この記事でわかること
- 分子の形と、日本での区分の違い
- ニキビの原因の流れと、皮膚科の指針での位置づけ
- 刺激の出方と、一緒に使えるか
ニキビや毛穴の話でよく並ぶアゼライン酸とサリチル酸。何が違うのか、どちらを選べばいいのか、一緒に使っても大丈夫なのか迷いますよね。
結論から言うと、2つの違いは分子の形と、日本での扱いです。サリチル酸は油になじみやすい酸で、化粧品には量の上限があり、薬用化粧品の有効成分にもなります。アゼライン酸は水に溶けにくい酸で、日本の市販品は化粧品として、肌を整える目的で入っています。
アゼライン酸は鎖の形、サリチル酸は環の形で油になじむ
アゼライン酸は鎖の両端に酸がついた形、サリチル酸は六角形の環に酸と水酸基がついた形です。名前は似ていても、同じ仲間の酸ではありません。
アゼライン酸は鎖の両端に酸、サリチル酸は六角形の環に酸と水酸基がつきます。
アゼライン酸は、炭素が9個つながった鎖の両端に酸の部分がついた、ジカルボン酸という種類の酸です。分子の中に水酸基をもたないので、AHAでもBHAでもない、別の仲間です。見た目は白い粉で、水に溶けにくい性質があります。小麦などの穀物にも含まれる由来の話は、アゼライン酸の記事にまとめています。
サリチル酸は、化粧品ではBHAの代表として呼ばれる酸です。ただ、六角形の環の形をもつので、炭素がまっすぐつながった本来のβヒドロキシ酸とは形が違います。大きな特徴は油に溶けやすいことで、水になじむグリコール酸などのAHAとは対照的です。なお、成分表示に「BHA」とあるのは別の酸化防止剤で、角質ケアのBHAは「サリチル酸」と書かれます。呼び名のしくみはAHA・BHA・PHAの記事で解説しています。
形の違いは、サリチル酸は油になじみ、アゼライン酸は水に溶けにくいという性質の違いにつながります。
日本では、サリチル酸は量の上限つき、アゼライン酸は化粧品の成分
日本では、サリチル酸は化粧品に入れられる量に上限があり、薬用化粧品の有効成分にもなります。アゼライン酸の市販品は化粧品です。化粧品と薬用化粧品のそれぞれの決まりで、2つの名前の載り方が違うからです。
日本では、2つの立場が違います。
アゼライン酸
日本の市販品は化粧品
サリチル酸
薬用化粧品にも入る
日本の化粧品に入れてよい成分は、厚生労働省の化粧品基準で決まっています。サリチル酸は、その中の防腐剤の表に載っている成分で、化粧品100gあたり0.20gまでです。サリチル酸の塩類は、合計で1.0gまでです。一方、アゼライン酸の名前は、配合を禁じたり量を制限したりする表にはありません。
薬用化粧品、つまり医薬部外品の有効成分リストには、サリチル酸が化粧水で0.05〜0.7%、クリームや乳液で0.1〜1.5%といった前例とともに載っています。サリチル酸を有効成分にした薬用の化粧水などは、医薬部外品として「にきびを防ぐ」効能をうたえます。アゼライン酸の市販品は化粧品で、言えるのは「肌を整える」などの範囲です。
医薬品では、サリチル酸に医療用の5%と10%の軟膏があり、効能にざ瘡、つまりニキビが入っています。アゼライン酸を皮膚科で塗り薬として使う場合は、保険適用外です。店頭で見かけるアゼライン酸は、化粧品の成分として入っているものと考えておきましょう。
アメリカでは、サリチル酸は市販薬、アゼライン酸は処方薬
アメリカでは、サリチル酸のニキビ用製品は市販薬、アゼライン酸は処方薬です。どちらも化粧品ではなく医薬品として、国の決まりの中で扱われているからです。
サリチル酸を0.5〜2%含むニキビ用の製品は、処方せんなしで買える市販の医薬品です。国が決めた表示の決まりでは、効能は「ニキビの治療」または「ニキビの管理」で、肌が乾燥しすぎることがあるので1日1回から始めることも示されています。
アゼライン酸は、処方される医薬品です。20%のクリームは軽度から中等度の、炎症を伴うニキビに、15%のジェルは酒さという顔に赤みやぶつぶつが出る病気に使われます。市販のニキビ薬の決まりには、アゼライン酸は入っていません。
海外の製品で「2%」「10%」といった数字を見かけても、日本の化粧品と同じ扱いではありません。日本の化粧品の成分表示には、何%入っているかは書かれません。数字の大きさより先に、手元の製品がどの区分かを確かめるのが近道です。
