この記事でわかること
- リポソームのつくりと、肌のどこまで届くのか
- 成分表でリポソームがどう書かれるか
- エクソソームや医薬品とどう違うのか
「リポソーム美容液」「リポソーム配合」と書かれていると、美容成分を肌の中まで届けてくれそうで、本当のところが気になりますよね。
結論から言うと、リポソームは美容成分を小さな膜の袋に包むための「かたち」で、成分の名前ではありません。塗った袋は肌のいちばん外側の角層でほどけて広がり、働くのはほかの化粧品と同じく角層までです。まずは、どんな袋なのかから見ていきましょう。
リポソームは、リン脂質の二重の膜でできた小さな袋
リポソームは、リン脂質という脂質が水の中で二重に並んでできる、小さな袋です。リン脂質には水になじむ部分と油になじむ部分があり、水の中に入れると、油になじむ部分どうしを内側に向けて二重の膜をつくるからです。
リポソームは、リン脂質が二重に並んだ膜でできた、小さな袋です。
袋の内側の水には水に溶ける成分を、膜の中には油に溶ける成分を入れられるので、成分を運ぶ入れ物として使われます。膜が玉ねぎのように何重にも重なったもの、1枚の膜でできた小さいもの、1枚の膜でできた大きいものの3つに分けられます。名前は、脂肪と体を意味する言葉を組み合わせたものです。
材料のリン脂質は、胚芽や卵黄、豆腐などにも含まれていて、天然のものは何種類かの混合物をまとめてレシチンと呼びます。天然のレシチンは熱や酸化に弱いため、化粧品では水素を加えて安定させた水素添加レシチンが、リポソームや乳化の材料として使われています。
リポソームは、中身を包んで肌にのせるための入れ物だと考えるとわかりやすいです。
乾燥は、角層から水分が逃げて起きる
肌の乾燥は、いちばん外側の角層から水分が逃げて、うるおいが足りなくなることで起きます。リポソームが肌のどこで働くのかを知るには、角層がどうやってうるおいを保っているかを先に見ておくとわかりやすいです。
角層は、この3つのバランスでうるおいを保っています。
- 1皮脂膜 肌の表面をおおう、皮脂と汗の膜
- 2天然保湿因子 角層の細胞の中で、水を抱える
- 3細胞間脂質 細胞のすき間を埋めて、水分を逃がさない。約50%はセラミド
角層では、皮脂膜が表面をおおい、天然保湿因子が細胞の中で水を抱え、細胞間脂質が細胞のすき間を埋めて水分を逃がしません。細胞間脂質の約50%はセラミドです。このバランスが崩れると、すき間から水分が逃げて、かさつきや肌あれにつながります。
化粧品が働けるのは、この角層の中までです。リポソームも、この範囲の中で考えます。
塗ったリポソームは、角層の外側でほどけて広がる
塗ったリポソームは、袋の形のまま肌の中へ進むのではなく、角層の外側でほどけて広がります。角層の外側には脂質の層があり、リポソームの膜もリン脂質という脂質でできているので、そこで壊れて混ざり合うと考えられているからです。
塗ったリポソームは、枠で囲んだ角層の外側でほどけて、そこにある脂と混ざります。
塗る
ふれる
ほどける
混ざる
実際に、ヒトの皮膚にリポソームを塗って細かく観察すると、皮膚の表面より下で形を保っていたリポソームはほぼゼロだったという結果があります。総説でも、塗ったリポソームの大部分は角層の上のほうにたまり、その場所で少しずつ働く貯蔵庫のような役目をすると整理されています。
リポソームは中身を抱えたまま肌の中へ運ぶ乗り物ではなく、角層の外側で中身を広げる入れ物です。
保湿の働きは、膜の材料と包んだ成分しだい
リポソームの保湿の働きは、「リポソームだから」ではなく、膜の材料と包んだ成分で決まります。同じリポソームでも、材料によって結果が分かれているからです。
たとえば、卵のリン脂質でつくったリポソームを塗ると、肌の水分量が1.5倍に上がったという結果があります。一方で、大豆のリン脂質でつくったものは、比べるために塗った製剤と差がありませんでした。
包んだ成分を守る役目もあります。植物エキスを包む目的のひとつは、酸化しやすいポリフェノールを酸化から守ることだと整理されています。その一方で、リポソームそのものも長く保存すると形が崩れやすく、これがリポソームの商品が多くない理由のひとつとされてきました。
