この記事でわかること
- 4つの層と、細胞が入れ替わる流れ
- うるおいの材料が表皮の中でつくられる場所
- ケラチノサイトのほかにいる3つの細胞
肌の説明で「角層」「基底層」と聞いても、表皮の中がどうなっているのか、ピンとこないと思いますよね。
結論から言うと、表皮は下から基底層・有棘層・顆粒層・角層の4つの層でできていて、それは1つの細胞が上へのぼりながら姿を変えていく4つの段階です。表皮は平均約0.2ミリの薄い層で、皮膚の3つの層のいちばん外側にあります。まずは、4つの層の並び方から見ていきましょう。
4つの層は、1つの細胞がたどる4つの段階
4つの層は、別々の細胞が住み分けているのではなく、1つの細胞がたどる4つの段階です。表皮の細胞は、基底細胞から有棘細胞、顆粒細胞、角層細胞へと姿を変えながら上がっていき、その途中に層の名前がついているからです。この変化の流れを角化(表皮の細胞が角層の細胞に変わっていくこと)と呼びます。
基底層で生まれた細胞が、角層になります。
表皮の細胞の95%は、この変化をたどるケラチノサイト(角化細胞)です。基底層の細胞が分裂してから表面ではがれ落ちるまでは、約45日といわれています。
4つの層は、1つの細胞の一生を、下から順に並べたものと考えるとわかりやすいです。
基底層は、表皮の細胞が生まれるただ1つの層
いちばん下の基底層は、表皮の細胞が生まれるただ1つの層です。4つの層のうち、細胞分裂をしているのはここだけだからです。
基底層は、立方体から円柱の形をした基底細胞が1列に並んでできています。この中には、ケラチノサイトのもとになる幹細胞(分裂して新しい細胞を生み続ける細胞)が含まれています。分裂して生まれた細胞は、あとから生まれる細胞に押し上げられて、上の層へ移っていきます。
基底層のすぐ下には基底膜という、とても薄い膜があります。基底細胞は、細胞を膜につなぎとめる装置でこの膜と結合していて、表皮を真皮の上にしっかり固定しています。表皮の細胞は、すべて基底層で生まれると覚えておきましょう。
有棘層は、細胞が手をつないだいちばん厚い層
基底層で生まれた細胞が、押し上げられて次に入るのが有棘層で、4つの層のうちいちばん厚い層です。3〜10層ほどの細胞が重なっていて、表皮の大部分を占めているからです。
名前の「棘」は「とげ」のことです。この層の細胞は、デスモソーム(細胞どうしをくっつける装置)で隣の細胞とつながっています。顕微鏡で見ると、そのつなぎ目がトゲのように見えるので、この名前がつきました。細胞どうしが手をつないでいる、と考えるとわかりやすいでしょう。
上にいくにつれて、多角形だった細胞は少しずつ平たくなっていきます。有棘層は、手をつないだ細胞が厚く重なった層です。
顆粒層で、うるおいの材料が仕込まれる
角層の手前の顆粒層で、うるおいの材料が仕込まれます。2〜3層の細胞の中に、角層のうるおいのもとになる2種類の小さな粒が現れるからです。
ひとつめはケラトヒアリン顆粒です。中身の中心はプロフィラグリンという大きなタンパク質で、細胞が角層へ移るときにフィラグリンに変わり、さらにアミノ酸まで分かれて、角層の細胞の中で水を抱える天然保湿因子になります。
天然保湿因子ができるまでの流れです。
粒ができる
移る
分かれる
抱える
もうひとつは層板顆粒で、ラメラ顆粒とも呼ばれます。直径300ナノメートルほどの丸い粒で、中にはセラミドなどの脂質が入っています。この脂質が細胞のすき間に送り出されて、角層の細胞間脂質になります。セラミドも天然保湿因子も、その手前の顆粒層で、材料として仕込まれています。
角層は、核を失った細胞が重なる完成形
いちばん外側の角層は、核を失った平たい細胞が重なった、表皮の完成形です。顆粒層から角層に移るとき、細胞は核を失い、膜のように平たくなるからです。
角層は、厚さ10〜20マイクロメートル、層の数は頬で約10層、手のひらやかかとでは約50層にもなります。角層の細胞は、周辺帯(コーニファイドエンベロープ。細胞膜の内側を補強する丈夫な膜)をまとい、この膜をつくるタンパク質は、物理的な刺激にも化学的な刺激にもとても安定しています。
細胞のすき間は、顆粒層から送り出された細胞間脂質で満たされ、その約50%はセラミドです。平たい細胞がすき間の脂で貼り合わされた形は、よく「レンガとモルタル」にたとえられます。角層は死んだ細胞の集まりですが、酵素を含み、活発な代謝が行われています。そして表面から順に、垢としてはがれ落ちていきます。
表皮には、ほかに3つの細胞がいる
表皮には、ケラチノサイトのほかに、メラノサイト・ランゲルハンス細胞・メルケル細胞の3つの細胞がいます。合わせて表皮の細胞の5%ほどで、それぞれ色をつくる、異物を知らせる、触れた感覚を受け取る、という別の役目をもっているからです。
色素細胞とも呼ばれるメラノサイトは、基底層にいて、メラニンをつくり出します。木の枝のような突起を伸ばした形で、分布の密度は平均1,500〜2,000個/mm²です。メラニンは皮膚の色を決め、紫外線による遺伝子の傷を防ぐ働きをもっています。