皮膚科の指針に挙がるのは、塗るアゼライン酸とサリチル酸のピーリング
日本皮膚科学会のニキビ治療の指針では、アゼライン酸は塗り薬として、サリチル酸は皮膚科のピーリングとして挙がっています。どちらも医師が行う治療の選択肢で、化粧品の話ではありません。
尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023では、アゼライン酸について「面皰・炎症性皮疹に,アゼライン酸外用を選択肢の一つとして推奨する.但し,保険適用外であることに配慮する必要がある.」とされ、推奨度はC1です。面皰は毛穴がつまった段階のニキビ、炎症性皮疹は赤く腫れたニキビのことで、どちらの段階にも選択肢として挙がっています。顔に赤みやぶつぶつが出る酒皶の一つの型でも、アゼライン酸を塗ることが選択肢の一つとして推奨されています。
サリチル酸は、マクロゴールという土台に溶かしたピーリングが、「標準治療が無効あるいは実施できない場合に」選択肢の一つとして推奨されるC1です。エタノールに溶かしたものは「現時点では推奨しない」とされるC2です。2つのピーリングの違いはサリチル酸の記事でくわしく解説しています。
C1は選択肢の一つという意味で、ニキビでもっとも強く勧められている塗り薬は、アダパレンや過酸化ベンゾイルなど別にあります。
ニキビの原因の流れの中で、働く場所が違う
2つは、ニキビができる流れの中で、働く場所が違います。ニキビは、皮脂と毛穴の出口のつまりから始まり、いくつかの段階を経て赤く腫れるからです。
皮脂が多く出て、毛穴の出口に角質がたまってつまると、毛穴の中に皮脂がこもります。そこでアクネ菌が増えると、赤く腫れたニキビになります。
サリチル酸は、枠で囲んだ毛穴の出口のつまりに働きます。
多く出る
つまる
増える
腫れる
サリチル酸は、毛穴の出口の角質に働きます。角質のたんぱく質を溶かすのではなく、角質どうしをつなぐ接着をゆるめて、はがれやすくします。油になじむので、毛穴と皮脂腺のあたりに集まりやすい性質もあります。だから、毛穴のつまりを防ぐ側に向くのです。
アゼライン酸は、角質と菌の両方にかかわる働きが報告されています。20%クリームを使うと、毛穴の中と外で厚くなった角質が減ったという結果があり、アクネ菌が増えるのを抑える働きや、白血球の一種である好中球から出る活性酸素を抑える働きも報告されています。皮脂については、2つとも分泌が減ったという結果があります。
ただし、これらはどれも皮膚科のピーリングや薬の濃度での結果です。日本の化粧品で言えるのは、サリチル酸なら「肌を滑らかにする」、アゼライン酸なら「肌を整える」などの範囲で、「にきびを防ぐ」と言えるのはサリチル酸を有効成分にした医薬部外品です。
一緒に使うなら、1つずつ始めて刺激を見る
2つを一緒に使ってはいけない決まりはありませんが、始めるのは1つずつにします。刺激の出方が違い、重ねるほど刺激が増える方向だからです。
サリチル酸は角質をはがれやすくするので、乾燥や赤み、皮むけが出ることがあります。アゼライン酸ではヒリつきやチクチク感、かゆみ、熱い感じが代表的で、アメリカの薬では20%クリームで患者の約1〜5%、15%ジェルで29%に出ています。
アメリカの酒さ用のアゼライン酸ジェルの説明書は、アルコール入りの洗顔料や収れん剤、スクラブ、ピーリング剤を避けるよう患者に伝えることを求めています。サリチル酸の市販薬にも、ほかのニキビ用の塗り薬と同時に使うと刺激や乾燥が起きやすいという表示があります。2つを組み合わせたピーリング剤もありますが、これは医師が行う施術の話です。
家で重ねるなら、ヒリつきや赤みが出たら使うのをやめましょう。皮膚科で処方薬やピーリングを受けている人は、化粧品を重ねてよいかを医師に確かめてください。
ニキビを防ぎたいなら、サリチル酸の医薬部外品を選ぶ
ニキビを防ぎたいなら、「医薬部外品」の表示と、「有効成分」の欄にサリチル酸の名前があるかを確かめましょう。日本で「にきびを防ぐ」とうたえるのは、承認を受けた医薬部外品だからです。
毛穴のつまりやざらつきが気になるなら、サリチル酸の化粧品も候補になります。ふつうの化粧品で言えるのは「肌を柔らげる」「肌を滑らかにする」などの範囲です。使い始めは1日1回から様子を見ます。
