この記事でわかること
- オリーブ果実油が、角層で何をしている油なのか
- 医薬品・食用・化粧品のオリーブ油の違いと、台所の油を塗るときの考え方
- 油だけを塗り続けたときの結果、アレルギー、酸化と保管
成分表で「オリーブ果実油」を見かけたけれど、台所のオリーブオイルと同じものなのか、肌に塗っても大丈夫なのか、迷いますよね。
結論から言うと、オリーブ果実油はオリーブの実を搾った油で、化粧品では肌の表面をおおって水分を逃げにくくし、乾燥を防ぐために入っています。ただ、肌に塗るなら台所の油より肌用の製品を表示どおりに使うほうが安心で、乾燥が気になる肌に油だけを塗り続ける使い方は避けたほうがよい油です。まずは、どんな油なのかから見ていきましょう。
オリーブ果実油は、オリーブの実を搾った油の成分表での名前
オリーブ果実油とは、オリーブの果実を搾ってとる油脂を、化粧品の成分表で書くときの名前です。ふだん呼ぶオリーブオイルやオリーブ油と同じ植物の油で、医薬品では「オリブ油」という名前で扱われています。種子ではなく果実から搾る油なので、名前にも「果実」と入っています。
化粧品の油の分類では、オリーブ果実油は油脂の仲間で、グリセリンに脂肪酸が3つ結びついたトリグリセリドが主成分です。同じ「オイル」でも、ホホバオイルはろうの仲間で、つくりが違います。オリーブを原料にしたスクワランもありますが、こちらは炭化水素の仲間で、オリーブ果実油とは別の成分です。
油をつくる脂肪酸は、オレイン酸がいちばん多く、リノール酸は油によって量に幅があり、リノレン酸はわずかです。オレイン酸は、油の中ではほとんどがグリセリンと結びついた形で入っていて、結びついていない遊離のものはわずかです。この違いは、あとで肌の研究を見るときに大切になります。
つまり、オリーブ果実油はオレイン酸の多い、植物の油脂です。
乾燥は、角層から水分が逃げていくことで起きる
肌の乾燥は、肌のいちばん外側の角層から水分が逃げて、うるおいが足りなくなることで起きます。オリーブ果実油の働きを知るには、まず角層がどうやってうるおいを保っているかを見ておくとわかりやすいです。
角層は、この3つのバランスでうるおいを保っています。
- 1皮脂膜 肌の表面をおおう、皮脂と汗の膜
- 2天然保湿因子 角層の細胞の中で、水を抱える
- 3細胞間脂質 細胞のすき間を埋めて、水分を逃がさない。約50%はセラミド
角層では、皮脂膜が表面をおおい、天然保湿因子が細胞の中で水を抱え、細胞間脂質が細胞のすき間を埋めて水分を逃がしません。このうち表面の皮脂膜が足りないと、角層の水分は表面から逃げやすくなります。
乾燥の手入れでは、水分を与えることに加えて、表面から逃げる水分を減らすことが大事になります。ここで働くのがオリーブ果実油のような油分です。
オリーブ果実油は、肌の表面をおおって水分を逃げにくくする
オリーブ果実油は、肌の表面に油の膜をつくって、角層の水分を逃げにくくする油分です。皮脂膜と同じように表面をおおうので、水分が蒸発しにくくなり、乾燥を防ぐことにつながります。
オリーブ果実油は表面に油の膜をつくり、角層の水分を逃げにくくします。
このように、油分で表面をおおって水分を逃げにくくし、肌をやわらかく保つ働きはエモリエントと呼ばれます。化粧品として言えるのは、肌に油分を補って乾燥を防ぐ、肌をやわらげる、肌を保護する、といった範囲です。髪に使う製品であれば、「毛髪につやを与える」「毛髪の水分、油分を補い保つ」といった範囲になります。
オリーブ果実油は、水を与える成分ではなく、ふたをする側の成分と覚えておくとわかりやすいです。
医薬品・食品・化粧品では、言えることが違う
同じオリーブの油なら、どれも同じように使えると思いますよね。でも、オリーブの油は、医薬品・食品・化粧品のどれとして扱われるかで、言ってよい効能も品質の物差しも変わります。区分ごとに、確かめている中身が違うからです。
医薬品の「オリブ油」は、医薬品の品質の基準をまとめた日本薬局方に載っている油で、医療用では軟膏などの薬の土台になる基剤として、また皮膚や粘膜を保護する目的で使われます。薬局で買える一般用医薬品のオリブ油もあり、こちらは皮膚の保護のほか、日焼けによる炎症を防ぐこと、やけど、かぶれへの効能をもつ医薬品です。これらは医薬品として認められた効能なので、化粧品を日焼けややけどの手当てに使えると考えないようにしましょう。
食品のオリーブオイルには、国際オリーブ理事会という機関の取引の規格があります。エキストラバージンやバージンといった等級は、果実から機械的な方法だけで搾ったかどうかや、油に含まれる遊離の脂肪酸の量などで分けられています。この等級は、食べる油としての品質を見る物差しです。
