この記事でわかること
- 基底膜は、表皮と真皮を分けながらつなぐ
- 透明帯と基底板の2層と、3つのつなぎ具
- 細胞が増えるか育つかを分ける場所
表皮と真皮は2つの層だと聞くけれど、その境目はどうやってくっついているのだろう、と思いますよね。
結論から言うと、基底膜は、表皮と真皮の境目にあるとても薄い膜で、2つの層をしっかり結びつけながら、それぞれを仕切っています。中は2つの層に分かれていて、細胞と膜、膜と真皮を、何種類ものつなぎ具が留めています。まずは、基底膜が皮膚のどこにあるのかから見ていきましょう。
基底膜は、表皮と真皮の境目にあるとても薄い膜
基底膜は、表皮のいちばん下の基底層と、その下の真皮とのあいだにある、とても薄い膜です。生まれの違う2つの組織をつなぎながら、それぞれの性質が混ざらないように分けておく役目があるからです。
表皮と真皮の境目は波の形で、その境目にそって基底膜がのびています。
基底膜は皮膚だけのものではなく、体のあらゆる組織にある膜です。皮膚では、表皮と真皮の働きを分けつつ強く結びつけ、2つの層のあいだのやりとりも調節しています。表皮の基底層には、基底膜の上に基底細胞(表皮の細胞を生み出す細胞)が1列に並んでいます。
基底膜は、表皮と真皮を「分けながらつなぐ」境目の膜です。
境目は波の形で、表皮と真皮がかみ合っている
表皮と真皮の境目は平らではなく、波の形をしていて、2つの層がたがいに入りこんでかみ合っています。表皮が下へ突き出した部分と、真皮が上へ突き出した部分が、交互に並んでいるからです。
表皮が下へ突き出した部分を表皮突起、そのあいだに上へ入りこむ真皮の部分を真皮乳頭と呼びます。真皮乳頭が集まった真皮のいちばん上の層は乳頭層といい、線維はまばらで、毛細血管や感覚を伝える神経の先、細胞がたくさん集まっています。
基底膜は、この波の形にそってのびています。境目は、表皮と真皮が波の形でかみ合った、でこぼこの面です。
基底膜は、透明帯と基底板の2層でできている
基底膜は、上の透明帯と、下の基底板という2つの層でできています。電子顕微鏡で見ると、基底細胞のすぐ下に明るく見える層と、その下に濃く見える層が重なっているからです。
基底細胞から真皮のコラーゲン線維まで、つなぎ具がとぎれずにつながっています。
上の透明帯は、基底細胞の膜と基底板のあいだにある層で、ラミニン332(細胞と膜をつなぐたんぱく質。ラミニン5とも呼ばれます)、フィブロネクチン、ヘパラン硫酸などをふくみます。下の基底板は厚さ60〜80ナノメートルで、Ⅳ型コラーゲンやラミニン332などでできた網目の構造です。これらは基底細胞がつくっています。
基底膜には、パールカンというプロテオグリカンもあります。パールカンはラミニンと結びつき、その糖の鎖はⅣ型コラーゲンと結びついて、膜の形をつくっています。基底膜は、2つの層が重なってできた、網目のシートです。
3つのつなぎ具が、細胞と膜と真皮を1本につなぐ
基底膜では、ヘミデスモソーム、アンカリングフィラメント、係留線維の3つのつなぎ具が、基底細胞から真皮までを1本につないでいます。上から順につながることで、表皮を真皮にしっかり固定しているからです。
1つめのヘミデスモソームは、基底細胞の下の面にある接着の装置です。細胞の中の骨組みであるケラチン線維が、ここに集まって結びついています。2つめのアンカリングフィラメントは、ヘミデスモソームから透明帯を通って基底板へのびる細い線維で、主な成分はラミニン332です。ヘミデスモソームにある17型コラーゲンという長い分子も、透明帯をつらぬいて基底板とじかにつながっています。
