この記事でわかること
- シャンプーの成分にラウがつくのはなぜか
- ラウ・ココがつく成分の種類はどう見分けるか
- ヤシ油由来なら肌にやさしいのか
シャンプーの成分表を見ると、「ラウ」や「ココ」で始まる長い名前がいくつも並んでいて、何が違うのか、頭皮や肌に強くないのか気になりますよね。
結論から言うと、「ラウ」はラウリン酸という原料の名前で、洗う力や刺激の強さを表しているわけではありません。ラウリン酸はヤシの実の油にたっぷり含まれる脂肪酸で、泡立てて洗う成分の多くが、ラウリン酸やそれを含むヤシの油を原料にしているからです。まずは、シャンプーの中での役目から見ていきましょう。
ラウリン酸は、シャンプーでは石けんや洗う成分の原料
ラウリン酸は、シャンプーや洗顔フォームでは、石けんの形や、ほかの洗う成分の原料として使われます。そのままの形ではなく、別の物質と結びつくことで、汚れを落とす成分になるからです。
肌や髪の汚れは、皮脂のような油が中心なので、水で流すだけではなかなか落ちません。そこで、ラウリン酸をカリウムと結びつけて、石けんの一種であるラウリン酸Kにします。
ラウリン酸がカリウムと結びつくと、石けんのラウリン酸Kになります。
脂肪酸
アルカリ
石けんになる
成分表に「ラウリン酸」と「水酸化K」が並んでいれば、製品の中で両方が合わさって石けんになる処方と考えられます。
ラウリン酸Kは、塩になった部分が水になじみ、炭素の鎖が油になじむ形をしています。
油になじむ側で汚れをつかみ、水になじむ側を外に向けて包みます。
油になじむ側が汚れをつかみ、水になじむ側が外を向いて包むので、油の汚れを水で洗い流せるようになります。ただ、石けんには、アルカリ性であることや、ミネラルの多い硬い水では泡立ちが落ちることといった苦手なところもあります。
さらにラウリン酸は、ほかのさまざまな洗う成分を合成するときの原料としても使われています。ラウリン酸は、石けんにも、ほかの洗う成分にもなる、洗う成分のもとです。
ラウリン酸は、ヤシ油とパーム核油の脂肪酸の約半分を占める
ラウリン酸は、ヤシ油とパーム核油に含まれる脂肪酸の、およそ半分を占めています。この2つの油にたくさん含まれているので、ヤシの油から作る洗う成分には、ラウリン酸の仲間がよく出てくるのです。
ラウリン酸は、炭素が12個まっすぐにつながった飽和脂肪酸で、ドデカン酸とも呼ばれます。常温では白いろうのような固体です。ふつうは、油を分解してできた脂肪酸を分け取って作ります。
ヤシ油とパーム核油では脂肪酸のほぼ半分がラウリン酸で、パーム油にはほとんど含まれません。
気をつけたいのは、同じ「パーム」でも、果肉からとるパーム油にはラウリン酸がほとんど含まれないことです。パーム油では0.5%以下なので、原料の話をするときに「パーム由来」とひとまとめにはできません。ラウリン酸の多い油は、ヤシ油とパーム核油の2つと覚えておきましょう。
名前の「ラウ」「ココ」は、原料のどの部分を使ったかの印
「ラウ」や「ココ」で始まる名前は、原料のどの部分を使ったかの印です。同じラウリン酸の仲間でも、どの部分をどうつないだかで呼び方が変わるからです。
ラウリン酸からできた部分をほかの物質につないだものは「ラウロイル」、油や脂肪酸から作るアルコールのうち炭素12の鎖を使ったものは「ラウリル」と呼ばれます。「ラウレス」は、そのラウリルの鎖にエチレンオキシドという小さな部品をいくつかはさんだものです。ラウロイルメチルアラニンNa、ラウリル硫酸Na、ラウレス硫酸Naなどが、この仲間です。
「ココ」は、ヤシ油の脂肪酸をまるごと使った印です。ヤシ油の脂肪酸にはラウリン酸のほかに炭素の数が違う脂肪酸もまざっているので、「ココイル」や「コカミド」はその混ざりものから作られます。
ですから、「ラウ」や「ココ」で始まる成分が、すべてラウリン酸だけから作られているわけではありません。多くがヤシ油やパーム核油の脂肪酸、またはそこから作るアルコールを原料にしている、と考えるのが正確です。
成分の種類は、名前の後ろの言葉で見分ける
名前が似ていると、全部同じような成分に見えてしまいますよね。でも、成分の種類は名前の後ろの言葉で見分けられます。名前の前半は原料を、後半はできあがった成分の形を表しているからです。
後ろに「硫酸Na」がつけば、ラウリル硫酸Naやラウレス硫酸Naのような、洗う力が強く泡立ちのよい硫酸系です。グルタミン酸やアラニンといったアミノ酸の名前がつけば、ココイルグルタミン酸TEAのような、脂肪酸とアミノ酸をつないだアミノ酸系です。「ベタイン」がつけば、コカミドプロピルベタインやラウラミドプロピルベタインのような、両性の成分です。
ほかに、コカミドMEAやコカミドDEAのような非イオンの成分もあり、コカミドDEAは主に泡を増やしたり、とろみをつけたりするために使われます。同じ「コカミド」でも、コカミドプロピルベタインは両性、コカミドMEAは非イオンで、始まりだけでは種類は決まりません。
界面活性剤は、水に溶けたときの電気の帯び方で種類が分かれ、それぞれ得意なことが違います。名前の前半は原料、後半は種類と覚えておくと、成分表が読みやすくなります。
ラウリン酸は、刺激が出ないように処方すれば安全とされる
ラウリン酸は、刺激が出ないように処方すれば、化粧品に使って安全とされています。アメリカの化粧品成分の安全性を評価する専門家の委員会が、ラウリン酸を含む脂肪酸とその塩について、今の使い方と濃度で、刺激やアレルギーの反応が出ないように処方すれば安全と結論づけているからです。
ただし、どんな濃さでも平気というわけではありません。とても濃いラウリン酸を肌に当て続けると、赤みやむくみ、皮むけが出たという結果があります。刺激の出方は、濃さや肌への当て方で大きく変わります。
また、ラウリン酸から作ったあとの成分は、それぞれ形が違うので、刺激の強さも成分ごとに別々に考える必要があります。ラウリン酸は、濃さに気をつけて処方されていれば、安心して使える成分です。
やさしさは、「ヤシ油由来」かどうかでは決まらない