オリーブの油を見たら、医薬品か、食品か、化粧品かをまず分けて読みましょう。
肌に塗るなら、台所の油より肌用の製品が安心
台所にあるエキストラバージンオイルなら、肌にもよさそうだと思う人は多いと思います。でも、肌に塗るなら、肌用として売られている製品を表示どおりに使うほうが安心です。食用の規格は食べるための品質の規格で、肌に塗ったときの安全や働きを確かめる規格ではないからです。
化粧品の原料は肌に塗る目的で選ばれ、ほかの成分と組み合わせて製品になっています。一方、食用の油は料理に使う前提でつくられ、台所のコンロの近くなど、熱や光の当たる場所に置かれることもあります。油は熱や光で傷みやすいので、等級の高さと肌への合いやすさは別の話です。
また、肌に合うかどうかは人によって違います。どの油でも、はじめは腕の内側などで少量を試し、赤みやかゆみが出たら使うのをやめましょう。
台所の油は料理に、肌には肌用の製品、と分けておけば迷いません。
乾燥が気になる肌に、油だけを塗り続けるのは避ける
乾燥が気になる肌に、オリーブオイルだけを毎日塗り続ける使い方は避けたほうが安心です。油だけを塗り続けると、角層のまとまりが下がったという結果があるからです。
オリーブオイルだけを肌に毎日塗り続けると、角層のまとまりの度合いが下がり、軽い赤みが出たという結果があります。同じように塗ったひまわり油では、角層のまとまりが保たれ、角層の水分量が上がりました。
また、遊離のオレイン酸そのものを肌に密封して塗ると、肌から逃げる水分の量と刺激が増えたという結果もあります。ただ、オリーブ果実油の中のオレイン酸は、ほとんどがグリセリンと結びついた形です。そのため、化粧品に少し配合されたオリーブ果実油と、油だけを塗り続ける使い方は、分けて考えます。
オリーブ果実油入りの化粧品は表示どおりに使い、油だけを単独で塗り続けるのは避ける、と覚えておきましょう。
赤ちゃんの全身に塗るのは慎重に。頭皮のかさぶたは別の話
赤ちゃんの肌にはやさしい油を使いたい、と考えますよね。生まれたばかりの赤ちゃんの全身にオリーブオイルを塗るのは、慎重に考えたほうがよい使い方です。オイルを塗ると、角層の脂質の並びの育ち方が小さくなったという結果があるからです。
生まれたばかりの健康な赤ちゃんの肌にオイルを塗ると、角層の水分量は上がった一方で、角層の脂質がきれいに並んだ構造の育ち方は、オイルを使わない場合より小さかったという結果があります。これはひまわり油でも同じで、オリーブオイルだけの話ではありません。研究者からも、生まれたばかりの赤ちゃんの肌にオイルを勧めるときは慎重に、という意見が出ています。
一方、赤ちゃんの頭皮にできる厚いかさぶたのような脂漏性皮膚炎では、ベビー用シャンプーでやさしく洗うことに加え、厚いかさぶたがある場合に鉱物油やオリーブ油をやわらかい歯ブラシでやさしくすりこむ方法が、家庭向けの医学事典で紹介されています。
全身に毎日塗ることと、頭皮のかさぶたをやわらかくするために使うことは、分けて考えましょう。迷うときは、小児科や皮膚科に相談するのが安心です。
アレルギーはまれ。赤みやかゆみが出たらやめる
オリーブオイルは肌に悪いのでは、と心配になる人もいると思います。化粧品でのオリーブ果実油は安全と評価されていて、アレルギーの報告もまれです。ただ、安全という評価はどんな肌にも合うという意味ではないので、赤みやかゆみが出たら使うのをやめましょう。
アメリカの化粧品成分の専門家委員会は、オリーブ果実油を含む多くの植物の油をまとめて調べ、今の使い方と濃度なら化粧品に使って安全と結論づけています。湿疹のある人にオリーブ油のパッチテストをしても、陽性になる人はわずかで、その多くは密封したことによる弱い刺激でした。
それでも、マッサージ師やピザ作りなど、仕事で毎日のようにオリーブ油にふれる人では、かぶれが出た例があります。また、オリーブの実を食べて起こる食物アレルギーはまれですが、オリーブの実や花粉のアレルギーがある人は、使う前に医師に相談しましょう。
ニキビは、毛穴の出口がつまって皮脂がたまるところから始まります。脂肪酸のオレイン酸そのものを動物の皮膚に塗ると、毛穴づまりができやすかったという結果がありますが、オリーブ果実油の中のオレイン酸は、ほとんどが結びついた形です。ニキビが気になるときは、自分で油を足す前に、皮膚科に相談しましょう。
肌に合わないと感じたらすぐにやめることを守れば、安心して使える油です。
熱と光を避けて保管する。寒さで白くにごるのは品質の変化ではない
オリーブ果実油は、熱や光を避けて保管することが大切です。油は、不飽和結合という部分から酸素と反応して傷み、紫外線や熱がこの反応を速めるからです。
