この記事でわかること
- 尿酸由来と甘草由来、出発点の違い
- 国の基準で名前が出る場所と配合量の前例
- 成分表での見え方と選び方
薬用の化粧水やクリームの成分表に、アラントインとグリチルリチン酸2Kが並んでいると、どちらが何をしているのか、どっちが効くのか迷いますよね。
結論から言うと、2つの違いは由来と、国の基準で名前が出てくる場所です。アラントインは尿酸が酸化されてできる物質、グリチルリチン酸2Kは甘草から取り出した成分のカリウム塩で、どちらも薬用化粧品では肌あれを防ぐ有効成分として使われます。どちらが効くかは成分名では決まらないので、選ぶときは効能の欄を見ます。まずは、由来の違いから見ていきましょう。
由来が違い、アラントインは尿酸から、2Kは甘草からできる
2つは、出発点がまったく違う成分です。アラントインは体の中の代謝でもできる物質で、グリチルリチン酸2Kは植物から取り出した成分だからです。
アラントインは、尿酸が酸化されるとできる、においも味もない白い結晶の粉です。血液中の尿酸を下げる医療用の薬の添付文書にも、尿酸を酸化してアラントインに分解する、という説明があります。哺乳類の尿や多くの植物にも含まれる物質で、ヨーロッパの化粧品成分のデータベースでは、化粧品の原料は合成品、または植物由来と合成品に分類されています。性質のくわしい話はアラントインの記事にまとめています。
グリチルリチン酸2Kは、マメ科の植物である甘草から取り出したグリチルリチン酸を、カリウムと結びつけた塩です。2Kの「K」はカリウムの記号です。化粧品の技術者の団体の用語集では、甘草から抽出される成分で、化粧品にはカリウム塩とアンモニウム塩が配合されるとされています。
名前の響きは似ていても、尿酸由来と甘草由来の別の成分と覚えておきましょう。
どちらも、薬用化粧品で肌あれを防ぐ有効成分
由来は違っても、2つはどちらも薬用化粧品で肌あれを防ぐ有効成分です。化粧品の技術者の団体の用語集でも、肌荒れ防止剤の例として、グリチルリチン酸の仲間とアラントインが同じグループに並んでいます。
肌あれは、乾燥やこすれなどの外からの刺激をきっかけに起こります。刺激で肌の一部に軽い炎症が起きたり、角層のうるおいのバランスが崩れて水分を保てなくなったりして、かさつきや赤みをともなう肌あれになります。
枠で囲んだ「軽い炎症」にはグリチルリチン酸2K、「肌あれ」の状態にはアラントインが向けて使われます。
刺激
軽い炎症
保てない
肌あれ
グリチルリチン酸の仲間は、この流れのうち、刺激で起こる軽い炎症を防ぐために使う成分のグループに入っています。アラントインは、荒れた肌の状態のほうに向けて使われる成分です。どちらも、肌あれを「防ぐ」側の成分です。
国の有効成分リストにも、2つを薬用の化粧水やクリームに有効成分として配合した前例が載っています。薬用の化粧水やクリームで認められうる効能の範囲には「肌あれ。あれ性。あせも・しもやけ・ひび・あかぎれ・にきびを防ぐ。」などがあります。ただし、リストに載っているのは商品の種類ごとの量の前例で、効能は商品ごとの承認で決まります。承認や有効成分のしくみは、医薬部外品と化粧品の違いの記事で解説しています。
2つは、同じ「肌あれを防ぐ」ための有効成分として見ておけば大丈夫です。
国の基準では、薬用石けんは2K、あせも・ただれ用はアラントイン
違いがはっきり出るのは、国が成分と効能の対応を決めている種類の医薬部外品です。種類によって、名前が挙がる成分が決まっているからです。
薬用石けんの通知では、「皮膚の清浄、にきび・かみそりまけ及び肌あれを防ぐ。」の効能に必要な有効成分は、グリチルリチン酸ジカリウムとグリチルレチン酸ステアリルです。アラントインの名前は、この通知に出てきません。逆に、あせも・ただれ用の基準で有効成分に挙がっているのはアラントインの側です。薬用歯みがきの基準では、2つが同じ有効成分のグループに並びます。
洗顔料で「にきび・かみそりまけ及び肌あれを防ぐ」の効能を見たら、有効成分はグリチルリチン酸2Kかグリチルレチン酸ステアリル、あせも・ただれ用の製品で見かけるのはアラントイン、と読めます。化粧水やクリームはどちらにも前例があるので、成分名だけで効能は決まりません。
配合量の前例は、化粧水では2K、クリームではアラントインの幅が広い
有効成分リストに載る量の前例は、商品の種類によって、どちらの幅が広いかが入れかわります。化粧水ではグリチルリチン酸2Kのほうが幅が広く、クリームや乳液ではアラントインのほうが広くなっています。
有効成分リストに載る配合量の前例で、上限でも効き目の強さでもありません。
化粧水ではアラントインが0.05〜0.2%、グリチルリチン酸2Kが0.05〜0.5%、クリームや乳液、ハンドクリームではアラントインが0.05〜0.5%、2Kが0.05〜0.2%です。グリチルリチン酸2Kには、ひげそり用剤と日やけ止め剤にも前例があります。
