この記事でわかること
- 界面活性剤が水と油をなじませて、汚れを落とすしくみ
- 4つの種類と、それぞれの得意分野
- 化粧品で「洗う」以外に担う役割と、肌への考え方
シャンプーの成分表示でもクレンジングの説明でも見かける「界面活性剤」。なんとなく肌に悪そうなイメージがあって、気になりますよね。
結論から言うと、界面活性剤は1つの分子の中に「水になじむ部分」と「油になじむ部分」の両方を持つ成分で、「入っているから悪い」ものではありません。化粧品では「洗う」だけでなく、乳液やクリームの水と油を「混ぜる」仕事もしています。まずは、どんな形の分子なのかから見ていきましょう。
界面活性剤は「水と油の仲立ち」をする分子
界面活性剤は、水と油の境目、つまり界面に入り込んで仲立ちをする分子です。1つの分子の中に、水になじむ親水基と、油になじむ疎水基の両方があるからです。
頭は水に、尾は油になじみます。
水と油は本来混ざりませんが、両方に片足ずつ入れられる分子がいれば、その境目に入り込んで向きをそろえ、境目の張力を大きく下げられます。いちばん身近な例は、脂肪酸の塩である石けんです。界面活性剤は医薬品や食品にも使われていて、牛乳に含まれるたんぱく質も界面活性剤の役割をしています。
界面活性剤は、水と油の両方になじむ形をしているから、仲立ちができるのです。
水面に並んで表面張力を下げ、集まって「ミセル」になる
界面活性剤は、水の中ではまず水面に並んで表面張力を下げ、濃度が上がると集まってミセルという小さな球をつくります。水になじむ側は水の中へ、油になじむ側は水から離れたほうへ向こうとするからです。
水面に並び、増えると集まって球になります。
ミセルの内側では、油になじむ疎水基どうしが向き合っているので、水に溶けない油をミセルの中に取り込むことができます。これを可溶化といいます。化粧水に香料やオイルを透明なまま溶かし込めるのも、油汚れが水で流せるのも、根っこはミセルが油を包むしくみです。
汚れは、油を包んで水になじませることで落ちる
皮脂やメイクの汚れは、水で流すだけではなかなか落ちないと感じますよね。界面活性剤は、油の汚れを包んで水になじむ粒に変えるので、水で流せるようになります。皮脂や油の汚れは水と混ざらないので、そのままでは水がはじかれてしまうからです。
界面活性剤が油の汚れを包むので、水で流せます。
汚れが落ちる流れは、浸透・乳化・分散の3つの働きで説明できます。まず境目の張力を下げて、汚れと素材のすき間に水を入り込ませます。次に、尾にあたる疎水基が油に刺さり、頭にあたる親水基が外側の水に向いて、油の粒を包みこみます。これが乳化です。粉の汚れは、分子で取り囲んで水の中に散らばらせます。
汚れは、浸透・乳化・分散の3つの働きで水に流せるようになります。
水が入る
乳化する
散らす
流す
なお、ここでいう「浸透」は、汚れや繊維に水が入り込む話で、化粧品でいう「浸透」が角層までを指すのとは別の意味です。また、洗浄成分は洗うときに角層の脂や天然保湿因子も取り出すことがあるので、洗いすぎには気をつけましょう。くわしくは洗顔料の使い方で解説しています。汚れは、油を包んで水になじませることで落ちるのです。
イオンの違いで4種類に分かれ、得意分野が違う
界面活性剤は、親水基が水の中でどうイオンになるかで、アニオン・カチオン・両性・非イオンの4つに分かれます。電気の帯び方によって、くっつきやすい相手や泡立ち、混ぜる力が変わるからです。
アニオン界面活性剤は、親水基がマイナスの電気を帯びます。泡立ちがよく、乳化や分散の力にすぐれ、温度の影響を受けにくいので、石けんやラウレス硫酸Naなどがシャンプーやボディソープに使われます。
カチオン界面活性剤は、親水基がプラスの電気を帯び、「逆性石けん」とも呼ばれます。マイナスに帯電しやすい髪や繊維にくっつくので、ヘアリンスや柔軟剤に使われ、静電気も抑えられます。洗うためのアニオンとは、逆方向の働きです。
