この記事でわかること
- 化粧品と注射でプラセンタの原料が違う理由
- しみ・乾燥に、プラセンタがどう関わるのか
- 2026年10月から変わる献血のルール
プラセンタは美容液にもサプリメントにもクリニックの注射にも出てくるので、どれも同じものなのか、肌に何をしてくれるのか気になりますよね。
結論から言うと、化粧品のプラセンタは豚や馬など動物の胎盤からとった成分で、ふつうの化粧品ではうるおいを与え、薬用化粧品ではしみ・そばかすを防ぐために入っています。一方、クリニックの注射はヒトの胎盤からつくる薬で、効能に美容は含まれません。まずは、原料の違いから見ていきましょう。
化粧品は動物の胎盤、注射はヒトの胎盤からつくる
同じ「プラセンタ」でも、化粧品と注射では原料の胎盤が違います。ヒトの胎盤は、化粧品にも健康食品にも使えない決まりだからです。
プラセンタは哺乳類の胎盤のことで、母親の子宮の中にでき、へその緒を通じて母親とおなかの赤ちゃんをつなぐ器官です。化粧品や健康食品のプラセンタは、豚や馬などの動物の胎盤からとったものです。医薬部外品では「プラセンタエキス-1」のように、名前に番号がついていることがあります。
ヒトの胎盤から取り出した成分は化粧品への配合が禁止されていると、国の答弁書で示されています。健康食品についても、ヒトの胎盤は医薬品にあたるので使えないとされています。海外では、未承認のヒト胎盤製品が細菌やウイルスに汚染されている場合があるとして、保健当局が注意を呼びかけたこともあります。
ヒトの胎盤を使えるのは、医療用の注射薬だけと覚えておきましょう。
化粧品ではうるおい、薬用化粧品ではしみ・そばかすを防ぐ
プラセンタが肌に対してうたえることは、ふつうの化粧品か薬用化粧品かで変わります。化粧品と医薬部外品とで、認められている効能の範囲が違うからです。
化粧品と薬用化粧品とで、プラセンタについて言えることが違います。
化粧品
「うるおいを与える」などの保湿
薬用化粧品
「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ」
ふつうの化粧品に入っているプラセンタは、肌にうるおいを与えるための成分で、書けるのは「うるおいを与える」などの範囲です。一方、医薬部外品、つまり薬用化粧品には、プラセンタエキスを有効成分とする製品があり、「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ」という効能が表示されています。グリチルリチン酸2Kやアルブチンなど、別の有効成分と組み合わせた製品もあります。
しみ対策として選ぶなら、「薬用」や「医薬部外品」と書かれた製品かどうかを見ましょう。
しみには、メラニンができるところで働く
薬用化粧品のプラセンタエキスは、しみのもとになるメラニンができるところを抑えて、しみ・そばかすを防ぎます。しみは、紫外線をきっかけにできたメラニンが、肌にたまって起きるからです。
紫外線を浴びると、肌の中でメラニンという色の粒が作られ、まわりの細胞に渡されてたまります。これが、しみやそばかすです。
薬用化粧品のプラセンタエキスは、枠で囲んだ「メラニンができる」ところを抑えます。
浴びる
できる
渡される
しみになる
プラセンタは古くから、メラニンができるのを抑える作用があるといわれ、医薬部外品の有効成分として使われてきました。研究では、馬のプラセンタを飲むと、肌のメラニンの量を示す数値が上がりにくかったという結果もあります。ただし、これは飲んだときの結果で、飲んだ結果を塗る化粧品に当てはめることはできません。
また、効能はしみを「防ぐ」ことで、できてしまったしみを薄くするという効能はありません。すでにあるしみが気になるなら、しみができるしくみを知ったうえで、皮膚科に相談するのが近道です。
プラセンタは、これからできるしみを防ぐための成分です。
乾燥や小ジワには、うるおいを与える範囲で使う
乾燥や小ジワが気になるときのプラセンタは、角層にうるおいを与える保湿の成分として使います。化粧品として言えるのは、うるおいを与える範囲だからです。
肌のいちばん外側の角層は、表面をおおう皮脂膜、細胞の中で水を抱える天然保湿因子、細胞のすき間を埋める細胞間脂質の3つでうるおいを保っています。このバランスが崩れると水分が逃げ、かさつきや乾燥による小ジワにつながります。
