この記事でわかること
- 肌あれが起きるしくみと、アラントインが薬用化粧品に入る理由
- 薬用化粧品・化粧品・ほかの医薬部外品で言えることの違い
- グリチルリチン酸ジカリウムとの違い
薬用の化粧水やクリームの成分表でよく見かけるアラントイン。肌に何をする成分なのか、グリチルリチン酸ジカリウムと何が違うのか、迷いますよね。
結論から言うと、アラントインは、肌あれを防ぐための薬用化粧品によく使われる有効成分です。ふつうの化粧品に入っていることもあり、その場合は肌を整えたり守ったりする目的で配合されます。どちらの商品かで、パッケージに書ける言葉が変わります。まずは、肌あれがどう起きるのかから見ていきましょう。
肌あれは、角層がうるおいを保てなくなって起きる
肌あれは、肌のいちばん外側の角層が、うるおいを保てなくなって起きます。きっかけは、乾燥や寒さ、紫外線、こすれなどの外からの刺激です。
角層は、表面の皮脂膜、細胞の中で水を抱える天然保湿因子、細胞のすき間を埋める細胞間脂質の3つで、うるおいを保っています。刺激でこのバランスが崩れると、角層の水分を保つ働きが落ち、新しい細胞への入れかわりも乱れます。こうして、かさつきや赤みをともなう肌あれになります。
肌あれの手入れには、失われたうるおいを補う成分と、荒れた状態のほうに向けて使う成分があります。アラントインは、あとのほうの成分です。
アラントインは、薬用化粧品で肌あれを防ぐ有効成分
アラントインがいちばんよく使われているのは、薬用化粧品で肌あれを防ぐための有効成分としてです。化粧品の技術者の団体は、アラントインを、グリチルリチン酸の仲間と同じグループに入れ、医薬部外品で「肌荒れ、荒れ性」に対する有効成分の代表に挙げています。
アラントインは、枠で囲んだ肌あれの状態に向けて使われます。
刺激
保てない
肌あれ
国が示した薬用化粧品の有効成分リストにも、化粧水、クリームや乳液、ハンドクリーム、パックに、アラントインを有効成分として配合した前例が載っています。
ただし、薬用化粧品がうたえる効能は、商品ごとの承認で決まります。たとえば薬用の化粧水で認められうる範囲には「肌あれ。あれ性。」や、あせも・しもやけ・ひび・あかぎれ・にきびを防ぐ、などがあります。どれも「防ぐ」ための言葉で、アラントインが入っていれば全部をうたえるわけではなく、その商品の効能の欄に書かれた分だけです。
アラントインは、薬用化粧品の中で肌あれを防ぐ係と覚えておきましょう。
国の基準では、あせも・ひび・歯みがきにも名前がある
アラントインは、肌あれ以外にも、いくつかの医薬部外品の承認基準に名前がある成分です。成分と効能のつながりが国の基準の中で決まっている種類があるからです。
新指定医薬部外品の承認基準では、あせも・ただれ用の製品の有効成分の一つにアラントインが挙がっていて、この種類の効能は「あせも・ただれの緩和・防止」です。同じ基準のひび・あかぎれ用では、メントールとカンフル、またはビタミンAとビタミンEを主な成分にした製品に、添えて配合できる有効成分としてアラントインが挙がっています。こちらの効能は「ひび、しもやけ、あかぎれ」などで、アラントインだけで決まるものではありません。
薬用歯みがきの承認基準では、歯肉炎や歯周炎の予防、口臭の防止といった効能を名乗るために必要な有効成分のグループに、アラントインが入っています。同じグループには、グリチルリチン酸ジカリウムも並んでいます。
ここまでの効能はどれも医薬部外品として認められるもので、ふつうの化粧品の効果としてうたえるものではありません。
ふつうの化粧品では、肌を整えて守るための成分
ふつうの化粧品に入っているアラントインは、肌を整えて守るための成分です。アラントインは、国が示した化粧品にも配合できる医薬品の成分の一覧に載っていて、化粧品にも入れられるからです。
化粧品の化粧水や美容液に入っている場合に言えるのは、製品全体としての「肌荒れを防ぐ」「肌を整える」など、国が定める化粧品の効能の範囲までです。成分名を目立たせて書くときは、配合目的を必ず添えるよう広告のルールで求められていて、「肌を整える成分として配合」のような書き方になります。
