成分辞典やさしい解説

皮膜形成剤をやさしく解説!落ちないマスカラやパックの膜の正体とは?

あるコスメオタク・2026.09.26・更新 2026.10.21・成分辞典

落ちないマスカラやはがすパックの「膜」は何でできているのか、肌が息苦しくならないのか、気になりますよね。

結論から言うと、どれにも入っているのは皮膜形成剤という成分で、塗ったあとに水やアルコールが飛び、この成分だけが薄い膜として残ります。膜で肌が呼吸できなくなる心配もいりません。まずは、膜ができるしくみから見ていきましょう。

皮膜形成剤は、液体が飛んだあとに膜として残る高分子

皮膜形成剤は、肌や髪や爪の上に薄い膜をつくる高分子です。塗ったときは液体ですが、水やアルコールが飛ぶと、中に溶けていた高分子だけが残ってつながり、膜になります。

皮膜形成剤は、水やアルコールが飛んだあとに、つながって膜になる高分子です。

液体を
塗る
水などが
蒸発する
高分子が
つながる
膜が
残る

溶け方によって、水やアルコールに溶けるもの、水の中に細かく散らばったもの、水に溶けないものの3つに分けられます。水に溶けないタイプも同じで、水が飛ぶと、水に溶けない連続した膜ができあがります。

化粧水にとろみをつける増粘剤も、皮膜形成剤も、同じポリマーと呼ばれる高分子の仲間で、違うのは仕事です。とろみの高分子は、水に溶けると分子のまわりにたくさんの水を抱えこんでゲルになり、液の粘りを大きく高めます。いっぽう皮膜形成剤は、水が飛んだあとに膜として残るのが役目です。

しかも、同じ成分でも量で役目が変わります。水に溶ける高分子を配合した透明なジェルでも、配合量が少なければ膜はできず、洗い流すタイプになります。成分表に「ポリビニルアルコール」とあっても、はがすパックになるか洗い流すジェルになるかは、配合量しだいです。

皮膜形成剤は、乾いたあとに残る膜そのものと覚えておきましょう。

はがすパック・ネイル・ヘアスプレー・マスカラ・口紅に入っている

皮膜形成剤は、膜が仕事をしている製品に入っていて、製品ごとに使われているものが違います。

はがすパックが乾くとぺりっとめくれるのは、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンといった水に溶ける高分子の膜のおかげで、水性皮膜タイプやビニルパックとも呼ばれます。

ネイルエナメルは皮膜形成剤の代表で、最も一般的なのはニトロセルロースです。それだけでは密着や光沢が足りないため、アルキッド樹脂や尿素樹脂、アクリル樹脂などをいっしょに使います。ニトロセルロースは硝化度の高いものは火薬に、低いものは塗料や化粧品に使われ、化粧品用は溶けやすいように調整された別のグレードです。

ヘアスプレーは、セットした髪の上に吹きつけて表面に膜をつくり、形を保ちます。固まる感触があるのは、この膜があるからです。マスカラは水性のものが膜をつくるタイプとつくらないタイプに分かれ、落ちにくいマスカラの中身は、樹脂と色材を水の中に散らばらせたものです。落ちない口紅も同じしくみで、塗ると樹脂に含まれる揮発性の油が少しずつ飛び、シリコーン樹脂が膜をつくります。

成分は違っても、乾いて膜になるところはどれも同じです。

汗や皮脂に強いぶん、落としにくい

皮膜形成剤の膜は、メイクを汗や皮脂で崩れにくくします。そのぶん、落とすときは取れにくくなります。

メイクが崩れるのは、時間がたつにつれて、汗や皮脂、顔の動きなどで、ファンデーションがよれたり、アイメイクがにじんだり、口紅の色が落ちたりするからです。そこで、汗や皮脂と混ざりにくく、肌への密着のよい成分を入れて崩れを防ぎます。その代表が、シリコーン系やフッ素系の油と、皮膜形成剤です。

皮膜形成剤は、枠で囲んだ、汗や皮脂が「メイクと混ざる」ところを起きにくくします。

汗や皮脂が
出る
メイクと
混ざる
にじみや
よれが出る

汗や涙、水で取れないことをウォータープルーフ、つまり耐水性といいます。化粧膜を固定するには皮膜剤を入れるのがいちばん効果的と考えられていて、落ちない口紅やウォータープルーフマスカラには皮膜剤が多く入っています。

ただ、落ちないことは、落としにくいことの裏返しです。すぐれた耐水性と、簡単に洗い流せる性質は両立が難しく、お湯で落とせるマスカラをつくる工夫も研究されています。今は、落ちないぶんクレンジングを専用のメイク落としでていねいに行うことが大切です。

