この記事でわかること
- 基質は、真皮のすき間を満たすゼリー
- ヒアルロン酸などの糖の鎖が水を抱える
- プロテオグリカンと糖タンパク質の役目
真皮はコラーゲンでできていると聞くけれど、線維と線維のあいだには何があるのだろう、と思いますよね。
結論から言うと、真皮の基質は、線維と細胞のすき間を満たしている、水をたっぷり抱えたゼリー状の物質です。主な中身はプロテオグリカンと糖タンパク質で、その中で水を抱える長い糖の鎖の代表がヒアルロン酸です。まずは、基質が真皮のどこにあるのかから見ていきましょう。
基質は、線維と細胞のすき間を満たすゼリー状の物質
基質は、真皮の線維と細胞のあいだを埋めている、形の決まっていないゼリー状の物質です。真皮は、細胞、線維、基質の3つでできていて、線維と細胞以外の部分をすべて満たしているのが基質だからです。
青い部分が基質で、線維と細胞のまわりのすき間をすべて満たしています。
基質は細胞外マトリックス(細胞の外にある、網目やゲルの形をした物質の集まり)とも呼ばれます。主な中身はプロテオグリカンと糖タンパク質で、血液やリンパ液からしみ出した組織液も基質に含まれます。組織液は、細胞が働くのに必要な物を運び、いらなくなった物を運び去る通り道です。真皮の線維は、この水っぽいゼリーの中に埋まっています。
基質は、真皮の線維と細胞をまるごと包みこんでいる水の多いゼリーと考えるとわかりやすいです。
基質の正体は、水を抱える長い糖の鎖
基質が水を抱えられるのは、グリコサミノグリカンという長い糖の鎖が主役だからです。この鎖は水になじみやすく、重さのわりにとても大きな場所を占めるので、少しの量でもゲルになります。
グリコサミノグリカン(2つの糖が組みになって長くつながった鎖)は、枝分かれせずに同じ組み合わせがくり返しつながった多糖で、酸性ムコ多糖とも呼ばれます。体の中には6種類あり、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ケラタン硫酸です。
たんぱく質のように折りたたまれず、まっすぐ伸びた形になりやすいのも特徴です。そのため鎖のまわりにたくさんの水を引き寄せ、組織の水分を保ち、やわらかさを保ちます。体の中の物質がしみわたる通り道になったり、細胞が移動するのを助けたりもしています。真皮に多いのはヒアルロン酸とデルマタン硫酸です。
基質の水分と弾力は、伸びた糖の鎖が水を抱えることで生まれているのです。
ヒアルロン酸は、真皮で水を抱えるクッション
ヒアルロン酸は、真皮の線維の網目のすき間で水を抱え、クッションのように網目をやわらかく保っています。とても水を抱える力が強く、1グラムで約6リットルの水を保てるとされるからです。
ヒアルロン酸は、真皮の線維芽細胞(真皮で線維や基質をつくる細胞)がつくっています。体の中にあるヒアルロン酸の半分は皮膚にあり、表皮のケラチノサイトのあいだにも、小さめのヒアルロン酸があります。生理的な老化につれて、皮膚のヒアルロン酸の量は減っていきます。
棒の長さは時間に比例しています。
ヒアルロン酸は一度つくられたらずっと残るのではなく、つくられては分解される、入れかわりのとても速い物質です。表皮のものはその場で分解され、分解にはヒアルロニダーゼ(ヒアルロン酸を切る酵素)などが働きます。真皮のヒアルロン酸は、毎日つくり直されながら水を抱え続けているクッションです。
プロテオグリカンは、たんぱく質に糖の鎖がたくさんついた巨大な分子
プロテオグリカンは、芯になるたんぱく質に、グリコサミノグリカンの鎖がたくさん結びついた巨大な分子です。糖の鎖の部分が水を抱えてかさを増し、芯のたんぱく質の部分が分子を決まった場所に並べるので、ねばりと弾力が生まれます。
ヒアルロン酸の鎖に、ブラシのような分子が何本もつながります。
分子の重さは、数字で表すと10万〜100万以上にもなります。種類によって役目が分かれていて、図のようにヒアルロン酸とつながって巨大な集まりをつくるバーシカンは、皮膚では線維芽細胞などがつくっています。デコリンは、コラーゲン線維の太さを調節すると考えられているプロテオグリカンです。
