この記事でわかること
- ヨーロッパで動物実験を禁じたしくみ
- 日本の決まりと、メーカーの方針の読み方
- うさぎのマークと「クルエルティフリー」の意味
「クルエルティフリー」という言葉や、うさぎのマークを見ると、本当に動物実験をしていないのか、日本では禁止されているのか気になりますよね。
結論から言うと、「クルエルティフリー」に国が決めた意味はなく、うさぎのマークは民間の団体による認証です。法律で化粧品の動物実験を禁じているのはEUで、日本の化粧品の決まりに禁止はありません。まずはEUの決まりから見ていきましょう。
EUは、動物実験を「実験」と「販売」の両方で禁じている
EUの化粧品の決まりは、動物実験を「やらない」と「売らせない」の両方で禁じています。化粧品規則の第18条が、実験の禁止と販売の禁止をどちらも定めているからです。
実験の禁止は、EUの中で、完成した化粧品や成分を動物で試験することを禁じるものです。販売の禁止は、動物実験をした完成品や、動物実験をした成分を含む化粧品を、EUで売ることを禁じるものです。
販売の禁止があるので、EUで売る化粧品はほかの国での動物実験の結果も使えません。
EUでやらない
EUで売らせない
使えない
大きな意味を持つのは、販売の禁止のほうです。EUで売るなら、EUの外で行った動物実験の結果も使えません。そのため、この決まりはEUに輸出する世界中のメーカーに関わるのです。
2013年は、残っていた3項目の販売禁止が始まった年
「2013年にEUが動物実験を全面禁止した」とよく言われますが、2013年は、残っていた3項目の販売禁止が始まった年です。実験の禁止そのものは、2004年と2009年に始まっています。
2013年は、枠で囲んだ残り3項目の販売禁止が始まった年です。
完成品
成分と販売
残り3項目
完成した化粧品の実験禁止は2004年9月11日から、成分の実験禁止は2009年3月11日からです。販売の禁止も2009年3月11日に始まりましたが、くり返し使ったときの毒性、生殖への毒性、体の中での吸収や排出の動き(トキシコキネティクス)の3項目は例外でした。動物を使わない試験法、つまり代替法がなかったためで、この3項目の販売禁止は2013年3月11日からとされました。
EUの禁止は、代替法を整えることとセットで進んできたと覚えておくと、日付の意味がわかります。
日本の化粧品基準には、動物実験の禁止も要求もない
日本の化粧品の決まりには、動物実験を禁じる決まりはありません。化粧品基準には、「動物実験」や「動物」という言葉が出てこないからです。
化粧品基準は、配合してはいけない成分や、量が制限される成分のリストと通則を定めたもので、動物実験を求めても禁じてもいません。通則にあるのは、原料は、含まれる不純物も含めて、使うことで保健衛生上の危険を生じるおそれがある物であってはならない、という原則です。
日本では、動物実験をするかどうかは決まりではなく、それぞれのメーカーの方針で決まる、ということです。そのかわり、日本には代替法を評価する国の機関があります。
日本では、動物を使わない試験法を国の機関が評価している
日本では、動物を使わない試験法を、国の研究所の中にある機関が評価しています。2005年11月、国立医薬品食品衛生研究所に、日本動物実験代替法評価センターが置かれたからです。
このセンターは、動物を使わない試験法を科学的に評価し、行政の試験法としてふさわしいものに意見書を添えて厚生労働省に伝え、公表しています。めざすのは動物実験の「3R」、つまり数を減らす・苦痛を減らす・置き換えることで、目的には「国民の安全を確保しつつ」という言葉が先に置かれています。
評価した試験法の一覧は日本語で公開されていて、肌のかぶれやすさ、肌や目への刺激、肌のただれなどの区分ごとに40件以上が並んでいます。日本で開発され、経済協力開発機構の国際的な試験の指針になった方法もあります。「テスト済み」表示とは別に、安全性を調べる試験には、こうした公的な試験法の体系があるのです。
業界でも、1991年から動物実験の代替法の開発と評価に取り組み、2022年には動物実験によらない安全性評価の方法を検討する作業部会を設けています。ただし、業界の自主基準に、動物実験に関するものは入っていません。
メーカーの方針は、例外の書き方まで読む
メーカーの動物実験の方針は、「行っていない」という一文だけでなく、例外の書き方まで読むと中身がわかります。動物実験をしないと書きながら、例外をはっきり書いている方針もあるからです。
たとえば、医薬部外品を含む化粧品の開発では、外部への委託も含めて動物を使った試験は行っておらず、今後も行う予定はない、と書いている大手メーカーの方針があります。自社でやらなくても委託すれば同じことなので、「外部委託を含めて」という書き方は大事な点です。そのうえで、社会に対して安全性の説明責任が生じた場合や、一部の国で行政から求められた場合は除く、という例外も書かれています。
化粧品以外についても、動物実験は行わない方針としつつ、適切な代替法がない場合や法律で求められた場合には避けられないこともある、としています。気になるブランドがあれば、その企業の公式サイトで方針と例外を確かめるのが確実です。