化粧品として表示できるのは、製品全体で「皮膚にうるおいを与える」「皮膚の乾燥を防ぐ」といった範囲です。効能評価試験を行った製品に限っては、「乾燥による小ジワを目立たなくする」と表示することもできます。
リポソームの化粧品を選ぶときは、中にどんな成分が包まれているかを成分表で確かめてみてください。
成分表では、膜の材料の名前で書かれる
成分表を見ても「リポソーム」という言葉が見つからず、不思議に思う人は多いと思います。リポソームは成分の名前ではないので、成分表では膜の材料の名前で書かれます。国の決まりでは、いくつかの成分を混ぜた原料は、混ざっている成分ごとに書くことになっているためです。
たとえば、商品名に「リポソーム」と入った美容液でも、全成分には水添レシチンやフィトステロールズといった膜の材料と考えられる成分が並び、リポソームという言葉は出てきません。
化粧品では、1986年に、リポソームを使った最初の商品が発売されたとされています。日本でも1992年にリポソームを使った美容液が発売され、その袋の大きさは0.1〜0.2ミクロンとされています。0.1ミクロンは1万分の1ミリにあたります。
成分表では、水添レシチンなどの名前がリポソームの手がかりになります。
「浸透」は角層までの意味で、保管は熱と日光を避ける
商品に「浸透」と書いてあっても、それは角層までの話です。化粧品業界の広告のガイドラインでは、化粧品が届くのは表皮の角質層までが限界であることをふまえ、それより下の層への浸透をうたわないこと、浸透と書くときは「角質層まで」などの限定の言葉を添えることが決められています。
リポソームの商品で、浸透の文字の横に「角層まで」という注記が小さく添えられているのはこのためです。粒の小ささを強調した商品説明でも、届く先は角層までとされています。
保管にも少し気を配りましょう。リポソームは長く置くと形が崩れやすく、材料の天然レシチンは熱や酸化に弱い性質があります。開けたあとはふたをしっかり閉め、高温や直射日光を避けて保管するのが安心です。肌に合わず赤みやかゆみが出たときは、使うのをやめてください。
「浸透」は角層まで、保管はふたを閉めて熱と日光を避ける、と覚えておけば十分です。
エクソソームや注射の薬とは、同じ袋でも別のもの
リポソームは、エクソソームや注射の医薬品とは、同じ膜の袋でも別のものです。どこから来た袋なのか、何に使うのかが違うからです。
エクソソームも脂質の二重の膜でできた袋ですが、エクソソームは細胞が外に出す袋で、細胞どうしの情報のやりとりにかかわる物質などを含みます。これに対してリポソームは、人がリン脂質からつくる袋です。細胞外小胞の国際的な学会も、細胞から出されることを条件に挙げていて、リポソームは細胞に由来しない合成の側として扱っています。
薬にも使われている技術だからよく効く、という連想も当てはまりません。抗がん剤のドキソルビシンをリポソームに包んだ医薬品は、アメリカで最初に承認されたナノ医薬品で、注射で血液の中に入れて使います。日本でもリポソーム製剤の注射薬として使われています。肌の表面に塗る化粧品とは、目的も使い方も決まりもまったく別のものです。
ナノの表示も、誤解されやすい点です。ヨーロッパでは、溶けずに体の中に残るような1〜100ナノメートルの大きさの材料をナノマテリアルとして、成分名のうしろに「ナノ」を意味する表示を添えることを義務づけています。ただし、リポソームのような脂質でできた柔らかい構造は、対象から外す方向の考え方が示されていて、リポソームだから必ずこの表示がつくというわけではありません。
同じリポソームという言葉でも、化粧品のリポソームは、角層の上で中身を広げる入れ物です。
まとめ
- リポソームは成分の名前ではなく、リン脂質の二重の膜でできた小さな袋という「かたち」です
- 乾燥は角層から水分が逃げて起き、化粧品が働くのも角層までです
- 塗ったリポソームは角層の外側でほどけて広がり、形のまま下へはほぼ入りません
- 保湿の働きは膜の材料と包んだ成分しだいで、成分表では水添レシチンなど材料の名前で書かれます
- 「浸透」の表示は角層までが決まりで、エクソソームや注射の医薬品とは別のものです
リポソームは、中身の成分を角層で広げるための入れ物です。何が包まれているかを成分表で見て選ぶのが、いちばん確かな見方です。
よくある質問
リポソームは肌の中まで届きますか?
