この記事でわかること
- ローズヒップオイルの中身と、乾燥を防ぐしくみ
- 酸化しやすい理由と保管のポイント
- 傷あと・シミ・トレチノインの話の受け止め方と使い方
ローズヒップオイルは「傷みやすい」「シミや傷あとにいい」といろいろな話があって、どう受け止めて、どう使えばいいのか迷いますよね。
結論から言うと、ローズヒップオイルは肌に油分を補い、乾燥を防いでやわらかく保つための油です。光や熱で傷みやすい油なので、保管と使い切る早さがいちばん大切です。まずは、どんな油なのかから見ていきましょう。
ローズヒップオイルは、バラの実の種子からとる植物の油脂
ローズヒップオイルは、ローズヒップと呼ばれるバラの実からとる植物の油脂です。化粧品の成分表では「カニナバラ果実油」と書かれていることがあります。
名前は「果実油」でも、実の中にある種子から搾った油として流通していることが多く、研究で調べられているのも多くが種子の油です。また、別の種類のバラの種子からとった油もローズヒップオイルとして売られていて、その場合は成分表の名前も変わります。
オリーブ油や馬油と同じく、グリセリンに脂肪酸が3つ結びついたトリグリセリドを主成分とする油脂の仲間です。果実に多いビタミンCの話は食べる果実の話なので、オイルを塗る話とは分けて考えましょう。
中身は、リノール酸とα-リノレン酸が多い
ローズヒップオイルに多いのは、リノール酸とα-リノレン酸という脂肪酸です。この2つの多さが、ローズヒップオイルの傷みやすさにかかわります。
バラの種子油を調べると、いちばん多い脂肪酸はリノール酸で、全体の54.8%をしめていたという結果があります。次いでα-リノレン酸やオレイン酸などが含まれ、油の中には、ビタミンEの仲間のトコフェロールや、カロテノイドという色素も含まれていました。
リノール酸とα-リノレン酸は、どちらも酸化しやすい部分をもつ不飽和脂肪酸です。脂肪酸の割合はバラの種類や産地で幅がありますが、ローズヒップオイルは不飽和脂肪酸の多い、傷みやすい油と覚えておきましょう。
角層の上に油の膜をつくり、乾燥を防いで肌をやわらげる
ローズヒップオイルの肌への働きは、角層の上をうすい油の膜でおおい、水分が逃げるのを防いで肌をやわらかく保つことです。肌の乾燥は、いちばん外側の角層から水分が逃げて、表面がかさつくことで起きるからです。
角層は、表面をおおう皮脂膜、細胞の中で水を抱える天然保湿因子、細胞のすき間を埋める細胞間脂質の3つでうるおいを保っています。細胞間脂質の約50%はセラミドです。皮脂膜の油分が足りないと水分が蒸発しやすくなり、表面がかさついてきます。ローズヒップオイルは、皮脂膜と同じように表面を油分でおおう側に働きます。油分で表面をおおい、肌をやわらかく保つ働きはエモリエントと呼ばれます。
ローズヒップオイルは角層の上をうすい油の膜でおおい、乾燥を防ぎます。
化粧品の効能の範囲でいえば、「皮膚にうるおいを与える」「皮膚の乾燥を防ぐ」「肌を柔らげる」といった言い方になります。安全性では、アメリカの化粧品成分の専門家パネルが、カニナバラ果実油を含む244の植物の油について、今の使い方であれば化粧品として安全と結論づけています。水分そのものを与える油ではないので、化粧水で水分を与えたあとに重ねると使いどころがわかりやすくなります。
いちばんのデメリットは酸化。紫外線と高温を避けて保管する
ローズヒップオイルのいちばんのデメリットは、酸化しやすいことです。油の酸化は、不飽和脂肪酸の反応しやすい部分が酸素と結びついて進み、ローズヒップオイルにはこの部分をもつ脂肪酸が多いからです。
酸化が進むと、過酸化脂質というものができ、においや色が変わってきます。紫外線や熱は、この反応を速めます。
リノール酸やα-リノレン酸の多いローズヒップオイルは、紫外線や熱で酸化が進みやすい油です。
熱に当たる
酸化する
ができる
変わる
たとえば、ローズヒップの種子油を紫外線の下に置くと急速に劣化し、油に含まれていたトコフェロールやカロテノイドも減っていったという結果があります。暗く涼しい場所では、変化はゆるやかでした。とくに紫外線と30℃を超える温度のもとでは、保管の条件に気をつけるべきだとまとめられています。
直射日光の当たる窓辺や高温になる場所を避けて、ふたをしっかり閉めて保管し、開けたら早めに使い切りましょう。においや色がいつもと違うと感じたら、使わないのが安心です。
傷あとは医師に、シミは日焼け止めに。役割を分けて考える
シミや傷あとにいいと聞くと、試したくなりますよね。ローズヒップオイルは化粧品の油なので、傷あとのケアは医師の指示に、シミの予防は日焼け止めに、役割を分けて考えましょう。傷あともシミも、原因が角層よりも下で起きているからです。
研究では、皮膚の手術のあとの傷あとにローズヒップの種子油を塗ると、何も塗らなかった場合より、赤みや色の変化が少なかったという結果があります。ただ、手術やけがの傷あとは、まず担当の医師の指示に従うのが基本です。ニキビ跡も、赤み・茶色・凹みで考え方が違うので、気になるときは皮膚科に相談しましょう。
しみは、紫外線を浴びて作られたメラニンという色の粒が、まわりの細胞に渡されてたまってできます。この流れに働くのは、医薬部外品の有効成分として「メラニンの生成を抑え、シミ・ソバカスを防ぐ」効能が認められた成分です。化粧品のローズヒップオイルには、シミを防ぐ効能はうたえません。シミを防ぐ基本は、日焼け止めで紫外線を防ぐことです。
トレチノインの話はあっても、化粧品は医薬品の代わりにならない
