この記事でわかること
- まつ毛美容液に「伸びる」と書けない理由
- 「伸びる」とうたった製品で起きたこと
- 目もとの薄さと、アイラインの入れ方の注意
まつ毛美容液を使えば本当にまつ毛が伸びるのか、どれを選べばいいのか、気になりますよね。
結論から言うと、化粧品のまつ毛美容液に「伸びる」とは書けません。まつ毛を伸ばすのは、日本では医師が処方する薬の役目です。まずは、書けない理由から見ていきましょう。
化粧品の効能には、まつ毛の項目がひとつもない
まつ毛美容液に「伸びる」と書けないのは、化粧品がうたえる効能に、まつ毛を対象にした項目がひとつもないからです。
厚生労働省が定める化粧品の効能56項目のうち、毛髪についての1番から16番はすべて「頭皮、毛髪」が対象です。そのあと爪の39番から41番、唇の42番から48番と続きますが、まつ毛はどこにも出てきません。
厚生労働省は「まつ毛美容液を標榜する化粧品等の安全性確保について」という通知も出しています。医薬部外品として承認された育毛剤は、頭髪の抜け毛を防いで育てるためのもので、まつ毛に使うことは承認されていないとして、販売する業者への指導を徹底するよう求めています。東京都の講習会資料も、化粧品のまつ毛美容液で「まつ毛を育てる美容液です。」「まつ毛が伸びます」と書くのは、育毛が化粧品の効能を外れるので不可、という例として挙げています。同じ資料には、パーマをかける薬剤の承認基準から「まつ毛」が除かれていることも書かれています。
化粧品のまつ毛美容液は、まつ毛を伸ばすための製品ではないと覚えておきましょう。
まつ毛を伸ばすのは、医師が処方する医薬品
まつ毛を伸ばすものは、医師の管理のもとで使う処方薬としてあります。まつ毛を伸ばすことは、日本では医薬品として承認を受ける効能だからです。
ビマトプロストという成分の外用液が、「睫毛貧毛症」の効能で承認されています。とくに注意すべきリスクとして、黒目の色が濃くなること、まぶたのくぼみが深くなること、黒目の表面の傷、まぶたとそのまわりの色素沈着が挙げられています。
そして、医薬品として承認された成分は、化粧品には入れられません。化粧品基準が、添加剤としてだけ使われる成分など一部を除いて、医薬品の成分を化粧品に配合してはならないと決めているためです。海外も同じ扱いで、アメリカの食品医薬品局は、化粧品として売られている製品が医薬品の効能をうたっている例として「まつ毛の成長」を挙げています。
まつ毛を伸ばしたいときは、化粧品ではなく医師に相談するのが筋道です。
「伸びる」とうたった製品には、措置命令が出ている
「伸びる」とうたったまつ毛美容液には、消費者庁が措置命令を出し、危害の相談も増えました。書いてはいけない効能を書いた製品が、実際に出回っていたからです。
国民生活センターに寄せられた、まつ毛美容液による危害の相談は、年度ごとに大きく増えました。
まつ毛美容液による危害の相談は、2015年度の8件から2018年度には281件に増えました。
国民生活センターが調べた化粧品のまつ毛美容液では、約半数に、まつ毛の育毛をうたうなど化粧品の効能の範囲を超えると考えられる表示がありました。化粧品は毛髪にはり、こし、つやを与えるといった効能はうたえますが、まつ毛の育毛をうたうことは認められていません。医薬部外品の育毛剤も頭髪用なので、まつ毛には使わないよう呼びかけています。
消費者庁は、まつ毛美容液の「2週間でまつ毛が伸びる」「2週間で2mm伸びる!」などの表示について、事業者が出した資料はどれも表示の裏づけとなる合理的な根拠とは認められないとして、景品表示法にもとづく措置命令を出しました。
「まつ毛が伸びる」と書いてある化粧品は、書いてはいけないことを書いています。反対に、「ハリ・コシ」「まつ毛をいたわる」にとどめている製品は、ルールを守っているということです。
まつ毛の成長期は4週間で、伸びるのはだいたい5mm
まつ毛が伸びるのは1日に0.18mmで、成長期は4週間しかありません。まつ毛は、頭髪とはけた違いに短いサイクルで生えかわる毛だからです。
