この記事でわかること
- 化粧品の広告が回りくどくなる理由と、ルールがSNSの投稿にもかかる理由
- 体験談・ステマ・「No.1」表示のルール
- 実際に注意された広告の表現
コスメの紹介文で「〜に見せる」「〜を防ぐ」のような回りくどい言い回しを見ると、本当に効くのか、なぜはっきり言わないのか気になりますよね。
結論から言うと、化粧品で言ってよい効き目の範囲が決まっていて、大げさな広告は誰がしても禁止だからです。SNSの投稿も対象で、口コミや体験談は効き目の証拠になりません。回りくどさは、決まりを守って書いた結果なのです。まずは、ルールが誰にかかるのかから見ていきましょう。
広告のルールは、メーカーだけでなく誰にでもかかる
化粧品の大げさな広告の禁止は、メーカーだけでなく、メディアや個人の投稿者にもかかります。根拠になる薬機法第66条第1項の主語が「何人も」で、限定がないからです。
この条文は、医薬品や医薬部外品、化粧品などの名称、製造方法、効能、効果、性能について、はっきり言うか遠回しに言うかを問わず、うそや大げさな記事を広告したり、書いたり、広めたりしてはならないと定めています。国民生活センターも、新聞社やテレビ局、サイトの運営者なども違反になる可能性があるとしています。
違反には罰則があり、第85条によって2年以下の拘禁刑か200万円以下の罰金、またはその両方が科されます。課徴金の規定もあり、第66条第1項の違反については対価の合計額の4.5%と条文に書かれています。さらに第66条第2項は、医師などがその効果を保証したと誤解されるおそれのある記事を広告したり広めたりすることも、第1項の違反に当たると定めています。
つまり、化粧品の効き目を大げさに伝えることは、立場に関係なく禁止されているのです。
SNSの投稿も、広告の基準の対象に入る
SNSの投稿なら自由に書いていいと思いますよね。でも、具体的なルールをまとめた医薬品等適正広告基準は、SNSも対象の媒体に入れています。この基準は、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、ウェブサイト、そしてソーシャル・ネットワーキング・サービスなど、すべての媒体の広告を対象にしているからです。
化粧品で言える効き目の範囲も、この基準で決まります。承認のいらない化粧品の効能の表現は、通知「化粧品の効能の範囲の改正について」で定めた範囲をこえてはならないとされ、効能56項目がそのまま広告の上限になります。
推薦についての規定もあります。医薬関係者や病院、薬局、学校、学会などの団体が指定したり、公認したり、推薦したりしているといった広告は禁じられていて、その中に理容師と美容師も名指しで挙げられています。たとえば「美容師も愛用」という訴求は、この規定に触れることになります。
「SNSだから対象外」という理解は誤りだと覚えておきましょう。
体験談やビフォーアフター写真は、効き目の証拠にならない
口コミや体験談は、効き目や安全性の客観的な裏づけにはなりません。広告の基準は、具体的な効能や安全性を示して、それが確実だと保証するような表現を禁じているからです。
解説の通知には、愛用者の感謝状や感謝の言葉を例に挙げることや、「私も使っています。」のような使用経験・体験談の広告が具体例として挙がっています。タレントか本人か他人かを問わず、こうした体験談は客観的な裏づけになり得ないとされています。
写真にも決まりがあります。使用前か後かに関係なく、図や写真で承認の範囲をこえる効能を思わせる表現は認められません。使用前後の比較に使う写真は、同じ条件で撮影し、作為的な操作を加えていないものでなければならないので、照明や角度を変えた比較写真は認められません。安全性についても、「安全性は確認済み」「副作用の心配はない」といった表現は認められていません。
体験談や比較写真を見たら、その人の感想や、条件つきの写真として受けとめるのが安心です。
「日やけによる」のような条件は、省略できない
化粧品の効能には、しばり表現と呼ばれる条件の部分があり、省略できません。条件を省くと、言ってよい範囲をこえて読めてしまうからです。
たとえば37番目の効能「日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ。」では、「日やけによる」がしばりにあたります。しみは、紫外線を浴びるとメラニンが作られ、まわりの細胞に渡されてたまってできます。この効能は、流れの入り口の日やけで起きるしみを、できる前に防ぐという意味です。
「日やけによる」は、枠で囲んだ流れの入り口で起きるしみに限る、という条件です。
