この記事でわかること
- 角化は、細胞が角層になるまでの変化
- ケラチンは育つにつれて種類が入れかわる
- 核が消え、丈夫な膜をまとって角層に
「角化」と聞くと、肌が硬くなることのように思えて、何が起きているのかピンとこないですよね。
結論から言うと、角化は、表皮のケラチノサイトが基底層で生まれてから、形と中身を変えながら角層細胞になり、はがれ落ちるまでの一連の変化です。その途中で、細胞の中の骨組みであるケラチンが組みかわり、角層の守りとうるおいのしくみがつくられます。まずは、細胞の形がどう変わっていくのかから見ていきましょう。
角化は、ケラチノサイトが角層細胞へ姿を変えていく変化
角化は、基底細胞が有棘細胞、顆粒細胞をへて角層細胞へと変わり、最後に垢となってはがれ落ちるまでの流れです。表皮の細胞は下の層で生まれ、上へ押し上げられながら、層ごとに形と中身を変えていくからです。
細胞は平たくなっていき、最後は核のない、ケラチンのつまった板になります。
角化の主役はケラチノサイト(表皮の細胞の大部分を占める、角化していく細胞)で、表皮をつくる細胞の約95%にあたります。角化の途中で、角層の守りの働きと、水分を保つ働きをになう構造がつくられます。
角化は、1つの細胞が、角層の守りをつくりながら一生を終えるまでの道のりです。
基底層から角層まで約4週間、角層で約2週間すごす
ケラチノサイトは、基底層で生まれてから約4週間で核のない角層細胞になり、さらに約2週間、角層にとどまってからはがれ落ちます。角化は、ゆっくり時間をかけて進む変化だからです。
帯の長さは日数に比例しています。
はじまりの基底細胞は、約2週間に1回分裂して新しい細胞を生み出しています。基底細胞が分裂してから表皮の表面ではがれ落ちるまでを約45日とする教科書もあり、この入れかわりの全体をターンオーバーと呼びます。
角化は、約4週間と約2週間の2つの段階をかけて進む、細胞の旅です。
ケラチンは細胞の骨組みで、育つにつれて種類が入れかわる
ケラチンは、ケラチノサイトの中にはりめぐらされた骨組みのたんぱく質で、細胞が育つにつれて種類が入れかわります。ケラチンは2種類が組になって線維をつくり、その組み合わせが層によって決まっているからです。
ケラチンには、酸性のタイプⅠと、中性から塩基性のタイプⅡがあり、線維をつくるには両方が必要です。種類は約20種類が知られていて、組になったケラチンは、太さ約10ナノメートルの中間径線維(細胞の形を保つ、中くらいの太さの線維)になります。
基底細胞ではケラチン5と14が組になり、有棘層より上の育った細胞ではケラチン1と10が組になります。この入れかわりは、細胞がどこまで育ったかを見分ける目印にもなっています。
ケラチン線維は、細胞どうしをつなぐデスモソームや、細胞を基底膜につなぐヘミデスモソームに結びついて、細胞の形を保つ骨組みをつくっています。皮膚のケラチンはやわらかい軟ケラチンで、毛や爪には硬ケラチンがあります。ケラチンは、角化の進み具合に合わせて組みかわる、細胞の骨組みです。
顆粒層では、フィラグリンがケラチンを束ねる準備をする
顆粒層では、ケラチンを束ねるためのフィラグリンが、粒の形でたくわえられます。フィラグリンのもとになる大きなたんぱく質が、ケラトヒアリン顆粒という粒になって細胞の中にたまるからです。
もとになるプロフィラグリンは、分子の重さが約40万の大きなたんぱく質で、フィラグリンが10〜12個つながった形をしています。顆粒細胞が角層細胞へ移るとき、プロフィラグリンは切り分けられて、1つずつのフィラグリンになります。
フィラグリンの名前は「線維を集めるたんぱく質」という意味の英語からきていて、その名のとおり、角層細胞の中でケラチン線維を束ねてぎっしりつまった形にします。役目を終えたフィラグリンは、角層の上のほうへ移るあいだにアミノ酸まで分解され、角層の水を抱える天然保湿因子のもとになります。
