この記事でわかること
- ココナッツオイルの中身と、肌の乾燥を防ぐしくみ
- シミ・日焼け止め・髪の話で言えること
- 食用や洗浄成分との違いと、気をつけること
ココナッツオイルを肌に塗ると保湿になるのか、料理用のものを塗っても大丈夫なのか、シミや日焼けにいいという話は本当なのか、迷いますよね。
結論から言うと、ココナッツオイルは肌や髪に油分を補い、乾燥を防ぐための油です。シミを防いだり、日焼け止めの代わりになったりするものではありません。まずは、どんな油なのかから見ていきましょう。
ココナッツオイルは、成分表で「ヤシ油」と書かれる植物の油脂
ココナッツオイルは、ココヤシの実からとる植物の油脂で、化粧品の成分表では「ヤシ油」と書かれます。ココナッツ油やココナツ油とも呼ばれます。
化粧品の用語集では、ココヤシの種子の胚乳を乾かしたコプラを砕き、蒸してから搾ってとる油とされています。クリームの土台になる基剤や、シャンプーやリンスで髪に油分を足す成分として使われます。化粧品の油の分類では、オリーブ油やシア脂と同じ油脂の仲間で、グリセリンに脂肪酸が3つ結びついたトリグリセリドが主成分です。
名前の似た「ヤシ油脂肪酸」や「水添ヤシ油」は、成分表ではヤシ油とは別の成分です。安全性では、アメリカの化粧品成分の専門家パネルが、ヤシ油は今の使い方と濃度であれば化粧品成分として安全と結論づけています。評価のとき、ヤシ油は626の製品に、0.0001%から70%までの濃度で使われていました。ヤシ油は、化粧品で広く使われてきた油です。
ラウリン酸が約半分。飽和脂肪酸が多いから、室温で固まる
ココナッツオイルの脂肪酸は、約半分がラウリン酸で、飽和脂肪酸が大部分をしめます。冬に白く固まり、暖かい季節に透明な液体になるのは、この中身のためです。
飽和脂肪酸は、酸化しやすい部分をもたない脂肪酸で、飽和脂肪酸の多い油は固まりやすい性質があります。国際的な食品規格では、ラウリン酸が45.1〜53.2%、ミリスチン酸が16.8〜21.0%で、どちらも飽和脂肪酸です。
国際的な食品規格にあるココナッツオイルの脂肪酸の割合の幅で、濃い部分が下限です。
オレイン酸やリノール酸のような不飽和脂肪酸は、合わせても1割前後です。そのため、ココナッツオイルは室温前後の温度で、とけたり固まったりします。化粧品の用語集でも、白色から淡い黄色の、ペースト状の半固体とされています。固まったときのとかし方は、製品の表示に従いましょう。
肌に塗ると、角層の上に油の膜をつくって乾燥を防ぐ
ココナッツオイルを肌に塗ると、角層の上に油の膜をつくり、水分が蒸発するのを防ぎます。肌の乾燥は、いちばん外側の角層から水分が逃げていくことで起きるからです。
角層は、表面をおおう皮脂膜、細胞の中で水を抱える天然保湿因子、細胞のすき間を埋める細胞間脂質の3つでうるおいを保っています。細胞間脂質の約50%はセラミドです。表面の皮脂膜の油分が足りないと、角層の水分が蒸発しやすくなり、かさついてきます。ココナッツオイルは、皮脂膜と同じように表面を油分でおおう側に働き、肌をやわらかく保つエモリエントの役目をします。
ココナッツオイルは角層の上に油の膜をつくり、水分が逃げるのを防ぎます。
たとえば、軽い〜中くらいの乾燥肌の保湿剤として使うと、ミネラルオイルと同じくらい有効で安全だったという結果があります。化粧品の効能の範囲でいえば、「皮膚の水分、油分を補い保つ」「皮膚の乾燥を防ぐ」といった言い方になります。アトピー性皮膚炎は皮膚科で治療する病気なので、肌の症状が気になるときは医師に相談しましょう。ココナッツオイルは、油の膜で角層の水分を守る保湿の油です。
酸化しにくい油だが、肌には化粧品として売られているものを
ココナッツオイルは、植物の油の中では酸化しにくい油です。油の酸化は、不飽和結合という反応しやすい部分から進み、紫外線や熱で速まります。ココナッツオイルは、この部分をもつ脂肪酸が少ないからです。
