この記事でわかること
- 鉛のおしろいの禁止年が資料で違う理由
- いま禁止されている成分と、防腐剤の扱い
- 2001年に変わった成分表示のルール
鉛白粉がいつ禁止されたのか調べると、資料によって1900年だったり1901年だったりして、どれが本当なのか迷いますよね。
結論から言うと、鉛白粉が実際に売られなくなったのは1934年末です。1900年に規則はできましたが、白粉には「当分ノ内」当てはめないことになり、1930年の省令で、製造は1933年末、販売は1934年末までと決まりました。資料で年が違って見えるのは、規則ができた年と、実際に使えなくなった年が30年以上離れているからです。まずは、鉛白粉がなぜ広まったのかから見ていきましょう。
鉛白粉は、のびがよく安いので江戸時代から広く使われた
鉛白粉は、のびやつきがよく、比較的安かったため、広く使われていました。白粉は江戸時代に広く普及した化粧品で、その原料の1つが、鉛白という鉛の化合物だったからです。
当時の白粉の原料には、鉛白のほか、デンプン、貝殻、粘土、甘汞なども使われていました。鉛の害が知られるきっかけとして記録されているのが、1887年、天覧歌舞伎が開かれた数か月後の舞台で、人気の女形が倒れた出来事です。
使いやすさで選ばれていた白粉に、鉛という害のある成分が入っていたのです。
鉛白粉の販売が終わったのは1934年末。年が違うのは規則が2段階だったから
鉛白粉の製造は1933年12月末まで、販売は1934年12月末までと決まり、そこで終わりました。1900年に規則はできたものの、白粉にはすぐには当てはめられなかったからです。
1900年には内務省令第17号の「有害性著色料取締規則」が出され、資料によっては、この年や1901年に鉛白粉が禁止されたと書かれています。ただ、このときは鉛の入らない白粉がまだ開発されていなかったため、白粉については「当分ノ内」という条件つきで、当てはめるのが見送られました。鉛の入らない白粉が広く使われるようになったのは、1904年に新しい白粉が発売されてからです。
規則ができてから、鉛白粉が実際に売られなくなるまで30年以上かかりました。
広まる
規則
白粉が出る
販売終了
そして1930年10月の内務省令第30号で、鉛白粉の製造と販売の期限が決まりました。規則ができてから実際に使えなくなるまで、30年以上かかったことになります。
「いつ禁止されたか」を見るときは、規則ができた年と、実際に売られなくなった年が違うと知っておくと、資料の違いに迷いません。
いま配合できない成分は、化粧品基準に30項目並んでいる
いま化粧品に配合してはいけない成分は、化粧品基準の別表第1に30項目並んでいます。化粧品基準は、化粧品に使える成分の決まりをまとめた国の告示です。
このリストには、水銀とその化合物、カドミウム化合物、セレン化合物、ホルマリン、クロロホルム、メチルアルコール、ホウ酸などが入っています。いっぽう、30項目に「鉛」という言葉は入っていません。鉛白粉の禁止は戦前の内務省令によるもので、化粧品基準とは別の流れの規制だからです。
また、化粧品基準のはじめの決まりでは、化粧品の原料は、含まれる不純物も含めて、感染のおそれがあるものなど、健康や衛生の面で危険を生じるおそれのあるものであってはならない、と全体に向けて定めています。
リストにない成分でも何でもよいわけではなく、原料そのものが安全であることが前提になっているのです。
パラベンは禁止されておらず、上限つきで使える防腐剤
パラベンは危ないから禁止された、と聞いたことがある人は多いと思います。でも、パラベンは禁止されておらず、使ってよいと定められた防腐剤で、上限が決まっているだけです。
化粧品に入れる防腐剤は、化粧品基準の別表第3に載っているものでなければなりません。パラベンは「パラオキシ安息香酸エステル及びそのナトリウム塩」としてこのリストに載っていて、上限は合計で100g中1.0gです。同じリストには、安息香酸が0.2g、安息香酸塩類が合計で1.0g、フェノキシエタノールが1.0gという上限で並んでいます。
パラベンは、上限を守って使うことが認められた成分と覚えておきましょう。
2001年4月から、禁止と制限以外は企業の責任で使う形になった
2001年4月1日から、国が認めた原料しか使えない形から、禁止・制限されたもの以外は企業の責任で使える形に変わりました。それまでの化粧品品質基準、化粧品原料基準、表示指定成分の3つの制度が、2001年3月31日で終わったからです。
かわりに始まったのが、化粧品基準と全成分表示です。化粧品基準では、配合してはいけない成分と量を制限する成分を並べ、防腐剤、紫外線吸収剤、タール色素の3種類だけは、使ってよいものを上限つきで並べる形になりました。あわせて、原則として配合するすべての成分の名前を表示することになりました。
2001年4月から、企業の責任で原料を選び、すべての成分を表示する形になりました。
原料だけ
4月から
責任で選ぶ
表示する
表示に使う成分名のリストは業界がつくっていて、1号から49号までに16,908成分が載っています。このリストは名前をそろえるためのもので、安全性や配合してよいかを決めるものではありません。
成分表を見るときは、リストに名前があることと、安全と認められたことは別と知っておくと安心です。
