この記事でわかること
- アディポフィリンの中身と、成分表での目印
- 塗ったときの結果と、化粧品が働く場所
- ボルフィリンとの違いと、化粧品でうたえる範囲
「アディポフィリン配合」と書かれたクリームを見かけて、塗ると本当にふっくらするのか、同じように脂肪の話で聞くボルフィリンと何が違うのか、気になりますよね。
結論から言うと、アディポフィリンは、オルニチンというアミノ酸を小さなカプセルに包んだ化粧品の原料の名前です。脂肪をためる細胞に向けて作られた原料ですが、化粧品として言えるのは肌の表面の話までで、ボルフィリンとは中身も別ものです。まずは中身から見ていきましょう。
アディポフィリンは、オルニチンを小さなカプセルに包んだ原料
アディポフィリンは、オルニチンを中心にした原料の商品名で、ひとつの成分の名前ではありません。中身は水、プロパンジオール、オルニチン、リン脂質、糖脂質の5つだからです。
中心のオルニチンは、植物のでんぷんから生物工学の方法でつくったもので、小さなカプセルに閉じ込められています。カプセルは、リン脂質の二重の膜でできた袋を多糖の膜で包んで安定させたもので、電気を帯びた分子を閉じ込めるための運び役とされています。
アディポフィリンは、オルニチンを膜で包んだ小さなカプセルの原料です。
オルニチンは、たんぱく質の材料にはならないタイプのアミノ酸です。体の中では、アルギニンというアミノ酸から尿素が切り離されるときにでき、皮膚の中でも酵素の働きでつくられて、細胞が増えるのを調節する物質に変わっていきます。
たとえば配合量を見ると、すすめられている0.5〜2%は、水なども含めた原料全体の量です。原料に占めるオルニチンは計算上約1割なので、原料を2%入れた商品でも、オルニチンそのものは0.2%ほどになります。
成分表では、アディポフィリンの表示名称は「オルニチン」です。成分表で探すなら、オルニチンが目印になります。
脂肪をためる細胞に向けた原料だが、化粧品が働くのは角層まで
脂肪に働く原料と聞くと、塗るだけで胸やほおがふっくらするのでは、と期待しますよね。アディポフィリンは脂肪をためる細胞に向けて作られた原料ですが、化粧品が働くのは肌のいちばん外側の角層までです。脂肪をためる細胞は、角層よりずっと下にあるからです。
肌は外側から、表皮、真皮と重なっていて、表皮のいちばん外側が角層です。脂肪の組織は、さらにその下の皮下組織にあります。化粧品で「浸透」と書けるのも、角質層までです。
試験管でヒトの脂肪細胞に原料を加えると、脂肪細胞から脂肪酸が外に出ていく量が減ったという結果があります。ただしこれは、細胞に直接加えたときの結果です。
アディポフィリンは、化粧品としては角層までの、肌の表面の話で見ておくと安心です。
塗ると、ほうれい線などの溝が浅くなったという結果がある
アディポフィリンを2%入れたクリームを顔に塗ると、ほうれい線などの溝の深さが9.5%浅くなり、肌のきめの粗さが5.9%小さくなったという結果があります。
この結果は、肌の表面の形の変化です。脂肪がふえたかどうかとは別の話で、「脂肪を注入したようにふっくら」と読むのは行きすぎです。
塗って変わったと言えるのは、肌の表面の溝やきめだと覚えておきましょう。
ボルフィリンとは、中身も配合量も試した場所も違う
ボルフィリンもアディポフィリンも脂肪をためる細胞に向けた原料ですが、中身は別ものです。もとになっている成分も、原料の形も違うからです。
ボルフィリンは、ハナスゲという植物の根のエキスを水添ポリイソブテンという油に溶かした、水を含まない溶液です。アディポフィリンは、アミノ酸のオルニチンを、水を含む液の中のカプセルに包んだ原料です。すすめられる配合量も、ボルフィリンは5%、アディポフィリンは0.5〜2%と違い、どちらの%も原料全体の量を指しています。
試した場所も違い、ボルフィリンのヒトの試験は胸、アディポフィリンは顔です。試した場所も比べた相手も違うので、どちらがよく効くかは比べられません。
ほうれい線や胸の大きさの話は、化粧品ではうたえない
化粧品でうたえる効能は国が定めた56項目で、その中にほうれい線、バスト、脂肪、ボリュームという言葉はありません。化粧品は、もともと薬理作用で効き目を認められたものではないので、脂肪細胞に働くといった効能は、化粧品の広告ではうたえないからです。
56項目のうち近いのは、「肌をひきしめる」「肌にはりを与える」「乾燥による小ジワを目立たなくする」といった肌の状態の効能で、体の形や大きさの話ではありません。東京都は広告の講習資料で、化粧品の「ホウレイ線をケア」という表現や、シワやたるみの改善をうたう表現を、不適切な例に挙げています。
アディポフィリンは医薬部外品には使えない原料とされ、医薬部外品で「シワを改善する」効能が承認された有効成分でもありません。業者向けの説明に「ほうれい線を改善」とあっても、化粧品の広告では使えない言い方です。