「クルエルティフリー」に公的な決まりはなく、うさぎのマークは民間の認証
「クルエルティフリー」には公的な決まりがなく、うさぎのマークは民間の認証です。うさぎのマークは、海外の動物保護団体8団体の連合がつくった基準にもとづく認証で、政府のしくみではないからです。
この認証は1996年に始まりました。きっかけは、企業が独自のうさぎのロゴをつくり、自己流の「クルエルティフリー」や「アニマルフレンドリー」を名乗るものが乱立していたことです。
基準の中心にあるのは、固定カットオフ日という考え方です。企業が決めたその日から先は、企業自身も、製造を任せた会社や原料の供給業者も、動物実験をしたり頼んだりしてはならない、という決まりです。
うさぎのマークは、基準日から先に動物実験をしていないことを確かめるしくみです。
決める
実験しない
確かめる
確かめ直す
つまり、うさぎのマークは「これまで一度も動物実験されていない」ことを保証するものではありません。そのかわり、原料の仕入れ先までさかのぼる設計で、委託先や供給業者を確かめるしくみ、独立した監査、毎年の確かめ直しが求められます。日本の国の決まりや業界の自主基準には、クルエルティフリーを認証するしくみはありません。
マークは、基準日から先の動物実験をしていないことを確かめる目印、と読みましょう。
まとめ
- EUの化粧品規則 第18条は実験の禁止と販売の禁止を定め、EUで売るなら域外の動物実験の結果も使えません
- 完成品の実験禁止は2004年、成分は2009年から。2013年は、代替法がなかった3項目の販売禁止が始まった年です
- 日本の化粧品基準に動物実験の禁止も要求もありません。かわりに国の機関が、動物を使わない試験法を評価しています
- メーカーの方針は、外部委託を含むかどうかと、例外の書き方まで読むと中身がわかります
- うさぎのマークは民間の認証で、基準日から先の動物実験をしていないことを確かめるしくみです
「クルエルティフリー」には公的な決まりがありません。気になるブランドがあれば、マークだけでなく、その企業自身の方針と例外を読むのがいちばん確実です。
よくある質問
日本では化粧品の動物実験は禁止されている?
日本の化粧品の決まりに、動物実験を禁止する決まりはありません。化粧品基準には「動物実験」という言葉が出てこず、禁止も要求もしていません。
ヨーロッパではいつから化粧品の動物実験が禁止された?
完成した化粧品の実験禁止は2004年9月11日、成分の実験禁止は2009年3月11日からです。2013年3月11日は、代替法がなかった3項目について販売禁止が始まった日です。
クルエルティフリーに決まった意味はある?
国が決めた意味はありません。企業がそれぞれ独自の意味で名乗っていたため、海外の動物保護団体の連合が認証の基準をつくりました。
うさぎのマークがあれば一度も動物実験されていない?
そうとは限りません。うさぎのマークは民間の認証で、企業が決めた基準日から先に、製造先や原料の供給先も含めて動物実験をしていないことを確かめるしくみです。
日本に動物実験を減らす取り組みはある?
あります。2005年に国の研究所に日本動物実験代替法評価センターが置かれ、動物を使わない試験法を評価しています。日本で開発され、国際的な試験の指針になったものもあります。
この記事で参照した情報
- 欧州化粧品規則 Regulation (EC) No 1223/2009 第18条(Animal testing)
- European Commission「Cosmetics: Animal testing」
- 化粧品基準(平成12年9月29日 厚生省告示第331号)
- 厚生労働省「Standards for Cosmetics」(化粧品基準 英語版)
- JaCVAM(日本動物実験代替法評価センター/国立医薬品食品衛生研究所)
- JaCVAM「目的と業務」
- JaCVAM「設立の経緯」
- JaCVAM「組織」
- JaCVAM「評価した試験法」
- JaCVAM 評価報告書「Vitrigel®-EIT法」
- JaCVAM 評価報告書「LabCyte EPI-MODEL24 皮膚刺激性試験」
- OECD「Test No. 439: In Vitro Skin Irritation: Reconstructed Human Epidermis Test Method」
- OECD Guidelines for the Testing of Chemicals, Section 4: Health Effects
- 日本化粧品工業会「動物実験代替法」
- 日本化粧品工業会「安全性とサイエンス」
- 日本化粧品工業会「自主基準・ガイドライン」
- 花王「動物実験に対する方針」
- Leaping Bunny Program
- Leaping Bunny「About Leaping Bunny」
- Leaping Bunny「Corporate Standard of Compassion for Animals」
- Cruelty Free International
- 厚生省医薬安全局長通知「化粧品規制緩和に係る薬事法施行規則の一部改正等について」(平成12年9月29日 医薬発第990号)