化粧品の用語集でも、酸化には比較的安定で、一方で水によって分解されやすい面もあるとされています。ただ、酸化しにくいのは原料の性質の話で、開けた製品がいつまでも使えるという意味ではありません。においや色がいつもと違うと感じたら、使わないのが安心です。
料理用のココナッツオイルを塗ってもいいのか、気になる人も多いと思います。食品は食べるため、化粧品は肌に使うためにつくられていて、目的も守る決まりも別です。よく見かける「バージン」という呼び名にも、はっきりした工業的な規格はありません。肌に使うなら、化粧品として売られているものを表示どおりに使いましょう。
シミを防ぐのは日焼け止め。ココナッツオイルは代わりにならない
シミを防ぎたいなら、ココナッツオイルではなく日焼け止めで紫外線を防ぎましょう。シミのはじまりは紫外線で、その入り口を防げるのは、紫外線を防ぐ強さが表示された日焼け止めだからです。
しみは、紫外線を浴びるとメラニンという色の粒が作られ、まわりの細胞に渡されてたまることでできます。日焼け止めのSPFやPAは、製品を人の肌に塗って測った、紫外線を防ぐ強さの表示です。ココナッツオイルにはこの表示がないので、日焼け止めの代わりには使えません。
化粧品の効能の範囲でも、ココナッツオイルの効果として、シミを防ぐ、薄くするといった働きはうたえません。とくに日差しの強い日に、油だけを塗って外に出るのは避けましょう。
髪には、つやを与えて水分と油分を補う
髪に使うときのココナッツオイルの役目は、つやを与え、髪の水分と油分を補い保つことです。化粧品の用語集でも、ヤシ油はシャンプーやリンスで髪に油分を足す成分とされています。
たとえば、洗う前や洗ったあとの髪にココナッツ油を使うと、洗髪で髪から流れ出るたんぱく質の量が減ったという結果があります。ひまわり油やミネラルオイルでは、同じような減り方は見られませんでした。理由として、ココナッツ油の主成分が髪のたんぱく質となじみやすく、形が小さくまっすぐなことが挙げられています。
化粧品として言えるのは「毛髪につやを与える」「毛髪の水分、油分を補い保つ」といった範囲で、傷んだ髪が元に戻るわけではありません。量と使い方は、製品の表示どおりに守りましょう。
デメリットは合わない人がいること。かぶれは洗浄成分で多い
ココナッツオイルのデメリットは、合わない人がいることと、室温で固まって扱いにくいことです。植物の油は、どんな肌にも合うわけではないからです。はじめて使うときは、腕の内側などで少量を試しましょう。
成分表で見分けておきたいのは、「ヤシ油」と、ヤシ油からつくる洗浄成分は別の成分だということです。ヤシ油の脂肪酸は、石けんや「ココイル〜」「コカミド〜」と書かれる洗浄成分の原料になります。オーストラレーシア臨床免疫アレルギー学会は、ココナッツ由来の成分によるかぶれは、こうした洗浄成分などで起きることが多いとしています。名前の見分け方はラウリン酸の記事で紹介しています。
同じ学会によると、こうしたかぶれは触れてから1〜2日たって出ることもあります。ココナッツは名前にナッツとつきますが、ピーナッツや木の実とは大きく違うとされています。それでも食物アレルギーがある人は、使う前に医師に相談すると安心です。赤みやかゆみ、ぶつぶつが出たら使うのをやめ、続くときは皮膚科に相談しましょう。
まとめ
- ココナッツオイルはココヤシの実からとる油脂で、成分表では「ヤシ油」。今の使い方と濃度なら化粧品成分として安全と評価されています
- 脂肪酸の約半分がラウリン酸で、飽和脂肪酸が多いため、室温前後で固まったりとけたりします
- 角層の上に油の膜をつくって水分の蒸発を防ぎ、肌の乾燥を防いでやわらかく保ちます
- 酸化しにくい油ですが、肌には化粧品として売られているものを使います。シミを防ぐのは日焼け止めの役目です
- 髪にはつやを与えて水分と油分を補います。かぶれはヤシ油からつくる洗浄成分で多く、合わなければ使うのをやめます
ココナッツオイルは、酸化しにくく、油の膜で乾燥を防ぐ油です。紫外線対策は日焼け止めにまかせて、まずは少量を試し、製品の表示どおりに使ってみてください。
よくある質問
ココナッツオイルを肌に塗るとどんな効果がありますか?
