この記事でわかること
- EMSが表情筋を動かすしくみと、皮膚との関係
- やりすぎで起きうることと、そのサイン
- 使う時間と回数の決め方、使えない人と当てない部位
EMS美顔器は顔がぴくぴく動くぶん、長く使うほど早く効くのか、やりすぎるとかえって顔がたるむのか、迷いますよね。
結論から言うと、やりすぎで起きうるのは、筋肉の疲れや痛み、皮膚の赤みやあざです。やりすぎのサインは、たるみではなく痛みや赤みに出ます。使う時間と回数は製品の説明書の欄に従い、首には当てないことが基本です。まずは、EMSのしくみから見ていきましょう。
EMS美顔器は、電気で表情筋を縮ませる道具
EMS美顔器は、皮膚の上から弱い電流を流して、顔の筋肉を直接縮ませる道具です。筋肉はもともと、脳から神経を通って届く電気の信号で縮むので、外から電気を流しても同じように動きます。
顔に当てたときにぴくぴくと動くのは、表情筋が電気で縮んでいるためです。消費者安全調査委員会の資料でも、電気で筋肉を刺激して運動の効果を得る方式で、脂肪には働きかけにくいとされています。
区分も知っておきたいところです。市販のEMS美顔器の大半は、承認も認証も受けていない雑貨で、雑貨の美顔器が言えるのは、肌のキメを整えるなど化粧品と同じ範囲までです。電気で筋肉を刺激する機器が医療機器として出る場合は低周波治療器という管理医療機器になり、その目的は痛みをやわらげることや、筋肉のやせに対して神経と筋肉を刺激することで、美容の効能ではありません。
EMSが動かすのは筋肉で、肌の表面や脂肪ではないと覚えておきましょう。
表情筋は皮膚につく筋肉なので、動かすと皮膚もいっしょに動く
表情筋は頭の骨から始まって顔の皮膚につく筋肉なので、縮むと皮膚もいっしょに動きます。腕や脚の筋肉は骨から骨につきますが、表情筋は皮膚につく皮筋という筋肉で、顔面神経の信号で動いて表情をつくります。
表情筋は骨から皮膚につくので、電気で縮むと皮膚もいっしょに引っぱられます。
EMSで表情筋を縮ませると、つながっている皮膚も引っぱられます。使ったあとに顔が上がったように感じるのは、この性質によるものです。
研究で測られているのも、表情筋のひとつの大頬骨筋です。口の端から頬骨へ向かう筋肉で、笑うときに口の端を引き上げます。年齢とともに大頬骨筋がやせることが顔の変化に関係すると考えられていますが、顔のたるみは筋肉だけでなく、皮膚や脂肪、骨の変化が重なって起こるものです。
表情筋は皮膚と一体で動く筋肉だから、EMSで動かすと顔全体が動いて感じられるのです。
研究では、頬の筋肉の厚みが増えたという結果がある
せっかく使うなら、本当に変化があるのか知りたいと思いますよね。顔のEMSの研究では、頬の大頬骨筋の厚みが増えたという結果があります。EMSは筋肉をくり返し縮ませる道具なので、研究も筋肉の厚みを測って調べています。
たとえば、顔用のEMS機器を続けて使うと、大頬骨筋の厚みが増え、8割を超える人が顔の引き締まりを感じたという結果があります。別の研究でも、大頬骨筋の厚みが増え、ほうれい線の角度が開いたという結果が出ています。
ただ、雑貨の美顔器として言えるのは化粧品と同じ範囲までです。EMSは筋肉を動かす手入れのひとつとして、期待しすぎずに使うのがちょうどいいでしょう。
やりすぎで起きうるのは、筋肉の疲れや痛みと、皮膚の赤み・あざ
EMS美顔器を使いすぎると、筋肉の疲れや痛み、皮膚の赤みやあざが起きることがあります。電気で縮ませるときは、自分で動かすときと違う順番で筋肉を使うので、筋肉への負担が大きくなるからです。
やりすぎのサインは、枠で囲んだ「痛みや赤み」に出ます。
すぎる
負担
赤みが出る
休む
筋肉については、電気刺激で太ももの筋肉を何度も縮ませると、筋肉痛と、筋肉の損傷を示す血液の値の上昇が起き、2日後ごろにいちばん強くなったという結果があります。顔の筋肉も、電気で動かすという点は同じです。
皮膚については、顔用の家庭用美容機器で報告された副作用は一時的な赤みと腫れでした。東京都消費生活総合センターは2025年4月、EMS美顔器を使った部分に痛みが出てあざができた例を挙げ、かゆみや炎症、頭痛が出ることがあり、ひどい場合はあざややけどになってよくなるまで1か月以上かかった例もあると注意を出しています。
