この記事でわかること
- 化粧品に油が入っている理由と、皮脂との関係
- 油の種類と、「◯◯アルコール」の正体
- スクワランの正体と、鉱物油・シリコーンの誤解
化粧品の成分表には、たいてい「油」が入っています。肌に油を塗って大丈夫なのか、べたついたり毛穴につまったりしないか、気になりますよね。
結論から言うと、化粧品の油は、肌の水分が逃げるのを防ぎ、肌をやわらかく保つために入っています。いちばん理想的なのは自分の皮脂で、化粧品の油はその代わりをしています。まずは、肌が自分でつくっている油から見ていきましょう。
肌は、皮脂の膜で水分を逃がさないようにしている
肌は、自分でつくる皮脂の膜で表面をおおい、水分が逃げないようにしています。肌のいちばん外側の角層は、3つの要素でうるおいを守っているからです。
いちばん外側の皮脂膜は、肌が自分でつくる油の膜です。
- 1皮脂膜 肌の表面をおおう、皮脂と汗の膜
- 2天然保湿因子 角層の細胞の中で、水を抱える
- 3細胞間脂質 細胞のすき間を埋めて、水分を逃がさない。約50%はセラミド
表面をおおう皮脂膜、細胞の中で水を抱える天然保湿因子、細胞のすき間を埋める細胞間脂質の3つです。このうち皮脂膜は、肌が自分でつくる油の膜です。皮脂の主な中身は、平均で皮脂の40%ほどを占めるトリグリセリドと、大人で約12%を占めるスクワレンです。このスクワレンは、あとの章でもう一度出てきます。
乾燥する季節に油分の多いものが欲しくなるのは、足りなくなった皮脂の膜を補いたいということなのです。
化粧品の油は、皮脂膜の代わりに水分を逃がさない
化粧品の油は、皮脂膜の代わりに肌の表面をおおい、水分が逃げるのを抑えます。化粧品に油を入れる理由は、皮膚から水分が逃げるのを抑えることと、使い心地をよくすることの2つです。
皮膚から水分が蒸発するのを防いでうるおいを保ち、肌をやわらかくする働きをエモリエントといいます。そして、肌にとっていちばん理想的なエモリエント剤は、肌の表面で皮脂膜をつくってうるおいを守る皮脂そのものです。化粧品の油は、この皮脂の働きを外から補っています。
化粧品の油は、皮脂膜の代わりに表面をおおって水分が逃げるのを防ぎます。
乾燥が気になるときに油の入ったものを重ねるのは、表面に膜をつくって、角層の水分を逃がさないためと考えるとわかりやすいです。
油は、油脂・ろう・炭化水素・エステル・シリコーンなどに分かれる
「油」とひとくちに言っても、全部同じものだと思いますよね。でも、化粧品の油性成分は、油脂類、ろう類、炭化水素類、高級脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類などのグループに分かれます。つくりが違うので、使い心地や役目も変わるからです。
油脂はオリーブ油や馬油、やし油などで、脂肪酸とグリセリンが結びついたトリグリセリドが主成分なので、皮脂の主成分と同じつくりをしています。炭化水素には、流動パラフィンやワセリン、スクワランがあります。ワックスとも呼ばれるろうはみつろうやカルナウバろうが代表で、羊毛脂のラノリンのような半固形のものや、ホホバ油のような液状のものもあります。つまりホホバ油は「油」と呼ばれていても、分類上はろう類なのです。
「エチルヘキサン酸セチル」のような長い名前の成分はエステル類で、肌を油の膜で守るほか、色素を溶かしたり、香りを長持ちさせたりします。シリコーンは、炭化水素の油のようなべたつきがなく、軽い使い心地で肌や髪によく広がるのが特徴です。また、広い温度の範囲でねばり気が変わりにくく、熱に強く、水をはじく性質にも優れています。
成分表で油の名前を見たら、どのグループの油かを思い浮かべると、使い心地の見当がつきます。
「◯◯アルコール」の多くは、お酒とは別の固形の油
成分表で「アルコール」という言葉を見ると、刺激が強いのではと心配になる人は多いと思います。でも、セタノールやステアリルアルコールなどは、お酒のアルコールとは別の、固形の油分です。
化粧品で単に「アルコール」と言う場合はエチルアルコールのことで、成分表示では「エタノール」と書かれます。これに対して、ベヘニルアルコール、ステアリルアルコール、セタノールとも書かれるセチルアルコールなどは、お酒のアルコールとは性質の違う別の成分で、製品を固めたり、ねばり気を高めたりするために使われます。「高級アルコール」の「高級」も品質のことではなく、炭素の数が6以上と多いという意味です。
エタノールのほうは、汚れを落とす、肌を引き締める、清涼感を出す、成分を溶かすといった目的で入り、蒸発するときに熱を奪うので、使ったあとの肌にスーッとした爽快感が残ります。
そのため、アルコールに敏感な人がセタノールを避ける理由はないということになります。
スクワランは、スクワレンを酸化しにくくしたもの
スクワランは、皮脂にも含まれるスクワレンを還元して、酸化しにくくしたものです。1文字違いですが別の物質です。
油の中の不飽和結合という部分は、反応しやすく体の中での働きも活発な代わりに、不安定で酸化しやすく、日もちがしません。スクワレンはアイザメなど深海にすむサメの肝油からとれ、そこに水素を加えて還元したのがスクワランです。こうして、酸化しにくく、商品として長持ちするものにしています。
スクワランは、酸化しやすいスクワレンに水素を加えてつくります。
スクワレン
還元する
スクワラン
スクワランは枝分かれした構造をもつので固まる温度が低く、流動パラフィンに比べて油っぽさを感じにくいという特徴もあります。
つまり、皮脂に含まれるのが酸化しやすいスクワレン、化粧品に入るのが酸化しにくいスクワランという関係です。
油は酸化するので、開封後は早めに使う
油の弱点は酸化することなので、油の入った製品は開封後は早めに使うのが基本です。油の中の不飽和結合が酸素と結びつくと、油が傷んでいくからです。
サラダ油を何度も加熱すると茶色く変わるのも、油の中の不飽和結合が酸素と反応して酸化したためです。この反応は、紫外線や熱で速まります。酸化は化粧品の中だけでなく、肌の上の皮脂でも起きていて、最初に酸化されるのが皮脂に含まれるスクワレンです。紫外線はこの流れを速めるので、日焼け止めを塗ることは、自分の皮脂の酸化を減らすことにもつながります。
製品は、開封後は早めに使う。油の性質からも、その理由がわかります。
鉱物油とシリコーンの悪い評判は、今の成分には当てはまらない
