この記事でわかること
- 夏の紫外線・皮脂と汗・冷房が、肌で何を起こすか
- 日焼けと光老化が起きるしくみ
- 日焼け止めの量と塗り直し、汗と冷房への手入れ
夏は日焼けやしみだけでなく、テカリやあせも、冷房の部屋でのかさつきまで悩みが一度に増えて、何から手をつければいいのか迷いますよね。
結論から言うと、夏の肌は、強い紫外線、増える皮脂と汗、冷房で乾いた室内という3つの条件を同時に受けています。それぞれが肌の別の場所で悩みを起こすので、紫外線を防ぐ量と回数、汗の扱い、夏の保湿を分けて考えると整理できます。まずは、夏の紫外線から見ていきましょう。
紫外線は、7月と8月にいちばん強くなる
夏の肌悩みのいちばんの原因は、1年でいちばん強い紫外線です。紫外線の強さの目安のUVインデックスは、7月と8月にピークを迎えます。
つくばの2025年の日最大UVインデックスの月平均で、色の濃い6〜8月がいちばん強い時期です。
気象庁がつくばで観測した日最大UVインデックスの月平均は、2021年から2025年の各年で、7月が6.7〜8.5、8月が6.8〜8.8でした。環境省の区分では6〜7が「強い」、8〜10が「非常に強い」で、日中の外出をできるだけ控えようという段階に届く年もあります。
1年の紫外線のおよそ70〜80%は4〜9月に集中し、夏は午前10時から午後2時までに1日のおよそ70%が降ります。薄い雲なら、80%以上が通り抜けます。
くもりの日も、夏の昼間は紫外線がいちばん多い時間だと考えておきましょう。
暑さと湿気で、皮脂と汗が増える
夏は、皮脂が1年でいちばん多くなり、汗もたくさんかく季節です。暑さと湿気が、皮脂と汗を増やすからです。
同じ人の顔を1年を通して測ると、夏がいちばん皮脂の多い季節でした。日本人の女性の頬では、3月中旬から8月末にかけて、皮脂の量が約3倍になっていたという結果もあります。
汗を出すエクリン汗腺は、日本人で約230万個あり、1日に最大10Lの汗を出すとされています。汗の99%以上は水分で、乳酸を含むためpH5.7〜6.5の弱酸性です。
夏のテカリやべたつきは、皮脂と汗が増える季節だから起きやすいのです。
冷房の室内は、夏でも乾いている
汗をかく夏は、肌はうるおっていると思う人は多いと思います。でも、冷房の効いた室内は、夏でも乾いた空気になっています。
エアコンの普及で、夏でも湿度の低い環境で過ごす時間が長くなっています。オフィスなどの建物に国が定める管理の基準は、温度18〜28℃、湿度40〜70%で、室内を外より涼しくするときは、その差を大きくしすぎないことと決められています。
夏の肌は、外では紫外線と汗、中では乾いた空気という、正反対の環境を行ったり来たりしているのです。
紫外線は、日焼けとしみ、長い目では光老化につながる
紫外線を浴びると、肌はまず赤くなり、そのあと黒くなります。どちらも、紫外線で肌の細胞が傷ついたことへの反応です。
紫外線のうちUVBは、表皮の細胞の核にある遺伝子に直接吸収されて傷をつけます。すると炎症が起きて、翌日には皮膚が痛みを伴って赤く腫れ、1週間ほどたつと、傷んだ皮膚が薄い膜のようになってはがれ落ちます。これが赤くなる日焼けです。
赤くなる日焼けも黒くなる日焼けも、紫外線で肌が傷ついたことへの反応です。
浴びる
赤くなる
黒くなる
むける
黒くなる日焼けは、表皮のいちばん下にある色素細胞(メラノサイト)が刺激されて、メラニンをたくさん作った結果です。紫外線を浴びた表皮の細胞が、色素細胞をさかんに働かせる合図を出しています。メラニンが作られすぎてたまると、しみになります。
長い目で見た影響は、角層よりずっと下の真皮に出ます。くり返し日光を浴びた皮膚は厚くごわごわになって色も濃くなり、真皮で肌の張りを保つ弾性線維が壊れてかたまります。これが光老化です。UVAは波長が長く皮膚の深くまで入りますが、UVBはUVAの600〜1000倍強いといわれ、しみやしわなどの光老化についても、日本皮膚科学会はUVBの影響が圧倒的だとしています。日光を浴びない太ももの内側に深いしわがないように、光老化は防げる変化です。
