この記事でわかること
- UVAが肌に何をするのかと、この成分の働き
- 日本とEUの上限10%と安全性の評価
- 「危険」と言われた原料の不純物の問題と、成分表での見方
日焼け止めの成分表に「ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル」という長い名前があると、何のための成分なのか、危険ではないのか気になりますよね。
結論から言うと、これは紫外線のうちUVAを吸収するための成分で、日本でもEUでも、決められた量までなら化粧品に使ってよいとされています。「危険」という話が出たのは、原料をつくるときに混じることがある別の物質についてで、成分そのものの評価が変わったわけではありません。まずは、UVAが肌に何をするのかから見ていきましょう。
UVAは肌の深くまで届き、はりや弾力の低下につながる
UVAは、肌の深くまで届いて、はりや弾力の低下につながる紫外線です。日焼け止めにUVBだけでなくUVAを防ぐ成分が入っているのは、このためです。
紫外線のうち、UVAは320〜400nm、UVBは290〜320nmの波長の光です。UVAは波長が長いぶん、皮膚の深いところまで届きます。浴びるとすぐに肌を黒くする作用があり、長い期間浴び続けると、皮膚のはりや弾力の低下を早めることが知られています。
この成分は、枠で囲んだ「届く」前に、肌の上でUVAを吸収します。
浴びる
届く
低下する
日焼け止めでUVAを防ぐ力は、PAの「+」の数で表され、+が多いほど防ぐ力が高くなります。この成分は、そのUVAを受け持つ成分です。
この成分は、肌に届く前にUVAを吸収する紫外線吸収剤
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルは、肌に届く前にUVAを吸収する紫外線吸収剤です。成分そのものが紫外線を吸収して、肌に届く量を減らします。
日焼け止めに入る紫外線吸収剤の一つで、全成分表示ではこの長い名前で書かれます。UVAのなかでも波長の長い側を受け持ち、吸収がいちばん強くなる波長は356nm付近にあります。
この成分は、UVAのうち波長の長い側を受け持ち、356nm付近をいちばん強く吸収します。
水にはほとんど溶けず、油に溶ける成分で、乳液やクリームのような日焼け止めの油の部分に入れて使われます。国の化粧品基準のリストには、化学名に近い別の長い名前で載っていますが、指しているのは同じ成分です。
UVAが肌の深くまで届く前に、肌の上でUVAを吸収する係と覚えておきましょう。
日本では2005年から配合でき、上限は100gあたり10.0g
日本では、この成分は100gあたり10.0g、つまり10%まで化粧品に配合できます。化粧品基準は、紫外線吸収剤を国のリストに載ったものだけに限り、成分ごとに100gあたりの最大配合量を決めているからです。
この成分がリストに加わったのは、2005年10月の化粧品基準の改正です。上限は、洗い流す製品でも洗い流さない製品でも同じ10.0gです。
一方で、唇など粘膜に使うことがある化粧品には配合できません。そのため、日本の化粧品基準に沿ってつくられたリップ用の製品には、この成分は入りません。
どの製品でも10%を超えて入ることはなく、リップには入らないと覚えておけば十分です。
EUの評価でも、化粧品への上限は10%
EUでも、この成分は化粧品に10%まで使える紫外線フィルターです。EUの科学委員会が、日焼け止めを含む化粧品に最大10%で使っても、消費者の健康にリスクはないと結論づけているからです。
この結論は、皮膚から吸収される量や、光に当たったときの反応までふくめて評価したものです。これを受けて、日焼け止め以外の化粧品にも使えるよう範囲が広げられました。
ただし、安全と評価された成分でも、人によって肌に合わないことはあります。赤みやかゆみが出たら、使うのをやめましょう。日本とEUで、上限は同じ10%です。
「危険」と言われたのは、原料に混じる不純物の話
「危険」という言葉を見ると、成分そのものに問題が見つかったのかと思いますよね。でも、問題になったのは、この成分の原料に不純物として混じることがあるフタル酸ジ-n-ヘキシルという別の物質です。
きっかけは、子どもの尿から、プラスチックをやわらかくする可塑剤が分解されてできる物質が見つかったという報告でした。その原因の一つとして疑われたのが、この不純物です。フタル酸ジ-n-ヘキシルは生殖への毒性があるものに分類され、EUでは化粧品に使うことが禁止されています。
これを受けて、EUの消費者安全科学委員会は、原料に含まれるこの不純物の安全な上限を0.026%、つまり260ppmと計算しました。成分を化粧品に10%まで使い、不純物がどうしても避けられない場合の数字です。あわせて、別のつくり方で1ppm未満まで下げられることから、原料中の量は1ppmを目標にすべきだという考えも示しました。
どちらの数字も、製品の中の濃度ではなく、原料の中の不純物の濃度です。この助言は不純物についての評価で、成分そのものを10%まで使ったときの安全性の結論は変えていません。欧州委員会が内分泌かく乱の疑いで優先して調べる化粧品成分のリストにも、この成分は入っていません。
「危険」と言われたのは成分ではなく、原料に混じる不純物の量の話です。
アメリカでは承認の手続きに乗っていないだけで、禁止ではない
アメリカでこの成分が使われていないのは、禁止されたからではなく、承認の手続きに乗っていないためです。アメリカでは、日焼け止めは化粧品ではなく市販薬の扱いで、使える有効成分が国のリストで決まっているからです。
このリストにこの成分は入っておらず、海外での使用実績をもとに追加を求める手続きの対象にも入っていません。2026年6月には新しい有効成分が1つ加わりましたが、それも別の吸収剤です。
