この記事でわかること
- しみのでき方と、化粧品・薬用化粧品・薬で言える効能の違い
- ハイドロキノンの日本と海外での扱い
- コウジ酸が一時止められた経緯の本当の中身
ハイドロキノンやコウジ酸、アルブチン。しみが気になると名前を見かける成分ですが、化粧品に入っていても大丈夫なのか、国によって話が違うのはなぜなのか、不安になりますよね。
結論から言うと、同じ成分でも、国によって扱いがまったく違います。ハイドロキノンは、ヨーロッパやアメリカでは肌を白くする市販品に使えませんが、日本では禁止も許可もされておらず、入れるかどうかは製造販売業者が判断します。まずは、しみが肌の中でどうできるのかから見ていきましょう。
しみは、メラニンがつくられて、たまることでできる
しみは、紫外線を浴びてつくられたメラニンという色の粒が、肌にたまってできます。成分の話をする前に、この流れを知っておくと、それぞれの効能がどこに向いているかがわかりやすくなります。
紫外線を浴びると、表皮でメラニンがつくられ、まわりの細胞に渡されます。ふだんは肌の入れかわりとともに外へ出ていきますが、つくられる量が多かったり、たまったりすると、しみとして目に見えるようになります。
医薬部外品で認められている「メラニンの生成を抑える」効能は、枠で囲んだところに向けたものです。
浴びる
できる
渡される
しみになる
医薬部外品には、「メラニンの生成を抑える」などの効能で承認された薬用化粧品があります。しみの流れのうち、メラニンがつくられるところに向けた効能です。
しみへの効能は、化粧品・薬用化粧品・薬で言える範囲が違う
同じしみの話でも、化粧品・薬用化粧品・薬では、国が認めている中身がまったく違います。区分ごとに、言ってよい効能の決まりが別だからです。
化粧品で書ける効能は、「日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ。」までです。化粧品の効能56項目に「美白」という言葉はありません。薬用化粧品などの医薬部外品には、「メラニンの生成を抑える」などの効能で承認されたものがあり、有効成分は品目ごとの承認で決まります。さらにアメリカでは、ハイドロキノン入りの処方薬1品目が、中等度から重度の肝斑に伴う色素斑を短い期間治療するために使われています。これは化粧品の効果とは別の話です。
しみの成分を見るときは、化粧品か、薬用化粧品か、薬かをまず確かめましょう。
ハイドロキノンは、欧米では肌を白くする市販品に使えない
ハイドロキノンは、ヨーロッパでもアメリカでも、肌を白くする市販品には使えません。どちらも、薬として慎重に扱う成分と位置づけているからです。
アメリカでは、ハイドロキノンは薬として扱われていて、アメリカ食品医薬品局が承認したハイドロキノン入りの薬は、先ほどの処方薬1品目だけです。同じ機関は副作用として、発疹や顔のはれ、そして肌の組織が褐色に変わる外因性組織褐変症を挙げていて、この症状は永続的になる可能性があるとされています。2020年の法律で、ハイドロキノン入りの市販品は新医薬品とみなされ、2020年9月23日以降、承認されていないものは市場から撤去されることになりました。
ヨーロッパでは、肌を白くするクリームとして長く使った結果、有害な副次的作用が示されたため、2001年1月1日から、この用途でのハイドロキノンの配合は認められていません。
欧米では、ハイドロキノンは化粧品の成分ではなく、薬の成分という扱いです。
日本のハイドロキノンは「解禁」ではなく、リストに載っていないだけ
「2001年の規制緩和でハイドロキノンが解禁された」という説明を見て、日本では使ってよいと国が決めたのだと思いますよね。でもハイドロキノンは「解禁された」のではなく、化粧品基準のリストに最初から載っていない成分です。2001年に変わったのは、化粧品基準の方式だからです。
化粧品基準は2001年4月1日から適用され、使ってよいものを並べる方式から、使ってはいけないものを並べるネガティブリスト方式に変わりました。ただし、防腐剤の別表第3と紫外線吸収剤の別表第4は、リストにあるものを決められた上限まで使えるというポジティブリストのままです。
配合禁止成分を挙げた別表第1は全30項目あり、その第18項にあるのはハイドロキノンモノベンジルエーテルという、名前は似ていても別の成分です。ハイドロキノンそのものは、別表第1にも、配合制限成分を挙げた別表第2にも載っていません。どの別表にも名前がない成分は、厚生労働省のQ&Aで、製造販売業者が自らの責任で安全性を確かめ、化粧品の定義から外れないよう十分に気をつけて、配合してよいかを判断することとされています。
つまり国がお墨付きを出しているわけでも、禁止しているわけでもなく、判断は企業に任されています。ハイドロキノンは、この位置にある成分です。
コウジ酸は禁止されておらず、2005年に「懸念はない」とされた
「コウジ酸は2003年に使用自粛になった」という説明もあり、使って大丈夫なのか迷う人は多いと思います。コウジ酸は禁止されたことはなく、2005年に国が、正しく使えば安全性に特段の懸念はないと結論づけた成分です。2003年に求められたのは、使うのをやめることではなかったからです。
コウジ酸は禁止されたことはなく、2005年に見合わせの通知が廃止されました。
承認
見合わせ
通知を廃止
使われる
