この記事でわかること
- 化粧品では防腐剤、薬用では有効成分として入る理由
- 濃度の上限と、製品ごとの配合量
- 危険と言われる理由と、かぶれの報告
薬用石けんやデオドラント、歯みがきの成分表で「イソプロピルメチルフェノール」を見つけると、名前に「フェノール」とつくので、肌に悪いのでは、と気になりますよね。
結論から言うと、イソプロピルメチルフェノールは、化粧品では中身に菌やカビが増えるのを抑える防腐剤、医薬部外品では効能のもとになる有効成分として使われる成分です。どちらも国の決まりで、使える量や製品の種類が決められています。まずは、どんな成分なのかから見ていきましょう。
イソプロピルメチルフェノールは、菌やカビが増えるのを抑えるフェノールの仲間
イソプロピルメチルフェノールは、菌やカビなどの微生物が増えるのを抑える性質をもつ、フェノールの仲間の成分です。この性質を生かして、化粧品と医薬部外品の両方で使われています。
形は、フェノールという分子に、イソプロピル基とメチル基という2つの小さな枝がついたものです。化学の正式な名前は4-イソプロピル-3-メチルフェノールで、略してIPMPと呼ばれることもあります。医薬部外品の成分表示名称のリストでは、別名としてシメン-5-オールが載っています。原料は固体で、医薬部外品の原料の規格では、純度が95.0%以上と決められています。
化粧品と医薬部外品での、主な使われ方です。
化粧品
防腐剤として中身を守る
薬用石けん
「体臭・汗臭及びにきびを防ぐ。」
薬用歯みがき
「口臭の防止」など
同じ成分でも、化粧品では防腐剤、医薬部外品では有効成分と、製品の区分で役目が変わります。次の章から、それぞれを見ていきます。
化粧品では防腐剤。洗い流さないものは0.10%まで
化粧品に入っているイソプロピルメチルフェノールは、中身を最後まで守るための防腐剤です。化粧品はふたを開けると、空気中や手についた菌が入り、そのままでは中身が傷んでしまうからです。
防腐剤は、枠で囲んだところで働きます。
開ける
菌が入る
抑える
使える
化粧品基準では、化粧品の中の微生物の発育を抑えるために入れる防腐剤は、国が決めた一覧の別表第3に載っているものしか使えません。イソプロピルメチルフェノールはこの一覧に載っていて、上限は化粧品の種類で分かれています。
洗い流さないものと、粘膜に使われることがあるものは、100gあたり0.10gまでです。濃度にすると0.10%です。石けんやシャンプーのように、粘膜に使わない洗い流すものには、配合の上限がありません。洗い流さないものの上限は、同じ防腐剤のフェノキシエタノールの10分の1の量です。
防腐剤の決まりの全体は防腐剤の記事で解説しています。化粧品の成分表で見かけたら、中身を守るために決まった量だけ入っている成分と読めば十分です。
医薬部外品では有効成分。にきびやにおいを防ぐ効能のもと
医薬部外品では、イソプロピルメチルフェノールは、国に承認された効能のもとになる有効成分です。ニキビにも汗のにおいにも、菌が関わる段階があるからです。
ニキビは、毛穴の出口がつまって皮脂がたまり、そこで皮膚にふだんからいるアクネ菌が増えて、炎症が起きることで進みます。汗のにおいは、汗が肌の菌にふれて変わり、においのもとになる脂肪酸ができることで生まれます。菌の働きを抑える成分は、この菌が関わる段階に働きます。
たとえば薬用石けんでは、医薬部外品の有効成分として、「体臭・汗臭及びにきびを防ぐ。」を含む効能が認められている成分の1つで、入れる量は0.1〜0.5%です。この効能に使える有効成分は、イソプロピルメチルフェノールとサリチル酸、濃ベンザルコニウム塩化物液50の3つと決められています。
また、この3つの成分を入れた薬用石けんは、もう一つの効能「皮膚の清浄、にきび・かみそりまけ及び肌あれを防ぐ。」は名乗れません。同じ「にきび」でも、どの有効成分を入れたかで、書ける効能の文言が決まるのです。にきびと成分の関係はニキビの記事でまとめています。
「薬用」と書かれた製品では、承認された効能の範囲で働く有効成分として入っています。
歯みがきやふけ用シャンプーでも、有効成分の量が決まっている
イソプロピルメチルフェノールは、薬用歯みがきや薬用シャンプー・リンス、薬用の化粧水やクリームなどでも有効成分になり、製品の種類ごとに量が決まっています。効能も量も、製品の種類ごとの承認の決まりで決められているからです。