黒くなれば肌は守られている、と思うかもしれませんね。でも、黒くなるのは皮膚が傷ついた結果の反応です。日焼けは、焼く前に防ぐのがいちばんです。
皮脂はニキビ、汗はあせも、冷房は乾燥につながる
紫外線のほかの夏の悩みは、皮脂腺、汗の出口、角層と、それぞれ別の場所で起きています。
皮脂の多い部位では、ニキビができやすくなります。あせもは、汗の通り道がふさがれて、汗が皮膚の中にたまることで起きます。ふさがる深さによって3つの型に分けられ、大半が温かく湿った気候で起きます。
角層は、冷房の乾いた室内で水分を失いやすくなります。さらに日焼けすると、皮膚の生まれ変わりが速まりすぎてリズムが乱れ、肌荒れの状態になります。
皮脂が多くても、角層の水分が足りているとは限りません。テカるのにかさつく、ということも夏には起きるのです。
手入れは、紫外線を防ぐ量と回数、汗の扱い、夏の保湿
夏の手入れの中心は、紫外線を防ぐことです。日傘やつばが全周にある帽子、長袖で肌に届く紫外線を減らすのが第一で、日焼け止めは最後の砦とされています。
日焼け止めは、顔なら1円硬貨1個分、クリーム状ならパール粒1個分を2回重ね、2〜3時間おきに塗り直します。SPFは1平方センチあたり2mgを塗って測った値なので、薄く1回では表示どおりの効果になりません。紫外線の強い午前10時から午後2時を避けるのも、立派な対策です。
汗は、こすらずに押さえて拭き取ります。タオルで拭くと日焼け止めも落ちるので、落ちたと思ったら重ね塗りをします。あせもを防ぐには、汗をかいたままにせず、冷やして乾かし、通気性の悪い服や、軟膏を厚く塗ることを避けます。
冷房の部屋では、外との温度差を大きくしすぎず、湿度40%以上を目安にします。洗顔のあとに乾くなら、脂性肌でも保湿用の化粧品を使うよう、日本皮膚科学会のQ&Aでも勧められています。焼けてしまったあとは、できるだけ早く冷やすことが第一です。冷たい水でぬらしたタオルなどを当て、水ぶくれや腫れがあれば皮膚科を受診します。赤みが引いて乾いた肌には、保湿のローションなどで水分を補います。
防ぐ、こすらない、夏も保湿する。この3つが夏の手入れの柱です。
成分は、悩みと働く場所で選ぶ
夏の成分は、悩みごとに働く場所が分かれているので、悩みに合わせて選びます。
日焼け止めは、角層の表面に膜をつくって、紫外線を吸収したり散らしたりするものです。化粧品として「日やけを防ぐ」「日やけによるシミ・そばかすを防ぐ」効能が認められています。
しみには、医薬部外品の有効成分として「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ」効能が認められた成分があります。トラネキサム酸は表皮の細胞から色素細胞への合図を抑え、アルブチンはメラニンを作る酵素チロシナーゼの働きを妨げるとされています。どれも「防ぐ」効能で、できたしみを消すものではありません。
ニキビには、サリチル酸などが、医薬部外品の有効成分として「にきびを防ぐ」効能で使われています。あせもは、医薬部外品の化粧水や乳液の効能に「あせも」を防ぐことが含まれ、ふつうの化粧品では打粉(ベビーパウダー)だけが「あせもを防ぐ」と言えます。保湿成分が働くのは角層で、化粧品では「皮膚にうるおいを与える」「皮膚の乾燥を防ぐ」の範囲です。
成分を選ぶときは、医薬部外品の表示と効能の欄を見ると、どの悩みに向くかがわかります。
まとめ
- 紫外線は7月と8月がピークで、1日のおよそ70%が午前10時から午後2時に降ります
- 夏は皮脂がいちばん多い季節で、汗もたくさん出ます。冷房の室内は乾いています
- 紫外線は赤くなる日焼けと黒くなる日焼けを起こし、長い目では真皮の光老化につながります
- 日焼け止めは1円硬貨1個分を2回重ね、2〜3時間おきに塗り直します
- 汗は押さえて拭き、冷房で乾くなら夏でも保湿し、焼けたらすぐに冷やします
夏の悩みは多いようでいて、原因ごとに分けると手入れははっきりします。焼く前の準備に、いちばん手をかけてみてください。
よくある質問
夏の紫外線はどれくらい強いですか?
