この記事でわかること
- 海外の化粧品に、売る前の国の承認が要るかどうか
- 国によって違う「化粧品」の範囲と、成分のリストのしくみ
- 日本と海外で使用期限の書き方が違う理由
海外のコスメを買う機会が増えると、日本の化粧品と決まりが違うのか、どの国でも同じように確かめられているのか、気になりますよね。
結論から言うと、日本・EU・アメリカのどこでも、化粧品を売り出す前に国の承認を受ける必要は原則ありません。代わりに、届け出や登録のしくみがあります。違うのは、「化粧品」の範囲や使える成分のリスト、表示のしかたです。まずは、承認がいらない共通点から見ていきましょう。
日本・EU・アメリカとも、売る前の国の承認は原則いらない
日本・EU・アメリカとも、化粧品は売り出す前の承認が原則いりません。承認の代わりに、売る側が届け出や登録をして、責任をもつしくみになっているからです。
日本で品目ごとに厚生労働大臣の承認が要るのは、医薬品や医薬部外品のほかは、厚生労働大臣が指定する成分を含む化粧品だけです。指定成分を含まない化粧品は、承認の代わりに、あらかじめ品目ごとに届け出ればよいことになっています。ただし、化粧品の製造販売を仕事として行うには、厚生労働大臣の許可を受けていることが前提です。
日本で化粧品を売り出すまでの流れです。品目ごとの国の承認はいりません。
許可を受ける
届け出る
アメリカも基本は同じで、アメリカ食品医薬品局は、化粧品の製品にも成分にも、売り出す前の承認は要らないとしています。例外は色素添加物だけで、化粧品に使う色素添加物はすべて同局の承認が必要です。ものによっては、製造のまとまりであるロットごとの認証まで求められます。
どの国でも、国が一品ずつ中身を確かめてから売っているわけではない、と覚えておきましょう。
「化粧品」の範囲は、国ごとに少しずつ違う
同じ「化粧品」という言葉なら、どの国でも同じ意味だと思いますよね。でも、「化粧品」の範囲は、国ごとに少しずつ違います。それぞれの国の法律が、自分の言葉で決めているからです。
日本では、人の体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、または皮膚や毛髪をすこやかに保つために、体に塗ったり散布したりする方法で使うことを目的としたもので、なおかつ人体への作用が緩和なものを化粧品と呼びます。「人体に対する作用が緩和なもの」という条件があるのは、日本だけです。
EUの規則は、使う部位まで書き込んでいます。表皮、毛髪、爪、唇、外性器といった体の外側や、歯と口の中の粘膜に接触させる物質や混合物で、清浄、香りづけ、見た目を変えること、保護、良い状態を保つこと、体臭を整えることのいずれかを、もっぱら、または主な目的とするものです。
アメリカでは、清浄、美化、魅力の増進、外観の変化のために、体に塗る、注ぐ、振りかける、噴霧するなどして使う物品と、その構成成分になる物品を化粧品とし、そのうえで石けんは含まないと明記しています。
海外で「化粧品」とされているものが、日本でも同じ扱いとは限らない、と範囲の違いを知っておくと、表示を読むときに迷いません。
使える成分は、禁止・制限・許可のリストで決まる
使える成分は、禁止・制限・許可の3つの考え方でできたリストで決まっています。日本の化粧品基準も、EUの規則も、同じ組み立てになっています。
日本の化粧品基準は、防腐剤、紫外線吸収剤、タール色素以外の成分については、配合を禁止するリストと配合を制限するリストで決めています。防腐剤、紫外線吸収剤、タール色素については、使ってよいものだけを並べたリストで決めています。
EUの規則では、附属書IIが禁止物質、附属書IIIが制限物質、附属書IVが着色剤、附属書Vが防腐剤、附属書VIが紫外線吸収剤です。着色剤、防腐剤、紫外線吸収剤は、リストに載ったものしか使えないという形も、日本と同じです。
防腐剤や紫外線吸収剤は、どの国でも「載っているものだけ使える」成分だと考えておけば大丈夫です。
EUで売るには、域内の責任者と届け出が必要
EUで化粧品を売るには、域内の責任者と、売り出す前のオンラインでの届け出が必要です。責任者が指定されていない化粧品は、市場に出せないからです。
責任者は、市場に出す前に、欧州委員会へ電子的に情報を提出します。窓口は、EUの化粧品規則を実施するためにつくられた無料のオンライン届出システムです。届け出る内容には、ナノマテリアルの有無や、緊急時の処置に必要な処方の枠組みまで含まれています。
もうひとつEUを特徴づけるのが、動物実験の決まりです。規則は、最終処方などが動物実験の対象となった化粧品の販売や、域内での完成品の動物実験の実施を含む4つの行為を禁じています。その期限は2009年3月11日で、一部の毒性試験については2013年3月11日です。
EUでは、売る人を決めて、売る前に届け出るのが基本です。
アメリカは2022年の法律で、登録と報告の決まりが加わった
アメリカでは、2022年12月29日に成立した化粧品規制近代化法で、施設の登録、製品のリスト、有害事象の報告、強制回収の決まりが加わりました。ただし、売り出す前の承認が不要という原則は変わっていません。
新しい決まりでは、まず製造者や加工者がアメリカ食品医薬品局に施設を登録し、2年ごとに更新します。また責任者は、市場に出す製品ごとに、成分も含めて同局にリストを出します。アメリカ国内での使用に関連する重い有害事象は、15営業日以内に報告しなければなりません。さらに、責任者が自主回収を拒んだ場合には、同局が強制回収を命じる権限をもつようになりました。
