この記事でわかること
- マイカが化粧品に入っている理由と役割
- 天然のマイカと合成マイカの違い
- 「発がん性」の話の正体と粉の上手な使い方
パウダーやアイシャドウの成分表示で「マイカ」を見つけて、どんな成分なのか、発がん性があると聞いたけれど肌にのせても大丈夫なのか、気になりますよね。
結論から言うと、マイカは化粧品につやとすべりを出すための鉱物の粉で、肌に塗ることは目もとも含めて色材として認められています。発がん性の話として出てくるのは、主に粉じんを長く吸い込む職場の話です。気をつけたいのは、粉を顔のまわりで舞い上げないように使うことです。まずは、マイカがどんな粉なのかから見ていきましょう。
マイカとは、化粧品につやとすべりを出す雲母の薄い板の粉
マイカとは、雲母という鉱物を細かくくだいた、薄い板の形をした粉です。化粧品では色をつけるためではなく、感触や仕上がりを整える体質顔料として入っています。
主な成分は含水ケイ酸アルミニウムカリウムで、淡い灰色の粉です。原料には白雲母と金雲母があり、一般には不純物の少ない白雲母が広く使われています。雲母は薄い六角形の板の形をした結晶で、くだいても薄い板の形のまま残るのが特徴です。主な産地は、インドやスリランカ、ブラジル、米国、カナダなどです。
成分表示ではそのまま「マイカ」と書かれ、ファンデーションや口紅、アイシャドウ、おしろいなど、メイク用品の大事な粉になっています。マイカは、メイク用品の仕上がりを整える、雲母の薄い板の粉と覚えておきましょう。
化粧品でのマイカの役割は、つや・すべり・パール感
化粧品でのマイカの役割は、つやを出すこと、すべりをよくすること、パール感を出す粉の土台になることの3つです。
3つの役割は、どれも表面がなめらかな薄い板という形から生まれます。
つや
平らな面が
光を返す
すべり
肌の上で
よくのびる
パール感
酸化チタンで
おおって輝く
板の形の粉は、のびやすべりのよい感触になります。マイカはさらに弾力があって肌へのつきもよいので、パウダーののびとつきの両方を整えます。
パール感を出すのは、マイカの表面を酸化チタンの薄い膜でおおった雲母チタンという粉です。パールの輝きを出す粉は、はじめは魚のうろこからつくられていましたが、1965年に酸化チタンでおおった雲母が開発され、いまはこれが主流です。成分表示では「マイカ、酸化チタン」のように、混ざっている成分がそれぞれ書かれます。
アイシャドウのきらめきも、ファンデーションのつやも、マイカの薄い板の形が生み出していると覚えておきましょう。
マイカは、タルクやセリサイトと組み合わせて使われる
マイカは、ほかの粉と組み合わせて、パウダーの白さや透明感、感触を整えるのに使われます。同じ板の形の粉でも、粉ごとに見え方や肌ざわりが違うからです。
たとえばタルクは、マイカやセリサイトより白っぽく不透明な粉です。セリサイトは絹雲母とも呼ばれ、マイカと同じ成分でできていますが、結晶がより細かく、なめらかでのびがよく、透明感にすぐれるとされています。マイカより真珠のような光沢があり、ファンデーションやおしろいによく使われます。
パウダーの成分表に、タルク、マイカ、セリサイトなどの粉がいくつも並ぶのは、こうした違いを組み合わせて仕上がりをつくっているからです。粉の形による違いはメイクの粉の記事でまとめています。成分表でマイカを見たら、つやと透明感を受けもつ粉と考えるとわかりやすいでしょう。
合成マイカは、原料をとかしてつくる不純物の少ないマイカ
成分表で「合成金雲母」を見て、マイカと何が違うのか迷う人も多いと思います。合成マイカは、天然のマイカによく似た結晶を、原料から人の手でつくった粉です。成分表示では「合成金雲母」と書かれ、合成フルオロフロゴパイトと書かれることもあります。
無水ケイ酸、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ケイフッ化カリウムをまぜて高温でとかし、結晶を育ててつくります。天然の金雲母の一部が、フッ素に置きかわった形の結晶です。鉱物を掘り出してくだく天然のマイカと違って不純物を含まないので、白さと透明感にすぐれるとされています。天然のマイカは、肌の上で水分や油分を吸うと、くすんで見えることがあります。
安全性では、米国の化粧品成分の専門家委員会が、合成金雲母は今の使い方と濃度で化粧品に使うのは安全と結論しています。人の肌に貼る試験では、刺激も、くり返し貼ったときのアレルギーの反応も見られませんでした。顔のパウダーでは67%まで、口紅では20%まで使われています。
天然と合成の違いは、どちらも化粧品に使われる板の粉で、合成のほうが白く透明に仕上がりやすいという点です。
「マイカの発がん性」の話は、粉じんを長く吸い込む職場の話
「マイカ 発がん性」と検索して、不安になった人も多いと思います。マイカについて注意がうながされているのは、粉じんを長く吸い込んだときの肺の障害で、化粧品を肌に塗る話ではありません。
日本の国がつくった安全データシートのひな形では、マイカの発がん性には区分がついていません。区分がついているのは、長く、くり返し吸い込んだときの呼吸器の障害です。根拠になったのは、マイカのくずを粉砕する作業で粉じんを吸った労働者に、じん肺が多く見られたという報告です。米国の国立労働安全衛生研究所も、マイカの粉じんで起こりうる症状にじん肺やせき、息苦しさを挙げ、影響を受ける臓器を呼吸器としています。
同じ板の形の鉱物の粉で、パウダーに一緒に入ることも多いタルクの話とも分けて考えます。国際がん研究機関が2024年に「おそらく発がん性がある」2Aに分類したのはタルクで、マイカとは別の鉱物です。
マイカで気をつけたいのは、塗ることより、粉を長く、たくさん吸い込むことだと覚えておきましょう。
