この記事でわかること
- ヘパリン類似物質が、角層で何をしているのか
- 病院の薬・市販薬・薬用化粧品の違い
- 使えない人と、美容目的の処方の扱い
乾燥肌の保湿でよく名前を聞くヘパリン類似物質。ふつうの保湿クリームと何が違うのか、病院の薬と市販薬は同じなのか、気になりますよね。
結論から言うと、ヘパリン類似物質は角層に水分を抱えさせる保湿の成分で、ふつうの化粧品には入れられない薬の成分です。入っているのは病院の薬、市販薬、薬用化粧品の3つなので、どの区分の商品かを見て選ぶことが大切です。
乾燥は、角層から水分が逃げて足りなくなること
肌の乾燥は、いちばん外側の角層から水分が逃げて、うるおいが足りなくなることで起きます。角層は、表面をおおう皮脂膜、細胞の中で水を抱える天然保湿因子、細胞のすきまを埋める細胞間脂質の3つでうるおいを保っていて、細胞間脂質の約50%はセラミドです。年齢などで皮脂が足りなくなり、このバランスが崩れると、水分が逃げてかさつきやかゆみが出ます。皮脂が足りずに肌が乾燥するこの状態を、皮脂欠乏症といいます。だから乾燥の手入れでは、角層に水分を抱えさせることが大事になります。
ヘパリン類似物質は、角層に水分を抱えさせる保湿の成分
ヘパリン類似物質の肌への働きの中心は、角層の水分を保つ保湿です。水分を抱え込む性質があり、乾いた角層に水分をとどめるからです。
水分を抱え込み、角層の水分を増やします。
乾いた角層
ヘパリン類似物質を塗ったあと
- 角層の細胞
- ヘパリン類似物質
- 水分
たとえば、人の皮膚で保湿の効果が示されていて、皮膚を乾燥させた動物の実験でも角層の水分が保たれたという結果があります。日本皮膚科学会がまとめた皮脂欠乏症の診療の手引きでは、水分を抱え込む保湿成分を含む保湿剤のひとつとして扱われ、油の膜でおおうタイプより、角層の水分を増やす作用が強いものに分けられています。もうひとつ知っておきたいのが、血液を固まりにくくする作用です。肌のための働きではありませんが、出血しやすい人が使ってはいけない理由になります。
入っているのは、病院の薬・市販薬・薬用化粧品の3つ
ヘパリン類似物質が入っている商品は、病院の薬、市販薬、薬用化粧品の3種類です。もともと薬の成分で、それぞれ国の決まりの上での区分が違うからです。成分そのものは、ブタの軟骨からとるムコ多糖の仲間で、2種類の糖がくり返しつながった多糖に、硫酸の部分をたくさん結びつけたものです。
日本では1954年に発売された、薬の成分です。
ブタの軟骨から
糖がつながった分子
- 2種類の糖
- 硫酸の部分
成分名はそのまま「ヘパリン類似物質」で、薬でも薬用化粧品でもこの名前で表示されます。
ふつうの化粧品には入れられない成分です。
病院の薬は医師が処方する医療用医薬品で、ヒルドイドという商品名で知られています。クリームや軟膏、ローション、泡のタイプがあり、効能は皮脂欠乏症のほか、血栓性静脈炎、肥厚性瘢痕・ケロイドと呼ばれる傷あとの治療と予防、しもやけなどです。市販薬は薬局やドラッグストアで買える第2類医薬品で、効能は乾皮症、手指のあれ、ひび・あかぎれなどです。薬用化粧品は医薬部外品で、国がまとめた薬用化粧品の有効成分の一覧には載っていないため、製品ごとに承認を受けています。買うときは、医薬品か医薬部外品かを表示で確かめましょう。
向くのは、乾燥と肌あれ
ヘパリン類似物質が向くのは、乾燥と肌あれです。角層に水分を抱えさせる働きが、そのまま乾燥や肌あれの原因に向いているからです。ただし、認められている効能の言葉は区分ごとに違います。
乾燥では、病院の薬は皮脂欠乏症、市販薬は乾皮症や小児の乾燥性皮膚が効能です。日本皮膚科学会の手引きは、年齢による皮脂欠乏症に保湿剤を塗ることを強くすすめていて、ヘパリン類似物質は肌の状態やかゆみがよくなったという結果がある保湿成分のひとつです。肌あれでは、市販薬は手指のあれや、手足のひび・あかぎれが効能です。薬用化粧品の効能は、製品ごとに認められた範囲になります。同じ成分でも言える効能は区分ごとに違うので、乾燥肌のケアに選ぶときは商品の区分を見ましょう。
出血しやすい人は使わず、目や粘膜にも塗らない