表示指定成分は、危険な成分の一覧ではなく、自分で避けるための表示
「表示指定成分」と聞くと、危ない成分のリストのように思いますよね。でも、表示指定成分は、アレルギーを起こしたことがある人が、自分で避けられるようにするための表示でした。
全成分表示の前にあった制度で、当時の厚生省の通知によると、医師からの情報をもとに、アレルギーなどの肌のトラブルを起こすおそれのある製品を自分で避けられるように、102種類が指定されていました。
関係する肌のトラブルに、黒皮症があります。日光の当たる部分に、色素の不純物のような成分がふれてアレルギーを起こし、色素が沈着するタイプの皮膚炎です。アレルギーのもとになりうる成分の使用が大きく減ったため、黒皮症はまれになってきています。
表示指定成分は、自分に合わない成分を避けるための目印だったのです。
薬事法は、名前が変わって薬機法になった
薬事法と薬機法は同じ法律で、名前が変わっただけです。2014年11月25日から、題名が「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に変わり、これが薬機法と呼ばれています。
題名を変えたのは「薬事法等の一部を改正する法律」で、2013年11月27日に公布されました。法令番号は1960年の法律第145号のままで、化粧品と医薬部外品の区分も、この法律で決まっています。
古い資料で薬事法と書かれていたら、いまの薬機法のことと読みかえて大丈夫です。
まとめ
- 鉛白粉は1900年に規則ができたものの白粉には見送られ、1930年の省令で、販売は1934年末までと決まりました
- 資料で年が違うのは、規則ができた年と実際に売られなくなった年が離れているからです
- いま配合できない成分は、化粧品基準の別表第1に30項目。パラベンは上限つきで使える防腐剤です
- 2001年4月から、禁止・制限以外は企業の責任で使い、すべての成分を表示する形になりました
- 表示指定成分は、自分で避けるための表示でした。薬事法は2014年11月25日から薬機法です
化粧品の決まりは、問題が起きるたびに少しずつ変わってきました。いまの成分表示は、その積み重ねでできています。
よくある質問
鉛白粉はいつ禁止された?
1900年に規則ができましたが、白粉には当分のあいだ当てはめないことになりました。1930年の省令で、製造は1933年末、販売は1934年末までと決まり、そこで終わりました。資料には1900年や1901年と書かれたものもありますが、実際に売られなくなったのは1934年末です。
パラベンは禁止されている?
禁止されていません。使ってよい防腐剤として定められていて、上限は合計で100g中1.0gです。
化粧品に配合してはいけない成分は?
化粧品基準の別表第1に、30項目が並んでいます。水銀とその化合物、カドミウム化合物、ホルマリンなどが含まれます。
表示指定成分とは?
全成分表示が始まる前にあった制度で、102種類の成分の表示を求めていました。危険な成分の一覧ではなく、アレルギーを起こしたことがある人が自分で避けるための表示です。
薬事法と薬機法は別の法律?
同じ法律で、題名が変わっただけです。2014年11月25日から今の題名になり、薬機法と呼ばれています。
この記事で参照した情報
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「白粉(おしろい)」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「鉛中毒」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「お歯黒」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「黒皮症」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「化粧品基準」
- 国立国会図書館「本の万華鏡」第29回 めーきゃっぷ今昔 ―江戸から昭和の化粧文化― 第1章
- 化粧品基準(平成12年9月29日 厚生省告示第331号)
- 同(厚生労働省 法令等データベース)
- 厚生省医薬安全局長通知「化粧品規制緩和に係る薬事法施行規則の一部改正等について」(平成12年9月29日 医薬発第990号)
- 厚生省告示第332号「名称を記載しなければならないものとして厚生労働大臣の指定する医薬部外品及び化粧品の成分」(平成12年9月29日)
- 厚生労働省医薬局審査管理課長・監視指導麻薬対策課長通知「化粧品の全成分表示の表示方法等について」(平成13年3月6日 医薬審発第163号・医薬監麻発第220号)
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)
- 厚生労働省「薬事法等の一部を改正する法律(平成25年法律第84号)について」
- 厚生労働省医薬食品局長通知(平成26年8月6日 薬食発0806第3号)
- 日本化粧品工業会「成分表示」(自主基準)
- 日本化粧品工業会「化粧品の成分表示の趣旨説明」
- 日本化粧品工業会「化粧品の成分表示名称リスト」