この記事でわかること
- シャンプーで泡を助ける脇役としての役目
- ヤシ油の脂肪酸からつくるしくみと、似た名前の見分け方
- 不純物とかぶれの関係、安全性の評価の中身
シャンプーの成分表でよく見かけるコカミドプロピルベタイン。何のために入っているのか、「やさしい成分」と「かぶれる成分」のどちらなのか、迷いますよね。
結論から言うと、コカミドプロピルベタインは、シャンプーの泡立ちや泡のもちを助ける脇役の洗浄成分です。かぶれの報告はありますが、主な原因はつくるときに残る不純物と考えられていて、感作を起こさないように処方すれば安全と評価されています。まずは、シャンプーの中での役目から見ていきましょう。
シャンプーでの役目は、泡立ちを助ける脇役
コカミドプロピルベタインは、シャンプーの中で泡立ちと泡のもちを助ける脇役です。汚れを落とす主役は、別の成分が受けもっているからです。
シャンプーの洗う成分の主役になるのは、洗う力が強く泡立ちのよいラウレス硫酸Naなどのマイナスの電気をもつ洗浄成分です。ベタイン系の成分は、単独で洗浄成分として使われることはなく、主に泡立ちを助ける成分として使われます。泡立ちがよく、泡が安定しやすい性質があり、主役の成分と組み合わせてシャンプーの泡をつくります。
汚れを落とす主役に、泡を助ける脇役を組み合わせて、シャンプーの泡ができます。
汚れを落とす
泡立ちを助ける
泡で洗える
働きは泡だけではありません。汚れを洗う、とろみをつける、静電気を防ぐ、髪や肌の手触りを整える、という働きもあるとされ、両性の洗浄成分はリンスやトリートメントにも使われます。
成分表で見かけたら、泡を支える脇役と思っておけば十分です。
ヤシ油の脂肪酸から2回の反応でつくる、両性の洗浄成分
コカミドプロピルベタインは、ヤシ油からとれる脂肪酸を原料にした合成の成分です。ヤシそのものではなく、化学反応を2回通してつくられるからです。
まず脂肪酸をジメチルアミノプロピルアミンという物質と反応させて、アミドアミンと呼ばれる途中の物質をつくり、それをモノクロロ酢酸ナトリウムと反応させてできあがります。脂肪酸の部分には、炭素の数が9〜18のものが混ざっています。
かぶれに関わると考えられているのは、枠で囲んだ、つくる途中の物質が不純物として残るところです。
脂肪酸
反応
反応
少し残る
このとき、途中の物質であるアミドアミンとジメチルアミノプロピルアミンが、原料に少し残ることがあります。残る量には、アミドアミンで0.3〜3.0%、ジメチルアミノプロピルアミンで0.0003〜0.02%の幅がありうるとされます。あとで出てくる安全性の話は、この残りものが中心です。
分子の中にプラスの電気を帯びた部分とマイナスの電気を帯びた部分の両方をもつので、両性界面活性剤と呼ばれます。両性界面活性剤はほかの種類の洗浄成分と一緒に使いやすく、皮膚への刺激が低いとされています。なかでもベタイン型は、酸性でも中性でもアルカリ性でも水によく溶けます。
ヤシ油が原料でも、化学反応でつくる両性の洗浄成分です。
似た名前は、前半の脂肪酸の部分で見分ける
ベタインのつく成分はたくさんあって、どれが同じ仲間なのか迷いますよね。名前の前半は脂肪酸の部分の種類、後半は骨組みを表しています。
たとえばラウラミドプロピルベタインは、後ろ半分のアミドプロピルベタインという骨組みは同じで、脂肪酸の部分がヤシ油の脂肪酸の混ざりものではなくラウリン酸だけのものです。一方、ラウリルベタインやココベタインは、アミドのつなぎ目をもたない別のグループです。また、名前に「ベタイン」とだけある成分は保湿成分で、洗う成分とは別のものです。原料の名前では、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインと呼ばれることもあります。
後ろ半分が「アミドプロピルベタイン」なら同じ骨組みの仲間、と覚えておくと見分けやすくなります。
感作を起こさない処方なら、化粧品成分として安全と評価されている
米国の化粧品成分の安全性を評価する専門家の委員会は、コカミドプロピルベタインは感作を起こさないように処方すれば、今の使い方と濃度で化粧品成分として安全だと結論づけています。感作とは、くり返しふれるうちにアレルギーを起こすようになることです。
条件がついたのは、原料に少し残ることがあるアミドアミンとジメチルアミノプロピルアミンが、どちらも感作を起こす物質として知られているためです。
実際に、健康な人の肌の同じ場所にくり返し貼る試験では、感作は起きなかったという結果があります。アメリカでは2,743の製品に使われ、濃度は0.005〜11%で、いちばん高い11%は洗い流す製品でした。骨組みが同じラウラミドプロピルベタインなどの仲間も、化学的によく似ていて同じ不純物を含む点が共通しているため、同じ結論にまとめられています。
安全性のカギは、つくるときに残る不純物をどれだけ抑えるかです。
かぶれの数字は、パッチテストを受けた患者での値
「かぶれやすい成分」と聞くと、不安になりますよね。ただ、よく見かけるかぶれの割合は、皮膚炎が疑われてパッチテストを受けた患者の中での値で、一般の人がかぶれる割合ではありません。
コカミドプロピルベタインは、感作の報告が増えたことを受けて、アメリカの接触皮膚炎の学会が選ぶ「その年のアレルゲン」になったことがあります。かぶれには、つくるときに生じるアミドアミンなどの不純物が関わっていると考えられています。パッチテストでは、コカミドプロピルベタインだけに反応する人、アミドアミンだけに反応する人、両方に反応する人がいたという結果があります。
反応した人の割合は、0.27%という報告もあれば、3.0〜7.2%とする報告もあり、調べた集団によって大きく違います。コカミドプロピルベタインによる皮膚炎は、頭と首に出ることがいちばん多かったとされます。
