この記事でわかること
- 角質への働きと水の抱え方の違い
- しみる・刺激の出方と使えない人の違い
- 塗る場所や子どもに合わせた選び方
尿素もヘパリン類似物質も、乾燥肌の薬や保湿クリームでよく見かける名前です。どちらを選べばいいのか、しみないのはどちらか、迷いますよね。
結論から言うと、2つの違いは、硬くなった角質への働きと、水の抱え方です。尿素は肌にもともとある保湿成分のひとつで、濃い薬になると硬い角質をやわらかくする働きが加わります。ヘパリン類似物質は、水を抱えて肌のうるおいを保つことが中心です。しみやすさや、子どもや顔に使えるかどうかも違うので、順に見ていきましょう。
尿素とヘパリン類似物質の違いは、角質への働きと水の抱え方
尿素とヘパリン類似物質は、どちらも角層の水分を直接増やすタイプの保湿剤で、違いは角質への働きと水の抱え方です。同じ乾燥でも、肌の中で起きていることが2つあるからです。
1つは、角層の水分不足です。肌のいちばん外側の角層は、皮脂膜・天然保湿因子・細胞間脂質の3つでうるおいを保っていて、このバランスが崩れると水分が逃げて、かさつきやかゆみにつながります。もう1つは、かかとやひじのように、角質が厚く硬くなってガサガサすることです。
日本皮膚科学会の皮脂欠乏症の診療の手引きは、保湿剤を、水を引き寄せる成分で角層の水分を直接増やすタイプと、肌をおおって水分が逃げるのを防ぐタイプに分けています。尿素とヘパリン類似物質は前のタイプで、おおうタイプより角層の水分を増やす効果が強いとされます。
尿素もヘパリン類似物質も、角層の水分を直接増やすタイプの保湿剤です。
そのうえで違いは3つです。濃い尿素には硬くなった角質を溶かしてはがす作用があること、尿素は化粧品にも入るがヘパリン類似物質は入らないこと、刺激の出方と使えない人が違うことです。どちらがよく効くという関係ではなく、得意な場面が違うと考えるとわかりやすいでしょう。
しくみの違い。尿素は角質をやわらかく、ヘパリン類似物質は水を抱える
尿素は水と結びついて角層の水分を増やし、濃いと硬い角質そのものに働きます。ヘパリン類似物質は、水を抱えて角層のうるおいを保ちます。
尿素は、角層にもともと含まれている天然保湿因子の成分のひとつです。天然保湿因子はアミノ酸などの小さな分子の集まりで、細胞の中で水を抱えています。薬の資料では、角質に入りこんだ尿素に水が結びつき、尿素の濃さに応じて水分の量が増えたとされています。成分そのものの説明は尿素の記事にまとめています。
濃くなると、働きが加わります。高い濃さの尿素は、角質のたんぱく質どうしの結びつきを切って性質を変えます。たとえば20%の医療用クリームでは、角質の水分が増えることに加えて、厚くなった角質が薄くなり、粉をふいたような皮膚のかけらがなくなったという結果があります。
硬くなった角質に働くのは、濃い尿素のほうです。
尿素
水と結びつく。
濃いと硬い角質をやわらかく
ヘパリン類似物質
水を抱えて、
角層のうるおいを保つ
ヘパリン類似物質は、ブタの軟骨からとる多糖の仲間です。構造の中に水となじむ部分をたくさん持っていて、高い保湿の力があるとされます。人の皮膚で保湿の効果が示されているほか、乾燥させた動物の皮膚でも角層の水分が保たれたという結果があります。血行や炎症についての作用は、ヘパリン類似物質の記事でくわしく解説しています。
つまり、厚くなった角質を薄くする作用が薬の資料に書かれているのは、尿素のほうです。
区分と濃度の違い。ヘパリン類似物質は化粧品に入らない
尿素は化粧品、医薬部外品、医薬品のどれにも使われていますが、ヘパリン類似物質は医薬品と医薬部外品だけです。国の化粧品基準は、決められた例外を除いて医薬品の成分を化粧品に入れることを禁じていて、ヘパリン類似物質は化粧品には配合できないからです。
薬の濃さも違います。ヘパリン類似物質は、医師が処方する薬も薬局で買える薬も0.3%です。尿素は、医療用のクリームが10%と20%、薬局で買えるクリームには100g中に尿素20.0gのものがあり、ヘパリン類似物質より数十倍も濃い量で使われています。ただし成分の性質が違うので、%の大きさで強さは比べられません。濃さごとの尿素の働きは尿素の濃度の記事で解説しています。
薬として認められた効能は、重なる部分と違う部分があります。医療用の尿素クリームの効能は「魚鱗癬、老人性乾皮症、アトピー皮膚、進行性指掌角皮症(主婦湿疹の乾燥型)、足蹠部皸裂性皮膚炎、掌蹠角化症、毛孔性苔癬」です。医療用のヘパリン類似物質の効能には「皮脂欠乏症」や「進行性指掌角皮症」のほか、しもやけや傷あと、打ち身のあとのはれなど、乾燥以外の病気も並んでいます。
医薬部外品、つまり薬用化粧品では、尿素は国がまとめた有効成分の前例のリストに載っていて、ヘパリン類似物質は製品ごとに承認を受けています。どちらの場合も、効能は成分ではなく製品ごとに認められ、「肌あれ、あれ性」「皮膚の乾燥を防ぐ」といった薬用化粧品の範囲になります。化粧品に入った尿素で言えるのは、「皮膚にうるおいを与える」「肌を柔らげる」などの範囲です。