まつ毛はまぶたの縁に生えている毛で、目に異物が入るのを防ぐ役割があると考えられています。上まぶたに100〜150本、下まぶたに50〜75本あるといわれ、長さは7〜8mm、太さは直径約91μmと、長さ10mm、太さ約107μmの眉毛よりも短く細い毛です。
まつ毛の毛周期は、一般に1サイクルが3〜5か月で、そのうち成長期が4週間、休止期が4か月といわれます。頭髪の成長期は男性で3〜5年、女性で4〜6年なので、まつ毛の4週間はとても短く、1日0.18mmで計算すると、伸びるのはだいたい5mmです。毛周期は、部位や年齢、栄養状態、男性ホルモンなどのホルモン、サイトカインといった体の中の物質の影響を受けて、部位ごとに違います。
まつ毛は、短い期間に少しだけ伸びる毛です。「2週間で2mm」のような数字をうのみにしないようにしましょう。
まつ毛エクステには、美容師免許が必要
まつ毛エクステは美容師法でいう「美容」にあたり、施術には美容師免許が必要です。美容師法は美容を「パーマネントウエーブ、結髪、化粧等の方法により容姿を美しくすること」としていて、厚生労働省の通知で、エクステもこれに含まれるとされているからです。
施術を受けて目が痛くなったといった危害の情報は、毎年100件以上寄せられていました。日本皮膚科学会の接触皮膚炎のガイドラインも、目のまわりのかぶれの主な原因に「睫毛エクステンション」「ビューラー」を挙げています。
まつ毛エクステを受けるときに確かめたいことを、順番に並べました。
届け出
資格
説明
すぐ受診
受けるときは、お店が保健所に美容所として届け出ているか、施術する人が美容師の資格を持っているかを確かめ、健康被害のリスクについて十分な説明を受けます。目やそのまわりに異常を感じたら、すぐに皮膚科や眼科などを受診しましょう。
目もとの皮膚は、顔でいちばん薄く乾きやすい
目もとの皮膚は、顔のなかでもっとも薄く敏感で、とくに乾燥しやすい部分です。皮脂や汗を出す腺が少ないうえ、まばたきなどでいつも動いているからです。
皮脂が少ないと、肌の表面をおおう皮脂膜も少なくなり、角層の水分が蒸発しやすくなります。そのため目もとは、うるおいが不足しがちです。目もと用のクリームが別に売られているのも、薄くて乾きやすく、しかも絶えず動いているという条件の違いからです。
ケアの基本は、洗って肌を清潔に保つこと、うるおいを補って乾燥から守ること、紫外線を防ぐことの3つです。
アイラインは、まつ毛の外側に入れる
アイラインやアイシャドウは、まつ毛の外側に入れましょう。まつ毛の内側に入れると、目を乾燥から守るマイボーム腺の出口がふさがれてしまうからです。
マイボーム腺は、上下のまつ毛の内側にある、目を乾燥から守るための大切な脂を出す腺です。この脂が、目の表面の涙が乾かないようにしています。出口は上まぶたに約30〜40か所、下まぶたに約20〜30か所あります。
マイボーム腺の出口はまつ毛の内側に並ぶので、アイラインはまつ毛の外側に入れます。
マスカラも、まつ毛の根元には塗らないようにすることがすすめられています。落とすときは、コットンや綿棒を使ってていねいに落とす方法がおすすめで、クレンジングの「こすらない」原則が、目もとではさらに大事になります。
そもそもマスカラは、まつ毛を濃く長く見せたり、ほどよくカールさせたりするための製品です。「濃く長く見せる」のであって、毛を伸ばすものではありません。
まとめ
- 化粧品の効能56項目にまつ毛の項目はひとつもないので、まつ毛美容液に「伸びる」とは書けません
- 「まつ毛を伸ばす」は医薬品の領域。「睫毛貧毛症」で承認された処方薬があり、化粧品基準は医薬品の成分の配合を禁じています
- 危害の相談は2015年度8件から2018年度281件に増え、「2週間で2mm伸びる!」などの表示には措置命令が出ています
- まつ毛は1日0.18mm、成長期は4週間。まつ毛エクステには美容師免許が必要です
- 目もとは顔でもっとも薄く乾きやすい部分で、内側へのアイメイクはマイボーム腺の出口をふさぎます
厚生労働省の通知、国民生活センターの調査、消費者庁の措置命令。3つの機関が同じことを言っているので、「伸びる」と書いてあるものは避けるのが選び方の基準になります。まつ毛を伸ばすより、目もとをいたわるほうが現実的です。
よくある質問
まつ毛美容液でまつ毛は伸びる?