薬用歯みがきでは、「歯肉(齦)炎の予防」と「口臭の防止」の有効成分の対象に入っていて、量は0.02〜0.1%です。一方で、「歯周炎(歯槽膿漏)の予防」の有効成分の対象には入っていません。ふけ用の薬用シャンプーでは「ふけ・かゆみを防ぐ」などの効能の例があり、単独で入れるなら0.2%、薬用リンスでは0.1%です。
濃い色が、製品の種類ごとに決められた量です。
並べてみると、有効成分としての量は、いちばん多い洗い流す薬用石けんでも0.5%までです。
デオドラントで名前を見かけるのは、においを防ぐ効能と関わるからです。わきに使う医薬部外品の腋臭防止剤の効能の範囲は「わきが(腋臭)、皮膚汗臭、制汗。」です。化粧品として売られているデオドラントでは、こうした医薬部外品の効能は名乗れません。汗とにおいの成分の働きは制汗剤の成分の記事にまとめています。
成分表では、医薬部外品は「有効成分」の欄、化粧品は全成分の中に書かれる
同じ名前なのに、製品によって書かれている場所が違って迷う人は多いと思います。成分表のどこに書かれているかを見れば、イソプロピルメチルフェノールの役目がわかります。
医薬部外品では「有効成分」として、ほかの成分とは分けて書かれます。たとえば薬用石けんなら、「有効成分」の欄にイソプロピルメチルフェノール、「その他の成分」の欄に水やグリセリンなどが並びます。化粧品では、水やグリセリンなどと同じ全成分の並びの中の1つとして書かれます。医薬部外品の成分表示は、業界の自主基準として行われています。
有効成分の欄にあれば効能のもと、全成分の中にあれば主に防腐剤、と読むと区別しやすくなります。別名のシメン-5-オールと書かれていても、同じ成分です。
決まった量の範囲で使われていて、かぶれはまれ
「フェノール」とつく名前や、防腐剤であることから、危険なのではと思いますよね。イソプロピルメチルフェノールは、化粧品でも医薬部外品でも、製品の種類ごとに決まった量の範囲で使われています。
原料そのものの安全データシートでは、皮膚への刺激と、皮膚のアレルギーを起こす性質は、どちらも分類の区分に当たらないとされています。一方で、目に重い傷を起こす区分と、生殖への影響の区分には入っています。これは原料そのものの性質を、食べる経路も含めて分けた分類で、薄めて肌に塗る化粧品の評価ではありません。
肌トラブルでは、かぶれの報告があります。陰部の湿疹に使う市販の塗り薬に入っていたこの成分で、アレルギー性のかぶれが起きた例があり、この成分によるかぶれの報告は、疑いを含めて国内で4例とされています。
決まった量の範囲なら心配しすぎなくて大丈夫ですが、まれにかぶれることはあると知っておきましょう。
使うときは、湿疹や傷のある肌と、目に入ったときに気をつける
選ぶときは、成分の名前そのものより、使う場所と製品の種類に合っているかを見ましょう。化粧品の上限は、洗い流すか、洗い流さないか、粘膜に使うかで分けられているからです。子ども向けかどうかで上限を分ける決まりはありません。
報告された例は、湿疹のある陰部に塗る薬でした。湿疹や傷のある肌に使うときや、毎日使うものは、赤みやかゆみが出たら使うのをやめて皮膚科で相談しましょう。以前にこの成分でかぶれたことがある人は、有効成分の欄と全成分の両方で名前を確かめてください。
原料は目に重い傷を起こす区分なので、歯みがきや洗顔料が目に入ったときは、すぐに水で洗い流しましょう。
まとめ
- イソプロピルメチルフェノールは、菌やカビが増えるのを抑えるフェノールの仲間で、別名はシメン-5-オールです
- 化粧品では防腐剤で、洗い流さないものと粘膜に使うことがあるものは100gあたり0.10gまで、粘膜に使わない洗い流すものは上限なしです
- 医薬部外品では有効成分で、薬用石けんは0.1〜0.5%、薬用歯みがきは0.02〜0.1%、薬用シャンプーは単独で0.2%と決められています
- 成分表では、医薬部外品なら「有効成分」の欄、化粧品なら全成分の中に書かれます
- 原料の皮膚刺激とアレルギーの性質は分類の区分に当たらないとされる一方、かぶれの報告は国内で疑いを含め4例あります
イソプロピルメチルフェノールは、成分表のどこに書かれているかで役目が読みとれる成分です。薬用か化粧品かを確かめて、肌に合うかを見ながら使ってみてください。
よくある質問
イソプロピルメチルフェノールとはどんな成分ですか?
