この記事でわかること
- 化粧品が1品ずつ審査されないしくみ
- 容器に必ず書いてある7つのこと
- 輸入品の責任者と回収の決まり
ボトルの裏の会社名と住所を見て、これはつくった会社なのか、国の審査を受けたしるしなのか、気になったことがある人は多いと思います。
結論から言うと、あれは製造販売業者、つまりその製品を市場に出す責任を負う会社です。化粧品は1品ごとに国の審査を受けていないかわりに、会社のほうが国の許可を受けて責任を負っています。まずは、化粧品とは何かから見ていきましょう。
化粧品は、体への作用がおだやかなものと法律で決まっている
化粧品は、人の体への作用がおだやかなものと、薬機法第2条第3項で決まっています。化粧品とは何かの範囲を、法律が定めているからです。
人の体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、または皮膚や髪を健やかに保つために、体に塗ったり散布したりして使うものが化粧品です。医薬品の用途を兼ねるものと医薬部外品は除かれています。
この「作用がおだやか」という前提が、化粧品の決まり全体の出発点です。
化粧品は、1品ごとに国の審査を受けていない
化粧品は、1品ごとには国の審査を受けていません。薬機法第14条第1項が品目ごとの承認を求めているのは、厚生労働大臣の指定する成分を含む化粧品だけだからです。
それ以外の化粧品は、第14条の9第1項にもとづいて、売り出す前に品目ごとに厚生労働大臣へ届け出ます。届け出た事項を変えたときも、30日以内に届け出ます。これは届出であって承認ではないので、中身を審査して可否を決める手続きではありません。販売名にも決まりがあり、処方の違う製品に同じ販売名を使わないこととされています。
化粧品は、許可を受けた会社が品目ごとに届け出て、表示をつけて市場に出します。
許可を得る
届け出る
表示する
出す
この形は2001年の制度の切りかえで生まれました。それまでの承認制をやめて、成分の規制と全成分表示に切りかえたぶん、会社の責任が重くなっています。
そのかわり、会社のほうが国の許可を受けている
製品ごとの審査がないかわりに、会社のほうが国の許可を受けています。審査されるのは製品ではなく、会社の品質管理と、売ったあとの安全管理の体制です。
化粧品を売るには、2つの許可と、品目ごとの届出がいります。
製造販売業
市場に出す
責任を負う
製造業
つくる・包む
保管する
製造販売届
品目ごとに
届け出る
薬機法第12条が、化粧品製造販売業許可を定めています。この許可がなければ、仕事として化粧品を製造販売できません。第12条の2は、品質管理の方法や、売ったあとの安全管理の方法が厚生労働省令の基準に合わないときは、許可を与えないと定めています。許可は3年を下らない期間ごとに更新しないと、効力を失います。
つくる側の許可は別で、第13条が製造業の許可を製造所ごとに与えると定めています。製造販売業と製造業は別の許可なので、裏面の会社がつくった会社とは限りません。
裏面の会社は、市場に出す責任を負う会社と読みましょう。
容器に書く7つのことの1つ目が、責任を負う会社の名前
化粧品の容器には書くべきことが7つあり、その1つ目が製造販売業者の名前と住所です。薬機法第61条が、化粧品の直接の容器や直接の包みに書くことを、7つの号に並べているからです。
7つは、製造販売業者の氏名または名称と住所、製品の名前、製造番号または製造記号、指定された成分を含むならその成分の名前、指定された化粧品なら使用の期限、基準が定められた化粧品ならその基準で決まった事項、そして省令で定める事項です。
3つ目の製造番号はロット番号にあたります。いっぽう使用の期限は、厚生労働大臣が指定する化粧品に限るという条件つきなので、多くの化粧品には期限が書かれていません。6つ目の基準は、第42条第2項にもとづく化粧品基準のことです。
裏面の会社名は、この製品に責任を負う会社の名前なのです。
全成分表示は、国がほぼすべての成分を指定してできた
第61条を読んでも、「全成分を書け」とはどこにも書かれていません。全成分表示は、指定された成分を含むならその名前を書くという第4号と、ほぼすべての成分を指定した告示の組み合わせで成り立っているからです。
2000年9月29日の厚生省告示第332号で、事実上すべての成分が指定する成分とされ、結果として全成分表示になりました。この切りかえを説明した通知も、化粧品は原則として配合するすべての成分の名前を書くこととし、これを全成分表示と呼んでいます。
書き方は、別の通知「化粧品の全成分表示の表示方法等について」にあり、成分表を読むときの前提の2つはここから来ています。1つは、成分名は含まれる量の多い順に書くが、1%以下の成分と着色剤は順不同でよいこと。もう1つは、配合した成分についてくる不純物などで、効果が出るより少ない量しか含まれない、いわゆるキャリーオーバー成分は書かなくてよいことです。
成分表の前のほうにある成分ほど多い、と読めるのはこのためです。
化粧品のGMPは、法律の義務ではなく業界の自主基準
化粧品の「GMP」は、法律の義務ではなく業界の自主基準です。日本のGMP省令の対象は医薬品と医薬部外品だけで、化粧品は入っていないからです。
化粧品の製造販売業者にかかる法律上の品質管理の基準は、品質管理の基準を定めた省令のほうです。化粧品のGMPとしてよく聞く国際規格ISO 22716は、日本化粧品工業会が自主基準として採用し、守るよう呼びかけているものです。