日本と比べるうえで大事なのが、日焼け止めの扱いです。同局は、日焼け防止をうたう保湿剤やメイクアップ製品を、化粧品と医薬品の両方に当たる製品としています。日本で医薬部外品として扱われる日焼け止めは、アメリカでは市販の医薬品にあたり、個別の承認申請なしに売れる点が、日本の医薬部外品とは違います。
アメリカは、承認はいらないまま、売ったあとの報告や回収を強めたと考えるとわかりやすいです。
使用期限の表示は、日本とEUで考え方が逆
海外のコスメにだけ「12M」のようなマークが付いていて、不思議に思ったことがあるかもしれません。これは、日本とEUで使用期限の表示の考え方が逆だからです。日本は「3年もてば期限を書かなくてよい」、EUは「30カ月を超えてもつなら開封後の期間を書く」という決まりです。
日本で使用期限の表示が必要な化粧品は2つだけです。ひとつは、アスコルビン酸やそのエステル、それらの塩類、または酵素を含む化粧品。もうひとつは、製造や輸入のあと適切に保存しても、3年以内に性状や品質が変わるおそれのある化粧品です。
一方EUの規則では、最短の賞味期間が30カ月を超える化粧品には期限を表示する義務がなく、その代わりに、開封後どれだけの期間安全に使えるかを表示します。これが「12M」などの開封後マークです。
EUでは、長持ちする化粧品に開封後に使える期間のマークを付けます。
超えてもつ
12カ月以内
つまり、長持ちする製品について、日本は期限の表示を求めず、EUは開封後の期間の表示に切り替えているのです。この差が、日本の製品に期限表示が少なく、EU向けの製品に開封後マークが付く理由です。
まとめ
- 日本・EU・アメリカとも、売り出す前の国の承認は原則いりません。アメリカで承認が要るのは色素添加物だけです
- 日本の定義にだけ「人体に対する作用が緩和なもの」があり、アメリカの定義は「石けんは含まない」と明記しています
- 使える成分は、禁止・制限・許可のリストで決まり、日本とEUで組み立ては似ています
- EUは域内の責任者とオンラインでの届け出が必要で、動物実験を禁じる決まりがあります。アメリカは2022年の法律で、施設の登録・製品のリスト・有害事象の報告が加わりました
- 期限の表示は、日本が「3年もてば書かなくてよい」、EUが「30カ月を超えるなら開封後の期間を書く」と、考え方が逆です
制度は違っても、「売る前に国が一品ずつ中身を確かめているわけではない」という点は共通です。そこを知っておくだけでも、海外のコスメのパッケージの読み方が変わります。
よくある質問
海外の化粧品は国が承認してから売られている?
いいえ。日本・欧州・アメリカとも、化粧品を売り出す前の国の承認は原則いりません。代わりに届け出や登録のしくみがあります。
「化粧品」の範囲は国ごとに違う?
違います。日本の決まりにだけ「人体に対する作用が緩和なもの」という条件があり、アメリカは石けんを含まないと明記しています。
アメリカで承認が必要な化粧品の成分はある?
化粧品に使う色素添加物だけは、アメリカ食品医薬品局の承認が必要です。ものによっては製造のまとまりごとの認証も求められます。
海外の化粧品に開封後の期間のマークが付いているのはなぜ?
欧州では、30カ月を超えて長持ちする化粧品に、開封後に使える期間を表示する決まりだからです。日本は反対に、3年もつなら期限を書かなくてよい決まりです。
日焼け止めは海外でも医薬部外品?
アメリカでは、日焼け止めは市販の医薬品の扱いです。日本では医薬部外品として扱われます。
この記事で参照した情報
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「化粧品」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「化粧品基準」
- Regulation (EC) No 1223/2009 of the European Parliament and of the Council of 30 November 2009 on cosmetic products (recast)
- European Commission「Cosmetic Product Notification Portal (CPNP)」
- 21 U.S. Code §321 (Federal Food, Drug, and Cosmetic Act, Section 201)
- U.S. Food and Drug Administration「FDA Authority Over Cosmetics: How Cosmetics Are Not FDA-Approved, but Are FDA-Regulated」
- U.S. Food and Drug Administration「Modernization of Cosmetics Regulation Act of 2022 (MoCRA)」
- U.S. Food and Drug Administration「Color Additives and Cosmetics: Fact Sheet」
- U.S. Food and Drug Administration「Is It a Cosmetic, a Drug, or Both? (Or Is It Soap?)」
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)
- 厚生労働省「化粧品基準」(平成12年9月29日 厚生省告示第331号)
- 厚生省告示第166号(薬事法第61条第5号の規定により使用の期限を記載しなければならない化粧品の指定)