化粧品のまつ毛美容液に「伸びる」とは書けません。化粧品の効能56項目にまつ毛の項目はなく、まつ毛を伸ばすのは日本では医師が処方する医薬品の役目です。
頭髪用の育毛剤をまつ毛に使ってもいい?
使わないようにしましょう。医薬部外品の育毛剤は頭髪の脱毛防止や育毛が目的で、まつ毛への使用は承認されていません。
まつ毛を伸ばす薬はある?
医師の管理のもとで使う処方薬があります。ビマトプロストという成分の外用液が「睫毛貧毛症」の効能で承認されています。医薬品の成分は、化粧品には入れられません。
まつ毛は1日にどれくらい伸びる?
1日に約0.18mmです。成長期は4週間ほどで、頭髪の成長期の数年とくらべて、けた違いに短いサイクルです。
アイラインをまつ毛の内側に入れても大丈夫?
目を乾燥から守るマイボーム腺の出口が、メイクでふさがれることがあります。メイクはまつ毛の外側にし、マスカラもまつ毛の根元には塗らないようにすすめられています。
この記事で参照した情報
- 厚生労働省「まつ毛美容液を標榜する化粧品等の安全性確保について」(令和元年8月8日 薬生薬審発0808第1号・薬生安発0808第1号・薬生監麻発0808第2号)
- 国民生活センター「まつ毛美容液による危害が急増!-効能等表示の調査もあわせて実施-」(令和元年8月8日)
- 国民生活センター「後を絶たない、まつ毛エクステンションの危害」(平成27年6月4日)
- 消費者庁「株式会社ハウワイに対する景品表示法に基づく措置命令について」(令和3年6月3日)
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「審査報告書」(グラッシュビスタ外用液剤、平成26年1月31日)
- PMDA「グラッシュビスタ外用液剤0.03% 医薬品リスク管理計画書」
- 東京都保健医療局健康安全部薬務課「医薬品等適正広告基準について」(講習会資料)
- 厚生労働省「まつ毛エクステンションによる危害防止の徹底について」(平成20年3月7日 健衛発第0307001号)
- 厚生労働省「まつ毛エクステンションの危害」
- 化粧品基準(平成12年9月29日 厚生省告示第331号)
- 厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年 薬食発0721第1号)
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「まつ毛」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「毛周期」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「マスカラ」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「アイクリーム」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「アイライナー」
- 日本眼科医会「コンタクトレンズと目のお化粧—健康で美しい目を守るには—」(月山純子)
- 日本眼科学会「マイボーム腺機能不全診療ガイドライン」(日本眼科学会雑誌 第127巻、2023年)
- 日本皮膚科学会 接触皮膚炎診療ガイドライン2020(日本皮膚科学会雑誌 130巻4号)
- U.S. FDA「Warning Letters Address Drug Claims Made for Products Marketed as Cosmetics」