「化粧品GMP取得」といった表示は、法律の義務ではなく自主的な取り組みと受け取るのが正確です。
輸入品にも、日本国内の責任者がいる
海外の化粧品を日本で売る場合も、日本国内の会社が製造販売業許可を持ち、責任を負います。製造販売業の許可がなければ、日本で化粧品を製造販売できないからです。
輸入する会社には、包装・表示・保管の区分の製造業許可も必要です。日本語表示を貼る作業や保管が、制度の上では製造にあたるからです。承認の要らない化粧品なら、外国の製造業者は大臣の認定を受けなくてもよく、輸入する側が外国の製造業者の名前などを大臣に届け出れば足ります。
そのため、正規に流通している輸入品には、必ず日本国内の責任者がいます。裏面の日本語表示に会社名が書かれているのは、そのためです。
回収は3つのクラスに分かれ、すべてが危険なわけではない
化粧品の回収は3つのクラスに分かれていて、回収だからといってすべてが危険なわけではありません。クラスは、健康被害のおそれの重さで分けられているからです。
回収は健康被害の重さで3つに分かれ、クラスⅢがいちばん軽いものです。
クラスⅠ
重い健康被害の
おそれ
クラスⅡ
一時的な
健康被害のおそれ
クラスⅢ
健康被害は
まず考えにくい
製造販売業者が回収するときは、第68条の11により、回収に着手したことと回収の状況を厚生労働大臣に報告する義務があり、条文には化粧品も明記されています。
クラスⅠは、製品の使用などが重い健康被害や死亡の原因になりうる状況です。クラスⅡは、一時的な、または医学的に元に戻せる健康被害の原因になる可能性がある状況か、重い健康被害のおそれはまず考えられない状況です。クラスⅢは、健康被害の原因になるとはまず考えられない状況です。
香りがいつもと違う、量が足りないといった回収は、クラスⅢにあたるものが多いと考えられます。回収イコール危険、ではありません。
まとめ
- 化粧品は品目ごとの承認を原則受けていません。承認が要るのは指定された成分を含む化粧品だけで、ほかは品目ごとに届け出ます
- 製造販売業許可と製造業許可は別のもの。前者は市場に出す責任、後者は製造所ごとの許可です
- 容器に書くことは第61条の7つで、1つ目が製造販売業者の名前と住所です
- 全成分表示は第61条第4号と告示の組み合わせ。化粧品のGMPは業界の自主基準です
- 輸入品も国内の製造販売業者が責任を負います。回収はクラスⅠ〜Ⅲで、クラスⅢはいちばん軽いものです
化粧品は1品ごとに国の審査を受けていないかわりに、成分の決まり、全成分表示、会社への許可で安全を守るしくみです。裏面の会社名は、その製品に責任を負う会社の名前だと覚えておきましょう。
よくある質問
化粧品の裏に書いてある会社名は製造元?
製造元とは限りません。書かれているのは製造販売業者で、その製品を市場に出す責任を負う会社です。実際につくる製造業とは別の許可です。
化粧品は国の審査を受けている?
1品ごとの審査は原則受けていません。国が指定する成分を含む化粧品だけが承認の対象で、それ以外は品目ごとの届出です。かわりに会社が製造販売業の許可を受け、品質管理と安全管理の体制を審査されます。
化粧品に使用期限が書いていないのはなぜ?
使用の期限を書く義務があるのは、厚生労働大臣が指定する化粧品だけだからです。製造番号または製造記号は、すべての化粧品に書く決まりです。
海外の化粧品は誰が責任を負う?
日本国内で製造販売業の許可を持つ会社です。正規に流通している輸入品には必ず国内の責任者がいて、日本語表示に会社名が書かれています。
化粧品の回収はすべて危険なもの?
そうとは限りません。回収は3つのクラスに分かれ、いちばん軽いクラスは健康被害の原因になるとはまず考えられない状況です。香りの違いや量の不足などは、これにあたるものが多いと考えられます。
この記事で参照した情報
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行令(昭和36年政令第11号)
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則(昭和36年厚生省令第1号)
- 医薬品、医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品の品質管理の基準に関する省令(平成16年厚生労働省令第136号)
- 化粧品基準(平成12年9月29日 厚生省告示第331号)
- 厚生省医薬安全局長通知「化粧品規制緩和に係る薬事法施行規則の一部改正等について」(平成12年9月29日 医薬発第990号)
- 厚生労働省通知「化粧品の全成分表示の表示方法等について」(平成13年3月6日 医薬監麻発第220号・医薬審発第163号)
- 厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知「改正薬事法の施行に伴う製造販売の承認を要しない医薬品等の取扱い等について」(平成17年3月31日 薬食審査発第331015号)
- 厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知「医薬部外品及び化粧品の外国製造業者の範囲について」(平成17年3月31日 薬食審査発第331018号)
- 厚生労働省医薬食品局長通知「医薬品・医療機器等の回収について」(平成26年11月21日 薬食発1121第10号)
- 日本化粧品工業会「化粧品の製造及び品質管理」
- 東京都健康安全研究センター「化粧品の製造販売届」