いちばん大事な注意は、出血しやすい血液の病気がある人は使わないことです。ヘパリン類似物質には血液を固まりにくくする作用があり、出血を助長するおそれがあるためです。
ただれた面や潰瘍にも、直接塗りません。
出血しやすい人は使わない
目のまわりや粘膜に塗らない
使えないのは、血友病や血小板減少症、紫斑病などの人と、わずかな出血でも重大な結果につながるおそれがある人で、病院の薬でも市販薬でも同じです。病院の薬は潰瘍やただれた面に直接塗らないこと、市販薬は目や目のまわり、口や鼻などの粘膜に使わないことになっています。
市販薬は、5〜6日使っても症状がよくならないときは使うのをやめ、医師や薬剤師に相談します。医師の治療を受けている人、アレルギーを起こしたことがある人、湿ってただれがひどい人は、使う前に相談が必要です。子どもに使うときは保護者が見守り、妊娠中や妊娠の可能性がある人には、病院の薬は治療上の利益が危険を上回ると判断された場合に限って使われます。副作用としては、皮膚炎やかゆみ、赤み、発疹、皮膚の刺激感や紫斑が報告されています。赤みやかゆみ、腫れ、紫斑が出たら、すぐに使うのをやめて相談しましょう。
美容目的の処方は、保険給付の対象外
美容目的でヘパリン類似物質の薬を処方してもらうことは、保険給付の対象外です。2018年に国がこの扱いを明確にし、同じ年の4月1日から実施されているからです。
きっかけは、2014年ごろから病院の薬が美容目的で処方されることが増えたことです。国の審議会の資料では、25gのチューブに換算して一度に10本分以上が処方された例や、子どものアトピーの治療用にもらった薬が美容目的で使われている実態が示されました。2017年9月には健康保険組合連合会が、皮膚の乾燥に保湿剤だけが処方される場合を保険の対象から外すべきだと提言し、日本皮膚科学会は、治療が必要な患者に大きな不利益が生じかねないとして処方の制限に反対し、会員の医師には適正な処方を求めました。そのうえで、中央社会保険医療協議会が2018年2月の答申で、美容目的など病気の治療以外を目的としたものは保険給付の対象外であることを明確にしました。日本小児アレルギー学会は、これを従来からの原則をはっきりさせたものと受け止めています。
乾燥や肌あれがつらいときは、皮膚科で治療が必要かどうかを判断してもらうのが近道です。
化粧品には入っておらず、病院の薬と市販薬の濃さは同じ
「ヘパリン類似物質入りの化粧品」という言い方を見かけると、化粧品にも入っていると思いますよね。でも、ヘパリン類似物質はふつうの化粧品には入れられず、入っているのは医薬品か医薬部外品です。
国の化粧品基準は、決められた例外を除いて医薬品の成分を化粧品に入れることを禁じていて、化粧品に配合してよい医薬品成分の一覧にもヘパリン類似物質は入っていないからです。また、病院の薬のほうが濃いと思われがちですが、病院の薬も市販薬も濃度は0.3%で同じです。違うのは、認められている効能と、手に入れる方法と、一緒に入っている添加物です。
血行促進と聞くと、くまやくすみによさそうに思えますが、皮膚の血流が増えたのも、紫外線による赤みを抑える作用も、動物の皮膚での結果です。薬や薬用化粧品として認められている効能に、くまやしみ、シワは入っていません。日本皮膚科学会の手引きでも、保湿剤のどれが特に優れているとはされていません。ヘパリン類似物質は、薬の区分で選ぶ保湿の成分として見ておくと安心です。
まとめ
- 乾燥は、角層から水分が逃げて足りなくなることで起きます
- ヘパリン類似物質は、角層に水分を抱えさせる保湿の成分です
- 入っているのは病院の薬、第2類医薬品の市販薬、薬用化粧品で、ふつうの化粧品には入れられません
- 出血しやすい血液の病気がある人は使えず、目や粘膜、ただれた所にも塗りません
- 美容目的の処方は、2018年に保険給付の対象外であることが明確にされました
ヘパリン類似物質は、薬として長く使われてきた保湿の成分です。乾燥や肌あれがつらいときは自己判断で薬を使い続けず、皮膚科に相談しながら、自分に合う保湿を選んでみてください。
よくある質問
ヘパリン類似物質は肌に何をする成分ですか?
