この記事でわかること
- キトサンの原料と、えび・かにとの関係
- アレルギーの原因のたんぱく質と、精製で残るかどうか
- 甲殻類アレルギーの人が使う前にすること
えびやかにを食べると症状が出る体質だと、成分表に「キトサン」とあるだけで、その殻からつくる成分を肌に塗ってもいいのか迷いますよね。
結論から言うと、アレルギーで問題になるのは殻に含まれていたたんぱく質がどれだけ残るかで、甲殻類アレルギーのある人は、使う前に主治医に相談するのが基本です。キトサンには、きのこからつくるものもあります。キトサンのつくり方、成分表の名前、食べ物の表示との違い、気をつけることを順に見ていきます。
キトサンは、えび・かにの殻のキチンからつくる成分
キトサンは、えびやかにの殻に含まれるキチンからつくられる、糖がたくさんつながった成分です。つくる途中に殻のたんぱく質を取り除く工程があり、ここがアレルギーを考えるときの大事な点になります。
国の食品添加物の名簿では、キチンは、えびやかになどの殻やいかの甲から、炭酸カルシウムとたんぱく質を取り除いたもの、キトサンは、そのキチンをアルカリで処理して形を変えたものとされています。
アレルギーで大事なのは、枠で囲んだ「たんぱく質を除く」工程でどこまで減るかです。
かにの殻
を除く
できる
キトサン
食べ物のアレルギーを起こすのは、主に食べ物に含まれるたんぱく質で、甲殻類アレルギーの原因もえびやかにのたんぱく質です。だから、キトサンでは取り除ききれなかったたんぱく質がどのくらい残っていそうかを手がかりに考えます。
成分表では「キトサン」「キチン」「グルコサミン」を探す
えびやかにの殻からつくる成分は、成分表の名前に「キトサン」「キチン」の文字が入ります。化粧品は入っている成分をすべて表示するのが基本だからです。
キチンを分解した「グルコサミン」も、工業的にはかにやえびの殻から得たキチンを、塩酸などで分解してつくられるとされています。赤い色のアスタキサンチンは、えびやサケに含まれる色素と同じ成分ですが、化粧品の原料にはヘマトコッカスという藻がよく使われ、合成品もあるので、アスタキサンチンの記事のとおり、由来はさまざまです。
どの名前にも「えび」「かに」の文字は入らず、成分表から由来は読み取れません。まずは成分表で「キトサン」「キチン」「グルコサミン」の文字を探すのが、いちばん簡単な見つけ方です。
甲殻類アレルギーの主な原因は、熱に強いトロポミオシン
えびやかにのアレルギーの原因になる主なたんぱく質は、トロポミオシンです。加熱で形が変わっても、冷えると元の形に戻ることが報告されていて、熱に対して安定なたんぱく質だからです。加熱しても、アレルギーの起こしやすさが弱まりにくいということです。ほかに、アルギニンキナーゼというたんぱく質も主要なアレルゲンだという報告があります。
トロポミオシンをもつえびやかにの間では、一方に反応する人がもう一方にも反応しやすいとされ、ダニやゴキブリのトロポミオシンとも似ていると報告されています。一方、えびアレルギーの人がいか、たこ、ほたてにも症状を示す割合は20%程度で、国の研究班の手引きでは、甲殻類、軟体類、貝類をひとくくりにして除去する必要はないとされています。
甲殻類アレルギーは、学童期以降に始まることが多いアレルギーです。食べたあとに運動をすると強い症状が出る、食物依存性運動誘発アナフィラキシーという形で起きることも多いとされます。子どものころ平気だったからといって、今も大丈夫とは限らないと覚えておきましょう。
精製しても、殻のたんぱく質がゼロになるとは限らない
キトサンは精製しても、えびやかにのたんぱく質がゼロになるとは限りません。英国の毒性委員会は、殻からたんぱく質を取り除く工程は100%にはならず、残ったたんぱく質にアレルゲンが含まれうるとしているからです。
実際に、技術用のキチンやキトサンの試料から、トロポミオシンが見つかったという結果があります。その一方で、えびにアレルギーのある人で、キトサンの粉の皮膚テストが陽性にならず、キトサンを使った止血用の包帯を当てても反応が出なかったという結果もあります。委員会は、主な心配は混じったたんぱく質と原料の生き物の種類だとして、たんぱく質の量の規格を求めています。
これらは、食品の容器や医療用の包帯で使うキトサンの話です。化粧品に使われるキトサンにどのくらいたんぱく質が残るかは、原料や精製のしかたによって変わると考えておきましょう。