顆粒層は、ケラチンを束ねる材料と、うるおいの材料を、同時に仕込む層です。
角層細胞になるとき、核が消えて丈夫な膜をまとう
顆粒細胞から角層細胞に変わるとき、細胞は核を失い、そのかわりに丈夫な膜をまといます。細胞の膜のすぐ内側に、たんぱく質どうしをしっかりつないだ裏打ちの膜ができるからです。
この膜はコーニファイドエンベロープと呼ばれ、厚さ約10ナノメートルの、水にとけない膜です。インボルクリンやロリクリンといったたんぱく質が、トランスグルタミナーゼ(たんぱく質どうしをつなぐ酵素)でつなぎ合わされてできます。膜の外側には脂がくっついていて、まわりの脂がきれいに並ぶ土台になると考えられています。
同じころ、顆粒層では直径約300ナノメートルの層板顆粒が、脂を細胞のすき間に送り出します。この脂が層になって並んだものが角層の細胞間脂質で、その約50%がセラミド、約30%がコレステロールです。くわしくは角層の記事で解説しています。角層細胞は、核のかわりに、ケラチンのつまった中身と丈夫な膜を手に入れた細胞です。
最後は、細胞どうしのつなぎ目がほどけてはがれ落ちる
角化の最後は、角層細胞どうしのつなぎ目が酵素でほどかれ、いちばん外側の細胞から垢としてはがれ落ちることです。角層の細胞どうしをつなぐ留め具が、酵素で分解されるからです。
角層細胞どうしは、コルネオデスモソーム(角層細胞をつなぐ留め具)でつながっていて、デスモグレイン1やコルネオデスモシンといったたんぱく質がここに関わっています。この留め具を分解するのが、カリクレイン5・7・14などのたんぱく質を切る酵素です。
こうして古い細胞がはがれ、下から新しい細胞が押し上げられて入れかわります。角化は、生まれる、育つ、守る、はがれるまでがひと続きになった流れです。
まとめ
- 角化は、ケラチノサイトが基底細胞・有棘細胞・顆粒細胞・角層細胞と姿を変え、垢としてはがれ落ちるまでの変化です
- 基底層から角層細胞になるまで約4週間、角層にとどまるのが約2週間です
- 骨組みのケラチンは2種類で組をつくり、基底細胞ではケラチン5と14、育った細胞ではケラチン1と10になります
- 顆粒層でたくわえられたフィラグリンがケラチンを束ね、のちに分解されて天然保湿因子のもとになります
- 角層細胞は核を失い、厚さ約10ナノメートルのコーニファイドエンベロープをまとい、最後は留め具がほどけてはがれ落ちます
角層は、置いてあるだけの死んだ細胞の層ではなく、約4週間かけて仕上げられた細胞が並んだ層です。角化の流れを知ると、角層の守りとうるおいが、どこでどう準備されてきたのかがつながって見えてきます。
よくある質問
角化とは何ですか?
表皮の細胞が角層細胞になるまでの変化です。基底細胞が有棘細胞、顆粒細胞をへて角層細胞へと変わり、最後に垢としてはがれ落ちるまでの流れをまとめて角化と呼びます。
角化にはどのくらい時間がかかる?
角層細胞になるまで約4週間かかります。その後さらに約2週間角層にとどまってからはがれ落ちます。分裂してからはがれ落ちるまでを約45日とする教科書もあります。
ケラチンとケラチノサイトの違いは?
ケラチンはたんぱく質、ケラチノサイトは細胞です。ケラチノサイトは表皮の細胞の約95%を占める細胞で、その中に骨組みとしてはりめぐらされているのがケラチンです。
角層細胞に核がないのはなぜ?
顆粒細胞から角層細胞に変わるときに核を失うからです。かわりに、ケラチンがぎっしりつまった中身と、コーニファイドエンベロープという丈夫な膜をもつようになります。
フィラグリンは何をしている?
角層細胞の中でケラチン線維を束ねています。役目を終えると、角層の上のほうへ移るあいだにアミノ酸まで分解され、天然保湿因子のもとになります。