水分を抱え込む保湿の成分で、角層に水分をとどめて乾燥を防ぎます。油の膜でおおうタイプより、角層の水分を増やす作用が強い保湿剤に分けられています。
ヘパリン類似物質入りの化粧品はありますか?
ありません。ヘパリン類似物質は医薬品の成分で、国の化粧品基準により化粧品には配合できず、入っているのは医薬品か医薬部外品です。
ヒルドイドとヘパリン類似物質は同じものですか?
ヒルドイドは医師が処方する医療用医薬品の商品名で、有効成分がヘパリン類似物質です。市販薬のヘパリン類似物質も濃度は同じ0.3%ですが、認められた効能と手に入れ方が違います。
ヘパリン類似物質を使えない人はいますか?
血友病や血小板減少症、紫斑病など出血しやすい血液の病気がある人は使えません。血液を固まりにくくする作用があり、出血を助長するおそれがあるためです。
美容目的の処方に保険は使えますか?
使えません。2018年に、美容目的など病気の治療以外を目的としたものは保険給付の対象外であることが明確にされ、4月1日から実施されています。
この記事で参照した情報
- 国立健康・栄養研究所「セラミド(N-アシルスフィンゴシン)」素材情報
- マルホ株式会社「ヒルドイド 医薬品インタビューフォーム」(2025年7月改訂 第22版)
- マルホ株式会社「ヒルドイドソフト軟膏0.3% ほか 添付文書」(2025年7月改訂 第4版)
- 健栄製薬「ヒルマイルドクリーム 添付文書」(第2類医薬品)
- 日本皮膚科学会「皮脂欠乏症診療の手引き2021」(日皮会誌131(10):2255-2270)
- 厚生省「化粧品基準」(平成12年厚生省告示第331号)
- 厚生労働省「化粧品に配合可能な医薬品の成分について」(平成19年5月24日 薬食審査発第0524001号)
- 厚生労働省「いわゆる薬用化粧品中の有効成分リスト」(平成20年12月25日 薬食審査発第1225001号)
- WWDJAPAN「ヘパリン類似物質配合の医薬部外品の発売」(2025年8月27日)
- 中医協 総-2「医療用保湿剤の適正使用について」(平成29年11月1日、内閣府 経済・財政一体改革推進委員会WG 参考資料に再掲)
- 日本皮膚科学会「医療用ヘパリン類似物質製剤の美容目的処方等に関連する問題について(第一報)」(2017年10月16日)
- 日本皮膚科学会「医療用ヘパリン類似物質製剤の美容目的処方等に関連する問題について(第二報)」(2017年10月31日)
- 日本皮膚科学会「医療用ヘパリン類似物質製剤の美容目的処方等に関連する問題について(第三報)」(2018年2月19日)
- 日本小児アレルギー学会「医療用ヘパリン類似物質製剤の適正使用について(続報)」(2018年2月27日)
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