えびやかにとは別に、まれですが、キトサンそのものへのアレルギーの報告もあります。キトサンの健康食品を飲んで、全身のじんましんと息苦しさが出た例があり、ただしこれは飲んだ場合の話です。豪州とニュージーランドの食品基準機関は、キトサンを食べてアレルギーが起きることはとてもまれとしています。アレルギーで気にするのは、精製で残るかもしれない殻のたんぱく質です。
きのこ由来のキトサンもあるが、成分表に由来は書かれない
キトサンの原料は、えびやかにの殻だけではありません。キチンはきのこなど菌類の細胞壁にも含まれているからです。
カナダ保健省は、白いマッシュルームのキチン繊維からつくるキトサンを食品に使う提案を公表し、その使い方でのアレルギーのリスクは低いとしました。豪州とニュージーランドの機関が評価したのも、マッシュルームの柄だけを原料にしたキトサンです。英国の毒性委員会も、今の主な原料は漁業で出る殻だとしたうえで、菌類や昆虫を新しい原料として挙げ、発酵でつくった菌類由来のものは甲殻類のたんぱく質を含まないとしています。
ただし、化粧品の成分表で、成分名のあとに由来を括弧で添える国の決まりがあるのは小麦由来の成分で、キトサンは対象ではありません。成分表の「キトサン」からは、えび・かに由来か、きのこ由来かはわかりません。
食品表示でえび・かには義務の品目で、添加物のキチンにも由来を書く
食べ物のアレルギー表示では、えびとかには表示が義務の特定原材料です。消費者庁の手引きで、表示が義務の9品目に入っているからです。
食品表示の2つの区分は大豆アレルギーの記事で説明していますが、えびにはロブスターやざりがにも含まれ、しゃこ、あみ、おきあみは別の甲殻類として対象外です。いかとあわびは、表示がすすめられている「特定原材料に準ずるもの」に入っています。同じ手引きには、添加物の書き方の例として「キチン(かに由来)」が載っていて、キトサンやグルコサミンの健康食品も、容器に入った食品なら、えびやかにのアレルギー表示を確かめられます。
化粧品は成分をすべて書きますが、えびやかにの由来を添える決まりはありません。同じキチンでも、食品なら由来がわかり、化粧品では名前しかわからないと覚えておきましょう。
甲殻類アレルギーの人は、使う前に主治医に相談する
甲殻類アレルギーと診断されている人や、えびやかにで症状が出たことがある人は、キトサンなどの入った製品を使う前に、主治医に成分表を見せて相談しましょう。精製でたんぱく質を取り除く工程があっても、ゼロになるとは限らないからです。
甲殻類アレルギーの人は、使う前に確かめ、症状が出たらすぐやめます。
名前を探す
相談する
やめる
は119番
由来が気になるときは、製造販売元に、原料がえび・かにの殻か、きのこなどかを問い合わせると、相談の材料になります。アスタキサンチンのように名前から殻とのつながりが読めない成分も、同じように聞いてみましょう。きのこ由来とわかっても、自己判断で試さず、主治医と一緒に決めるのが基本です。手や顔に湿疹がある人は、とくに慎重に選びましょう。
使っていて、かゆみや赤み、はれが出たら、すぐに使うのをやめましょう。くちびるや顔のはれ、じんましんなど、塗った場所以外にも症状が出たときは、すぐに医療機関を受診してください。息苦しさ、声のかすれ、ぐったりする、意識がもうろうとするといった様子は命に関わるサインで、処方された自己注射薬があれば使い、すぐに119番に電話します。塗った場所だけのかぶれは、化粧品トラブルの記事にあるパッチテストで原因を調べられます。
甲殻類アレルギーがない人は、ほかの化粧品と同じように表示どおりに使えば大丈夫です。アレルギーがある人だけ、使う前のひと手間を忘れずに。
まとめ
- キトサンは、えびやかにの殻のキチンからつくる成分で、つくる途中で殻のたんぱく質を取り除きます
- 甲殻類アレルギーの主なアレルゲンはトロポミオシンで、熱に強く、えびとかにの間で反応が重なりやすいたんぱく質です
- 精製してもたんぱく質がゼロになるとは限らない一方、えびアレルギーの人でキトサンの包帯に反応が出なかったという結果もあります
- きのこ由来のキトサンもありますが、化粧品の成分表には由来が書かれず、食品表示とは決まりが違います
- 甲殻類アレルギーの人は「キトサン」「キチン」「グルコサミン」を探して主治医に相談し、全身の症状が出たら119番です
キトサンは、えびやかにの殻からも、きのこからもつくられる成分です。甲殻類アレルギーがある人は、成分表の名前を手がかりに由来を確かめ、気になるときは主治医と一緒に選んでみてください。
よくある質問
甲殻類アレルギーでもキトサン入りの化粧品は使えますか?