アゼライン酸の化粧品は、「肌を整える」などの範囲で選ぶ成分です。海外の処方薬の働きを、そのまま化粧品に期待しないようにしましょう。赤く腫れたニキビが続くときや、顔の赤みが引かないときは、化粧品を重ねるより皮膚科に相談します。アゼライン酸の塗り薬は、保険適用外の選択肢として、ほかの治療とあわせて検討されます。
迷ったら、まず手元の製品が化粧品か医薬部外品かを見ることから始めましょう。
まとめ
- 違いは分子の形と日本での扱いです。アゼライン酸は鎖の両端に酸がつく酸、サリチル酸は油になじむ「BHA」の酸です
- 日本の化粧品で、サリチル酸は防腐剤の表で100gあたり0.20gまで。アゼライン酸は禁止・制限の表に名前がありません
- 薬用化粧品で「にきびを防ぐ」とうたえるのはサリチル酸の側で、アゼライン酸の市販品は化粧品として「肌を整える」までです
- ニキビの流れの中では、サリチル酸は毛穴の出口の角質に、アゼライン酸は角質と菌にかかわる働きが報告されています
- 刺激はアゼライン酸がヒリつき、サリチル酸が乾燥の方向。重ねるなら1つずつ始め、赤みが出たらやめます
アゼライン酸とサリチル酸は、名前の響きが似ていても、形も立場も違う2つの酸です。迷ったら、まず手元の製品が化粧品か医薬部外品かを見てみてください。
よくある質問
アゼライン酸とサリチル酸の違いは?
分子の形と、日本での扱いが違います。アゼライン酸は炭素9個の鎖の両端に酸がつく酸で、AHAでもBHAでもありません。サリチル酸は油になじむ「BHA」の酸で、日本の化粧品では100gあたり0.20gまでと決まり、薬用化粧品の有効成分にもなります。
ニキビにはアゼライン酸とサリチル酸のどっちがいい?
ニキビを防ぎたいなら、サリチル酸を有効成分にした医薬部外品を選びましょう。日本で「にきびを防ぐ」とうたえるのは医薬部外品で、ふつうの化粧品はどちらもニキビへの効能をうたえません。赤く腫れたニキビが続くときは皮膚科に相談しましょう。
アゼライン酸とサリチル酸は一緒に使える?
一緒に使ってはいけない決まりはありません。ただ、アメリカの酒さ用アゼライン酸ジェルの説明書はピーリング剤を避けるよう求め、サリチル酸の市販薬もほかのニキビ用の塗り薬との同時使用で刺激や乾燥が起きやすいと表示します。新しく始めるのは1つずつにしましょう。
刺激が少ないのはアゼライン酸とサリチル酸のどっち?
刺激の出方の種類が違います。サリチル酸は乾燥や皮むけ、アゼライン酸はヒリつきやかゆみが出やすい方向です。どちらも少量から試し、赤みが出たらやめましょう。
アゼライン酸は日本では薬ですか?
日本の市販品は化粧品です。言えるのは「肌を整える」などの範囲です。皮膚科で塗り薬として使う場合は保険適用外で、日本皮膚科学会のガイドラインでは、ニキビに対して選択肢の一つとして推奨されています。
この記事で参照した情報
- 厚生労働省「化粧品基準」(平成12年厚生省告示第331号)
- 厚生労働省「いわゆる薬用化粧品中の有効成分リストについて」(平成20年 薬食審査発第1225001号)
- 厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年 薬食発0721第1号)
- 医薬部外品の効能または効果の範囲(参考)(枚方市 掲載資料)
- 日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」
- FDA OTC Monograph M006: Topical Acne Drug Products for Over-the-Counter Human Use(2021)
- DailyMed: AZELEX (azelaic acid) cream 20% 添付文書
- FDA: FINACEA (azelaic acid) Gel 15% 添付文書(2021)
- Feng X, et al. Azelaic Acid: Mechanisms of Action and Clinical Applications. Clin Cosmet Investig Dermatol 2024;17:2359-2371
- Arif T. Salicylic acid as a peeling agent: a comprehensive review. Clin Cosmet Investig Dermatol 2015;8:455-461