この記事でわかること
- 得意な紫外線UVB・UVAと白さの違い
- ナノ粒子の評価と、吸い込む使い方の注意
- 金属アレルギーとの関係と選び方
日焼け止めの成分表示で酸化チタンと酸化亜鉛を見かけると、何が違うのか、どちらを選べばいいのか迷いますよね。
結論から言うと、酸化チタンはUVBの側、酸化亜鉛はUVAの側をより防ぎやすく、白く隠す力は酸化チタンのほうが大きい、という2つが大きな違いです。どちらも「ノンケミカル」の日焼け止めにも使われる白い粉で、得意なところが違うので、一緒に使われることもよくあります。2つの役割から順に見ていきましょう。
2つとも紫外線散乱剤で、違いは得意な紫外線と白さ
酸化チタンと酸化亜鉛は、どちらも肌の表面で紫外線を防ぐ紫外線散乱剤で、違うのは得意な紫外線と白さの2つです。
紫外線は、肌に届くと日焼けやしみ、シワの原因になります。2つとも金属が酸素と結びついた白い粉で、環境省のマニュアルでは、散乱剤は粉が紫外線を吸収したり散乱させたりして、肌に届くのを防ぐとされています。
酸化チタンも酸化亜鉛も、肌の表面に粉の層をつくって紫外線を防ぎます。
働く場所は、どちらも肌の表面です。透明な紫外線吸収剤との違いは紫外線吸収剤と紫外線散乱剤の違いの記事にまとめています。
同じ散乱剤どうしでも、得意な紫外線の範囲と、白さに違いがあります。次の章から、1つずつ見ていきます。
防ぎやすい紫外線は、酸化チタンがUVB、酸化亜鉛がUVAの側
酸化チタンはUVBの側を、酸化亜鉛はUVAの側を、より防ぎやすい粉です。環境省のマニュアルが、2つの散乱剤について「酸化亜鉛はよりUV-A を、酸化チタンはよりUV-B を防ぐ。」と整理しています。
日焼け止めで防ぎたいのは、波長290〜320nmのUVBと、320〜400nmのUVAです。UVBは肌が赤くなる日焼けのもとで、UVAはガラスも通り抜け、PAの+で防ぐ力を表します。海外の総説でも、酸化チタンはUVBに、酸化亜鉛はUVAに強く、2つを組み合わせると幅広い紫外線を防げるとまとめられています。
得意な紫外線の側が少しずれているので、2つを合わせると幅広い紫外線を防げます。
UVBの側が得意
UVAの側が得意
幅広く防ぐ
これは、片方だけでは一方の紫外線を防げないという意味ではありません。どちらの粉もUVAとUVBの両方を防ぐ力をもっていて、得意な側が少しずれているという関係です。また、粒をとても細かくすると白く見えにくくなる一方で、UVAとUVBの防ぎ方のバランスが変わることがあり、細かい酸化チタンに大きさの違う酸化亜鉛を合わせる方法も挙げられています。
実際の製品でどれだけ防げるかは、配合の量や粒の大きさ、組み合わせで変わります。防ぐ力は、成分名ではなく、UVBはSPF、UVAはPAの表示で比べましょう。
白く隠す力は酸化チタンが大きく、酸化亜鉛は透明性もある
白浮きしにくいのはどっちなのか、気になる人は多いと思います。白く、下の色を隠す力が大きいのは酸化チタンで、酸化亜鉛は白さと透明性をあわせもつ粉です。
化粧品の技術者の団体がまとめた用語集では、酸化チタンは光を強く曲げる性質が高く、白色顔料として広く使われるとされています。一方の酸化亜鉛は、白色性と透明性にすぐれるため、白色顔料にも日焼け止めにも使われるとされています。
ただし、どちらの粉も、粒をとても細かくすると、下の色を隠す力が小さくなって透明に近づきます。オーストラリアの規制当局の評価でも、大きな粒は肌の上で不透明な層として見えるのに対し、とても細かい粒は肌の上で見えなくなり、紫外線を防ぐ力は保たれるか、むしろ高まるとされています。白浮きを抑えたい日焼け止めに細かい粒が使われるのは、このためです。
もうひとつ、品質にかかわるのが光触媒の働きです。どちらの粉も、紫外線が当たると周りの物質を変化させる性質をもっていて、酸化チタンの結晶の形のうちアナターゼ型の働きがとくに強いとされています。用語集によると、化粧品には働きの弱いルチル型の酸化チタンを使うことが多く、表面を処理して反応を抑えています。酸化亜鉛も表面を処理した粉が多く使われていて、肌をひきしめる収れん剤などとしての役目は酸化亜鉛の記事で紹介しています。
白さは、粉の種類だけでなく粒の大きさでも変わるので、製品を少量塗って確かめるのが確実です。
ナノ粒子は、塗るのと吸い込むのとで評価が分かれる
ナノ粒子と聞くと、肌に入りこまないか心配になりますよね。ヨーロッパの評価では、決められた条件を満たすナノの粒を日焼け止めに25%まで使い、肌に塗る場合は、2つとも人に害のリスクはないと考えられるとされています。