ローズヒップオイルには天然のトレチノインが含まれる、という話を見かけて気になる人も多いと思います。トレチノインは日本では医薬品の成分で、化粧品のローズヒップオイルはその働きを期待して使うものではありません。化粧品には、医薬品の成分を配合してはならないという決まりがあるからです。
研究では、バラの種子油にトレチノインが含まれ、その量が搾り方によって変わったという結果があります。調べられたのは別の種類のバラの種子油で、手もとの製品と同じものとは限りません。
化粧品に入るビタミンAの仲間にはレチノールやレチナールがあり、トレチノインとは別の成分です。トレチノインそのものを使うかどうかは、皮膚科の医師と相談して決める医療の話なので、化粧品のオイルで代わりにしようとしないことが大切です。
顔には化粧水のあとに数滴、髪には毛先に少量
ローズヒップオイルは、まず製品に書かれた使い方に従い、書かれていなければ化粧水のあとに数滴を重ねます。油分を補うものなので、水分を与えたあとのほうが役目がはっきりするからです。
顔に使うときは、数滴を手のひらに広げて、乾燥が気になるところにうすくなじませます。目に入らないように気をつけましょう。はじめて使うときは、腕の内側などで少量を試し、赤みやかゆみが出たら使うのをやめます。
髪に使う場合、化粧品として言えるのは「毛髪につやを与える」「毛髪の水分、油分を補い保つ」といった範囲です。酸化しやすい油なので、頭皮に厚く残すより、毛先に少量なじませる使い方が無難です。食用として売られているものは食べるための決まりと目的でつくられているので、肌には化粧品として売られているものを表示どおりに使いましょう。
まとめ
- ローズヒップオイルはバラの実の種子からとる油脂で、成分表では「カニナバラ果実油」などと書かれます
- リノール酸とα-リノレン酸が多い、傷みやすい油です
- 角層の上をうすい油の膜でおおい、水分が逃げるのを防いで肌をやわらかく保ちます
- 酸化しやすいので、紫外線と高温を避けて保管し、開けたら早めに使い切ります
- 傷あとは医師の指示に、シミは日焼け止めに。化粧品のオイルはトレチノインの代わりにはなりません
ローズヒップオイルは、油の膜で肌のうるおいを守る、傷みやすい油脂です。光と熱を避けて、新しいうちに表示どおり使ってみてください。
よくある質問
ローズヒップオイルとはどんなものですか?
バラの実からとる植物の油脂で、多くは実の中の種子から搾った油です。化粧品の成分表では「カニナバラ果実油」などと書かれ、肌に油分を補って乾燥を防ぐために使われます。別の種類のバラからとった油もあり、その場合は成分表の名前も変わります。
ローズヒップオイルのデメリットは?酸化しやすいって本当?
本当で、酸化しやすいことがいちばんのデメリットです。酸化しやすい部分をもつリノール酸やα-リノレン酸が多く、紫外線の下に置いた油は急速に劣化したという結果があります。直射日光と高温を避けて保管し、開けたら早めに使い切りましょう。
ローズヒップオイルはシミやニキビ跡に使えますか?
化粧品のローズヒップオイルの役目は、うるおいを与えて乾燥を防ぐことです。シミを防ぐ基本は日焼け止めで紫外線を防ぐことで、ニキビ跡や傷あとが気になるときは皮膚科に相談しましょう。
ローズヒップオイルにはトレチノインが入っているのですか?
バラの種子油にトレチノインが含まれ、その量が搾り方で変わったという結果はあります。ただ、化粧品には医薬品の成分を配合できないので、化粧品のローズヒップオイルはトレチノインの働きを期待して使うものではありません。
ローズヒップオイルの使い方は?髪にも使えますか?
まずは製品に書かれた使い方に従います。顔なら化粧水のあとに数滴を手のひらに広げ、乾燥が気になるところにうすくなじませます。髪では、つやを与え、水分と油分を補い保つ範囲で使えます。酸化しやすいので、毛先に少量が無難です。
この記事で参照した情報
- Burnett CL, et al. Safety Assessment of Plant-Derived Fatty Acid Oils. International Journal of Toxicology 2017;36(3 suppl)
- Turan S, Solak R, Kiralan M, Ramadan MF. Bioactive lipids, antiradical activity and stability of rosehip seed oil under thermal and photo-induced oxidation. Grasas y Aceites 2018;69(2):e248
- Concha J, Soto C, Chamy R, Zúñiga ME. Effect of rosehip extraction process on oil and defatted meal physicochemical properties. Journal of the American Oil Chemists' Society 2006;83(9):771-775
- Valerón-Almazán P, et al. Journal of Cosmetics, Dermatological Sciences and Applications 2015;5(2):161(皮膚の手術のあとの傷あとにローズヒップの種子油を塗った試験)
- 国立健康・栄養研究所「セラミド(N-アシルスフィンゴシン)」素材情報
- 厚生労働省「化粧品基準」(平成12年厚生省告示第331号)英訳版
- 大阪府「化粧品の効能の範囲」(平成12年12月28日 厚生省医薬安全局長通知、平成23年7月21日 改正)