この記事でわかること
- 化粧品成分の値段が高くなる事情
- 試薬の値段と決算から見る、成分と化粧品の値段の中身
- 高い成分がよく効くとは限らない理由
「原価が高い成分って何だろう」「高い成分が入っていれば、そのぶんよく効くの?」と気になりますよね。値段の高い化粧品を手に取るとき、迷う人は多いと思います。
結論から言うと、成分が高くなるのは、原料が少ししかとれない、原料が限られる、作るのに手間がかかる、といった事情があるからで、値段の高さと肌への効き目は別の話です。化粧品の値段の中では、原料以外にかかるお金も大きな割合を占めています。まずは、成分が高くなる理由から見ていきましょう。
成分が高くなるのは、とれる量が少なく作るのに手間がかかるから
成分の値段が高くなるのは、とれる量が少ない、原料が限られる、作るのに手間がかかる、の3つが主な理由です。どれも、同じ量をそろえるのにたくさんの原料や時間、設備が必要になるからです。
成分の値段を押し上げる、3つの事情です。
量が少ない
花4000kgで
精油1kg
原料が限られる
魚の繁殖の
時期しだい
手間がかかる
濃い塩水で
菌を育てる
いちばんわかりやすいのは、とれる量が少ない場合です。ダマスクローズの花から蒸留してとる精油は、花4000kgから精油1kgという例が挙げられるほど、たくさんの花からわずかしかとれません。
原料が限られることも、値段を押し上げます。PDRNはおもにニジマスやシロザケなどの精子からとる成分で、費用がかさむうえに、原料が魚の繁殖の時期に左右されるため、製品がとても高くなりやすいとされています。
作るのに手間がかかる成分もあります。エクトインは、塩分の濃い液で菌を育ててエクトインをため込ませ、塩分の薄い液に移したときの急な変化で菌の外に出させる、という方法で作られてきました。塩分の濃い液は発酵のタンクを傷めやすく、排水の処理も大きな課題になるとされています。ヒト型セラミドも、材料になるフィトスフィンゴシンが小麦などの種に少ししか含まれず、取り出すのに手間と費用がかかります。
成分の値段は、原料のとれ方と作り方の手間でほぼ決まる、と考えるとわかりやすいです。
ヒアルロン酸やスクワランは、原料と作り方が変わってきた
同じ名前の成分でも、原料や作り方が変わると、手に入りやすさや値段の事情が変わります。どこから、どう作るかによって、とれる量や精製の手間が違うからです。
たとえばヒアルロン酸は、昔はおもにニワトリのとさかから取り出していました。動物からとったヒアルロン酸は、たんぱく質と結びついた物質とからみ合っているため、きれいにするには大がかりな精製が必要です。いまは菌で発酵させて作る方法も使われています。また、同じヒアルロン酸でも、医療用は化粧品や食品向けの数十倍の値段だったという推定があり、使い道によって値段は桁違いです。
スクワランは、深海にすむアイザメなどのサメの肝油からとったスクワレンに水素を結びつけて作る成分で、オリーブ由来のものもあります。スクワレンのために、毎年300万〜600万匹の深海ザメがとられているという推計があります。一方で、植物からとれるスクワレンは少なく、オリーブ油でも100gあたり200〜700mgとされています。
成分表に書かれた名前だけでは、その原料がどう作られたものかまではわからない、と覚えておきましょう。
成分どうしの高い・安いは、研究用の試薬の値段でざっくり比べられる
成分どうしの高い・安いは、同じ成分の研究用の試薬の値段を並べると、ざっくり比べられます。化粧品会社がまとめて買う原料の値段は表に出にくいので、だれでも見られる試薬の値段が目安になるからです。
研究用試薬の1gあたりの値段で、棒の長さは値段に比例します。2026年9月28日時点の税抜で、化粧品原料の取引価格ではありません。
国内の試薬会社の日本語サイトに表示されていた価格で比べると、エクトインは1gあたり8,700円、バクチオールは1gあたり約9.8万円で、10倍以上の差があります。スクワランは500mLで13,900円で、1mLあたり約28円でした。
ただし試薬は、純度が高く少量の研究用なので、化粧品会社がまとめて買う原料の値段とは桁が違います。成分どうしを比べる目安として見ておきましょう。
化粧品の売上原価は、大手3社で売上高の約2〜3割
上場している大手の化粧品会社3社では、売上原価は売上高の約2〜3割です。2025年12月期の決算短信から、売上高に対する売上原価の割合を計算すると、18.8%、23.4%、約31%でした。
売上高を100としたときの内訳です。売上原価には、成分代のほかに容器や製造の人件費なども入っています。
ここで気をつけたいのは、売上原価は成分代ではないことです。売上原価には、原材料だけでなく、容器や包装、製造にかかわる人の人件費、設備の減価償却費、仕入れた商品の原価などがまとめて入っています。しかも会社全体の数字なので、化粧品以外の事業や、国の違いもすべて合わさっています。
一方、広告や販売促進、販売手数料、人件費などを含む販売費及び一般管理費、いわゆる販管費は、3社で売上高の約63〜74.8%を占めています。広告宣伝費と販売促進費を合わせて売上高の約23%という会社や、販売手数料が売上原価とほぼ同じ額という会社もありました。
決算の数字から、成分代が定価の何%かを割り出すことはできないと考えておきましょう。
高い成分が入っていても、よく効くとは限らない
高い成分が入っていても、そのぶんよく効くとは限りません。化粧品で言える効能の範囲は決まっていて、配合量も表示からはわからず、成分によっては角層を通りにくいからです。
まず、化粧品として表示できる効能は、どんなに高い成分を入れても変わりません。国が決めた化粧品の効能の範囲は、「頭皮、毛髪を清浄にする」から「乾燥による小ジワを目立たなくする」までの56項目です。次に、成分表から配合量はわかりません。全成分表示は多い順に並べる決まりですが、1%以下の成分と着色剤は順不同でよいことになっています。