アディポフィリン配合の製品を見るときは、成分表の名前と広告の言葉を確かめます。
表示を見る
オルニチン
言葉に注意
製品を見るときは、成分表のオルニチンと、広告の言葉が56項目の範囲かを確かめましょう。
赤みやかゆみが出たら、使うのをやめる
アディポフィリンを使って赤みやかゆみが出たら、使うのをやめましょう。安全性は、中身の成分ごとに見る必要があるからです。
アメリカの化粧品成分の専門家による安全性評価では、中身のうちプロパンジオールとリン脂質は、今の使い方と濃度で安全と評価されています。
どの成分でも、肌に合わないことはあります。使い始めは、赤みやかゆみが出ないか様子を見ながら使いましょう。
まとめ
- アディポフィリンはオルニチンを小さなカプセルに包んだ原料の商品名で、成分表では「オルニチン」が目印です
- 脂肪をためる細胞に向けた原料ですが、化粧品が働くのは角層までです
- 塗ると、ほうれい線などの溝が浅くなり、きめが整ったという、肌の表面の結果があります
- ボルフィリンとは中身も配合量も試した場所も違い、どちらがよく効くかは比べられません
- ほうれい線を浅くすることや胸を大きくすることは、化粧品ではうたえません
名前だけでは中身がわかりにくい原料だからこそ、成分表の名前と、うたえる範囲を知っておくと、広告の言葉に振り回されずにすみます。
よくある質問
アディポフィリンとは何ですか?
オルニチンというアミノ酸を小さなカプセルに包んだ化粧品の原料の商品名です。中身は水、プロパンジオール、オルニチン、リン脂質、糖脂質の5つです。
アディポフィリンは成分表でどう書かれますか?
表示名称は「オルニチン」です。成分表で探すならオルニチンが目印です。
アディポフィリンを塗ると脂肪は増えますか?
化粧品が働くのは角層までで、脂肪の組織はそれよりずっと下の皮下組織にあります。塗って変わったという結果があるのは、ほうれい線などの溝やきめといった肌の表面です。
アディポフィリンとボルフィリンの違いは何ですか?
中身と試した場所が違います。アディポフィリンはオルニチンのカプセル、ボルフィリンはハナスゲ根エキスを油に溶かした原料で、試験の部位も比べた相手も違うため、どちらがよく効くかは比べられません。
アディポフィリン配合の化粧品でバストアップはうたえますか?
うたえません。化粧品の効能56項目に、バストや脂肪、ボリュームという言葉はありません。
この記事で参照した情報
- Lucas Meyer Cosmetics「Adipofill'in™」製品ページ
- Clariant「Adipofill'in™」製品ページ
- Lucas Meyer Cosmetics「Adipofill™ Technical File」(技術資料)
- 特許 FR2988601A1(出願人 Lucas Meyer Cosmetics SAS、2013年10月4日公開)
- マツモト交商「化粧品原材料データベース:アディポフィリン」
- PubChem「L-Ornithine」(米国国立衛生研究所)
- Dörner C, et al. Amino Acid Metabolism of the Skin: Control by Specific Enzymes and Contribution to Protective Functions. Metabolites 2025;15(9):601
- MSDマニュアル家庭版「皮膚の構造と機能」
- Croda Beauty「ボルフィリン(Volufiline™)」製品ページ(日本語)
- Sederma「VOLUFILINE™」技術資料(2006年)
- 厚生労働省医薬食品局長通知「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年7月21日 薬食発0721第1号)
- 厚生労働省「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」(平成29年9月29日 薬生監麻発0929第5号)
- 東京都保健医療局 健康安全部薬務課「医薬品等適正広告基準について」(講習資料)
- Cosmetic Ingredient Review「Safety Assessment of Alkane Diols as Used in Cosmetics」(Final Report 2018年6月13日)
- Cosmetic Ingredient Review「Safety Assessment of Lecithin and Other Phosphoglycerides as Used in Cosmetics」(Final Report 2015年4月7日)
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