海外でも、アラントインは肌の状態を整える成分として扱われています。アメリカで化粧品成分の安全性を評価する専門家パネルは、化粧品の中で肌を整える成分としてまとめ、ヨーロッパの化粧品成分のデータベースでは、肌をよい状態に保つ、外からの影響から肌を守る、といった働きに分類されています。
商品の区分によって、言えることが変わります。
薬用化粧品
「肌あれ。あれ性。」など
化粧品
「肌荒れを防ぐ」「肌を整える」など
ほかの基準
あせも・ひび・歯みがき
アラントイン配合の製品を見たら、まず「医薬部外品」の表示があるかを確かめると、何が言える製品なのかがわかります。
正体は、尿酸からできる、においのない白い粉
アラントインは、尿酸からできる、においも味もない白い粉です。尿酸が酵素で酸化されるとアラントインができ、血液中の尿酸を下げる医療用の薬にも、このしくみを使うものがあります。
無色から白色の結晶の粉で、冷たい水やエタノールにはわずかしか溶けず、熱い水やアルカリ性の液にはよく溶けます。名前は、ウシの胎児をつつむ膜の液の中から見つかったことに由来します。原料には合成のものと植物由来のものがあるとされ、医薬部外品の原料としては純度の規格が決まっています。
成分表で「アラントイン」のあとに別の名前が続くものは、アラントインに別の成分を組み合わせた別の原料です。医薬部外品の表示名称のリストには、アラントインDL-パントテニルアルコール、アラントインβ-グリチルレチン酸、アラントインアセチルDL-メチオニン、アラントインクロルヒドロキシAl、アラントインジヒドロキシAl、アラントインポリガラクツロン酸が、それぞれ別の成分として載っています。
名前が続くときは、アラントインそのものとは分けて読むのがコツです。
グリチルリチン酸ジカリウムとは、正体も基準での扱いも別
どちらも薬用化粧品の成分表でよく見かけるので、同じような成分だと思いますよね。でも、アラントインとグリチルリチン酸ジカリウムは、正体も国の基準での扱いも別の成分です。
グリチルリチン酸ジカリウムは甘草という植物の甘い成分のカリウム塩で、アラントインは尿酸からできる小さな分子です。
違いがはっきり出るのが薬用石けんです。国の通知で「皮膚の清浄、にきび・かみそりまけ及び肌あれを防ぐ」の有効成分に挙がっているのは、グリチルリチン酸ジカリウムとグリチルレチン酸ステアリルの2つで、アラントインは入っていません。一方で、アラントインはあせも・ただれ用やひび・あかぎれ用の基準に名前があり、薬用歯みがきの基準では2つが同じ有効成分のグループに並んでいます。
なお、成分表の「アラントインβ-グリチルレチン酸」は、アラントインとグリチルレチン酸からなる別の原料で、グリチルリチン酸ジカリウムとも別の成分です。2つは名前も役目の範囲も分けて見ましょう。
今の使い方なら安全と評価され、合わなければ使うのをやめる
アラントインは、化粧品での今の使い方と濃度の範囲なら、安全と評価されています。アメリカの専門家パネルが、アラントインとその複合体について、報告された使い方と濃度の範囲で安全性を支持すると判断しているからです。
それでも、肌に合うかどうかは人によって違います。赤みやかゆみが出たら使うのをやめ、続くときは皮膚科で相談してください。痔の塗り薬や手荒れ用の医薬品のクリームは、ほかの成分と組み合わせた製品なので、それぞれの説明書に従って使います。
医薬品の説明に出てくる傷についての言葉は、医薬品としての説明です。化粧品や薬用化粧品のアラントインの働きとして、読み替えないことが大切です。
有効成分リストの量は前例で、上限でも効能でもない
有効成分リストに数字が並んでいると、それが上限だと思いますよね。でも、リストに載るアラントインの量は、過去に認められた前例で、上限ではありません。
量の前例で、上限でも効能でもありません。
数字は、化粧水で0.05〜0.2%、クリームや乳液、ハンドクリームで0.05〜0.5%、パックで0.1〜0.2%です。リストの範囲内なら、承認の申請で有効性や安全性の資料を原則として求めないという目安で、効能を示すものでもありません。
