この記事でわかること
- 純粋レチノールとほかのレチノールの違い
- 働きの強さと刺激、壊れやすさの関係
- 成分表での見分け方と、日本とEUの決まり
「純粋レチノール」と書かれた化粧品を見ると、パルミチン酸レチノールなど、名前にレチノールが入るほかの成分と何が違うのか迷いますよね。
結論から言うと、純粋レチノールは形を変えていないレチノールそのもので、成分表にはただ「レチノール」と書かれます。形を変えたエステルより肌の中で働く形に近いぶん、働きは強めですが、光や熱に弱く壊れやすいのが違いです。
純粋レチノールは、形を変えていないレチノールそのもの
「純粋レチノール」は、形を変えていないレチノールそのものを指す呼び名です。国などが決めた分類名ではないので、成分表には「純粋」の文字はつきません。
レチノールは脂に溶けるビタミンAの一つで、アルコールの形をしています。ビタミンAの仲間にはレチナールやレチノイン酸もありますが、ふつう狭い意味でビタミンAと呼ぶのはこのレチノールです。「純粋」は強さの格付けではなく、形を変えていないという意味です。
レチノールは、シワの悩みに働く成分
レチノールは、シワの悩みに働く成分です。純粋レチノールは、医薬部外品の有効成分として「しわを改善する」効能が認められています。
シワには、角層が乾いてできる浅い小ジワと、紫外線や年齢によって刻まれるシワがあります。レチノールは肌の中でレチノイン酸という働く形に変わって働く成分で、刻まれたシワに対してこの効能が認められました。
ただし、レチノールが入っていればどの製品でもこの効能をうたえるわけではありません。効能は製品ごとの承認で決まり、一般の化粧品で言えるのは、決められた試験で確かめた製品の「乾燥による小ジワを目立たなくする」までです。シワが気になるなら、「医薬部外品」の表示と効能の欄を見ると、どこまで言える製品かがわかります。シワに働く有効成分は、レチノールのほかにもあります。
仲間は、働く形までの段階が多いほどおだやか
レチノールの仲間は、働く形のレチノイン酸までの段階が多いほど、働きはおだやかで刺激は少ない傾向があります。肌の中で形を1つずつ変えながら、働く形に近づくからです。
肌の中で1から4へ順に形が変わり、4に近いほど働きは強く、刺激も出やすくなります。
パルミチン酸レチノールや酢酸レチノールなどのエステルは、まずつなぎ目が外れてレチノールに戻り、レチナールを経てレチノイン酸へ進みます。研究のまとめでは、レチノールの強さはトレチノインの10〜20分の1ほどで、そのかわり赤みや皮むけはトレチノインよりかなり少ないと報告されています。
いっぽう、HPRと略されるヒドロキシピナコロンレチノアートは、レチノイン酸の側にエステルをつないだ成分で、変化を待たずに働くとされています。「誘導体だから効かない」「純粋だからよい」ではなく、働きの強さと刺激の少なさは裏表と考えるとわかりやすいです。
同じ働きに必要な濃さは、形によって大きく違う
同じ働きを起こすのに必要な濃さは、成分の形によって大きく違います。働く形までの段階が多いほど、たくさん必要になるからです。
必要な濃さは約24倍でも、重さで見るとパルミチン酸レチノール1%はレチノール約0.55%分です。
同じ働きに必要だった濃さ
パルミチン酸レチノールの中身
これは必要な濃さの比べ方で、パルミチン酸レチノールの効き目が24分の1という意味ではありません。レチノールの濃さを比べるときは、その%がどの形の%なのかを先に確かめましょう。
純粋レチノールは壊れやすく、エステルは安定している
純粋レチノールの弱点は、壊れやすさです。レチノールは光や熱、酸素に弱く、光や空気にふれると働かない形に分解されやすい成分だからです。
純粋レチノールは光・熱・酸素に弱く、エステルの形はとても安定しています。
光と空気にふれると
光と空気を断つと
EUの安全性評価でも、化粧品のレチノールは安定させる必要があるとされ、酸素をしゃ断してつくり、アルミチューブなどに入れて20℃以下で保つといった条件に触れています。市販品を保存した結果でも、ほぼすべての製品でレチノールの仲間が減り、熱より光で大きく減りました。純粋レチノールの製品は、ふたをしっかり閉め、直射日光や高温を避けて保管しましょう。
成分表では、レチノールの前につく言葉で見分ける
純粋レチノールかどうかは、パッケージのうたい文句ではなく、成分表の名前で見分けます。商品名にレチノールと入っていても、中身がどの形かは成分表を見るまでわからないからです。
「レチノール」とだけ書かれていれば、形を変えていないレチノールです。「パルミチン酸レチノール」「酢酸レチノール」「プロピオン酸レチノール」のように前に酸の名前がつけばエステル、「レチナール」は一段先の別の成分です。「ビタミンA油」は、合成したエステル型のビタミンAを植物油で薄めたものです。
医薬部外品では、呼び名が変わることもあります。昔からある薬用化粧品の有効成分の一覧には、パルミチン酸レチノールが「レチノールパルミチン酸エステル」という名前で載っていますが、これはシワに働く純粋レチノールとは別の枠組みです。迷ったら、「レチノール」の前に言葉がついているかを見れば大丈夫です。
トレチノインは医薬品の成分で、化粧品には入れられない
レチノールの仲間のうち、トレチノインは医薬品の成分なので、日本の化粧品には入れられません。厚生労働省が、トレチノインは化粧品基準でいう医薬品の成分にあたると回答しているからです。
レチノールは医薬品の成分に当たらないと判断されていて、化粧品に入れられます。化粧品基準にはレチノールの仲間の名前がなく、配合の上限も決められていません。
EUでは、レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノールをまとめてレチノールに換算し、ボディローションは0.05%、それ以外の製品は0.3%までと上限を決めています。理由は、食事やサプリと合わせたビタミンAのとりすぎを防ぐためで、効き目のちょうどよい量を決めたものではありません。レチノイン酸は、EUでも化粧品への配合が禁止されています。化粧品で選べるのは、エステル、レチノール、レチナールまでと覚えておきましょう。
妊娠中は、使う前に医師に相談する
妊娠中や妊娠を考えているときは、レチノールを使う前にかかりつけの医師に相談しましょう。ビタミンAの仲間は、とりすぎるとおなかの赤ちゃんに影響するおそれがあるからです。