ほかに、表皮と真皮の境目の基底膜をつくるパールカンや、細胞の表面にあって細胞どうしの接着や増える合図に関わるシンデカンもあります。プロテオグリカンは、水を抱えながら、線維や膜の形づくりにも関わる分子です。
糖タンパク質は、線維と細胞をつなぎとめる
基質のもう1つの主な中身である糖タンパク質は、線維と細胞をつなぎとめる役目をもっています。コラーゲンやエラスチンと結びついて線維を安定させ、細胞の表面とも結びつくからです。
糖タンパク質は、糖を2〜15%ふくむたんぱく質で、分子の重さは15万〜25万です。水を保つ働きもあり、皮膚のやわらかさに関わっています。プロテオグリカンにくらべると、糖の割合はずっと少なめです。
代表がフィブロネクチンです。コラーゲンやヘパリン、血液を固めるフィブリン、細胞の表面にあるインテグリン(細胞が外の物質をつかむための受け手)とそれぞれ結びつく部分をもち、細胞が増える、育つ、傷がふさがるといった場面に関わっています。糖タンパク質は、基質の中で線維と細胞をつなぐ留め具です。
基質は、線維芽細胞がつくり、線維と組んで真皮の形を保つ
基質は線維芽細胞がつくり、線維と組み合わさって、真皮のやわらかさと形を保っています。ヒアルロン酸やデルマタン硫酸の多くは、線維をつくるのと同じ線維芽細胞がつくっているからです。
線維のうち、量がいちばん多いのはコラーゲン線維で、真皮の乾燥重量の約70%を占めます。デルマタン硫酸はその線維を支えて、ほかの基質をつなぎとめています。線維芽細胞は、こうした物質をつくるだけでなく分解もして、組み立てや並び方を整えています。
細胞の外にあるこうした物質は、以前は体を支えるだけの物と考えられていました。今では、細胞の形や増え方、育ち方、移動にも関わっていることがわかっています。皮膚の硬さややわらかさも、真皮の厚さや、コラーゲン線維、エラスチン線維、ヒアルロン酸などの量や状態で決まります。
線維が真皮の骨組みなら、基質は骨組みのすき間を満たし、細胞の暮らす場所をつくっているものです。
まとめ
- 基質は、真皮の線維と細胞のすき間を満たすゼリー状の物質で、細胞外マトリックスとも呼ばれます
- 主な中身はプロテオグリカンと糖タンパク質で、組織液もふくまれます
- 水を抱える主役は、2つの糖のくり返しでできたグリコサミノグリカンで、真皮に多いのはヒアルロン酸とデルマタン硫酸です
- ヒアルロン酸は1グラムで約6リットルの水を保てるとされ、体の中の半分が皮膚にあり、真皮ではほぼ1日で半分が入れかわります
- 糖タンパク質のフィブロネクチンは線維と細胞をつなぎ、基質の多くは線維芽細胞がつくっています
真皮というとコラーゲンの話になりがちですが、そのすき間には、水を抱えたゼリーが毎日つくり直されながら満ちています。線維と基質をセットで考えると、真皮のしくみがぐっと見えやすくなります。
よくある質問
真皮の基質とは何ですか?
線維と細胞のすき間を満たすゼリー状の物質です。細胞外マトリックスとも呼ばれ、主な中身はプロテオグリカンと糖タンパク質で、血液やリンパ液由来の組織液もふくまれます。
体の中のヒアルロン酸はどこにある?
体の中のヒアルロン酸の半分は皮膚にあります。皮膚では主に真皮の線維の網目のすき間にあり、表皮のケラチノサイトのあいだにも小さめのものがあります。
ヒアルロン酸は誰がつくっている?
真皮では、線維芽細胞がつくっています。つくられては分解される入れかわりの速い物質で、真皮ではほぼ1日、表皮では2〜3時間で半分が分解されます。
プロテオグリカンとヒアルロン酸の違いは?
ヒアルロン酸は糖の鎖だけ、プロテオグリカンはたんぱく質つきの分子です。プロテオグリカンは芯のたんぱく質に糖の鎖がたくさん結びついたもので、種類によってはヒアルロン酸の長い鎖に何本もつながって、巨大な集まりをつくります。
グリコサミノグリカンとは何ですか?
2つの糖の組み合わせがくり返しつながった長い鎖です。酸性ムコ多糖とも呼ばれ、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸など6種類があり、水を抱えて組織をやわらかく保ちます。