機器の傷みが原因になることもあります。国民生活センターのテストでは、腹部に使うEMS機器で水ぶくれができた相談について、絶縁のコーティングの小さな傷から内部が露出し、そこに皮膚や汗が触れて電流が一か所に集まり、強い刺激になった可能性が考えられました。顔用の機器でも、電極やパッドが傷んだものは使い続けないようにしましょう。
痛みや赤みが出たら、その日はやめて休むのがいちばんの予防です。
やりすぎのサインは、たるみではなく痛みや赤みに出る
「やりすぎると表情筋が疲れて、かえってたるむ」という話を見ると、不安になりますよね。でも、やりすぎのサインとして気をつけたいのは、たるみではなく痛みや赤み、あざです。筋肉を動かしすぎて起きるのは、太ももの研究が示すような疲れや痛みだからです。
研究の結果も、使った期間に筋肉の厚みが増える方向でした。たるみは筋肉だけでなく、皮膚や脂肪、骨の変化が重なって起こるもので、筋肉を動かすことだけで決まるものではありません。
痛みや赤みが出ている時点で、その使い方は体にとって多すぎるサインです。量を減らすか、休むと考えておけば安心です。
使う時間と回数は、製品の説明書の欄に従う
1日に何分、週に何回まで使うかは、自分の製品の説明書にある使い方の欄に従いましょう。使う時間や回数について国や公的機関が示した目安はなく、機種ごとに構造や使い方が違うからです。
EMS美顔器を安全に使うための4つの手順です。
読む
回数を守る
当てない
やめる
東京都消費生活総合センターも、1回あたりの時間や使用回数、使用方法を必ず守るよう呼びかけています。ふだんの体調も関係し、消費者安全調査委員会は、寝不足のときや飲酒後の使用は控えること、立ったまま使うと倒れたときに危ないので周りの家具に気をつけること、具合が悪くなったらすぐにやめて横になって休むことを挙げています。
多く使えば早く効くわけではないので、説明書の時間と回数を上限と考えて使いましょう。
ペースメーカーのある人や妊娠中の人は使わず、首付近には当てない
電気を体に流す機器なので、使えない人と当ててはいけない場所が決まっています。体の状態や当てる場所によっては、電気が思わぬ負担になるからです。
植込み型のペースメーカーの添付文書の記載例では、体に通電する機器としてEMSが名指しされ、使わないよう指導することになっています。医療機器の低周波治療器の添付文書では、妊娠中や妊娠の可能性のある人、心臓に障害のある人、当てる部位の皮膚に傷や炎症のある人、内出血しやすい人などが対象外です。EMS美顔器の取扱説明書では、これに加えて顔の手術や美容医療のあとの人、皮膚の病気やアレルギーのある人が共通して挙げられています。
当てる場所でいちばん大切なのは首付近です。首には迷走神経などの経路があり、電気刺激や圧迫で反射が起きて血圧が下がり、めまいや失神につながるおそれがあります。実際に、ヘッドホン型のEMS美顔器を首の両側に装着して約10秒後にめまいが起きて倒れた事故があり、消費者安全調査委員会は首付近に押し当てたり装着したりしないよう呼びかけました。
これは使いすぎではなく、1回目から起きうる当てる場所の問題です。顔用の機器は顔だけに使い、迷うときは使う前に医師に相談しましょう。
まとめ
- EMS美顔器は、皮膚の上から電気を流して表情筋を縮ませる道具。表情筋は皮膚につく筋肉なので、動くと皮膚もいっしょに動きます
- 研究では、頬の大頬骨筋の厚みが増えたという結果があります。雑貨の美顔器で言えるのは化粧品と同じ範囲までです
- やりすぎで起きうるのは、筋肉の疲れや痛み、皮膚の赤み、あざです
- やりすぎのサインは痛みや赤みに出ます。使う時間と回数は製品の説明書の欄に従います
- ペースメーカーのある人、妊娠中の人、心臓の病気や顔の手術後の人は使わず、首付近には当てません
EMS美顔器は、電気で筋肉を動かすという、化粧品とは少し違う道具です。説明書の時間と回数を守り、首に当てず、痛みや赤みが出たら休む。この3つを意識して、無理なく使ってみてください。
よくある質問
EMS美顔器はやりすぎると逆効果になりますか?