この数字は過去に認められた前例で、上限でも、効き目の強さでもありません。同じ効能・用法で範囲内なら、承認の申請で有効性や安全性の資料を原則として求めない、という目安です。幅が広いほうが強い、とは読まないようにしましょう。
ふつうの化粧品では違いはほとんどなく、書かれる場所で見分ける
ふつうの化粧品に入っている場合は、2つの違いはほとんどなくなります。どちらも、製品全体として「肌荒れを防ぐ」「肌を整える」など、国が定める化粧品の効能の範囲までしか言えないからです。
成分名を目立たせて書くときは、配合目的を必ず添える決まりで、「肌を整える成分として配合」のような書き方になります。業界の広告ガイドラインでは、肌あれをよくする成分のような、有効成分と誤解させる書き方は配合目的として認められていません。
成分表の書かれ方にも差があります。医薬部外品では、効能の欄があり、有効成分がほかの成分と分けて書かれます。化粧品では、全成分の中にほかの成分と同じように並びます。また、医薬部外品の表示名は承認の書類の成分名が原則なので、「グリチルリチン酸2K」のほか「グリチルリチン酸ジカリウム」「グリチルリチン酸二カリウム」と書かれることもあり、どれも同じ成分です。
アラントインのあとに別の名前が続く「アラントインβ-グリチルレチン酸」などは、アラントインに別の成分を組み合わせた別の原料で、グリチルリチン酸2Kとも別の成分です。「有効成分」の欄があるかどうかで、医薬部外品か化粧品かを見分けましょう。
一緒に入っていても、効き目が強いという意味ではない
2つが並んでいると、両方入っているほうがよく効くと思いますよね。でも、一緒に入っているから効き目が強い、とは読めません。言える効能は、有効成分が1つでも2つでも、承認を受けた効能の欄のとおりだからです。
2つが同じ製品に入っているのは、どちらも肌あれを防ぐ目的の有効成分で、薬用の化粧水やクリームに前例があるからです。有効成分リストにも薬用化粧品の承認基準にも、2つを組み合わせたときの効能や量についての決まりはありません。薬用石けんでは有効成分の配合は2種までと決まっていますが、これは石けんについての決まりです。
成分表に2つが並んでいたら、肌あれを防ぐ有効成分が2つ入った薬用化粧品と受け取っておくのが正確です。
どちらも今の使い方なら安全と評価され、赤みが出たらやめる
どちらの成分も、化粧品での今の使い方と濃度なら安全と評価されています。アメリカで化粧品成分の安全性を評価する専門家の委員会が、それぞれについて、そう判断しているからです。
グリチルリチン酸2Kは、塗る使い方では皮膚からほとんど吸収されないと考えられています。それでも、しみ対策をうたう製品に入っていたグリチルリチン酸2Kでかぶれが起きた例が報告されていて、甘草から取れる仲間のグリチルレチン酸でも、湿疹用のクリームなどでかぶれた例があります。甘草の飲み薬で注意される偽アルドステロン症は飲む場合の話で、グリチルリチン酸2Kの記事で整理しています。
どちらの成分でも、赤み、かゆみ、ぶつぶつが出たら使うのをやめ、続くときは皮膚科で相談してください。かぶれの原因が有効成分とは限らず、ほかの成分のこともあるので、製品の成分表を持って受診すると調べやすくなります。
選ぶときは、成分名より効能の欄を見る
選ぶときは、どちらの成分が入っているかより、パッケージの効能の欄を見ます。薬用化粧品で言える効能は、成分名ではなく商品ごとの承認で決まるからです。
薬用化粧品を選ぶときに見る順番です。
確かめる
読む
欄を見る
出たら中止
たとえば、洗顔料でにきびや肌あれを防ぐ効能を国が認めた製品がほしいなら、「医薬部外品」の表示と、有効成分の欄にグリチルリチン酸2Kかグリチルレチン酸ステアリルがあるかが目印です。ふつうの化粧品で2つを見かけたときは、肌を整える目的の成分と考えて、使い心地や価格で選べば十分です。赤くはれる、かゆみが続くといった症状があるときは、薬用化粧品で様子を見るより皮膚科に相談するのが確実です。
迷ったら、区分と効能の欄を先に見ると覚えておきましょう。
まとめ
- 違いは由来と、国の基準で名前が出る場所です。アラントインは尿酸が酸化されてできる物質、グリチルリチン酸2Kは甘草から取り出した成分のカリウム塩です
- どちらも薬用化粧品では肌あれを防ぐ有効成分で、用語集でも肌荒れ防止剤の同じグループです
- 薬用石けんの肌あれを防ぐ有効成分はグリチルリチン酸2Kの側、あせも・ただれ用の基準に名前があるのはアラントインの側です
- 配合量の前例は化粧水では2K、クリームではアラントインの幅が広く、どれも上限や強さではありません
- どちらも今の使い方なら安全と評価されていますが、赤みやかゆみが出たら使うのをやめます
アラントインとグリチルリチン酸2Kは、出発点は違っても、薬用化粧品では同じ「肌あれを防ぐ」ための有効成分です。どちらが入っているかより、商品の区分と効能の欄を見ると、何のために入っているのかがはっきりします。
よくある質問
アラントインとグリチルリチン酸2Kの違いは?