安全性の審査で否定されたわけではないので、アメリカでは禁止、と言い切るのは正確ではありません。
成分表では、位置と、UVBを防ぐ成分との組み合わせを見る
成分表でこの名前を見つけたら、どのあたりにあるかと、UVBを防ぐ成分が一緒に入っているかを見ます。この成分が受け持つのはUVAで、製品全体の力は組み合わせと量で決まるからです。
成分表は配合量の多い順に並びますが、1%以下の成分は順不同で書いてよいので、並び順だけで量を正確に知ることはできません。それでも、この成分が前のほうにあれば、UVAを防ぐ成分として多めに使われていると読めます。
UVBは、ほかの吸収剤や、酸化チタン・酸化亜鉛のような散乱剤との組み合わせで防ぎます。
UVBを防ぐ成分と組み合わせて、両方を防ぎます。
UVAを吸収
UVBを防ぐ
SPFとPAで確認
どの紫外線をどこまで防げるかは、成分名ではなくSPFとPAの表示で比べるのが確実です。吸収剤を使わない「ノンケミカル」の製品には、この成分は入っていません。吸収剤で肌が赤くなったりかゆくなったりした経験がある人は、散乱剤だけで防ぐ製品と比べてみるのも一つの方法です。合わないと感じたら使うのをやめて、皮膚科に相談しましょう。
成分表では位置を、製品の力はSPFとPAの表示で見る、と分けて考えると選びやすくなります。
まとめ
- UVAは肌の深くまで届き、はりや弾力の低下につながる紫外線です
- ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルは、肌に届く前にUVAを吸収する紫外線吸収剤で、356nm付近をいちばん強く吸収します
- 日本では2005年から配合でき、上限は100gあたり10.0g。唇など粘膜に使う製品には配合できません。EUでも上限は10%です
- 「危険」と言われたのは原料に混じる不純物の問題で、原料中260ppmまでを安全、1ppmを目標とする助言が出ています
- アメリカでは承認の手続きに乗っていないだけで、禁止ではありません。製品の力はSPFとPAで比べます
名前の長さや「危険」という言葉に驚くより、成分表での位置と、UVBを防ぐ成分との組み合わせ、SPFとPAの表示をあわせて見て選んでみてください。
よくある質問
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルとは何ですか?
日焼け止めなどに使われる紫外線吸収剤の一つで、UVAを吸収します。吸収がいちばん強くなる波長は356nm付近で、UVAのなかでも波長の長い側を受け持ちます。
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルは危険ですか?
日本でもEUでも、決められた量までなら化粧品に使ってよい成分です。危険と言われたのは原料に混じる不純物の問題で、EUの科学委員会は、原料中の上限を260ppm、目標を1ppmとする助言をまとめています。
化粧品にはどれくらい配合できますか?
日本では100gあたり10.0g、つまり10%までです。唇など粘膜に使うことがある化粧品には配合できません。EUでも上限は10%です。
アメリカでは使用が禁止されているのですか?
禁止ではなく、承認の手続きに乗っていない成分です。アメリカでは日焼け止めは市販薬の扱いで、使える有効成分のリストにこの成分は入っていません。
UVAとUVBのどちらを防ぐ成分ですか?
UVAを吸収する成分です。UVBはほかの吸収剤や、酸化チタン・酸化亜鉛のような散乱剤との組み合わせで防ぐので、製品全体の力はSPFとPAの表示で比べます。
この記事で参照した情報
- 厚生労働省医薬食品局長通知「化粧品基準の一部を改正する件について」(平成17年10月18日 薬食発第1018006号)
- 厚生労働省「化粧品基準」(平成12年厚生省告示第331号)別表第4
- Commission Directive 2008/123/EC of 18 December 2008 (Diethylamino Hydroxybenzoyl Hexyl Benzoate の使用範囲の拡大)
- SCCP. Opinion on Diethylamino Hydroxybenzoyl Hexyl Benzoate (SCCP/1166/08, 2008年4月15日)
- SCCS. Scientific Advice on the safety of Diethylamino Hydroxybenzoyl Hexyl Benzoate (DHHB) - S83 (SCCS/1678/25, 2025年6月26日)
- European Commission. Endocrine disruptors (cosmetics) - priority list of substances
- eCFR 21 CFR 352.10 Sunscreen active ingredients
- FDA. Rulemaking History for OTC Time and Extent Applications
- FDA. FDA Expands Sunscreen Options for the First Time in 20 Years (2026年6月9日)
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「紫外線」
- 環境省「紫外線環境保健マニュアル2020」(2020年3月改訂版)
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