両性界面活性剤は、アルカリ性ではアニオン、酸性ではカチオンの性質を示します。皮膚に対してマイルドで水に溶けやすく、ほかの界面活性剤と組み合わせて、シャンプーやボディソープに使われます。
非イオン界面活性剤は電気を帯びないので、水の硬さや塩分に左右されにくく、油を細かく混ぜ込む乳化や、透明に溶かし込む可溶化が得意です。泡立ちは少なめで、乳液やクリームの乳化剤はこのタイプが中心です。
成分表示を読むときは、泡立てて洗うのはアニオン、髪をなめらかにするのはカチオン、マイルドに洗うのは両性、油を混ぜるのは非イオンと覚えておくと役に立ちます。
化粧品の中では「洗う」より「混ぜる」場面が多い
化粧品の中の界面活性剤は、洗うだけでなく、混ぜる・溶かし込む・散らすといった仕事もしています。水と油の両方が入っている化粧品には、基本的に乳化剤としての界面活性剤が必要だからです。
| 働き | やっていること | 身近な化粧品 |
|---|---|---|
| 洗浄・起泡 | 皮脂や汚れを包んで落とす。泡を立てる | 洗顔料・シャンプー・ボディソープ |
| 乳化 | 水と油を細かく混ぜ、分離しないよう安定させる | 乳液・クリーム・クレンジング |
| 可溶化 | 油性成分や香料を透明な水に溶かし込む | 化粧水・透明な美容液 |
| 分散 | 顔料などの粉を液の中に均一に散らす | リキッドファンデーション |
乳液やクリームがなめらかに混ざっているのは、この働きのおかげです。だから、「界面活性剤=洗浄剤=刺激」とひとくくりにするのは、実際とずれています。化粧品に使われている界面活性剤は、安全性の高いものが選ばれています。
種類や配合量によって使用感は変わり、合う・合わないには個人差があります。「入っているから悪い」ではなく、どの種類が、何のために入っているかを見るほうが役に立ちます。
まとめ
- 界面活性剤は、1つの分子の中に親水基と疎水基を持ち、水と油の仲立ちをする成分です
- 水面では並んで表面張力を下げ、濃度が上がるとミセルをつくって油を取り込みます
- 汚れは浸透・乳化・分散で落ちます。油を包んで水になじませるのが乳化です
- 電気の帯び方でアニオン・カチオン・両性・非イオンの4種類に分かれ、得意分野が違います
- 化粧品では洗浄だけでなく、乳化・可溶化・分散も担い、安全性の高いものが使われています
「界面活性剤」は洗剤のイメージが強い言葉ですが、しくみを知ると水と油をつなぐ、化粧品の縁の下の力持ちだとわかります。成分表示で見かけたら「どのタイプで、何をしているか」を考えてみてください。
よくある質問
界面活性剤は肌に悪い?
「入っているから悪い」ものではありません。化粧品には安全性の高い界面活性剤が使われていて、乳液やクリームにも欠かせない成分です。合う・合わないには個人差があります。
界面活性剤の4つの種類は何が違う?
水の中での電気の帯び方で、アニオン・カチオン・両性・非イオンに分かれます。泡立てて洗うのはアニオン、髪をなめらかにするのはカチオン、マイルドに洗うのは両性、油を混ぜるのは非イオンが得意です。
ミセルとは何?
界面活性剤の分子が集まってできる小さな球です。内側に油を取り込めるので、水に溶けない油を透明なまま水に溶かし込めます。
洗うもの以外にも界面活性剤は入っている?
入っています。乳液やクリームで水と油を混ぜる、化粧水に香料や油を溶かし込む、ファンデーションの粉を散らすといった仕事もしています。
界面活性剤で汚れが落ちるしくみは?
浸透・乳化・分散の3段階で落ちます。界面活性剤が油汚れを包んで水になじむ粒に変え、水で流せるようにします。
この記事で参照した情報
この記事が入っているテーマ別まとめ