日焼け止めに使うとても細かい粒、いわゆるナノ粒子について、ヨーロッパで消費者の安全を評価する科学委員会が、2つの粉をそれぞれ評価しました。結論は2つで共通しています。
一方、吸い込む場合は別です。同じ委員会は、ナノの酸化チタンも、ナノの酸化亜鉛も、スプレー製品に使うのは安全とはみなせないとしました。これを受けてヨーロッパでは、どちらのナノの粒も、使う人が吸い込んで肺に届くおそれのある使い方には使えない、という条件がついています。酸化亜鉛は、ナノでない粒にも同じ条件があります。ナノの粒だけにつく条件には、酸化チタンでは光触媒の働きの強さの上限、酸化亜鉛では水に溶ける量の上限があります。酸化チタンの粉のパウダーやヘアスプレーにつく上限は、酸化チタンの記事で紹介しています。
これらはヨーロッパの決まりで、日本の製品に同じ条件がそのまま当てはまるわけではありません。日本の化粧品の業界団体は、化粧品の中では粒どうしが集まり、おおむね100nmを超える大きさで存在するとして、ナノマテリアルを配合しても安全性に問題はないとの見解を示しています。
どちらの粉でも、スプレーやルースパウダーは、顔のまわりで吸い込まないように使うのが共通の基本です。
成分表示はそのままの名前で、吸収剤の一覧には載らない
全成分表示では、2つはそのまま「酸化チタン」「酸化亜鉛」と書かれ、日本の化粧品基準では、紫外線吸収剤の一覧には載っていません。
どちらもファンデーションなどでは白さを出す顔料としても使われるので、名前があるだけで、紫外線を防ぐために入っているとは限りません。日焼け止めかどうかは、SPFやPAの表示と、製品の用途で判断します。複数の成分をあらかじめ混ぜた原料も、国の通知では混ぜた成分ごとに書くことになっています。
日本の化粧品基準には、使ってよい紫外線吸収剤とその上限を決めた一覧、別表第4があります。酸化チタンと酸化亜鉛は、紫外線だけを特異的に吸収する物ではないため、2つともこの一覧には載っていません。つまり、どちらにも化粧品基準の一覧で決めた配合の上限はありません。ただし、上限がないことはいくら入れても安全という意味ではなく、安全を確かめて配合する責任は、製品を製造販売する会社にあります。
たとえば、ヨーロッパの化粧品規則では、ナノの大きさの成分は、成分名のあとに括弧で「ナノ」を付けて書くことが決められています。海外の製品で名前に「ナノ」が付いていたら、細かい粒の形で入っているという意味で、危険を知らせる表示ではありません。
成分表示に名前があっても、日焼け止めとしての力はSPFとPAで見ると覚えておきましょう。
かぶれの報告は少なく、金属アレルギーの人は皮膚科で相談する
酸化チタンも酸化亜鉛も、かぶれの報告が少ない成分です。環境省のマニュアルでは、紫外線散乱剤は少し白く見えるものの、アレルギーを起こすことはほとんどないとされています。
海外の皮膚科の総説でも、紫外線を防ぐ成分のかぶれで多く報告されているのは吸収剤で、酸化チタンや酸化亜鉛によるかぶれの報告はほとんどないとされています。
ただ、金属アレルギーがある人は少し事情が違います。国の研究班が行った皮膚科の調査では、亜鉛にパッチテストで反応した人もいました。
金属アレルギーと言われたことがある人は、安心とも避けるべきとも自分で決めず、どの金属に反応するかを皮膚科で相談してから選ぶのが確実です。
どっちがいいかは目的で決め、防ぐ力はSPFとPAで比べる
どちらの粉が上、ということはなく、気になることに合わせて選びます。得意なところが違う2つの粉だからです。
たとえば、窓ぎわで過ごす時間が長いなど、UVAが気になるときは、まずPAの+の数を見て、成分表で酸化亜鉛が入っているかを確かめるのがひとつの見方です。白浮きが気になる人は、酸化チタンは白く隠す力が大きい粉だと知ったうえで、少量を手の甲などに塗って白さを確かめると選びやすくなります。
日焼け止めには、2つの粉を一緒に入れたものや、紫外線吸収剤と組み合わせたものもあります。成分名の有無よりも、SPFとPAの表示、十分な量、こまめな塗り直しのほうが防ぐ力に大きくかかわります。塗ってかゆみや赤みが出たら使うのをやめて、皮膚科で相談しましょう。
成分は目安にして、防ぐ力はSPFとPAで比べるのがいちばん確実です。
まとめ
- 酸化チタンと酸化亜鉛はどちらも紫外線散乱剤の白い粉で、酸化チタンはUVBの側、酸化亜鉛はUVAの側をより防ぎやすいとされます