枠で囲んだ紫外線や熱を避けることが、保管でいちばん大事です。
熱が当たる
反応する
品質が落ちる
オリーブ果実油はオレイン酸などの不飽和脂肪酸を多く含むので、この流れの入り口を減らすことが大事です。食品の規格でも、油の酸化がどれだけ進んだかを示す値に上限が決められています。においや色がいつもと違うと感じたら、使わないのが安心です。
医薬品のオリブ油の注意書きでは、寒い場所では白くにごったり、固まりができたりすることがあり、品質が変わったわけではないので、温めて溶かしてから使うとされています。保管は、直射日光と火気を避けて涼しい場所に置き、ふたをしっかり閉めて、使用期限を過ぎたものは使わないのが基本です。化粧品の場合は、製品の表示に従いましょう。
また、オリーブオイルを塗っても日焼け止めの代わりにはなりません。動物の試験でも、紫外線を当てる前にオリーブオイルを塗って、紫外線による皮膚の害が減ることはありませんでした。紫外線対策は日焼け止めで行いましょう。
まとめ
- オリーブ果実油は、オリーブの果実を搾ってとるオレイン酸の多い油脂です
- 肌の表面に油の膜をつくり、角層の水分を逃げにくくして乾燥を防ぎます
- 医薬品・食品・化粧品では言える効能も品質の物差しも違い、肌に塗るなら肌用の製品が安心です
- 油だけを毎日塗り続けると角層のまとまりが下がった結果があり、赤ちゃんの全身に塗るのも慎重に考えます
- 化粧品では安全と評価され、アレルギーはまれです。熱と光を避けて保管し、日焼け止めの代わりにはしません
オリーブ果実油は、肌の表面をおおってうるおいを守る身近な油です。肌用の製品を表示どおりに、新しいうちに使ってみてください。
よくある質問
オリーブ果実油とはどんなものですか?
オリーブの果実を搾ってとる油脂を、化粧品の成分表で書くときの名前です。ふだん呼ぶオリーブオイルと同じ植物の油で、医薬品では「オリブ油」と呼ばれます。
オリーブ果実油は肌に何をしますか?
肌の表面に油の膜をつくり、角層の水分を逃げにくくして乾燥を防ぎます。肌をやわらげ、保護する働きもあり、髪に使う製品ではつやを与えます。
食用のオリーブオイルを肌に塗ってもいいですか?
エキストラバージンなどの等級は食べる油としての品質の物差しで、肌への合いやすさとは別の話です。台所の油は熱や光で傷むこともあるので、肌に塗るなら肌用として売られている製品を表示どおりに使うほうが安心です。
オリーブオイルは肌に悪いのですか?アレルギーは?
化粧品での今の使い方と濃度なら安全と評価されていて、アレルギーの報告はまれです。ただ、油だけを毎日塗り続けると角層のまとまりが下がったという結果があるので、乾燥が気になる肌に油だけを塗り続ける使い方は避けましょう。
赤ちゃんにオリーブオイルを使ってもいいですか?
全身に毎日塗ることには、研究者からも慎重な意見があります。一方、頭皮の厚いかさぶたをやわらかくする方法として紹介されることもあります。迷うときは、小児科や皮膚科に相談しましょう。
この記事で参照した情報
- 国立健康・栄養研究所「セラミド(N-アシルスフィンゴシン)」素材情報
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA) 医療用医薬品 オリブ油 添付文書(2023年12月改訂)
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA) 一般用医薬品 オリブ油 添付文書
- International Olive Council. Trade standard applying to olive oils and olive pomace oils, COI/T.15/NC No 3/Rev.12(2018年6月)
- Danby SG, et al. Effect of olive and sunflower seed oil on the adult skin barrier: implications for neonatal skin care. Pediatr Dermatol 2013;30(1):42-50
- Cooke A, et al. Olive Oil, Sunflower Oil or no Oil for Baby Dry Skin or Massage: A Pilot, Assessor-blinded, Randomized Controlled Trial (the OBSeRvE Study). Acta Derm Venereol 2016;96(3):323-330
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