由来と、国の基準で名前が出る場所が違います。アラントインは尿酸が酸化されてできる物質で、グリチルリチン酸2Kは甘草から取り出した成分のカリウム塩です。どちらも薬用化粧品では肌あれを防ぐ有効成分として使われます。
アラントインとグリチルリチン酸2Kはどっちが効く?
どちらが効くかは、成分名では決まりません。薬用化粧品で言える効能は商品ごとの承認で決まり、有効成分リストの配合量も前例で、強さを示す数字ではありません。パッケージの効能の欄を見るのが確実です。
アラントインとグリチルリチン酸2Kが一緒に入っているのはなぜ?
どちらも肌あれを防ぐ有効成分で、薬用の化粧水やクリームに前例があるためです。2つを組み合わせたときの効能や量の決まりはなく、一緒に入っているから効き目が強いという意味ではありません。
グリチルリチン酸2Kやアラントインでかぶれることはある?
どちらも今の使い方なら安全と評価されていますが、グリチルリチン酸2Kではかぶれが起きた例が報告されています。赤みやかゆみが出たら使うのをやめ、続くときは成分表を持って皮膚科で相談しましょう。
薬用石けんの肌あれを防ぐ有効成分はどっち?
グリチルリチン酸2Kの側です。国の通知で、「皮膚の清浄、にきび・かみそりまけ及び肌あれを防ぐ。」の有効成分はグリチルリチン酸ジカリウムとグリチルレチン酸ステアリルで、アラントインの名前はありません。
この記事で参照した情報
- 厚生労働省「いわゆる薬用化粧品中の有効成分リストについて」(平成20年12月25日 薬食審査発第1225001号)
- 厚生労働省「薬用石けんの承認審査に係る留意事項について」(平成30年3月29日 薬生薬審発0329第13号)
- 厚生省「新指定医薬部外品の製造(輸入)承認基準等について」(平成11年3月12日 医薬発第283号)
- 厚生労働省「薬用歯みがき類製造販売承認基準について」(平成27年3月25日 薬食発0325第37号)
- 日本化粧品工業会「化粧品等の適正広告ガイドライン2020年版」(表2 薬用化粧品の効能又は効果の範囲、F5.5 特定成分の特記表示)
- 日本化粧品工業会「医薬部外品の成分表示の趣旨説明」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「アラントイン」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「グリチルリチン酸」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「肌荒れ防止剤」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「抗炎症剤」
- 医薬品医療機器総合機構 医療用医薬品 添付文書(ラスブリカーゼ、2023年6月改訂)18.1 作用機序
- COSMILE Europe「ALLANTOIN」(Cosmetics Europe)
- Becker LC, et al. Final Report of the Safety Assessment of Allantoin and Its Related Complexes. Int J Toxicol 2010;29(3 Suppl):84S-97S
- Cosmetic Ingredient Review Expert Panel. Final Report on the Safety Assessment of Glycyrrhetinic Acid, ... Dipotassium Glycyrrhizate, ... Int J Toxicol 2007;26(Suppl 2):79-112
- PubMed 検索結果: Allergic contact dermatitis caused by arbutin and dipotassium glycyrrhizate in skin-lightening products. Contact Dermatitis 2017 ほか(glycyrrhizinate / glycyrrhetinic と contact dermatitis)