日焼け止めの「UV耐水性★」は、SPFとセットの別ルール

日焼け止めにも「ウォータープルーフ」と書かれていると、メイクと同じ意味だと思いますよね。でも、メイクの耐水性と日焼け止めの耐水性は、別のルールです。

日焼け止めには、2022年12月1日から業界共通の試験と表示があります。国際規格の試験で水に40分つけてSPFが50%以上残れば「UV耐水性★」、80分なら「UV耐水性★★」です。

この表示をするときは、メイクの化粧もちとしての耐水性と混同されないよう、必ずSPFと並べて書くことになっています。ここでいう耐水性は、紫外線を防ぐ力が水で落ちないかどうかで、メイクが崩れないかどうかではありません。さらに業界のQ&Aでは、汗には対応していないとされています。

「UV耐水性★」は水に入ったときの紫外線を防ぐ力の表示で、汗やメイク崩れとは別、と覚えておくと安心です。

「肌が呼吸できない」は当たらない。皮膚呼吸は1%以下

膜でおおうと、肌が息苦しくなりそうと思う人は多いと思います。でも、膜で肌が呼吸できなくなるという心配は、当たりません。人の呼吸のうち、皮膚を通る分はとても少ないからです。

皮膚呼吸とは、皮膚を通して血液と外の空気のあいだで行われるガスのやりとりのことです。人ではその割合は0.6%といわれ、1%以下です。しかも、たとえ真皮の毛細血管と外とのあいだでやりとりが起きているとしても、ほとんど意味はないと考えられています。

皮膜形成剤の膜は、肌のいちばん外側にのる薄い膜です。

塗る前 表面に膜はない 乾いたあと 表面に薄い膜が残る 皮膜形成剤の膜 角層 表皮 真皮

ニキビが気になる人は、成分名ではなく表示を目印にしましょう。ニキビの診療ガイドラインも、刺激が少なく、ニキビのもとになりにくいことを確かめたノンコメドジェニックの化粧品を選ぶといった配慮を勧めています。

膜は肌の表面にのっているもので、呼吸の心配はいりません。

トラブルの報告は、ネイル関連に集まっている

皮膜形成剤まわりで肌トラブルの報告が集まっているのは、ネイル関連です。爪に塗ったものが、手を通してまぶたなどに移るからです。

接触皮膚炎の診療ガイドラインは、まぶたのかぶれの原因として、マスカラやアイライナー、アイシャドーと並んで、アクリレートなどを含むネイル化粧品を挙げています。目をこすった手から、まぶたに移るためです。

国民生活センターも、つけ爪の材料やアクリル樹脂でアレルギー反応が起きることがあると注意を出しています。つけ爪の接着剤は瞬間接着剤と同じシアノアクリレート系で、空気中や接着面の水分と反応して固まるときに熱が出るため、やけどにも注意が呼びかけられています。

ネイルエナメルの溶剤では、以前はトルエンやキシレンも使われていましたが、安全性の点から最近は使われなくなっています。なお化粧品の基準では、皮膜形成剤そのものに配合量の上限はありません。ホルマリンは配合禁止、トルエンは使わない流れ、という形で周りが整理されています。

ネイルをしている人は、その手で目をこすらないように気をつけましょう。

まとめ

「落ちない」の正体は、乾いたあとに残る小さな高分子の膜です。落ちないぶん、落とすときはやさしく。それだけ覚えておけば十分です。

よくある質問

皮膜形成剤で肌が呼吸できなくなる?

呼吸の心配は当たりません。人の呼吸のうち、皮膚からの分は1%以下です。

落ちないメイクはなぜ崩れにくいの?

汗や皮脂と混ざりにくく、肌に密着しやすい皮膜形成剤などの成分が入っているからです。そのぶん、落とすときにも取れにくくなります。

ウォータープルーフのマスカラはどう落とせばいい?

専用のメイク落としで、ていねいに落とします。落ちにくいメイクは、そのぶん落とすときにも取れにくいためです。

日焼け止めの「UV耐水性★」とメイクのウォータープルーフは同じ?

別のルールです。「UV耐水性★」は水に40分つけたあともSPFが50%以上残る日焼け止めの表示で、80分なら★★です。汗には対応していません。

ネイルでまぶたがかぶれることはある?

あります。爪に塗ったものが、目をこすった手からまぶたに移ってかぶれることがあります。つけ爪の材料やアクリル樹脂でアレルギー反応が出ることもあります。

この記事で参照した情報

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この記事を書いた人:あるコスメオタク日本化粧品検定1級

中央大学大学院に通う大学院生。韓国コスメが好きすぎて、気になったアイテムは自腹で試して回っている一消費者です。スキンケアと、成分・制度の背景を調べるのが好きです。公的資料やメーカーの公式情報にあたって、「化粧品にできること・できないこと」を分けて書くことを心がけています。(運営方針)

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