この記事でわかること
- しみができる流れの中で、2つが働く場所の違い
- 医薬部外品で認められた効能の違い
- 一緒に使えるかと、飲み薬との違い
しみ対策の成分を調べると、ナイアシンアミドとトラネキサム酸がよく並んでいて、何が違うのか、どちらを選べばいいのか迷いますよね。
結論から言うと、2つの違いは、認められた効能の幅と、しみができるまでの流れの中で働く場所です。医薬部外品の有効成分として、ナイアシンアミドはシワ・肌あれ・しみの3つ、トラネキサム酸はしみを防ぐ効能が認められています。どちらが強いという関係ではなく、役割が違う2つです。まずは、しみが肌の中でどうやってできるのかから見ていきましょう。
しみは、メラニンが作られ、まわりの細胞に渡されてできる
しみは、紫外線を浴びて作られたメラニンという色の粒が、肌の細胞にたまってできます。メラニンは、もともと紫外線から肌を守るために作られるものです。
流れは、大きく分けて次のとおりです。紫外線を浴びると、表皮の細胞から「メラニンをつくれ」という合図が出ます。合図を受けたメラニンをつくる細胞が、酵素の働きでメラニンを作ります。できたメラニンは、まわりの表皮の細胞に渡されて、そこにたまります。
つまり、しみの手入れでは、この流れのどこで働く成分かを見ると違いがわかります。ナイアシンアミドもトラネキサム酸も、この流れの別々の段階に関わっています。
トラネキサム酸は合図、ナイアシンアミドは受け渡しで働く
トラネキサム酸は「つくれ」という合図の段階で、ナイアシンアミドはできたメラニンを渡す段階で働くと考えられています。同じしみを防ぐ成分でも、流れの中で受け持つ場所が違うのです。
トラネキサム酸は左の枠の「合図」、ナイアシンアミドは右の枠の「渡される」ところで働くと考えられています。
合図が出る
できる
渡される
しみになる
トラネキサム酸は、合図の段階で働きます。紫外線を浴びた表皮の細胞では、プラスミンという酵素ができ、これがメラニンづくりを促す物質を増やします。トラネキサム酸は、この流れをふさぐと考えられています。止血剤として使われてきた経緯はトラネキサム酸の記事にまとめています。
ナイアシンアミドは、渡す段階で働きます。メラニンをつくる酵素の働きやメラニンの量は変えずに、できたメラニンがまわりの細胞に渡されるのを抑えたという結果があります。肌に塗ると、色素沈着が目立ちにくくなったという結果もあります。
承認の文言はどちらも「メラニンの生成を抑え」で始まりますが、働く場所は、トラネキサム酸が流れの入り口側、ナイアシンアミドが出口側と覚えておくとわかりやすいです。
認められた効能は、ナイアシンアミドのほうが幅広い
医薬部外品で認められた効能は、ナイアシンアミドがシワ・肌あれ・しみの3つ、トラネキサム酸がしみの1つです。ナイアシンアミドは、しみの流れだけでなく、角層のうるおいにも関わる成分だからです。
ナイアシンアミドは、医薬部外品の有効成分として「シワを改善する」「肌あれ、あれ性」「メラニンの生成を抑え、シミ・ソバカスを防ぐ」の3つの効能が認められています。トラネキサム酸を有効成分にした医薬部外品の効能は、「メラニンの生成を抑え、しみ・そばかすを防ぐ」です。
医薬部外品で認められた効能です。しみ・そばかすを防ぐ効能は、2つに共通です。
シワ
ナイアシンアミド
肌あれ
ナイアシンアミド
しみ・そばかす
2つとも
しみについての文言は、2つでほぼ同じです。どちらも「防ぐ」の効能で、これからできるしみを防ぐ方向の働きです。濃度ごとの使われ方などはナイアシンアミドの記事でくわしく解説しています。
しみを防ぐことは共通で、シワと肌あれにも効能があるのはナイアシンアミド、というのが効能の違いです。
ふつうの化粧品に入っている場合は、どちらも効能をうたえない
同じ成分名が入っていれば、同じように効くと思いますよね。でも、医薬部外品ではないふつうの化粧品に入っている場合は、上の効能はどちらもうたえません。効能を名乗れるのは、有効成分として承認を受けた医薬部外品だからです。
化粧品で言えるのは、厚生労働省が定めた56項目の範囲です。2つの成分がどちらも全成分の欄に並び、「整肌成分」などの配合目的が添えられた化粧品もあります。業界の広告のガイドラインでも、化粧品で特定の成分を強調するときは配合の目的を書き、その成分が有効成分であるかのような誤解を与えないことが求められています。