「アラントイン入りの薬用化粧水なら、にきびも防げる」というのも正確ではありません。効能は商品ごとの承認で決まるので、パッケージの効能の欄を見るのが確実です。
まとめ
- 肌あれは、刺激で角層がうるおいを保てなくなり、赤みなどをともなう状態です
- アラントインは尿酸からできる白い粉の成分で、薬用化粧品では肌あれを防ぐ有効成分として使われます
- 国の基準では、あせも・ただれ用、ひび・あかぎれ用、薬用歯みがきにも名前があります
- ふつうの化粧品にも入り、その場合に言えるのは「肌荒れを防ぐ」「肌を整える」など化粧品の効能の範囲です
- グリチルリチン酸ジカリウムとは正体が別で、有効成分リストの量は前例。上限でも効能でもありません
アラントインは、薬用化粧品では「防ぐ」ための有効成分です。商品の区分と効能の欄をあわせて見ると、何のために入っているのかがわかりやすくなります。
よくある質問
アラントインとは何ですか?
アラントインは、尿酸が酵素で酸化されてできる白い粉の成分です。薬用化粧品では肌あれを防ぐための有効成分として、ふつうの化粧品では肌を整える目的で配合されます。
アラントインにはどんな効果がありますか?
医薬部外品では、薬用の化粧水やクリームに肌あれを防ぐための有効成分として配合されます。国の基準では、あせも・ただれ用やひび・あかぎれ用、薬用歯みがきの有効成分にも挙がっています。ふつうの化粧品の場合に言えるのは「肌荒れを防ぐ」など化粧品の効能の範囲です。
アラントイン配合の化粧水や美容液は、すべて医薬部外品ですか?
いいえ、アラントインはふつうの化粧品にも配合できます。医薬部外品かどうかは、パッケージの「医薬部外品」の表示と効能の欄で見分けます。
アラントインとグリチルリチン酸ジカリウムの違いは何ですか?
グリチルリチン酸ジカリウムは甘草の甘い成分のカリウム塩で、アラントインは尿酸からできる別の成分です。薬用石けんで肌あれを防ぐ有効成分に挙がっているのはグリチルリチン酸ジカリウムの側で、アラントインはあせも・ただれ用などの基準に名前があります。
アラントインは肌に安全ですか?
アメリカの専門家パネルは、報告された使い方と濃度の範囲で安全性を支持すると判断しています。ただ、肌に合うかどうかは人によるので、赤みやかゆみが出たら使うのをやめましょう。
この記事で参照した情報
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「アラントイン」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「肌荒れ防止剤」
- 日本化粧品工業連合会「医薬部外品の成分表示名称リスト」(平成20年3月25日版)
- 厚生労働省「いわゆる薬用化粧品中の有効成分リストについて」(平成20年12月25日 薬食審査発第1225001号)
- 厚生省「新指定医薬部外品の製造(輸入)承認基準等について」(平成11年3月12日 医薬発第283号)
- 厚生労働省「薬用歯みがき類製造販売承認基準について」(平成27年3月25日 薬食発0325第37号)
- 厚生労働省「化粧品に配合可能な医薬品の成分について」(平成19年5月24日 薬食審査発第0524001号)
- 厚生労働省「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」(平成29年9月29日 薬生監麻発0929第5号)別掲
- 医薬品医療機器総合機構 一般用医薬品 添付文書情報(外用痔疾用薬)
- 医薬品医療機器総合機構 医療用医薬品 添付文書(ラスブリカーゼ、2023年6月改訂)
- Becker LC, et al. Final Report of the Safety Assessment of Allantoin and Its Related Complexes. Int J Toxicol 2010;29(3 Suppl):84S-97S
- COSMILE Europe「ALLANTOIN」(Cosmetics Europe)