この記事でわかること
- 「無水ビタミンC」とはどんな呼び名なのか
- 水があるとビタミンCが壊れやすいのはなぜか
- 水を抜くと長持ちするのか、誘導体とどう違うのか
「無水ビタミンC」と書かれた美容液を見かけると、ふつうのビタミンC美容液と何が違うのか、こちらを選んだほうがいいのか迷いますよね。
結論から言うと、無水ビタミンCは水を入れずにつくったビタミンC製品の呼び名で、入っているビタミンCそのものは水を含む美容液と同じです。水の中で壊れやすいビタミンCを守る工夫のひとつですが、それだけで必ず長持ちするわけではなく、光や酸素、容器、処方全体も関わります。
誘導体だけが別の成分で、ほかはアスコルビン酸です。
「無水」は決まりのない呼び名で、成分表の「水」で見当がつく
「無水ビタミンC」は、法律や業界団体が決めた言葉ではなく、水を配合していない処方のビタミンC製品を指す呼び名です。特別な種類のビタミンCがあるわけではなく、成分としてはビタミンC、つまりアスコルビン酸そのものです。違うのは、アスコルビン酸を入れている土台の部分で、専門的には基剤と呼ばれます。
つくり方には2つあります。ひとつは、細かい粉にしたアスコルビン酸を、シリコーンや油、グリコール類を合わせた土台に散らばらせたタイプで、粉を細かくするのは肌の上でざらつきを感じさせないためです。もうひとつは、アスコルビン酸をプロパンジオールとグリセリンに溶かしたタイプです。アスコルビン酸は水に溶けるビタミンなので、油やシリコーンには溶けにくい性質があります。
水が入っているかは、成分表で見当がつきます。成分表示は配合量の多い順なので、最初のほうに「水」があれば水が主な処方で、「水」がどこにもなければ水を配合していない処方です。ただし、原料にもともと付いてくるごく少量の成分は表示しなくてよいため、水分がまったくのゼロという意味ではありません。無水かどうかは、成分表に「水」があるかどうかで見ておけば十分です。
アスコルビン酸は、水の中でイオンの形になると壊れやすい
アスコルビン酸は、水に溶けて電気を帯びたイオンの形になると、酸化が進みやすくなります。分解を早めるものはほかにもあり、空気中の酸素、ごく少量でも働く銅などの金属、光、高い温度、アルカリ性に傾いた高いpHが挙げられます。水に溶けている酸素や金属も、分解を速める要因です。
水の中では、酸素や光で色づいて壊れます。
水に溶けると
水のない土台だと
- ビタミンC
- 電気を帯びた形
- 色づいたビタミンC
- 酸素
- 金属
- 粉のビタミンC
酸化したアスコルビン酸は、まずデヒドロアスコルビン酸に変わり、さらに分解が進むと2,3-ジケトグロン酸という物質になります。製品の中でこの変化が進むと、成分が失われるだけでなく、中身が黄色っぽく色づいてきます。クリームに入れたアスコルビン酸は暗い場所でも酸素で少しずつ酸化しますが、光に当たると分解がずっと速くなります。
反対に、乾いた粉の状態は比較的安定です。食品に使うアスコルビン酸カルシウムは、乾燥した状態なら室温で2年以上保管でき、水に溶かすと酸化分解が進むとされています。ただし粉でも、長く保存して湿気を吸うと茶色っぽく変色します。水を抜く工夫は、水の中で壊れやすいという弱点を避けるためのものです。
水を抜くだけで、必ず長持ちするとは限らない
水を抜けば長持ちしそう、と思いますよね。でも、水を抜くだけで、アスコルビン酸が必ず長持ちするとは限りません。安定さは、水の有無だけでなく、光や酸素、容器、処方全体で決まるからです。
細かい粉をシリコーンや油、グリコール類に散らばらせた無水の処方では、水を含む処方よりアスコルビン酸がよく残ったという結果があります。プロパンジオールとグリセリンに溶かした無水の処方を、光を避けて保存すると、色がつかず安定していたという結果もあります。
一方で、水をすべてプロピレングリコールに置き換えた液では、水の多い液より多く残ったわけではなく、アスコルビン酸が溶けにくいという結果もあります。不透明で光を通しにくいクリーム状のもののほうが、液より多く残っていました。長持ちさせるには、水を抜くことに加えて、光や酸素を避ける処方と容器が大切です。
水を含む美容液は、低いpHや容器で壊れにくくしている
水を含むビタミンC美容液も、壊れやすさへの対策をとっています。代表的なのが、pHを低く、つまり酸性を強くする方法です。
アスコルビン酸を水に入れる処方では、アスコルビン酸自身の性質から決まる4.2という値よりpHを低くする必要があるとされています。pHを3.5未満にすると安定しやすく、肌に入りやすくなるとされ、ブタの皮膚でも、アスコルビン酸はpH3.5未満でないと入らなかったという結果があります。
アスコルビン酸とビタミンEの液にフェルラ酸を加えると、ビタミンCとEの化学的な安定性が上がったという結果もあります。ほかにも、酸素を通さない容器や光を通しにくい容器、成分をカプセルに包む方法、製造中に酸素を除くこと、キレート剤と呼ばれる成分を入れることなどが挙げられています。
粉末を使う直前に化粧水などに混ぜるタイプも、水の中で壊れやすい性質を避ける工夫です。ただし、混ぜたあとの液のpHや濃さは合わせる化粧水しだいで変わり、pH3.5未満になるとは限りません。水を含む美容液は、水を抜くかわりに、pHと容器で守っていると考えるとわかりやすいです。
誘導体は、形を変えて壊れにくくした別の成分
無水の処方がアスコルビン酸を入れ物の側で水から守る方法なのに対し、ビタミンC誘導体は成分そのものを壊れにくくする方法です。誘導体は、アスコルビン酸の形を少し変えて安定性を上げた別の成分で、リン酸アスコルビルMg、アスコルビルグルコシド、3-O-エチルアスコルビン酸、油に溶けるテトラヘキシルデカン酸アスコルビルなどがあります。