使う前に成分表を見せて、主治医に相談しましょう。キトサンはつくる途中で殻のたんぱく質を取り除きますが、ゼロになるとは限らないという見方があります。由来がえび・かにの殻かどうかを製造販売元に問い合わせておくと、相談の材料になります。
キトサンはすべてえびやかにからつくられますか?
いいえ、きのこからつくるキトサンもあります。今の主な原料は漁業で出るえびやかにの殻ですが、キチンはきのこなど菌類の細胞壁にも含まれ、マッシュルーム由来のキトサンが食品向けに評価されています。化粧品の成分表からは、どちらの由来かはわかりません。
精製したキトサンにアレルゲンは残りますか?
残ることがあります。英国の毒性委員会は、たんぱく質を取り除く工程は100%にはならないとしていて、技術用の試料からトロポミオシンが見つかったという結果もあります。一方で、えびアレルギーの人がキトサンの包帯に反応しなかったという結果もあります。
グルコサミンやアスタキサンチンもえび・かに由来ですか?
グルコサミンは殻由来が多く、アスタキサンチンは由来がさまざまです。グルコサミンは工業的には、かにやえびの殻から得たキチンを分解してつくられるとされます。アスタキサンチンは藻や合成品も使われます。気になるときは製造販売元に原料を問い合わせましょう。
食品表示でえび・かには義務ですか?
はい、えびとかには表示が義務の特定原材料です。消費者庁の手引きでは、えびにはロブスターやざりがにも含まれ、しゃこやおきあみは対象外です。添加物でも「キチン(かに由来)」のような書き方の例があります。化粧品には、由来を添える決まりはありません。
この記事で参照した情報
- 消費者庁「加工食品の食物アレルギー表示ハンドブック」(令和8年4月作成)
- 食品安全委員会 ファクトシート「アレルゲンを含む食品(えび、かに)」(令和7年3月11日作成)
- 食物アレルギー研究会「食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2022」原因食物別の栄養食事指導(厚生労働科学研究班)
- 英国 食品・消費者製品・環境中の化学物質の毒性に関する委員会(COT) Position paper on chitosan in bio-based food contact materials(2024年1月)
- カナダ保健省 Proposal to enable the use of chitosan from white button mushrooms(2023年11月20日)
- 豪州・ニュージーランド食品基準機関 A1315 Supporting Document 1 Risk and Technical Assessment(2025年3月25日)
- 既存添加物名簿収載品目リスト(令和7年8月25日現在、日本食品化学研究振興財団)
- 医薬基盤・健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報 グルコサミン
- Kato Y, Yagami A, Matsunaga K. 健康食品キトサンによるアナフィラキシーの1例. アレルギー 2005;54(12):1427-1429
- 厚生労働省 医薬食品局審査管理課長・安全対策課長通知「小麦由来成分を配合する医薬部外品及び化粧品への成分表示について」(平成23年9月9日)
- 埼玉県アレルギー疾患相談室 よくあるQ&A集 Q24(令和8年8月)