- 酸化チタンは白く下の色を隠す力が大きく、酸化亜鉛は白さと透明性をあわせもちます。どちらも粒を細かくすると透明に近づきます
- ヨーロッパの評価では、ナノの粒を肌に塗る場合は2つとも害のリスクはないとされ、スプレーなど吸い込む使い方は2つとも認められていません
- 成分表示はそのまま「酸化チタン」「酸化亜鉛」で、日本の化粧品基準ではどちらも紫外線吸収剤の一覧の外です
- かぶれの報告はどちらもほとんどないとされますが、金属アレルギーがある人は自分で決めず、皮膚科で相談しましょう
2つの粉の違いは、どちらが優れているかではなく、得意な紫外線と白さの違いです。違いを知ったうえで、SPFとPAの表示と使い心地で、自分に合う日焼け止めを選んでみてください。
よくある質問
酸化チタンと酸化亜鉛の違いは?
得意な紫外線と白さが違います。環境省のマニュアルでは、酸化亜鉛はよりUVAを、酸化チタンはよりUVBを防ぐとされています。見た目では、酸化チタンは白く下の色を隠す力が大きく、酸化亜鉛は白さと透明性をあわせもつ粉です。
酸化チタンと酸化亜鉛はどっちがいい?肌にやさしいのは?
どちらが上ということはなく、目的で選びます。UVAが気になるならPAの+の数を見て、酸化亜鉛が入っているかを確かめるのがひとつの見方です。かぶれの報告は、どちらの粉もほとんどないとされています。
白浮きしにくいのは酸化チタンと酸化亜鉛のどちら?
白く隠す力が大きいのは酸化チタンです。酸化亜鉛は白さと透明性をあわせもつとされます。どちらも粒をとても細かくすると透明に近づくので、実際の白さは製品を少量塗って確かめるのが確実です。
金属アレルギーでも酸化亜鉛や酸化チタンの日焼け止めは使える?
自分で決めず、皮膚科で相談してから選びましょう。国の研究班の調査では、亜鉛にパッチテストで反応した人もいました。どの金属に反応するかを確かめてから選ぶのが確実です。
ナノの酸化チタンや酸化亜鉛は危険?スプレーやパウダーは?
肌に塗る場合と吸い込む場合で評価が分かれます。ヨーロッパの評価では、条件を満たすナノの粒を25%まで肌に塗っても害のリスクはないとされ、スプレーでの使用は2つとも安全とはみなせないとされました。スプレーやパウダーは吸い込まないように使いましょう。
この記事で参照した情報
- 環境省「紫外線環境保健マニュアル2020」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「二酸化チタン」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「酸化亜鉛」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「超微粒子無機粉体」
- Smijs TG, Pavel S. Titanium dioxide and zinc oxide nanoparticles in sunscreens: focus on their safety and effectiveness. Nanotechnol Sci Appl 2011;4:95-112
- Schneider SL, Lim HW. A review of inorganic UV filters zinc oxide and titanium dioxide. Photodermatol Photoimmunol Photomed 2018
- 豪州TGA「Literature review on the safety of titanium dioxide and zinc oxide nanoparticles in sunscreens」V1.1(2016年8月)
- Commission Regulation (EU) 2016/1143(化粧品規則 付属書VI 27a、ナノの酸化チタン)
- Commission Regulation (EU) 2016/621(化粧品規則 付属書VI 30・30a、酸化亜鉛)
- Regulation (EC) No 1223/2009(化粧品規則)第2条・第19条
- 日本化粧品工業会「ナノマテリアルについて」
- 厚生労働省「化粧品基準」(平成12年 厚生省告示第331号)
- 厚生労働省 通知「化粧品の全成分表示の表示方法等について」(平成13年3月6日 医薬審発第163号・医薬監麻発第220号)
- 厚生労働科学研究「金属アレルギーの新規管理法の確立に関する研究」2022〜2024年度 総合研究報告書