肌に塗るマイカは、目もとにも使える色材として認められている
肌に塗る使い方では、マイカは目もとや口紅も含めて、化粧品に使える色材として認められています。塗る話と吸い込む話では、体に入る経路が違うからです。
米国食品医薬品局は、マイカを、目のまわり、口紅を含む一般の化粧品、体の外側に使える色材として認めていて、使い方の制限はつけていません。日本の化粧品基準でも、マイカに配合量の制限はありません。アイシャドウなどの目もとのメイクや口紅にも使えるのは、このためです。
一方で、ルースパウダーやアイシャドウの粉を顔のまわりで舞い上げると、そのぶん吸い込みやすくなります。ブラシやパフに取ったら余分な粉を落とし、軽くのせるようにすると安心です。肌に合わないと感じたら使うのをやめ、皮膚科に相談しましょう。
天然のマイカには、児童労働の問題が指摘されている
天然のマイカは、採れる場所によって、子どもが働かされている問題が指摘されています。米国労働省は、インドとマダガスカルのマイカを、児童労働でつくられている品目の一覧に載せています。
インドでは、子どもが使われなくなった鉱山でマイカを拾い集めたり、選り分けたりする作業にかかわっているとされます。マイカは化粧品のほか、塗料や電子部品にも使われる粉です。成分表示から産地はわからないので、気になる人は、製品をつくる会社が調達について公開している情報を見てみましょう。
まとめ
- マイカは雲母をくだいた薄い板の粉で、メイク用品の仕上がりを整える体質顔料です
- 役割はつや・すべり・パール感で、酸化チタンでおおうと雲母チタンになります
- 合成マイカは成分表示で合成金雲母と書かれ、不純物が少なく白さと透明感にすぐれます
- 発がん性の話の多くは粉じんを長く吸い込む職場の話で、2Aに分類されたのはタルクです
- 塗る使い方は目もとも含めて色材として認められ、粉は舞い上げずに使います
マイカは、塗る話と吸い込む話を分けて考えるのがポイントです。パウダーは余分な粉を落としてから軽くのせて、つやのある仕上がりを楽しんでください。
よくある質問
マイカとは、化粧品の何の成分ですか?
雲母を細かくくだいた、薄い板の形の粉です。パウダーやアイシャドウ、口紅などに、つやとすべりを出す体質顔料として入っています。酸化チタンでおおうと、パール感を出す粉の土台にもなります。
マイカに発がん性はありますか?
注意されているのは、粉じんを長く吸い込む職場の話です。日本の国の安全データシートのひな形では、発がん性に区分はなく、区分がついているのは粉じんを長く吸い込んだときの呼吸器の障害です。国際がん研究機関が2Aに分類したのはタルクで、マイカとは別の鉱物です。
マイカ入りの化粧品は、肌に塗っても大丈夫ですか?
目もとにも使える色材として認められています。米国食品医薬品局は、目のまわりや口紅を含む化粧品への使用を認め、日本の化粧品基準でも配合量の制限はありません。肌に合わないと感じたら、使うのをやめましょう。
合成マイカと天然のマイカの違いは何ですか?
合成マイカは、原料をとかして人の手でつくったマイカです。成分表示では「合成金雲母」と書かれ、不純物を含まないので白さと透明感にすぐれるとされます。米国の化粧品成分の専門家委員会は、今の使い方と濃度で安全と結論しています。
マイカとタルクの違いは何ですか?
どちらも板の形の鉱物の粉ですが、別の鉱物です。タルクのほうが白っぽく不透明で、マイカはつやとパール感の土台になります。2024年に国際がん研究機関が2Aに分類したのは、タルクのほうです。
この記事で参照した情報
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「マイカ」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「セリサイト」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「合成フッ素金雲母」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「パール剤」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「板状粉体」
- Becker LC, et al. Safety Assessment of Synthetic Fluorphlogopite as Used in Cosmetics. Int J Toxicol 2015;34:43S-52S
- 米国食品医薬品局(FDA)「Color Additives Permitted for Use in Cosmetics」
- 化粧品基準(平成12年9月29日 厚生省告示第331号)
- 厚生労働省「化粧品の全成分表示の表示方法等について」(平成13年3月6日 医薬監麻発第220号・医薬審発第163号)
- 厚生労働省 職場のあんぜんサイト GHS対応モデルSDS「マイカ」
- 米国国立労働安全衛生研究所(NIOSH) Pocket Guide to Chemical Hazards「Mica (containing less than 1% quartz)」
- IARC プレスリリース No.352「IARC Monographs evaluate the carcinogenicity of talc and acrylonitrile」(2024年7月5日)
- 米国労働省 国際労働局(ILAB)「List of Goods Produced by Child Labor or Forced Labor」
- 米国労働省 国際労働局(ILAB)「Study on Child Labor in the Scrap Mica Supply Chain in India」(2024年9月)