「鉱物油は肌に悪い」「シリコーンは毛穴をふさぐ」と聞いて、避けたほうがいいのか迷いますよね。どちらの評判も、今の化粧品に使われている成分の性質とは合いません。
鉱物油はミネラルオイルとも呼ばれ、成分表では流動パラフィンと書かれることもある成分です。悪い評判は、昔の精製度の低い鉱物油の不純物が油やけを起こした、という話と結びつけて語られることがあります。ただ、1970年代に問題になった顔の色素沈着について、皮膚科の教科書が原因の多くとして挙げているのはタール系色素を含む化粧品です。今の化粧品に使われる鉱物油は精製されたもので、医薬品の流動パラフィンとしても使われています。流動パラフィンは肌に吸収されにくいため、クレンジングの主成分にも使われます。化粧品基準の配合禁止や配合制限の一覧にも、流動パラフィン、ワセリン、シリコーンは載っていません。
シリコーンは、髪の表面には薄く広がりやすいものの、頭皮の皮脂とはなじまない性質なので、シャンプーのシリコーンが頭皮の毛穴のつまりを起こすことはないとされています。ノンシリコンを選ぶのは好みとして成り立ちますが、「つまるから避ける」という理由は、この性質とは合いません。
鉱物油もシリコーンも、使い心地の好みで選んでかまわない成分です。
まとめ
- 化粧品の油は、皮脂膜の代わりに表面をおおい、肌の水分が逃げるのを防ぎ、肌をやわらかく保つために入っています
- いちばん理想的なのは自分の皮脂。化粧品の油はその代わりです
- 油は油脂・ろう・炭化水素・高級アルコール・エステル・シリコーンなどに分かれ、ホホバ油は分類上ろう類です
- セタノールなどの「◯◯アルコール」は固形の油で、エタノールとは別物です
- スクワランはスクワレンを還元して、酸化しにくくしたもの。油は酸化するので、開封後は早めに使います
成分表の後半のカタカナも、「◯◯酸◯◯」ならエステル、「◯◯アルコール」なら固形の油、「◯◯メチコン」ならシリコーン、と見当がつくと読みやすくなります。
よくある質問
スクワランとスクワレンの違いは?
スクワランは、スクワレンを還元して酸化しにくくしたものです。皮脂に含まれるのが酸化しやすいスクワレン、化粧品に入るのが酸化しにくいスクワランです。
鉱物油(ミネラルオイル)は肌に悪い?
今の化粧品に使われる鉱物油は精製されたもので、医薬品の流動パラフィンとしても使われています。1970年代に問題になった顔の色素沈着は、皮膚科の教科書ではタール系色素を含む化粧品が原因の多くとして挙げられています。
セタノールはアルコールだから刺激がある?
セタノールは、お酒のアルコール(エタノール)とは別物の固形の油です。アルコールに敏感な人が、セタノールを避ける理由はありません。
シリコーンは毛穴につまる?
シャンプーのシリコーンは、頭皮の毛穴につまることはないとされています。髪の表面には広がりやすく、頭皮の皮脂とはなじまない性質のためです。
化粧品に油が入っているのはなぜ?
皮脂膜の代わりに肌の表面をおおい、水分が逃げるのを防いで、肌をやわらかく保つためです。使い心地をよくする役目もあります。
この記事で参照した情報
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「油性原料」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「油性成分」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「炭化水素」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「流動パラフィン」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「ワセリン」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「スクワラン」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「エステル」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「シリコーン」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「高級アルコール」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「高級脂肪酸」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「油脂」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「ろう」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「みつろう」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「エモリエント」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「過酸化脂質」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「水添植物油」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「皮脂」
- 日本化粧品工業会 化粧品用語解説「化粧品に使われるアルコール」
- 日本化粧品工業会 化粧品用語解説「保湿とエモリエント」
- 花王 化粧品Q&A「鉱物油が肌に悪いと聞いたのですが?」
- 北海道大学皮膚科 公開資料「16章 色素異常症」(女子顔面黒皮症)
- 花王 製品Q&A「鉱物油はシミや油やけの原因になるの?」
- 花王「鉱物油に関する考え方」
- 花王 化粧品Q&A「シリコーンシャンプーは、髪や毛穴や頭皮に悪影響があるのですか?」
- 化粧品基準(平成12年9月29日 厚生省告示第331号)
- 厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年 薬食発0721第1号)
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