研究では、豚のプラセンタを飲むと、腕の肌から逃げる水分の量と弾力の数値がよくなったという結果があります。また、馬のプラセンタ入りのクリームを目尻に塗ると、シワが目立ちにくくなったという結果もあります。ただし、化粧品でシワについて言えるのは、効能評価試験をした製品の「乾燥による小ジワを目立たなくする」までです。
飲むプラセンタでは、アレルギーや薬による肝臓の障害が起きた例が報告されています。健康食品は薬ではないので、飲み始めてから体調の変化を感じたら、飲むのをやめて医師に相談しましょう。
乾燥が気になるときは、保湿の成分のひとつとして見ておくと安心です。
注射の効能に、美容は含まれない
クリニックのプラセンタ注射は、美肌の薬として認められたものではありません。ヒトの胎盤からつくる注射薬は2種類あり、承認されている効能は肝臓の病気と更年期障害などだからです。
1つは「慢性肝疾患における肝機能の改善」、もう1つは「更年期障害、乳汁分泌不全」の効能をもつ薬で、どちらも医師の処方が必要です。美肌や若返りは効能に含まれておらず、美容を目的に使うのは承認された効能の外の使い方になります。国の答弁書では、こうした使い方で被害が出ても、生物由来の薬の被害を救う国の制度の対象にならないのが原則とされています。更年期の症状については、胎盤の抽出物が症状を和らげる可能性があるという試験のまとめがあります。
注射薬の添付文書には、ショック、注射した場所の痛みやしこり、発疹、発熱、肝機能の障害などの副作用があげられています。一方の注射薬では、国内の胎盤を問診や血液検査、肝炎ウイルスやエイズウイルスの遺伝子検査で確かめてから使っていますが、原料がヒトの胎盤である以上、感染症がうつるリスクを完全にはなくせないとされ、使う前に患者へ説明することになっています。
注射は、病気の治療のための薬だと知っておきましょう。
注射をした人も、3か月たてば献血できるようになった
2026年10月1日からは、プラセンタ注射を最後に使った日から3か月たてば献血できます。注射を使った人の献血のルールが、期間を定めない見合わせから、3か月の見合わせに見直されたからです。
献血が制限されてきたのは、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病という、神経の症状が進む難病のためです。理論上うつる可能性を完全には否定できないため、2006年10月から、注射を使ったことがある人は期間を定めずに献血を見合わせてきました。国内で確認された患者は2005年の1例で、2026年1月の国の審議会での検討を受けて、ルールが変わりました。
プラセンタ注射を使った人の献血は、2026年10月1日からこの流れになります。
見合わせ
から変更
から3か月
献血できる
9月30日までは、これまでどおり期間を定めずに見合わせる扱いです。対象はヒトの胎盤からつくる注射薬だけで、動物の胎盤を使う化粧品や飲むプラセンタは含まれません。「プラセンタの化粧品やサプリを使うと献血できなくなる」と思いがちですが、関係ありません。最終的には献血の当日の問診で判断されるので、使ったことがある人はそのまま伝えましょう。
化粧品は献血に関係なく、注射は最後に使った日から3か月、と覚えておけば大丈夫です。
まとめ
- 化粧品や健康食品のプラセンタは、豚や馬などの動物の胎盤からとったものです
- ふつうの化粧品ではうるおいを与える範囲で、プラセンタエキスを有効成分とする薬用化粧品には「しみ、そばかすを防ぐ」と表示されています
- 薬用化粧品のプラセンタエキスは、メラニンができるところを抑えて、これからできるしみを防ぎます
- ヒトの胎盤からつくる注射薬の効能は肝臓の病気や更年期障害などで、美容は含まれません
- 注射を使った人の献血は、2026年10月1日から「最後に使った日から3か月は見合わせ」に変わり、化粧品や飲むものは対象外です
プラセンタは、塗るか、飲むか、注射かで、原料もルールもまったく違う成分です。手に取る前に、どの形のプラセンタなのかを確かめてみてください。
よくある質問
プラセンタの化粧品を使うと献血できなくなりますか?