分子の大きさも関係します。化粧品が働くのは肌のいちばん外側の角層までで、一般に、分子量が500を超える分子は角層を通りにくいとされています。EGFなどの成長因子は、たいてい分子量が15,000を超える大きな分子です。EGFや幹細胞培養液は医療の分野での研究が中心で、幹細胞培養液は育て方などで中身がばらつきやすいと指摘されています。
値段と、うたい文句の関係を見た結果もあります。売れ筋の保湿剤では、同じ量あたりの値段に90倍以上の開きがありました。顔用の保湿剤では、「アンチエイジング」をうたう商品がいちばん高く、値段はうたい文句と結びついていたという結果があります。
成分の名前や値段より、何のために入っていて、化粧品として何が言えるのかを見るのが近道です。
「天然だから高くて良い」「原価2割なら残りはもうけ」は誤解
天然由来と聞くと、高くて良いものと思いますよね。でも、由来が天然であることと、値段や品質が良いことは別の話です。天然かどうかは原料の出どころの話で、値段は作り方の手間で決まり、品質は作り方や管理で決まるからです。
たとえばアスタキサンチンは、1960年代に化学合成の方法が確立され、養殖魚の色づけに使われてきました。天然品は、ヘマトコッカスという藻を強い光の下で育てて作るため、育てる手間がかかります。
もう一つの誤解は、売上原価が2割前後なら、残りの8割はもうけだという見方です。大手3社では販管費が売上高の6〜7割台を占めていて、広告や販売促進、販売手数料、人件費などに多くのお金が使われています。
値段を見るときは、天然かどうかや原価率だけで良し悪しを決めないのがおすすめです。
まとめ
- 成分が高くなるのは、とれる量が少ない、原料が限られる、作るのに手間がかかる、といった事情があるからです
- ヒアルロン酸やスクワランのように原料や作り方が変わってきた成分もあり、同じ成分でも用途で値段が桁違いになります
- 研究用試薬の値段は、成分どうしの高い・安いを比べる目安になります
- 大手3社の売上原価は売上高の約2〜3割ですが、容器や製造の人件費も含むため、成分代の割合はわかりません
- 化粧品で言える効能は56項目の範囲で、配合量は成分表からわからず、高い成分がよく効くとは限りません
高い成分の名前を見たら、値段の高さではなく、何のために入っていて、化粧品として何が言えるのかを手がかりに選んでみてください。
よくある質問
原価が高い化粧品成分にはどんなものがありますか?
原料が少ししかとれない成分や、作るのに手間がかかる成分です。たとえばローズオイルは花4000kgから精油1kgという例があり、PDRNはサケやマスの精子が原料で、魚の繁殖の時期に左右されます。
高い成分が入った化粧品ほどよく効きますか?
そうとは限りません。化粧品で言える効能はどの成分でも56項目の範囲で、成分表から配合量はわからず、分子量が500を超える成分は角層を通りにくいとされています。
化粧品の値段のうち成分代はどのくらいですか?
決算の数字から成分代の割合は割り出せません。大手3社の2025年12月期の売上原価は売上高の約19〜31%ですが、容器や包装、製造の人件費なども含む会社全体の数字です。
化粧品原料の値段はどうやって比べられますか?
研究用試薬の値段が、成分どうしの高い・安いを比べる目安になります。ただし試薬は純度が高く少量の研究用なので、化粧品会社がまとめて買う原料の値段とは桁が違います。
天然由来の成分のほうが高くて良いのですか?
そうとは限りません。由来が天然であることと、値段や品質が良いことは別の話です。たとえばアスタキサンチンは、化学合成の方法も確立されています。
この記事で参照した情報
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- Zhang et al. Advances in the biosynthesis of tetraacetyl phytosphingosine, a key substrate of ceramides. Synthetic and Systems Biotechnology 2024
- Ferreira RG, Azzoni AR, Santana MHA, Petrides D. Techno-Economic Analysis of a Hyaluronic Acid Production Process Utilizing Streptococcal Fermentation. Processes 2021;9(2):241
- Patel A, et al. Microbial genetic engineering approach to replace shark livering for squalene. Trends in Biotechnology 2022
- 東京化成工業「スクアラン」H0096(2026年9月28日確認、税抜)
- 東京化成工業「エクトイン」E1372(2026年9月28日確認、税抜)
- 東京化成工業「アスタキサンチン」A2616(2026年9月28日確認、税抜)
- 東京化成工業「フラーレンC60(pure)」B1641(2026年9月28日確認、税抜)
- 東京化成工業「バクチオール」B5700(2026年9月28日確認、税抜)
- Li J, Zhu D, Niu J, Shen S, Wang G. An economic assessment of astaxanthin production by large scale cultivation of Haematococcus pluvialis. Biotechnol Adv 2011;29(6):568-74
- 北村晃利・平井克幸・山下栄次「カロテノイド研究開発の現状と展望」生物工学 93巻7号(2015年)
- 株式会社資生堂「2025年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」(2026年2月10日)
- 株式会社コーセーホールディングス「2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年2月12日)
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