形を保ったまま角層より下に入るものは、ほぼありません。塗ったリポソームは角層の外側の脂質の層でほどけて混ざると考えられていて、化粧品が働くのも角層までです。
成分表に「リポソーム」と書かれていないのはなぜですか?
リポソームは成分の名前ではなく、膜でできた袋というかたちの名前だからです。成分表では、水添レシチンなど膜の材料と考えられる成分の名前で書かれます。
リポソームの化粧品は保湿力が高いですか?
膜の材料と包んだ成分しだいです。卵のリン脂質でつくったリポソームでは肌の水分量が1.5倍に上がったという結果がある一方、大豆のリン脂質でつくったものでは差がありませんでした。
リポソームとエクソソームは同じものですか?
違います。どちらも脂質の二重の膜でできた袋ですが、エクソソームは細胞が外に出す袋で、リポソームは人がリン脂質からつくる袋です。
リポソームはいつから化粧品に使われていますか?
1986年に、リポソームを使った最初の化粧品が発売されたとされています。日本でも1992年に、リポソームを使った美容液が発売されています。
この記事で参照した情報
- 国立健康・栄養研究所「セラミド(N-アシルスフィンゴシン)」素材情報
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「リポソーム」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「ベシクル」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「リン脂質」
- Dreier J, Sørensen JA, Brewer JR. Superresolution and Fluorescence Dynamics Evidence Reveal That Intact Liposomes Do Not Cross the Human Skin Barrier. PLOS ONE 2016;11(1):e0146514
- Hua S. Lipid-based nano-delivery systems for skin delivery of drugs and bioactives. Front Pharmacol 2015;6:219
- Betz G, et al. In vivo comparison of various liposome formulations for cosmetic application. Int J Pharm 2005;296(1-2):44-54
- Lens M. Phospholipid-Based Vesicular Systems as Carriers for the Delivery of Active Cosmeceutical Ingredients. Int J Mol Sci 2025;26(6):2484
- 厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年 薬食発0721第1号)
- 厚生労働省「化粧品の全成分表示の表示方法等について」(平成13年3月6日 医薬監麻発第220号・医薬審発第163号)
- コスメデコルテ「リポソーム アドバンスト リペアセラム」商品ページ
- コーセー「リポソーム|研究の強み」
- コーセー ニュースリリース「コスメデコルテ モイスチュアリポソーム」誕生25周年(2017年10月30日)
- コーセー ニュースリリース(2021年6月15日)「リポソーム アドバンスト リペアセラム」
- Meybeck A. Past, Present and Future of Liposome Cosmetics. In: Liposome Dermatics. Springer, 1992
- 日本化粧品工業会「化粧品等の適正広告ガイドライン 2020年版」
- Welsh JA, et al. Minimal information for studies of extracellular vesicles (MISEV2023). J Extracell Vesicles 2024;13(2):e12404
- 日本再生医療学会「細胞外小胞等の臨床応用に関するガイダンス」説明資料(2024年6月14日、厚生労働省掲載)
- Barenholz Y. Doxil — The first FDA-approved nano-drug: Lessons learned. J Control Release 2012;160(2):117-134
- PMDA「ドキソルビシン塩酸塩(リポソーム製剤)の『使用上の注意』の改訂について」(2026年7月14日)
- Regulation (EC) No 1223/2009 on cosmetic products(統合版 2024-04-24)
- SCCS. Guidance on the Safety Assessment of Nanomaterials in Cosmetics, 2nd revision (SCCS/1655/23)