を含んでいます。
酸化鉄入りの色つきの日焼け止めやファンデーションは、目に見える光、つまり可視光線を防ぐ研究でも取り上げられています。ただし、SPFとPAは紫外線を防ぐ力の目安で、可視光線を防ぐ力は表していません。
肌色のファンデーションは、3つの酸化鉄と白の粉の割合でできている、と考えるとわかりやすいです。
日本では、酸化鉄はタール色素ではない無機の色材
「赤色202号」のような番号つきの色と同じものなのか、気になる人もいると思います。日本では、酸化鉄はタール色素にはあたらず、この番号の決まりの外にある色材です。酸化鉄は鉄と酸素からできた無機の粉だからです。
成分表示で見かける「赤色202号」のような色は、法定色素と呼ばれるタール色素で、石炭のタールや石油などを原料に合成される有機の色素です。タール色素は、国の省令の一覧に載っているものだけが化粧品に使えます。
化粧品の成分の決まりである化粧品基準には、配合してはいけない成分の一覧と、配合できる量に上限がある成分の一覧がありますが、酸化鉄はどちらにも載っていません。つまり日本では、酸化鉄に成分ごとの上限量は決められていません。そのかわり化粧品基準のはじめに、原料は含まれる不純物も含めて、健康を害するおそれのあるものであってはならないという決まりがあります。
日本では、安全な原料を使う責任は、製造販売する会社にあるというしくみです。
米国では、化粧品用の酸化鉄は合成品だけで重金属に上限がある
米国では、化粧品に使える酸化鉄は合成でつくったものに限られ、重金属の不純物にも上限があります。酸化鉄は、国の規則で個別に決められた色添加物だからです。
規則では、目のまわりに使う化粧品を含めて、化粧品全般の着色に、適正な製造の範囲の量で安全に使えるとされています。認めているのは合成でつくった酸化鉄で、水を含んだ形のものも含みます。不純物の上限は、ヒ素が3ppm、鉛が10ppm、水銀が3ppm以下です。ppmは100万分の1を表す単位です。
米国では色によってはロットごとに国の認証が必要ですが、酸化鉄はその認証が免除されています。認証が免除される色は主に鉱物や植物、動物から得られるものとされていますが、それでも人工の着色料として扱われ、規則の規格や表示の決まりを守る必要があります。酸化鉄の規則は合成品に限っているので、化粧品の酸化鉄を、鉱物をそのまま砕いた色と考えるのは正確ではありません。
これは米国の決まりで、日本の製品が従う義務はありません。ヨーロッパでも、3つの酸化鉄は色の番号で、化粧品に使える着色剤の一覧に載っています。
化粧品の酸化鉄は、不純物まで決まりのある、合成の色の粉として使われているのです。
MRI検査の前は、病院の案内に従って化粧を落とす
酸化鉄が鉄だと知ると、MRI検査のときに大丈夫か心配になりますよね。MRI検査の前は、病院の案内に従って、マスカラやアイシャドウなどの化粧を落としましょう。強い磁石を使う検査なので、化粧に含まれる金属の成分が画像を乱すことがあるからです。
実際に、マスカラの多くは酸化鉄を含み、プラスチックの容器に入ったマスカラが装置の磁石に引き寄せられたという報告があります。マスカラによる画像の乱れは、頭のふつうの撮影では大きな問題にならない一方で、目のまわりの細かい部分の写りは悪くなるとされています。
化粧に含まれる金属の成分が画像を乱すことがあるので、検査の前に化粧を落とします。
化粧
やけど
落とす
日本の病院の患者向けの案内でも、つけまつげやマスカラ、アイシャドウなどの化粧は、検査の前に落とすものとして挙げられています。その案内では、金属の成分がついた部分は磁場が乱れて画像に影響し、診断のさまたげになることがあるほか、検査の電磁波で化粧をした部分がやけどをした事例があり、まぶたのように皮膚の薄いところはとくにやけどしやすいとされています。
案内が求めているのは、酸化鉄にしぼった話ではなく、化粧全体を落とすことです。検査を受ける病院の指示に従って落とすのが確実です。
まとめ
- 酸化鉄は鉄と酸素からできた溶けない色の粉で、赤のベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄の3つがあります
- ファンデーションの肌色は、黄・赤・黒の酸化鉄と白の酸化チタンの割合でつくられます
- 日本では、酸化鉄は「赤色◯号」のタール色素ではなく、化粧品基準の配合禁止・配合制限の一覧にも載っていません
- 米国では、化粧品用の酸化鉄は合成品に限られ、ヒ素3ppm・鉛10ppm・水銀3ppm以下と決まっています
- MRI検査の前は、病院の案内に従ってマスカラやアイシャドウなどの化粧を落としましょう
成分表示の後ろのほうに並ぶ「酸化鉄」は、肌色や目元の色をつくっている色の粉です。名前の意味がわかると、成分表示もすこし読みやすくなります。
よくある質問
酸化鉄とは化粧品の何の成分ですか?
鉄と酸素からできた赤・黄・黒の色の粉で、ファンデーションやアイシャドウ、マスカラの色をつけるために使われます。赤はベンガラ、黄は黄酸化鉄、黒は黒酸化鉄と呼ばれます。
ベンガラと酸化鉄は違うものですか?
ベンガラは赤い酸化鉄のことで、酸化鉄の仲間の一つです。全成分表示では「酸化鉄」とまとめて書かれることも、「ベンガラ」と分けて書かれることもあります。
酸化鉄の色でファンデーションの肌色はどう決まりますか?
黄・赤・黒の酸化鉄を組み合わせて肌色をつくります。白い顔料の酸化チタンも合わせて割合を変えることで、いろいろな肌の色に合う色ができます。
化粧品の酸化鉄は肌に影響がありますか?
溶けない粉で、肌の表面にのって色をつけます。米国では、目のまわりを含む化粧品全般の着色に使える色として規則で認められ、化粧品用は合成品に限られ、ヒ素3ppm・鉛10ppm・水銀3ppm以下という上限があります。日本では、化粧品基準の配合禁止・配合制限の一覧に載っていない成分です。
MRI検査の前に化粧を落とすのは酸化鉄のせいですか?
病院の案内では、酸化鉄にかぎらずマスカラやアイシャドウなどの化粧全体を落とすよう求められています。酸化鉄を含むマスカラで、目のまわりの画像が乱れたという報告もあります。検査を受ける病院の指示に従いましょう。
この記事で参照した情報
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「無機着色顔料」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「黄酸化鉄」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「黒酸化鉄」
- COSMILE Europe「CI 77491」
- COSMILE Europe「CI 77492」
- COSMILE Europe「CI 77499」
- 厚生労働省 事務連絡(平成24年6月6日)コチニール由来色素を含む医薬品等の表示について
- 厚生省「化粧品基準(案)に寄せられた意見と回答」(平成12年9月20日)
- 化粧品基準(平成12年9月29日 厚生省告示第331号)
- 米国FDA 21 CFR 73.2250 Iron oxides(eCFR 現行版)
- 米国FDA「Color Additives and Cosmetics: Fact Sheet」(2022年6月28日)
- Wright RM, Swietek PA, Simmons ML. Eye artifacts from mascara in MRI. AJNR Am J Neuroradiol 1985;6(4):652
- 愛媛県立中央病院「MRI 検査を受ける予定のある方へ~注意していただくことと、ご協力のお願い~」