3つめの係留線維は、アンカリング線維とも呼ばれ、Ⅶ型コラーゲンでできています。基底板の下にフックのような形でたれ下がり、真皮のⅠ型やⅢ型のコラーゲン線維を引っかけて、基底板と真皮を強く結びつけています。
これらがひと続きになったまとまりをアンカリング複合体と呼び、外から加わる力に対する皮膚の強さを支えています。表皮は、細胞の中の線維から真皮のコラーゲンまで、とぎれずにつながって固定されているのです。
基底膜は、細胞が増えるか育つかを決める場所でもある
基底膜は、表皮の細胞が増えるか、育って角層へ向かうかを分ける場所でもあります。基底膜にくっついている基底細胞だけが増える力をもち、基底膜から離れると、角層へ向かって育ちはじめるからです。
基底膜から離れた細胞は、有棘層、顆粒層をへて角層へと変わっていきます。この変化の流れが角化です。表皮の4つの層のならびは、表皮の4層の記事で解説しています。
基底膜は、ほかにも、ケラチノサイトがつくる酵素の量を調節したり、細胞を増やす合図になる物質と結びついて、その働きを調節したりしています。真皮の構造を保つことにも関わっています。基底膜は、表皮の細胞の「増える」と「育つ」を切りかえる場所です。
基底膜は、こわされてはつくり直されている
基底膜は、一度できたら終わりではなく、ふだんからこわされてはつくり直されています。紫外線などで傷つきやすい一方で、たえず元どおりに組み立て直されているからです。
こわす側では、マトリックスメタロプロテアーゼ9やプラスミンといった、たんぱく質を切る酵素が基底膜を分解します。つくる側では、ラミニン332そのものや、その産生をうながす細胞を増やす合図の物質が働きます。年齢を重ねると、このつくり直す力は弱まっていきます。
基底膜の材料のうち、Ⅳ型コラーゲンやラミニン332は表皮の基底細胞がつくっています。真皮の線維芽細胞も、真皮や基底膜にふくまれるコラーゲンなどをつくっています。基底膜は、表皮と真皮の両方の細胞に支えられて保たれている膜です。
まとめ
- 基底膜は、表皮の基底層と真皮のあいだにあるとても薄い膜で、2つの層を分けながらつないでいます
- 表皮と真皮の境目は波の形で、表皮突起と真皮乳頭がかみ合っています
- 基底膜は上の透明帯と、厚さ60〜80ナノメートルの基底板の2層でできています
- ヘミデスモソーム・アンカリングフィラメント・係留線維が、基底細胞から真皮のコラーゲン線維までをつないでいます
- 基底膜にくっついた基底細胞だけが増え、離れると角化が始まります。膜はふだんからつくり直されています
表皮と真皮の境目は、ただの線ではなく、何種類ものつなぎ具が集まった、とても細かい構造です。基底膜を知ると、表皮の細胞がどこから生まれ、どうやって体につなぎとめられているのかが見えてきます。
よくある質問
基底膜はどこにある?
表皮の基底層と真皮のあいだにあります。表皮と真皮の境目は波の形をしていて、基底膜はその境目にそってのびています。
基底膜の厚さはどのくらい?
下の層の基底板で、厚さ60〜80ナノメートルです。基底膜は、その上の透明帯と基底板の2層が重なってできています。
基底膜は何でできている?
Ⅳ型コラーゲンやラミニンなどでできています。ほかに、フィブロネクチンやヘパラン硫酸、パールカンというプロテオグリカンもふくまれます。
基底膜と基底層の違いは?
基底層は細胞の層、基底膜は細胞の下の膜です。基底層は表皮のいちばん下で基底細胞が1列に並んだ層で、基底膜はその下で表皮と真皮を仕切っています。
表皮はどうやって真皮にくっついている?
3つのつなぎ具が、ひと続きにつないでいます。基底細胞のヘミデスモソーム、透明帯を通るアンカリングフィラメント、真皮のコラーゲン線維を引っかける係留線維の順につながっています。