メラニンはまわりの細胞に配られます。
浴びる
つくる
細胞に配る
紫外線から守る
ランゲルハンス細胞は、木の枝のような形の細胞で、入ってきた異物を取り込み、その情報をリンパ球に伝えます。この細胞は紫外線に敏感で、UVBという中くらいの波長の紫外線を浴びると、情報を伝える働きが低下します。
メルケル細胞は基底層に散らばる、感覚を受け取る細胞です。指先や口の中の粘膜、毛根のまわりなどに多く見られます。表皮は、4種類の細胞がそれぞれの役目を分け合っている層です。
まとめ
- 表皮は平均約0.2ミリ。下から基底層・有棘層・顆粒層・角層の4層で、1つの細胞がたどる4つの段階です
- 基底層は1列に並んだ基底細胞の層で、表皮の細胞はすべてここで生まれ、約45日ではがれ落ちます
- 有棘層はデスモソームで手をつないだ細胞が重なる、いちばん厚い層です
- 顆粒層では、天然保湿因子のもとになるケラトヒアリン顆粒と、細胞間脂質のもとになる層板顆粒が現れます
- 角層は核を失った細胞の層。表皮にはほかにメラノサイト・ランゲルハンス細胞・メルケル細胞がいます
セラミドも天然保湿因子も、角層に最初からあるものではなく、その手前でつくられて運ばれてきたものです。4つの層を1つの細胞の一生として見ると、表皮のしくみがひとつながりで見えてきます。
よくある質問
表皮の4層はどんな順番?
内側から基底層・有棘層・顆粒層・角層の順です。いちばん外側が角層で、表皮全体の厚さは平均約0.2ミリです。
表皮の細胞はどこで生まれる?
いちばん下の基底層です。4層のうち細胞分裂をしているのはここだけで、生まれた細胞が上へ押し上げられていきます。
天然保湿因子や細胞間脂質のもとはどこでつくられる?
角層の手前の顆粒層です。天然保湿因子のもとになるのがケラトヒアリン顆粒、セラミドなどの細胞間脂質のもとになるのが層板顆粒です。
表皮の生まれ変わりは何日かかる?
基底層の細胞が分裂してから、表面ではがれ落ちるまで約45日といわれています。この入れ替わりをターンオーバーと呼びます。
表皮にはケラチノサイトのほかにどんな細胞がいる?
メラニンをつくるメラノサイト、異物の情報を伝えるランゲルハンス細胞、触れた感覚を受け取るメルケル細胞の3つです。合わせて表皮の細胞の5%ほどです。
この記事で参照した情報
- 北海道大学 皮膚科学教室 公開資料「皮膚の構造と機能 B.表皮」
- MSDマニュアル家庭版「皮膚の構造と機能」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「表皮」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「基底層」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「有棘層」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「顆粒層」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「角層」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「ケラチノサイト」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「角化」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「ケラトヒアリン顆粒」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「層板顆粒」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「コーニファイドエンベロープ」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「デスモソーム」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「フィラグリン」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「天然保湿因子(NMF)」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「基底膜」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「メラノサイト」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「ランゲルハンス細胞」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「メルケル細胞」
- 国立健康・栄養研究所「セラミド(N-アシルスフィンゴシン)」素材情報
この記事が入っているテーマ別まとめ