見分けるときは、名前の書かれ方も手がかりになります。医薬部外品の成分の名前は承認書の名前が原則で、ナイアシンアミドは「ニコチン酸アミド」と書かれます。厚生労働省がまとめた薬用化粧品の有効成分リストにも、この名前で載っています。トラネキサム酸は、どちらでも同じ名前です。
効能を求めるなら、「薬用」や「医薬部外品」の表示があり、「有効成分」の欄に名前があるかを確かめましょう。
飲むトラネキサム酸は医薬品で、塗るものとは別
トラネキサム酸の飲み薬は医薬品で、塗る医薬部外品や化粧品とは別のものです。区分が違うので、効能も注意も別に決められています。
市販の肝斑の飲み薬は第1類医薬品で、効能・効果は「しみ(肝斑に限る)」です。肝斑は、両頬などに左右対称に広がるしみのことです。塗る医薬部外品や化粧品には、肝斑の効能はありません。
飲み薬は、飲み方や飲めない人が添付文書で決まっています。ある市販薬の添付文書では、2か月を超えて続けて飲まないこと、トラネキサム酸を含むほかの飲み薬と一緒に飲まないこと、透析を受けている人は飲まないことが示され、血栓症のある人やそのおそれのある人は、飲む前に医師や薬剤師に相談するよう求めています。この飲み薬には、ビタミンの1つとしてニコチン酸アミド、つまりナイアシンアミドも入っていますが、飲む量や目的は塗るものとは別です。
飲み薬の効能や注意は、飲む医薬品の話として、塗る製品とは分けて考えます。
一緒に使えて、役割を分け合える
ナイアシンアミドとトラネキサム酸は、一緒に使えます。塗る2つを一緒に使ってはいけないという国の決まりはなく、働く場所も効能の幅も違うので、役割を分け合えるからです。
働く場所と効能の幅が違うので、組み合わせると手入れできる範囲が広がります。
しみを防ぐ
シワ・肌あれ・
しみ
しみ・シワ・
肌あれ
実際に、ナイアシンアミドとトラネキサム酸を含む4つの有効成分を組み合わせた医薬部外品も承認されていて、ナイアシンアミドがシワ、トラネキサム酸がしみを防ぐ効能を受け持っています。また、ナイアシンアミド2%とトラネキサム酸2%を合わせたクリームを日焼け止めと一緒に使うと、色素沈着が目立ちにくくなったという結果もあります。
ふつうの化粧品どうしを組み合わせた場合は、言える効能は56項目の範囲のままです。重ねるときは製品の使い方の案内に従い、赤みやかゆみが出たら使うのをやめましょう。しみを防ぎながら、シワや肌あれも手入れしたい人に、役割分担で選べる組み合わせです。
シワも気になるならナイアシンアミド、両頬のしみは相談を
しみを防ぎたいだけなら、医薬部外品であれば、どちらの成分でも認められた効能はほぼ同じです。だから、成分名よりも、「有効成分」の欄に名前があるか、肌に合うかで選ぶのが現実的です。
シワや肌あれも一緒に手入れしたい場合は、3つの効能をもつナイアシンアミドが選択肢になります。ただし、シワの効能を名乗れるのは、その効能で承認された製品だけです。両頬に左右対称に広がるしみが気になるときは、肝斑かもしれません。肝斑かどうかの見分けや、飲み薬を使うかどうかは、皮膚科や薬剤師に相談しましょう。肝斑の手入れの考え方は肝斑の記事でくわしく解説しています。
どちらの成分も、新しく使い始めるときは少しずつ試し、肌に合わないと感じたらやめるのが基本です。迷ったら、気になる悩みと「有効成分」の欄の2つを手がかりにしましょう。
まとめ
- しみは、紫外線で作られたメラニンがまわりの細胞に渡され、たまってできます
- トラネキサム酸は「つくれ」という合図の段階、ナイアシンアミドはメラニンを渡す段階で働くと考えられています
- 医薬部外品で、ナイアシンアミドはシワ・肌あれ・しみの3つ、トラネキサム酸はしみを防ぐ効能が認められています
- ふつうの化粧品に入っている場合は、どちらも効能はうたえません。飲むトラネキサム酸は医薬品で、塗るものとは別です
- 一緒に使ってはいけない決まりはなく、組み合わせた医薬部外品もあり、役割を分け合えます
ナイアシンアミドとトラネキサム酸は、どちらが上というより、得意な範囲が違う2つの成分です。まずは手元の製品の「有効成分」の欄で、どちらの名前があるかを見てみてください。
よくある質問
ナイアシンアミドとトラネキサム酸の違いは?