やりすぎで起きうるのは、筋肉の疲れや痛み、皮膚の赤みやあざです。やりすぎのサインはたるみではなく痛みや赤みに出るので、出たら量を減らすか、休みましょう。
EMS美顔器は効果がありますか?
顔のEMSの研究では、頬の大頬骨筋の厚みが増えたという結果があります。ただ、雑貨の美顔器で言えるのは化粧品と同じ範囲までなので、筋肉を動かす手入れのひとつとして、期待しすぎずに使うのがちょうどいいでしょう。
EMS美顔器は1日何分、週に何回まで使っていいですか?
国や公的機関が示した時間や回数の目安はありません。東京都消費生活総合センターは、1回あたりの時間や使用回数、使用方法を必ず守るよう呼びかけています。自分の製品の説明書にある使い方の欄に従ってください。
EMS美顔器で顔の筋肉は鍛えられますか?表情筋の特徴は?
表情筋は頭の骨から始まって顔の皮膚につく皮筋で、動くと皮膚もいっしょに動きます。EMSは皮膚の上から電気を流してこの筋肉を縮ませる方式で、研究では大頬骨筋の厚みが増えています。電気刺激は自分で動かすときと違う順番で筋肉を使うので、やりすぎると筋肉痛が起きることがあります。
EMS美顔器を使えない人は?首に当ててはいけないのはなぜ?
ペースメーカーのある人、妊娠中の人、心臓の病気や顔の手術後の人などは使えません。首付近には迷走神経などの経路があり、電気刺激や圧迫で血圧が下がって、めまいや失神につながるおそれがあります。首の両側に装着して約10秒後に倒れた事故があり、消費者安全調査委員会が首付近に当てないよう呼びかけています。
この記事で参照した情報
- 消費者安全調査委員会「家庭用EMS美顔器に係る事故に関する情報提供」令和6年4月11日
- 東京都消費生活総合センター「家庭用EMS美顔器の使用には注意が必要です〜あざや体調不良になることも〜」令和7年4月23日
- 国民生活センター「腹部に水膨れができたEMS機器」(相談解決のためのテストから No.115)2017年9月7日
- 厚生労働省 医薬・生活衛生局安全対策課「医療機器の添付文書の記載例について(その2)」平成28年8月24日 事務連絡
- PMDA 医療機器添付文書「低周波治療器」(管理医療機器、一般的名称 35372000)
- 東京都保健医療局 健康安全部薬務課「雑貨等の広告について(薬事該当性)」
- 獨協医科大学 解剖学 講義資料「筋学各論(1) 顔面筋・咀嚼筋・頚筋」
- Kavanagh S, Newell J, Hennessy M, Sadick N. Use of a neuromuscular electrical stimulation device for facial muscle toning: a randomized, controlled trial. J Cosmet Dermatol 2012;11(4):261-266
- 畑澤ほか. Effects of 12-Week Electrical Muscle Stimulation on Facial Muscles and Nasolabial Folds. 日本香粧品学会誌 2025;49(2):93-99
- Vanderthommen M, et al. Alteration of Muscle Function After Electrical Stimulation Bout of Knee Extensors and Flexors. J Sports Sci Med 2012;11(4):592-599
- Bu P, et al. Development of Home Beauty Devices for Facial Rejuvenation: Establishment of Efficacy Evaluation System. Clin Cosmet Investig Dermatol 2024;17:561-572