する
できる
渡される
しみになる
しばり表現のある効能は、しばりを省かずに書き添えるか言い添え、しかも、しばりの部分とそれ以外の部分が同じくらいの広告効果を持つ方法で示す決まりです。つまり、「日やけによる」だけを極端に小さい文字にするのはだめということです。
56番目の効能「乾燥による小ジワを目立たなくする。」には、さらに条件があります。日本香粧品学会の『化粧品機能評価法ガイドライン』に基づく試験か、それと同等以上の適切な試験で効果を確かめることが必要です。製品には「※効能評価試験済み」と書くこととされ、大きな活字にしたり色を変えたりして強調してはならないとも定められています。
いっぽうで、「化粧くずれを防ぐ」「小じわを目立たなく見せる」「みずみずしい肌に見せる」といったメーキャップ効果は、事実に反しない限り認められています。「〜に見せる」という言い回しが多いのは、このためです。条件や「見せる」がついた言い回しは、決まりどおりに書いたしるしだと読みましょう。
ステマ規制で責任を問われるのは、広告主
ステマ規制と聞くと、投稿した人が罰せられると思いますよね。でも、ステマ規制で責任を問われるのは、表示の内容を決めることに関わった広告主です。規制のもとになる告示が、会社が自分の商品の取引について行う表示を対象にしているからです。
ステマ規制は2023年10月1日に始まりました。根拠は景品表示法第5条第3号にもとづく内閣府告示第19号で、告示の本文は、会社が自分の商品やサービスの取引について行う表示のうち、それが広告だと消費者が見分けにくいもの、という実質この一文だけです。消費者庁のQ&Aでも、インフルエンサーやアフィリエイターは規制の対象外と明記されています。
ステマ規制がかかるのは、投稿を頼んで内容を決めた広告主です。
無料で渡す
指示する
明かさない
措置命令
実際に適用された例もあります。ある製薬会社は、モニター募集サイトを通じて第三者に商品を無償で渡し、会社が指示する方針に沿ってSNSに投稿するよう頼んでいましたが、それが会社から依頼された投稿であることを明らかにしていなかったため、2025年3月25日に措置命令が出されました。
反対に、投稿の内容について指示がなく、割引程度の対価しかない自主的な口コミは、会社が表示内容の決定に関わっているとはいえないので、告示には違反しないとされています。広告であることは、「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」以外の言葉で示すことも禁じられていません。化粧品業界の公正競争規約にも、同じ趣旨の条項が第10条第10号に入っています。
ただし、大げさな効き目の表現は、投稿者でも薬機法で禁止なのは変わりません。
「No.1」の表示には、3つのルールがかかる
「売上No.1」「満足度98%」のような表示には、薬機法・景品表示法・公正競争規約の3つのルールが重なっています。1番だと言い切る表現は、実際よりよいものだと誤解させやすいからです。
まず薬機法では、解説の通知が最大級の表現の例として「売上げNo.1」を挙げています。次に景品表示法では、消費者庁の調査報告書が、合理的な根拠の要件として、比べる商品が適切に選ばれていること、調査の対象者が適切に選ばれていること、調査が公平な方法で行われていること、表示の内容と調査結果がきちんと対応していることの4つを示しています。3つめの公正競争規約は、第10条第4号で、品質や効能、安全性について、最大級や完全を意味する表現で実際より著しくよいものだと誤解させるおそれのある表示を禁じています。
報告書で問題視されているのがイメージ調査です。回答者にウェブサイトを見せて、見たときの印象で質問に答えさせる調査で、回答者は使ったことがあるかどうかを問わずに集められます。つまり、使ったことがない人の印象で「満足度No.1」になっている場合があるのです。
「No.1」を見たら、何の調査で、誰に聞いた1位なのかを確かめてみましょう。
しみがすぐなくなるとうたう広告は、実際に注意された
しみが短い期間でなくなるとうたう広告は、実際に消費者庁から注意喚起を受けています。化粧品で言える効き目の範囲を大きくこえ、うその体験談も使われていたからです。
消費者庁は2021年3月1日、化粧品と医薬部外品について注意喚起を行いました。問題とされたのは、「使ったら3日で消えました」「一週間もたたずに激変しました」「シミが消えますね。レーザーを超えていると思います」といった表現です。消費者庁は、これらの商品に肌のしみを短期間で確実になくす効果はなかったとし、体験談も、アフィリエイターが画像や文章を編集して実在の消費者の体験談のように見せかけた架空のものだったとしています。これは景品表示法の措置命令ではなく、消費者安全法第38条第1項にもとづく注意喚起です。