市販の化粧品を調べると、アスコルビン酸を含む製品の多くで分解が進み、最大で68%が失われた製品や、中身が白から黄色に変わった製品がありました。一方、アスコルビルリン酸の仲間と3-O-エチルアスコルビン酸は安定で、3つの誘導体の中ではアスコルビルグルコシドの分解がいちばん目立ちました。
ただし、皮膚での働きでは話が逆になる面もあります。リン酸アスコルビルMgなどの誘導体を塗っても皮膚の中のビタミンCは増えなかったという結果があり、肌の酸化ストレスを、アスコルビン酸のクリームのほうが誘導体のリン酸アスコルビルNaより強く抑えたという結果もあります。安定性では誘導体、ビタミンCとしての働きではアスコルビン酸に分があります。
「無水」と書かれた製品でも、入っているのが油になじむ誘導体なら、アスコルビン酸を水から守るという無水の意味とは別の話です。誘導体の%とアスコルビン酸の%は同じものさしでは比べられないので、成分表でアスコルビン酸か誘導体かを見分けておくと、製品を比べやすくなります。
刺激の主な要因は低いpHで、効能は製品の区分で決まる
アスコルビン酸で刺激が出る主な要因は低いpHで、しみを防ぐ効能があるかどうかは、無水かどうかではなく製品の区分で決まります。
アスコルビン酸は酸性のpHのために、敏感な肌では刺激になることがあり、リン酸アスコルビルMgは刺激の少ない代わりの成分とされています。赤みやかゆみなどの刺激を感じたら使うのをやめましょう。
しみを防ぐ目的なら、医薬部外品、いわゆる薬用化粧品として承認された製品を選びます。国が認めた効能として「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ」と表示でき、この承認は製品ごとに受けるもので、無水かどうかとは関係ありません。ふつうの化粧品で言えるのは「肌を整える」「皮膚にうるおいを与える」などの範囲です。使い心地は、無水の製品はシリコーンや油、グリコール類が主体になるため、すべりのある質感になりやすい傾向があります。
黄色や茶色への変化は、酸化が進んだサインです。
色が変わったら、使うのをやめる
ふたを閉め、光と熱を避けてしまう
保管のしかたは、無水でも水を含む製品でも同じです。選ぶときは、pHと刺激、製品の区分、保管のしやすさをあわせて見ましょう。
まとめ
- 「無水ビタミンC」は決まりのない呼び名で、中身は水を含む美容液と同じアスコルビン酸です
- 成分表に「水」がなければ水を配合していない処方ですが、水分がゼロとは限りません
- アスコルビン酸は水の中でイオンの形になると壊れやすく、酸素・金属・光・熱で分解が進み黄色くなります
- 水を抜くだけでは単純に安定せず、光・酸素・容器も大切です
- 誘導体は形を変えた別の成分です。刺激の主な要因は低いpHで、しみを防ぐ効能は医薬部外品かどうかで決まります
無水かどうかはビタミンCを守る工夫のひとつです。アスコルビン酸か誘導体か、医薬部外品かどうか、保管のしやすさとあわせて選んでみてください。
よくある質問
無水ビタミンCとは何ですか?
水を配合していない処方のビタミンC製品の呼び名で、法律や業界団体が決めた言葉ではありません。入っているのは水を含む美容液と同じアスコルビン酸で、違うのは入れ物の側の処方です。
無水ビタミンCは水を含む美容液より長持ちしますか?
水を抜くとよく残ったという結果がある一方、水をグリコールに置き換えても単純には安定しなかったという結果もあります。長持ちには、水の有無だけでなく、光や酸素、容器、処方全体が関わります。
無水ビタミンCはしみに効きますか?
効能を見るなら、無水かどうかより製品の区分を見ましょう。医薬部外品として承認された製品なら「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ」と表示できます。この承認は製品ごとのもので、無水かどうかとは関係ありません。
無水かどうかはどこで見分けますか?
成分表の「水」の位置で見当がつきます。最初のほうに「水」があれば水が主な処方、どこにもなければ水を配合していない処方ですが、水分がゼロとは限りません。
無水ビタミンCは刺激が少ないですか?
刺激の主な要因は低いpHで、無水かどうかで決まるものではありません。赤みやかゆみなどの刺激を感じたら、使うのをやめましょう。
この記事で参照した情報
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- 日本化粧品工業会「化粧品等の適正広告ガイドライン 2020年版」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「ビタミン」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「美白剤」
- 厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年7月21日 薬食発0721第1号)
- 厚生労働省「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」(平成29年9月29日 薬生監麻発0929第5号)
- 日本食品化学研究振興財団「アスコルビン酸カルシウム 指定のための検討報告書」(薬事・食品衛生審議会資料、平成14年12月19日)
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