シャンプーのあとに頭皮や生え際、首にかゆみや赤みが出たときは、使うのをやめて皮膚科に相談しましょう。
「ヤシ由来でやさしい」も「危険成分」も言い過ぎ
「ヤシ由来だから天然でやさしい」という話も、「アレルギーを起こす危険成分」という話も、どちらも言い過ぎです。どちらも、成分の一面だけを見た話だからです。
コカミドプロピルベタインは、ヤシ油の脂肪酸を2回の化学反応にかけてつくる合成の成分です。両性界面活性剤は刺激が低いとされていますが、かぶれの報告がある成分でもあります。一方で、かぶれの主な原因は不純物と考えられていて、専門家の委員会は感作を起こさないように処方すれば安全と結論づけています。
「ヤシ由来」や「低刺激」という言葉だけで決めず、自分の頭皮の様子を見て選ぶのが確かです。
まとめ
- コカミドプロピルベタインは、シャンプーで主役の洗浄成分の泡立ちや泡のもちを助ける脇役です
- ヤシ油の脂肪酸から2回の化学反応でつくる、プラスとマイナスの両方をもつ両性の洗浄成分です
- 後ろ半分が「アミドプロピルベタイン」なら同じ骨組みの仲間で、保湿成分のベタインとは別のものです
- 米国の専門家の委員会は、感作を起こさないように処方すれば安全と結論づけ、かぶれには製造時の不純物が関わると考えられています
- かぶれの割合はパッチテストを受けた患者での値です。頭皮や首にかゆみや赤みが出たら、使うのをやめて皮膚科に相談しましょう
コカミドプロピルベタインは、シャンプーの泡を陰で支えている成分です。成分表で見かけたら、泡立ちを助ける役目の成分だと思い出してみてください。
よくある質問
コカミドプロピルベタインはシャンプーで何をしていますか?
主に、泡立ちや泡のもちを助ける脇役です。ベタイン系の成分は単独で洗浄成分として使われることはなく、ラウレス硫酸Naなどの主役の成分と組み合わせて使われます。
ヤシ由来なので天然の成分ですか?
ヤシ油の脂肪酸を原料にした合成の成分です。脂肪酸をジメチルアミノプロピルアミン、さらにモノクロロ酢酸ナトリウムと反応させてつくります。
コカミドプロピルベタインでかぶれることはありますか?
かぶれの報告はあり、アメリカの接触皮膚炎の学会が選ぶ「その年のアレルゲン」になったこともあります。製造時に残るアミドアミンなどの不純物が関わると考えられています。かゆみや赤みが出たら、使うのをやめて皮膚科に相談しましょう。
コカミドプロピルベタインは安全な成分ですか?
米国の専門家の委員会は、感作を起こさないように処方すれば化粧品成分として安全と結論づけています。健康な人にくり返し貼る試験でも、感作は起きなかったという結果があります。
ラウラミドプロピルベタインとの違いは何ですか?
脂肪酸の部分が違います。コカミドプロピルベタインはヤシ油の脂肪酸の混ざりもの、ラウラミドプロピルベタインはラウリン酸だけで、後ろ半分の骨組みは同じです。
この記事で参照した情報
- Burnett CL, et al. Final Report of the Cosmetic Ingredient Review Expert Panel on the Safety Assessment of Cocamidopropyl Betaine (CAPB). Int J Toxicol 2012;31(4 Suppl):77S-111S
- Cosmetic Ingredient Review. Cocamidopropyl Betaine 専門家パネル会議資料(2010年8月30-31日)
- Cosmetic Ingredient Review. Safety Assessment of Alkyl Betaines as Used in Cosmetics. Int J Toxicol 2018;37(1 Suppl):28S-46S
- Cosmetic Ingredient Review. Safety Assessment of Fatty Acid Amidopropyl Dimethylamines as Used in Cosmetics. Final Report (2014年6月24日)
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「両性界面活性剤」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「陰イオン性界面活性剤」
- Jacob SE, Amini S. Cocamidopropyl betaine. Dermatitis 2008;19(3):157-160
- Fowler JF, et al. Allergy to cocamidopropyl betaine and amidoamine in North America. Dermatitis 2004
- Gavazzoni Dias MF. Hair cosmetics: an overview. Int J Trichology 2015;7(1):2-15
- 花王 ヘアケアサイト「シャンプーの洗浄成分/界面活性剤の代表例」
- 三洋化成 界面活性剤入門(出典: 藤本武彦『界面活性剤入門』三洋化成工業 2014)
- ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ 両性界面活性剤 製品一覧
- 厚生労働省医薬食品局長通知「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年7月21日 薬食発0721第1号)
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