コウジ酸は、日本で1988年に、薬用化粧品などの医薬部外品の有効成分として承認されました。2003年3月7日の通知が求めたのは、がんを起こすしくみなどを明らかにするための追加試験を行うことと、その結果が出るまで新たな製造・輸入を見合わせることの2点です。回収の指示はなく、すでに市場にある製品や手元の製品の使用中止も求めていません。通知の中でも、今すぐ安全性に問題があるとは考えられないものの、万が一のリスクを小さくする必要がある、とされていました。通知には「自粛」という言葉は使われていません。
その後、2005年11月2日の通知で、コウジ酸は正しく使われる場合には安全性に特段の懸念はないとされ、2003年の通知は廃止されました。いま薬用化粧品にコウジ酸が使われているのは、このためです。
承認された有効成分でも、色抜けや黒ずみの注意書きがある
有効成分として承認されていることと、肌に何も起こらないことは別です。承認された有効成分を配合した薬用化粧品でも、肌に合わないことがあるからです。
ロドデノールを配合した薬用化粧品で白斑が起きた問題を受けて、厚生労働省は2014年に通知を出し、使用上の注意として、赤み、はれ、かゆみ、刺激に加えて、白斑などの「色抜け」や「黒ずみ」を書き足すよう求めました。
しみ向けの製品を使って、赤みやかゆみ、色抜けや黒ずみに気づいたら、使うのをやめて皮膚科医に相談しましょう。
「国が認めた有効成分〇種類」という公的な一覧はない
「厚労省が認めた美白有効成分〇種類」という書き方を見ると、国の一覧があるように思いますよね。でも医薬部外品の有効成分は品目ごとの承認で決まり、公的な一覧はありません。
厚生労働省が2008年にまとめた、いわゆる薬用化粧品中の有効成分リストもありますが、ここにはアルブチン、コウジ酸、トラネキサム酸、4MSKは入っていません。
製品を選ぶときは、〇種類という数ではなく、その製品が医薬部外品として承認された効能を見ましょう。
まとめ
- しみは、紫外線でつくられたメラニンがたまってでき、医薬部外品の「メラニンの生成を抑える」効能はつくられるところに向けたもの
- 化粧品で書けるのは「日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ」まで。化粧品・薬用化粧品・薬で言える範囲が違う
- ハイドロキノンは、欧米では肌を白くする市販品に使えず、アメリカでは処方薬1品目だけが承認されている
- 日本では「解禁」ではなく、化粧品基準のリストに載っていないだけ。配合の判断は製造販売業者の責任
- コウジ酸の2003年の措置は「新たな製造・輸入の見合わせ」で、2005年に「安全性に特段の懸念はない」として廃止
「日本では使える」という言葉は、国が効き目や安全を保証したという意味ではありません。どちらが正しいかではなく、国ごとに制度の考え方が違う、ということです。
よくある質問
ハイドロキノンは日本で解禁された?
解禁されたわけではありません。2001年に化粧品基準が「使ってはいけないもの」を並べる方式に変わり、ハイドロキノンはどのリストにも載っていない成分になりました。配合するかどうかは製造販売業者の判断です。
海外ではハイドロキノンはどう扱われている?
欧米では、肌を白くする市販品には使えません。ヨーロッパは2001年からこの用途での配合を認めておらず、アメリカでは未承認の市販品が2020年に市場から撤去されることになりました。アメリカで承認されているのは処方薬1品目だけです。
コウジ酸は使用禁止になった成分?
いいえ、禁止されたことはありません。2003年に国が求めたのは新たな製造・輸入の見合わせで、回収や使用中止は求めていません。2005年には、正しく使えば安全性に特段の懸念はないとして、その通知は廃止されました。
化粧品で「美白」とうたえる?
化粧品の効能に「美白」という言葉はありません。化粧品で書けるのは「日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ」までです。医薬部外品には、メラニンの生成を抑える効能で承認されたものがあります。
国が認めたしみ向けの有効成分の一覧はある?
公的な一覧はありません。医薬部外品の有効成分は、品目ごとの承認で決まります。薬用化粧品の有効成分リストにも、アルブチン、コウジ酸、トラネキサム酸は入っていません。
この記事で参照した情報
- 化粧品基準(平成12年9月29日 厚生省告示第331号)
- 厚生労働省法令等データベース 化粧品基準(条文表示)
- 厚生労働省 報道発表「コウジ酸を含有する医薬部外品等に関する安全対策について」(平成15年3月7日)
- 厚生労働省「コウジ酸を含有する医薬部外品等に関する安全対策について」(平成17年11月2日 薬食安発第1102003号)
- 薬事・食品衛生審議会 医薬品等安全対策部会 資料1-3「コウジ酸を含有する医薬部外品について」(平成17年11月2日)
- 厚生労働省「いわゆる薬用化粧品中の有効成分リストについて」(平成20年12月25日 薬食審査発第1225001号)
- 厚生労働省「化粧品等の使用上の注意について」(平成26年5月30日 薬食発0530第2号)
- 厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年 薬食発0721第1号)
- FDA「FDA works to protect consumers from potentially harmful OTC skin lightening products」
- 欧州委員会 Twenty-fourth Commission Directive 2000/6/EC (29 February 2000)
- 日本化粧品工業会「化粧品等の適正広告ガイドライン」(2020年版)