薬として使うレチノイン酸は、おなかの赤ちゃんに奇形を起こすおそれがあります。食べもののビタミンAも、健康食品などでとりすぎると奇形などが起こることが知られていて、食品安全委員会は、妊娠3か月以内や妊娠の可能性がある人に、ビタミンAを多く含む食品や健康食品を続けて大量にとらないよう呼びかけています。
塗る化粧品のレチノールは、くり返し塗っても血中のレチノールの仲間ははっきり増えなかったという結果があります。それでもEUが上限を設けたのは、食事からの量が多い人では化粧品の分が加わることを考えたためです。迷ったときは、自分で決めずに相談するのが安心です。
まとめ
- 純粋レチノールは国などが決めた分類名ではなく、形を変えていないレチノールそのものの呼び名で、成分表では「レチノール」です
- 純粋レチノールは、医薬部外品の有効成分として「しわを改善する」効能が認められています
- エステルはレチノールに戻ってから働く仲間で、働きはおだやか、刺激は少ない傾向とされます
- 同じ働きに、パルミチン酸レチノールはレチノールの約24倍の濃さが必要でした。純粋レチノールは光・熱・酸素に弱く、エステルはとても安定しています
- トレチノインは医薬品の成分で、日本の化粧品には入れられません
「純粋」かどうかは強さの格付けではなく、成分の形の違いです。成分表の名前と、医薬部外品かどうかを確かめて、自分の肌が続けやすい形を選んでみてください。
よくある質問
純粋レチノールとは何ですか?
形を変えていないレチノールそのものを指す呼び名で、国などが決めた分類名ではありません。成分表では「純粋」の文字はつかず、ただ「レチノール」と書かれます。
純粋レチノールとパルミチン酸レチノールはどちらが強いですか?
働きはレチノールのほうが強めとされます。同じ働きを起こすのに必要だった濃さは、パルミチン酸レチノールがレチノールの約24倍でした。そのかわりパルミチン酸レチノールは刺激が少ない傾向とされ、とても安定しています。
純粋レチノールは壊れやすいのですか?
壊れやすい成分です。レチノールは光や熱、酸素に弱く、光や空気にふれると働かない形に分解されやすいため、ふたをしっかり閉め、直射日光や高温を避けて保管するのが安心です。
トレチノインは化粧品に入っていますか?
日本の化粧品には入れられません。厚生労働省が、トレチノインは化粧品基準でいう医薬品の成分にあたると回答しているためです。レチノールは化粧品に入れられます。
成分表で純粋レチノールかどうか見分けるには?
「レチノール」とだけ表示されていれば純粋レチノールです。「パルミチン酸レチノール」のように前に酸の名前がつけばエステルで、「レチナール」は一段先の別の成分です。
この記事で参照した情報
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「レチノール」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「レチノイン酸」
- WWDJAPAN「資生堂が『エリクシール』からシワ改善クリーム発売」(2017年4月20日)純粋レチノールの「シワを改善する」承認の報道
- Mukherjee S, et al. Retinoids in the treatment of skin aging: an overview of clinical efficacy and safety. Clin Interv Aging 2006;1(4):327-348
- Zasada M, Budzisz E. Retinoids: active molecules influencing skin structure formation in cosmetic and dermatological treatments. Postepy Dermatol Alergol 2019;36(4):392-397
- Milosheska D, Roškar R. Use of Retinoids in Topical Antiaging Treatments: A Focused Review of Clinical Evidence for Conventional and Nanoformulations. Adv Ther 2022;39:5351-5375
- Duell EA, Kang S, Voorhees JJ. Unoccluded Retinol Penetrates Human Skin In Vivo More Effectively Than Unoccluded Retinyl Palmitate or Retinoic Acid. J Invest Dermatol 1997;109(3):301-305
- Temova Rakuša Ž, Škufca P, Kristl A, Roškar R. Retinoid stability and degradation kinetics in commercial cosmetic products. J Cosmet Dermatol(doi:10.1111/jocd.13852)
- J-GLOBAL「ヒドロキシピナコロンレチノアート」
- 日本薬局方名称データベース「ビタミンA油」
- 新潟県「化粧品の効能効果の範囲について」
- 厚生労働省「化粧品に配合可能な医薬品の成分について」(平成19年5月24日 薬食審査発第524001号)
- 厚生労働省「化粧品基準における『医薬品の成分』への該当性について」(平成20年8月14日 薬食審査発第0814001号)
- 厚生労働省「化粧品基準」(平成12年厚生省告示第331号)
- 厚生労働省「いわゆる薬用化粧品中の有効成分リストについて」(平成20年12月25日 薬食審査発第1225001号)
- Commission Regulation (EU) 2024/996 of 3 April 2024(EUR-Lex)
- SCCS Opinion on Vitamin A (Retinol, Retinyl Acetate, Retinyl Palmitate) SCCS/1639/21 Final version
- 食品安全委員会 メールマガジン読み物版「妊娠時に特に注意すること その1」(平成28年1月22日)
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