ヘパリン類似物質入りのものを探すときは、パッケージの区分の表示を確かめるのが近道です。
しみる・刺激の出方の違い。尿素はぴりぴり、ヘパリン類似物質は出血に注意
尿素がしみた経験があると、ほかの保湿剤も心配になりますよね。添付文書を比べると、尿素はしみやすさ、ヘパリン類似物質は出血しやすい人への注意が中心です。
市販の尿素20%クリームでは、副作用として「刺激感(いたみ、熱感、ぴりぴり感)」が挙げられています。医療用の尿素10%クリームでは、塗りはじめなどの一時的な刺激として痛みと熱感が5%以上または頻度不明とされ、20%クリームでもぴりぴり感や痛みが挙げられています。尿素の資料には、炎症や亀裂のある肌では一時的な刺激が出ることがあるとも書かれています。
市販の尿素20%クリームは、引っかき傷などの傷口やひび割れ、かさぶたのように皮膚がはがれているところ、ただれたり赤くはれたりしているところには使わず、目のまわりや粘膜にも使いません。低い濃さでも、4%の尿素と塩を入れたクリームは、グリセリンのクリームと乾燥への効果は同じくらいでしたが、しみる感じを強めに感じた人が多かったという結果があります。傷んだ肌ほどしみやすいのが尿素の特徴です。
ヘパリン類似物質では、医療用の薬の副作用として皮膚炎やかゆみ、赤み、発疹などが0.1〜5%未満、皮膚の刺激感と紫斑が頻度不明とされています。血友病など出血しやすい血液の病気がある人は使えず、ただれた面には直接塗らないことになっています。どちらも、赤みやかゆみが出たら使うのをやめて相談しましょう。
向く部位と肌の状態。かかとの硬さは尿素、ひび割れはヘパリン類似物質
かかとやひじの硬さには尿素、ひび・あかぎれにはヘパリン類似物質が候補になります。硬い角質に働く作用と、傷のある肌でのしみやすさが、2つで違うからです。
かかとやひじが硬くガサガサしているときは、尿素が候補です。市販の尿素20%クリームの効能には「ひじ・ひざ・かかと・くるぶしの角化症」があります。市販のヘパリン類似物質のクリームにも同じ角化症の効能があるので、尿素でなければいけないわけではありません。
ひび・あかぎれがあるときは、事情が逆になります。市販のヘパリン類似物質のクリームは、効能に「手足のひび・あかぎれ」が入っています。一方で、市販の尿素20%クリームは、ひび割れの部分には使わないことになっています。ジュクジュクしていたり、ただれがひどかったりするときは、ヘパリン類似物質でも使う前に医師や薬剤師に相談します。
顔の乾燥では、市販の尿素20%クリームに、化粧品ではないのでスキンケアの目的で顔には使わないよう注意書きがあります。市販のヘパリン類似物質のクリームで顔を除くとされているのは、傷ややけどのあとのしこりの効能だけで、目や目のまわりには使いません。顔に毎日使う保湿なら、顔に使うことを前提にした化粧品や薬用化粧品から選ぶのが基本です。
子どもへの使用の注意。市販の尿素20%は15歳未満に使わない
子どもに使うときの決まりは、2つではっきり違います。市販の尿素20%クリームは「小児(15歳未満)には使用させないでください。」とされています。市販のヘパリン類似物質のクリームは、効能に「小児の乾燥性皮膚」が入っていて、子どもに使わせるときは保護者の指導監督のもとで使うことになっています。
医師が処方する薬では、医療用のヘパリン類似物質の効能に乳児期の病気も含まれています。処方された薬は、子どもでも大人でも医師の指示どおりに使うのが基本です。尿素のしみる感じは傷や炎症のある肌で出やすいので、子どもの肌荒れに、自己判断で濃い尿素を使うのは避けましょう。
日本皮膚科学会の手引きでは、皮脂欠乏症のない子どもに保湿剤を塗ることはすすめられないとする一方で、乾燥の治療のために乳幼児へ保湿剤を使うことを制限するものではないとしています。子どもの乾燥やかゆみが続くときは、薬を選ぶ前に小児科や皮膚科で相談すると安心です。
選び方。塗る場所と肌の状態、区分の表示で選ぶ
尿素かヘパリン類似物質かは、塗る場所と肌の状態で決め、パッケージの区分の表示もあわせて見ます。皮膚科の手引きでも、使い心地に満足して、安心して続けられる製品を使うことが大切だとされています。
尿素とヘパリン類似物質の選び方の流れです。
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パッケージで「第2類医薬品」「第3類医薬品」などの表示があれば、効能と使ってはいけない場所が決まっています。市販薬では、ヘパリン類似物質は5〜6日、尿素20%のクリームは2週間くらい使ってもよくならなければ、使うのをやめて相談することになっています。
どちらを選んでも、しみたり赤くなったりしたら使うのをやめ、無理に続けないことが大切です。