「ヤシ油から作ったから肌にやさしい」という説明を見ると、なんとなく安心できそうに感じますよね。でも、刺激の強さを左右するのは原料の由来ではなく、できあがった成分の形と濃度です。同じヤシの油から、性質の違う成分がいくつも作られるからです。
同じラウリン酸の仲間から作られる成分でも、ラウリル硫酸Naのように刺激がはっきりしている成分もあれば、ラウレス硫酸Naのように、刺激が出ないよう処方することを条件に使われる成分もあります。
反対に、「ラウがつくから硫酸系」と決めつけるのも誤りで、ラウリン酸からは石けん、アミノ酸系、両性、非イオンと、種類の違う成分が作られます。また、シャンプーに書ける「頭皮、毛髪を清浄にする。」などの効能は製品全体につくもので、ひとつの成分の働きを示すものではありません。
成分表を見るときは、「ヤシ油由来」かどうかより、名前の後ろの言葉を見るのがおすすめです。
まとめ
- ラウリン酸は炭素12個の脂肪酸で、ヤシ油とパーム核油の脂肪酸の約半分を占めます
- シャンプーでは、石けんのラウリン酸Kや、いろいろな洗う成分の原料として使われます
- 名前の「ラウ」「ココ」は原料の印で、成分の種類は名前の後ろの言葉で見分けます
- ラウリン酸は、刺激やアレルギーの反応が出ないように処方すれば安全とされています
- 「ヤシ油由来だからやさしい」とは言えず、刺激は成分の形と濃度で変わります
成分表で「ラウ」や「ココ」を見かけたら、名前の後ろまで読んで、どの種類の洗う成分なのかを確かめてみてください。
よくある質問
シャンプーの成分にラウがつく名前が多いのはなぜですか?
洗う成分の多くが、ラウリン酸やヤシ油の脂肪酸を原料にしているからです。ラウリン酸は、ヤシ油とパーム核油の脂肪酸のおよそ半分を占めています。
ラウがつく成分はすべて硫酸系ですか?
違います。ラウリン酸からは石けん、硫酸系、アミノ酸系、両性、非イオンと種類の違う成分が作られ、種類は名前の後ろの言葉で見分けます。
ヤシ油由来の洗浄成分は肌にやさしいのですか?
原料の由来だけではやさしいとは言えません。刺激の強さは、できあがった成分の形と濃度で変わります。
ラウリン酸は肌に安全ですか?
アメリカの専門家の委員会は、刺激やアレルギーの反応が出ないように処方すれば安全と結論づけています。とても濃いラウリン酸を肌に当て続けると赤みなどが出ることがあり、刺激の出方は濃さで変わります。
パーム油にもラウリン酸は多く含まれますか?
ほとんど含まれません。果肉からとるパーム油のラウリン酸は0.5%以下で、多いのはヤシ油とパーム核油です。
この記事で参照した情報
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「ラウリン酸」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「高級脂肪酸石けん」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「石けん」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「高級アルコール」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「陰イオン性界面活性剤」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「両性界面活性剤」
- FAO/WHO Codex Alimentarius. Standard for Named Vegetable Oils (CXS 210-1999), Table 1
- Burnett CL, et al. Safety Assessment of Fatty Acids & Fatty Acid Salts as Used in Cosmetics. Final Report, CIR, 2019
- Burnett CL, et al. Safety Assessment of Amino Acid Alkyl Amides as Used in Cosmetics. Int J Toxicol 2017;36(1 Suppl):17S-56S
- Burnett CL, et al. Final Report of the Cosmetic Ingredient Review Expert Panel on the Safety Assessment of Cocamidopropyl Betaine (CAPB). Int J Toxicol 2012;31:77S-111S
- Robinson VC, et al. Final Report of the Amended Safety Assessment of Sodium Laureth Sulfate and Related Salts of Sulfated Ethoxylated Alcohols. Int J Toxicol 2010;29(4 Suppl):151S-161S
- Fiume MM, et al. Safety Assessment of Diethanolamides as Used in Cosmetics. Int J Toxicol 2013;32(3 Suppl):36S-58S
- Safety Assessment of Ethanolamides as Used in Cosmetics. Int J Toxicol 2015;34(1 Suppl):18S-34S
- 坂本一民「アミノ酸系界面活性剤」油化学 44(4):256-265, 1995
- 日油「ソフティルト AS-L」技術資料(2021年7月版)
- 厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年7月21日 薬食発0721第1号)
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