つくばの観測値では、7月と8月の日最大UVインデックスの月平均が6.7〜8.8で、環境省の区分で「強い」から「非常に強い」に届く年もあります。夏は午前10時から午後2時に、1日の約70%が降ります。
夏も保湿は必要ですか?
必要です。エアコンで湿度の低い環境にいる時間が長く、日焼けも肌荒れのもとになります。脂性肌でも洗顔のあとに乾くなら保湿用の化粧品を使うよう、日本皮膚科学会のQ&Aでも勧められています。
日焼け止めはどれくらい塗ればいいですか?
顔なら1円硬貨1個分、クリーム状ならパール粒1個分を2回重ね、2〜3時間おきに塗り直します。SPFは1平方センチあたり2mgを塗って測った値なので、薄く1回では表示どおりの効果になりません。
あせもはなぜできますか?
汗の通り道がふさがれて、汗が皮膚の中にたまることで起きます。汗をかいたままにせず、冷やして乾かし、通気性の悪い服を避けましょう。
しみを防ぐ成分で、できたシミは消えますか?
できたシミを消す効能はありません。医薬部外品の有効成分として認められているのは「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ」効能で、予防の範囲です。
この記事で参照した情報
- 気象庁「日最大UVインデックス(観測値)の月平均値」つくば(2021〜2025年)
- 環境省「紫外線環境保健マニュアル2020」(2020年3月改訂版)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「日焼け Q3 UVBとUVAはどう違いますか?」
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「日焼け Q4 日焼けはどうして起こるのですか?」
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「日焼け Q5 光老化は普通の老化とどう違うのですか?」
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「日焼け Q10」
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「にきび」Q5
- Nakamura T, et al. Season- and facial site-specific skin changes due to long-term mask wearing during the COVID-19 pandemic. Skin Res Technol 2022;28(5):749-758(PMC9349579)
- Youn SW, et al. Regional and seasonal variations in facial sebum secretions. Skin Res Technol 2005;11(3):189-195
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「汗」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「汗腺」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「打粉」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「皮膚の乾燥」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「肌荒れ」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「美白剤」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「アルブチン」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「メラノサイト」
- MSDマニュアル プロフェッショナル版「汗疹」(2024年3月改訂)
- 厚生労働省「建築物環境衛生管理基準について」
- 厚生労働省 検討会資料「第4章 別表」(医薬部外品の効能効果の範囲、2007年5月31日)
- 厚生労働省医薬食品局長通知「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年7月21日 薬食発0721第1号)
- 医薬品医療機器総合機構 審査報告書「クリーム TX」(有効成分: トラネキサム酸セチル塩酸塩、2008年10月16日)
- 日本化粧品工業会「紫外線防止の基本」
この記事が入っているテーマ別まとめ