まとめ
- 違いは角質への働きと水の抱え方です。どちらも角層の水分を直接増やすタイプの保湿剤です
- 尿素は肌にもともとある保湿成分で、濃いと硬い角質を溶かしてはがす作用が加わります。ヘパリン類似物質は水を抱えて角層のうるおいを保ちます
- 尿素は化粧品・医薬部外品・医薬品に使われ、ヘパリン類似物質は医薬品と医薬部外品だけで、薬の濃さは0.3%です
- 尿素は痛みやぴりぴり感が副作用に挙がり、傷んだ肌でしみやすく、ヘパリン類似物質は出血しやすい人に使いません
- 市販の尿素20%クリームは顔とひび割れに使わず、15歳未満にも使わせません。市販のヘパリン類似物質は小児の乾燥性皮膚が効能です
尿素とヘパリン類似物質は、どちらが上というより、得意な場面が違う2つの保湿成分です。塗りたい場所と肌の状態を思い浮かべて、パッケージの区分と注意書きを見ながら選んでみてください。
よくある質問
尿素とヘパリン類似物質の違いは?
角質への働きと、水の抱え方が違います。尿素は肌にもともとある保湿成分で、濃いと硬い角質を溶かしてはがす作用があります。ヘパリン類似物質は水になじむ部分を多く持ち、水を抱えて角層のうるおいを保つのが中心です。また、ヘパリン類似物質はふつうの化粧品には入れられません。
乾燥肌には尿素とヘパリン類似物質のどっちがいい?
皮膚科の手引きでは、どちらも角層の水分を直接増やすタイプの保湿剤とされています。かかとやひじの硬さには尿素、ひび・あかぎれにはヘパリン類似物質というように、塗る場所と肌の状態で選び、使い心地に満足して続けられるものを使いましょう。
尿素がしみるとき、ヘパリン類似物質ならしみない?
ヘパリン類似物質にも、皮膚の刺激感が副作用として挙げられています。尿素は痛みやぴりぴり感が副作用にあり、炎症や亀裂のある肌で一時的な刺激が出ることがあります。どちらでも、しみたら使うのをやめ、薬剤師や医師に相談しましょう。
子どもに使えるのは尿素とヘパリン類似物質のどっち?
市販の尿素20%クリームは15歳未満には使いません。市販のヘパリン類似物質のクリームは効能に小児の乾燥性皮膚があり、保護者の指導監督のもとで使います。処方された薬は、医師の指示どおりに使いましょう。
尿素やヘパリン類似物質のクリームは顔に使える?
市販の尿素20%クリームは顔に使いません。化粧品ではないので、スキンケアの目的で顔に使わないよう注意書きがあります。市販のヘパリン類似物質のクリームは目や目のまわりに使わず、顔を除くのは傷あとの効能だけです。毎日の顔の保湿は、顔用の化粧品や薬用化粧品から選びましょう。
この記事で参照した情報
- 日本皮膚科学会「皮脂欠乏症診療の手引き2021」日皮会誌131(10):2255-2270
- 日本化粧品技術者会 化粧品用語集「尿素」
- 日本化粧品技術者会 化粧品用語集「天然保湿因子」
- 尿素20%クリーム 医療用医薬品 添付文書(2023年5月改訂)
- 尿素10%クリーム 医療用医薬品 添付文書(2024年1月改訂 第1版)
- 尿素20%配合クリーム 第3類医薬品 添付文書
- ヘパリン類似物質0.3% 医療用医薬品 添付文書(2025年7月改訂 第4版)
- ヘパリン類似物質0.3% 医薬品インタビューフォーム(2025年7月改訂 第22版)
- ヘパリン類似物質クリーム 第2類医薬品 添付文書
- 厚生省「化粧品基準」平成12年厚生省告示第331号
- 厚生労働省「化粧品に配合可能な医薬品の成分について」平成19年5月24日 薬食審査発第0524001号
- 厚生労働省「いわゆる薬用化粧品中の有効成分リストについて」平成20年12月25日 薬食審査発第1225001号
- 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き(平成19年8月)」別表 医薬部外品の効能効果の範囲
- 厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」平成23年7月21日 薬食発0721第1号
- Piquero-Casals J, et al. Urea in Dermatology: A Review of its Emollient, Moisturizing, Keratolytic, Skin Barrier Enhancing and Antimicrobial Properties. Dermatol Ther 2021;11(6):1905-1915
- Lodén M, et al. A double-blind study comparing the effect of glycerin and urea on dry, eczematous skin in atopic patients. Acta Derm Venereol 2002;82(1):45-47