この記事でわかること
- 開けたあとの期限が書かれていない理由
- 保管と使い方でやってはいけないこと
- 「防腐剤無添加」の本当の意味
半年前に開けた化粧水や、たまにしか使わないアイシャドウを、まだ使っていいのか迷いますよね。
結論から言うと、日本には開けたあとの期限を書く決まりがなく、基本は「できるだけ早めに使いきる」です。分離・におい・色の変化に気づいたら、使うのをやめます。なぜ期限が書かれていないのか、どう保管すればいいのかを順番に見ていきましょう。
開封後の期限は、日本では表示の義務がない
海外製のコスメで「6M」「12M」の数字を見て、日本の製品にはないのかと思った人もいると思います。日本の法律には、開けたあとの期限を書く義務はありません。薬機法第61条で化粧品に書くよう決められている期限は、国が指定した化粧品の「使用の期限」だけだからです。
薬機法第61条が化粧品に書くよう定めているのは、製造販売業者の名前と住所、製品の名称、製造番号、国が指定する成分を含む場合のその成分名、化粧品基準で決められた事項、そのほか省令で決められた事項、そして国が指定する化粧品の使用の期限の7つです。期限にあたるのはこの「使用の期限」だけで、しかも国が指定した化粧品に限られています。
ふたの開いた容器のマークと「6M」「12M」といった数字は、開封後使用期間を示すPAOという表示で、EUの制度です。EUの化粧品規則では、最低保存期間が30か月を超える製品は日付を書かなくてよく、そのかわりに開けたあと安全に使える期間を示すことになっています。
EUでは、長くもつ製品に、開けてから使える期間のマークを付けます。
超えてもつ
開ける
12か月以内
30か月以下の製品には、日付と「この日までに使うのが最良」という意味の表示がつくので、EUでもすべての化粧品にPAOがつくわけではありません。日本で見かけるマークは、EU向けの仕様か、任意でつけている表示です。
期限が書いていないのは、未開封で「3年もつ」という意味
期限が書いていないと、ずっと使えるように思いますよね。でも、期限が書かれていないのは、製造後3年は品質が安定しているからで、無期限という意味ではありません。薬機法では、製造後3年以内に変質する化粧品を除いて、使用期限を書く必要はないとされているからです。
ただし3年という数字は、未開封で、正しく保管した場合の話です。いったん開けた化粧品は早めに使いきるように、と続いていて、開けたあとの目安として示されているのは、一貫して「できるだけ早めに使いきる」です。
つまり、3年は「開ける前」の目安で、開けたら早めに使いきると覚えておけば十分です。使用期限の考え方も、ここが出発点になります。
保管は常温で、冷蔵庫には入れない
冷蔵庫に入れたほうが長もちしそうだと思いますよね。でも、化粧品は冷蔵庫に入れる必要はなく、常温で保管できます。冷蔵庫から出し入れするときの温度変化で品質が不安定になるおそれがあり、クリームや乳液は分離することもあるからです。
保管の注意は、5つにまとめられています。直射日光のあたる場所や高温多湿の場所、温度変化の激しい場所を避けて常温で保管すること、使ったあとは容器の口元をふいてキャップをしっかり閉めること、開けたものはできるだけ早めに使いきること、ドレッサーや洗面台の上に直接置かないこと、そして小さな子どもの手の届かないところにしまうことです。
使うときにも、あとから雑菌が入る二次汚染を防ぐための注意があります。
雑菌を入れないための、使うときの4つの注意です。
洗う
小物で
戻さない
閉める
使う前に手や指をきれいに洗い、スポンジやチップ、ブラシなどの小物も清潔なものを使います。そして中身を一度取り出したら、出しすぎても容器に戻さないこと。この最後のひとつが、いちばん見落とされやすいところです。
保管は常温で、日光と湿気と温度変化を避ける。これだけ守れば、特別な道具はいりません。
品質が落ちる道すじは、雑菌と酸化の2つ
化粧品の品質が落ちる道すじは、微生物と酸化の2つです。開けたあとは、手や空気から雑菌が入り、空気中の酸素にもふれるからです。
微生物は、開けたあとに空気や手から入る雑菌のことで、次の章の防腐剤の話につながります。一方の酸化は、空気中の酸素にふれて起きる変化で、日光や温度、湿度がきっかけとなり、においが変わったり、色が変わったり、品質が落ちたりします。油が傷む酸敗もあり、空気や光、水分、酵素の影響で、酸っぱいにおいや嫌なにおいが出たり、ねばりが増したりします。
温度や湿度、光などの影響で品質が時間とともにどう変わるかは、製品をつくる段階の安定性試験で調べられています。
見分け方は、どちらの道すじでも同じです。キャップを開けてみて、中身が分離している、変なにおいがする、色が変わっているなど、どこかおかしいと感じたら、変質しているおそれがあるので使うのはやめましょう。未開封でも、高温や直射日光、湿気の多い場所、温度変化の激しい場所に置いていた場合は、品質が落ちていることがあります。
防腐剤は、開けたあとに入る雑菌に備える成分
防腐剤は、使っている途中に入る雑菌に備える成分です。開けたあとに空気中や手についた雑菌が入るのは避けられず、それによる変質も避けられないからです。
防腐剤は、枠で囲んだ「増える」ところに働きます。
開ける
入る
増える
変わる
入った雑菌が容器の中で増えると、分離やにおい、色の変化につながります。防腐剤は、その増えるところをおさえて、最後まで安全に、気持ちよく使えるようにするために入っています。