化粧品の広告で「すぐ」「確実に」「なくなる」と言い切るものは、ルールをこえていると考えてよいでしょう。
まとめ
- 薬機法第66条は「何人も」が対象で、メディアや投稿者も含まれます。適正広告基準はSNSも対象にしています
- 体験談・感謝の言葉・「私も使っています」は客観的な裏づけになりません。比較写真は同じ条件で撮ることが条件です
- 「日やけによる」のような条件は省略できず、同じくらいの広告効果で示します。56番目の効能には効能評価試験が必要です
- ステマ規制の対象は広告主で、インフルエンサーは対象外です
- 「No.1」は薬機法・景品表示法・公正競争規約の3つで規制され、使ったことのない人へのイメージ調査が問題視されています
言い回しが回りくどいのは、書き手が不親切だからではなく、書ける範囲が決まっているからです。広告を見るときは、条件の部分まで読んでみてください。
よくある質問
化粧品の広告が回りくどいのはなぜ?
化粧品で言ってよい効き目の範囲が、効能56項目として決まっているからです。この範囲がそのまま広告の上限になり、「日やけによる」のような条件の部分も省略できません。
個人の口コミ投稿も広告規制の対象?
はい、大げさな広告の禁止は「何人も」が対象で、メーカーだけでなくメディアや個人の投稿者も含まれます。広告の基準でも、ソーシャル・ネットワーキング・サービスが対象の媒体に入っています。
ステマ規制でインフルエンサーは罰せられる?
ステマ規制で責任を問われるのは、表示内容の決定に関与した広告主です。インフルエンサーやアフィリエイターは規制の対象外です。ただし大げさな効き目の表現は、誰がしても薬機法で禁止です。
体験談やビフォーアフター写真は効果の証拠になる?
体験談は、効き目や安全性の客観的な裏づけにはなりません。使用前後の比較写真は、同じ条件で撮影され、作為的な操作がないことが条件です。
「満足度1位」の表示は信用できる?
合理的な根拠が必要な表示で、3つのルールがかかっています。使ったことがない人にサイトの印象だけで答えさせる調査が問題視されているので、何の調査で誰に聞いた1位なのかを確かめましょう。
この記事で参照した情報
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)
- 厚生労働省「医薬品等適正広告基準」(平成29年9月29日 薬生発0929第4号)
- 厚生労働省「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」(平成29年9月29日 薬生監麻発0929第5号)
- 厚生労働省医薬食品局長通知「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年7月21日 薬食発0721第1号)
- 不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)
- 内閣府告示第19号「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」(令和5年3月28日)
- 消費者庁長官決定「『一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示』の運用基準」(令和5年3月28日)
- 消費者庁「ステルスマーケティングに関するQ&A」
- 消費者庁「No.1表示に関する実態調査報告書」(令和6年9月26日)
- 同 公表文
- 消費者庁「アフィリエイト広告に関する注意喚起」(令和3年3月1日、消費者安全法第38条第1項に基づく)
- 消費者庁「ロート製薬株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について」(令和7年3月25日)
- 消費者庁「医療法人社団祐真会に対する景品表示法に基づく措置命令について」(令和6年6月6日)
- 日本化粧品工業(連合)会「化粧品等の適正広告ガイドライン2020年版」
- 化粧品公正取引協議会「化粧品の表示に関する公正競争規約」第10条
- 国民生活センター『国民生活』2025年9月号 誌上法学講座「薬機法の広告規制(1)」(赤羽根秀宜)
- 国民生活センター『国民生活』2023年9月号 特集「ステマ規制を学ぶ」(消費者庁表示対策課)