認められた効能の幅と、働く場所が違います。医薬部外品で、ナイアシンアミドはシワ・肌あれ・しみの3つ、トラネキサム酸はしみを防ぐ効能で使われます。トラネキサム酸は「メラニンをつくれ」という合図の段階、ナイアシンアミドはできたメラニンを渡す段階で働くと考えられています。
ナイアシンアミドとトラネキサム酸、しみにはどっちがいい?
どちらが上というものではありません。医薬部外品なら、しみの効能はどちらも「メラニンの生成を抑え」で始まる、しみ・そばかすを防ぐという文言です。成分名より「有効成分」の欄に名前があるかと、肌に合うかで選びましょう。シワや肌あれも気になるなら、3つの効能をもつナイアシンアミドが選択肢になります。
ナイアシンアミドとトラネキサム酸は一緒に使える?
一緒に使えます。一緒に使ってはいけない決まりはなく、2つを含む医薬部外品も承認されています。働く場所と効能の幅が違うので、役割を分け合える組み合わせです。重ねるときは製品の案内に従い、赤みやかゆみが出たら使うのをやめましょう。
化粧品に入っているナイアシンアミドやトラネキサム酸にも効果はある?
化粧品なら、承認された効能はうたえません。言えるのは厚生労働省が定めた56項目の範囲で、「整肌成分」などの配合目的が添えられます。効能を求めるなら、「薬用」「医薬部外品」の表示と、「有効成分」の欄に名前があるかを確かめましょう。部外品のナイアシンアミドは「ニコチン酸アミド」と書かれます。
トラネキサム酸の飲み薬と塗るものは同じ?
違います。飲み薬は医薬品で、塗るものとは別です。市販の肝斑の飲み薬は第1類医薬品で、効能・効果は「しみ(肝斑に限る)」です。続けて飲む期間や、血栓症のある人は相談することなどが添付文書で決まっているので、飲むかどうかは薬剤師に相談しましょう。
この記事で参照した情報
- 花王 化粧品Q&A「医薬部外品に有効成分として配合されるナイアシンアミドの効能効果には、どのようなものがありますか?」
- 厚生労働省「いわゆる薬用化粧品中の有効成分リストについて」平成20年12月25日 薬食審査発第1225001号
- 厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」平成23年7月21日 薬食発0721第1号
- Hakozaki T, et al. The effect of niacinamide on reducing cutaneous pigmentation and suppression of melanosome transfer. Br J Dermatol 2002;147(1):20-31
- Sheu SL. Treatment of Melasma Using Tranexamic Acid: What's Known and What's Next. Cutis 2018;101(2):E7-E8
- Reduction in facial hyperpigmentation after treatment with a combination of topical niacinamide and tranexamic acid: a randomized, double-blind, vehicle-controlled trial. Skin Res Technol 2014
- 東洋新薬 ニュース「日本初の医薬部外品承認を取得―ナイアシンアミドを含む4つの有効成分の組み合わせ―」2024年2月2日
- PMDA 一般用医薬品 添付文書(トラネキサム酸を主成分とする第1類医薬品)
- 日本化粧品工業会「化粧品等の適正広告ガイドライン」2020年版
- 日本化粧品工業会「全成分表示名称 よくある質問」