肌に油分を補い、乾燥を防ぐ効果です。角層の上に油の膜をつくって、水分が蒸発するのを防ぎます。乾燥肌の保湿剤として使うと、ミネラルオイルと同じくらい有効で安全だったという結果があります。
料理用のココナッツオイルを肌に塗ってもいいですか?
食品と化粧品は、目的も守る決まりも別です。肌に使うなら、化粧品として売られている製品を表示どおりに使うのが基本です。はじめて使うときは、腕の内側などで少量を試しましょう。
ココナッツオイルはシミに効きますか?日焼け止めになりますか?
シミを防ぐ、薄くするといった働きはうたえません。日焼け止めのSPFやPAは製品を人の肌に塗って測った表示で、ココナッツオイルにはこの表示がないので、紫外線対策には日焼け止めを使いましょう。
ココナッツオイルのデメリットは?
合わない人がいることと、室温で固まりやすいことです。はじめては腕の内側などで少量を試しましょう。ココナッツ由来の成分によるかぶれは、ヤシ油からつくる洗浄成分で起きることが多いので、成分表の名前も見分けておくと安心です。
ココナッツオイルは髪にも使えますか?
髪につやを与え、水分と油分を補い保つ目的で使えます。洗う前や洗ったあとの髪にココナッツ油を使うと、洗髪で流れ出るたんぱく質の量が減ったという結果があります。量と使い方は製品の表示に従いましょう。
この記事で参照した情報
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「やし油」
- 国立健康・栄養研究所「健康食品」の素材情報データベース ココナツオイル
- 国立健康・栄養研究所「セラミド(N-アシルスフィンゴシン)」素材情報
- FAO/WHO Codex Alimentarius「Codex Standard for Named Vegetable Oils」CODEX-STAN 210-1999
- Burnett CL, et al. Final Report on the Safety Assessment of Cocos nucifera (Coconut) Oil and Related Ingredients. Int J Toxicol 2011;30(3 Suppl):5S-16S
- Akinsulie A, et al. ココナッツ由来の化粧品成分の安全性評価(米国CIR専門家パネル). Int J Toxicol 2023;42(1_suppl):23S-35S
- Lin TK, Zhong L, Santiago JL. Anti-Inflammatory and Skin Barrier Repair Effects of Topical Application of Some Plant Oils. Int J Mol Sci 2017;19(1):70
- Watts R, Solomon T, Haesler E. WHAM evidence summary: effectiveness of topical coconut products. WCET Journal 2021;41(2):32-35
- Rele AS, Mohile RB. Effect of mineral oil, sunflower oil, and coconut oil on prevention of hair damage. J Cosmet Sci 2003;54(2):175-192
- ASCIA(オーストラレーシア臨床免疫アレルギー学会)Coconut Allergy: Frequently Asked Questions(2024年4月)
- 大阪府「化粧品の効能の範囲」(平成12年12月28日 厚生省医薬安全局長通知、平成23年7月21日 改正)