菌やカビが増えるのを抑える性質をもつフェノールの仲間で、略称はIPMPです。化粧品では中身を守る防腐剤、医薬部外品では薬用石けんや薬用歯みがきなどの有効成分として使われます。別名はシメン-5-オールです。
イソプロピルメチルフェノールは危険?肌に悪いですか?
製品の種類ごとに決められた量の範囲で使われています。原料そのものの分類では、皮膚への刺激と皮膚のアレルギーを起こす性質は区分に当たらないとされています。ただ、かぶれの報告は国内で疑いを含めて4例あるので、赤みやかゆみが出たら使うのをやめて皮膚科で相談しましょう。
化粧品に入れられる濃度の上限は?
洗い流さないものは100gあたり0.10gまでです。粘膜に使われることがある化粧品も0.10gまでで、粘膜に使わない洗い流すものには上限がありません。0.10gは0.10%と同じ量です。
ニキビ用やデオドラントの製品に入っているのはなぜ?
医薬部外品の効能のもとになる有効成分だからです。ニキビにも汗のにおいにも菌が関わる段階があり、薬用石けんでは「体臭・汗臭及びにきびを防ぐ。」を含む効能の有効成分になり、量は0.1〜0.5%と決められています。化粧品のデオドラントに入っている場合は、医薬部外品の効能は名乗れません。
歯みがきに入っていても大丈夫ですか?
薬用歯みがきの有効成分として、量の範囲が決められています。量は0.02〜0.1%で、「歯肉(齦)炎の予防」と「口臭の防止」の有効成分の対象です。口に合わないと感じたら使うのをやめ、歯科医や薬剤師に相談しましょう。
この記事で参照した情報
- 厚生省「化粧品基準」(平成12年厚生省告示第331号)第4項・別表第3
- 厚生労働省「薬用石けんの承認審査に係る留意事項について」(平成30年3月29日 薬生薬審発0329第13号)
- 厚生労働省「薬用歯みがき類製造販売承認基準について」(平成27年3月25日 薬食発0325第37号)
- 厚生労働省「薬用シャンプー及び薬用リンスの承認審査に係る留意事項について」(平成26年5月2日 薬食審査発0502第1号)
- 厚生労働省「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」(平成29年9月29日 薬生監麻発0929第5号)別掲「医薬部外品の効能・効果の範囲」
- 厚生労働省「いわゆる薬用化粧品中の有効成分リストについて」(平成20年12月25日 薬食審査発第1225001号)
- 日本化粧品工業連合会「医薬部外品の成分表示名称リスト」
- 日本化粧品工業会「医薬部外品の成分表示について」
- 厚生労働省 職場のあんぜんサイト モデルSDS「4-イソプロピル-3-メチルフェノール」(2025年3月14日作成)
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「防腐剤」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「にきび」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「腋臭防止剤」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「殺菌剤」
- 飯島茂子「外陰部湿疹用治療薬に含有されたイソプロピルメチルフェノールによるアレルギー性接触皮膚炎」皮膚病診療 42巻1号(2020)72-75