なりません。献血を見合わせる対象はヒトの胎盤からつくる注射薬だけで、化粧品や飲むプラセンタは対象外です。
プラセンタ注射をしたら、いつから献血できますか?
2026年10月1日からは、最後に注射した日から3か月たてば献血できます。2026年9月30日までは、期間を定めずに見合わせる扱いです。最終的には献血の当日の問診で判断されます。
プラセンタ注射は美容の薬として認められていますか?
認められていません。ヒトの胎盤からつくる注射薬で承認されている効能は、「慢性肝疾患における肝機能の改善」と「更年期障害、乳汁分泌不全」で、美容は含まれていません。
化粧品のプラセンタは何の胎盤からとったものですか?
豚や馬などの動物の胎盤です。ヒトの胎盤から取り出した成分は化粧品への配合が禁止されており、健康食品にも使えません。
プラセンタで、できてしまったシミは薄くなりますか?
できたシミを薄くするという効能はありません。プラセンタエキスを有効成分とする薬用化粧品に表示されているのは「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ」までです。
この記事で参照した情報
- 日本赤十字社 プレスリリース「英国を含む欧州などの滞在歴に基づく献血制限の撤廃およびヒト胎盤エキス(プラセンタ)注射剤使用歴に関する献血基準を変更します」(2026年9月14日)
- 日本赤十字社「変異型クロイツフェルト・ヤコブ病に関する献血基準の変更」
- 厚生労働省「欧州等滞在歴及びヒト胎盤エキス(プラセンタ)注射剤使用歴に係る献血制限の見直しについてのQ&A」(令和8年2月)
- 厚生労働省「変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)に係る献血制限の見直しについて」
- 厚生労働省 健発第0927004号「臓器のあっせんに伴うヒト胎盤エキス(プラセンタ)注射剤に係る問診の強化について」(平成18年9月27日)
- 日本赤十字社 大阪府赤十字血液センター「ヒト胎盤(プラセンタ)由来製剤について」
- KEGG MEDICUS 医療用医薬品の添付文書(ヒト胎盤由来の注射剤)japic_code 00013427
- KEGG MEDICUS 医療用医薬品の添付文書(ヒト胎盤由来の注射剤)japic_code 00013426
- MEDLEY 医療用医薬品「メルスモン」添付文書
- 衆議院 第168回国会 質問第237号「ヒト胎盤エキス含有製品の安全性に関する質問主意書」(平成19年11月16日)
- 衆議院 同質問に対する答弁書(平成19年11月27日)
- 国立健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報「カナダ保健省が医薬品成分(チオメチソシルデナフィル、ヒトプラセンタ、エフェドラ)、有害なアリストロキア酸を含む製品に注意喚起」(2008年11月)
- 国立健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報「カナダ保健省が未承認のヒト胎盤(プラセンタ)製品について注意喚起」(2018年11月28日)
- 明色化粧品「プラセホワイター」製品情報
- スノーデン「セネシス薬用ホワイトローションSNOW」製品情報
- 資生堂 HAKU「シミ予防研究所 美白用語辞典」プラセンタエキス
- Papp S, et al. Efficacy and Safety of Placental Extract on Menopausal Symptoms: A Systematic Review. Nutrients 2025;17(24):3857
- Nagae M, et al. Effect of Porcine Placenta Extract Supplement on Skin Condition in Healthy Adult Women: A Randomized, Double-Blind Placebo-Controlled Study. Nutrients 2020;12(6):1671
- Nagae M, et al. Effects of oral administration of equine placental extract supplement on the facial skin of healthy adult women: A randomized, double-blind, placebo-controlled study. Health Sci Rep 2022;5(2)
- Watanabe T, Tahara K, Hirano E. Evaluating the Impact of a Cream Containing Horse Placental Extract on Eye Corner Wrinkles in Healthy Women: Single-Blind Comparative Study. JMIR Dermatology 2023;6:e51070
- 厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年7月21日 薬食発0721第1号)