使える種類は化粧品基準の第4条で決まっていて、微生物が増えるのを抑える目的で入れる成分は、別表第3に載っているものでなければなりません。別表第3にない成分は防腐剤として使えず、量にも上限があります。たとえば、フェノキシエタノールは100gあたり1.0gまで、パラベンの仲間は合計で1.0gまでです。
防腐剤を使わない処方では、微生物が増えにくいようにできるだけ酸性にしたり、アルコールを多めに入れたりといった別の工夫が求められます。容器の側でも、微生物が入らないように逆止弁をつけることがあります。防腐剤は、開けたあとの毎日を支えるための成分なのです。
「防腐剤無添加」は、決められた防腐剤が入っていないという意味
「防腐剤無添加」と書いてあると、菌を抑える成分が何も入っていないように思いますよね。でも、「防腐剤無添加」は、化粧品基準の別表第3の成分が入っていないという意味です。防腐剤として入れる成分とは、法律で決められたポジティブリストに載っている成分を指すからです。
表示のしかたにも決まりがあり、ある成分を入れていないと書くときは、その成分の名前を添えることになっています。そのため、パラベンを安定剤として入れている製品に「防腐剤無添加」と書くのは、誤解を招くおそれがある例とされています。さらに、入っていないことを理由に安全であるかのように書いたり、ほかの会社の商品をけなすように書いたりしてはいけない、という決まりもあります。
「無添加」の文字を見たら、何が入っていないのかを、その横の成分名で確かめるのが確実です。
まとめ
- 日本には開けたあとの期限を書く義務はありません。「6M」などのPAOはEUの表示で、30か月を超えてもつ製品だけにつきます
- 期限が書いていないのは未開封で製造後3年は品質が安定という意味で、無期限ではありません
- 開けたらできるだけ早めに使いきる。冷蔵庫には入れず、常温で保管します
- 使うときは手を洗い、出した中身は容器に戻さない。分離・におい・色が変わったら使うのをやめます
- 防腐剤は開封後の雑菌に備える成分で、「防腐剤無添加」は別表第3の成分が入っていないという意味です
迷ったときは、分離・におい・色の3つを見る。これがいちばん確かな方法です。早めに使いきれる大きさを選ぶことも、長くきれいに使うコツです。
よくある質問
開封した化粧品はいつまで使える?
決まった期限はなく、できるだけ早めに使いきるのが基本です。分離している、変なにおいがする、色が変わっているなど、おかしいと感じたら使うのをやめましょう。
容器にある「6M」「12M」のマークは何?
開けたあと安全に使える期間を示す、ヨーロッパの制度にもとづく表示です。日本の法律に表示の義務はなく、日本で見かけるものはヨーロッパ向けの仕様か任意の表示です。
化粧品は冷蔵庫で保管したほうがいい?
冷蔵庫に入れる必要はなく、常温で保管できます。出し入れによる温度変化で品質が保てなくなるおそれがあり、クリームや乳液は分離することもあります。
使用期限が書いていない化粧品は無期限?
無期限ではありません。未開封で正しく保管した場合に、製造後3年は品質が安定しているという意味です。開けたあとは、できるだけ早めに使いきります。
「防腐剤無添加」は抗菌成分がまったく入っていないという意味?
そうではありません。化粧品基準の防腐剤のリストにある成分が入っていないという意味で、菌を抑える働きのある成分が一切ないということではありません。
この記事で参照した情報
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「安定性試験」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「防腐効力試験」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「防腐剤」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「酸化劣化」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「酸敗」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「二次汚染」
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第61条
- 化粧品基準(平成12年9月29日 厚生省告示第331号)
- 日本化粧品工業会「化粧品Q&A」
- 日本化粧品工業会「化粧品を保管するときに注意していただきたいこと」
- 日本化粧品工業会「化粧品を使うときに注意していただきたいこと」
- 日本化粧品工業会「化粧品関連法規について」
- 日本化粧品工業会「微生物」(自主基準)
- Regulation (EC) No 1223/2009 of the European Parliament and of the Council on cosmetic products, Article 19
- Directive 2003/15/EC (amending Council Directive 76/768/EEC)
- 化粧品公正取引協議会「化粧品の表示に関する公正競争規約施行規則 別表4-1【無添加等無配合を意味する用語】」
- 化粧品公正取引協議会「公正競争規約及び施行規則の運用基準」