この記事でわかること
- グリコール酸と乳酸の、分子の大きさと刺激の違い
- 2つが角層で何をしていて、乳酸と天然保湿因子はどう関係するのか
- 日本・アメリカの決まりと、日焼けや敏感肌での使い方
角質ケアの成分表でグリコール酸と乳酸を見かけると、何が違うのか、しみにくいのはどちらなのか迷いますよね。
結論から言うと、2つの違いは分子の大きさと刺激の出方です。どちらも古い角質をはがれやすくするAHAの仲間で、分子が小さいのはグリコール酸、同じ条件で比べて刺激が少なかったのは乳酸です。ただし、乳酸なら必ずしみない、というわけではありません。まずは、2つの特徴を並べて見てみましょう。
グリコール酸と乳酸の、それぞれの特徴です。
グリコール酸
分子が小さい
乳酸
刺激が少なめ
肌の中の乳酸
天然保湿因子の一部
グリコール酸は小ささ、乳酸はおだやかさと、肌にもともとある成分という点が特徴です。ここから、1つずつくわしく見ていきます。
どちらもAHAで、違いは分子の大きさ
グリコール酸と乳酸は同じAHAの仲間で、違うのは分子の大きさです。形の基本は同じで、乳酸のほうに炭素1つ分の枝がついているからです。
AHAはα-ヒドロキシ酸のことで、化粧品の専門用語集でも、アメリカの食品医薬品局でも、化粧品に使われるAHAの代表としてこの2つが挙げられています。酸の部分のすぐ隣の炭素に水酸基がつく形は同じで、AHAという呼び名のしくみはAHA・BHA・PHAの記事で解説しています。
乳酸には、グリコール酸より炭素1つ分の枝が多くつきます。
分子の重さを表す分子量は、グリコール酸が76.05、乳酸が90.08です。どちらも水になじむ小さな分子で、差は炭素と水素の小さなかたまり1つ分です。
つまり2つは兄弟のような酸で、小さいのがグリコール酸、少し大きいのが乳酸と覚えておけば十分です。
2つとも、たまった古い角質をはがれやすくする
グリコール酸も乳酸も、角層にたまった古い角質をはがれやすくする酸です。肌のごわつきは、角層の古い角質がうまくはがれずに残ることから起きるからです。
肌のいちばん外側の角層では、古くなった角質の細胞が少しずつはがれ落ち、下から新しい細胞に入れかわっています。このはがれ方が追いつかず、古い角質が積み重なると、表面がごわついたり、くすんで見えたりします。AHAは、角質の細胞どうしのつながりをゆるめて、たまった角質をはがれやすくします。
グリコール酸も乳酸も、たまった古い角質をはがれやすくします。
働く場所は、どちらも角層の表面です。だから、ごわつきやざらつきが気になるときの角質ケアに向きます。
入り方を大きく左右するのは、成分の名前よりも製品のpHです。pHが低いほど、角層に入りやすい形が増えます。くわしくはAHAの濃さとpHの記事で解説しています。2つの役目は同じで、違いは強さの出方にあります。
同じ条件なら、乳酸のほうが刺激が少なかった
刺激の出方で比べると、乳酸のほうがおだやかです。いくつかのAHAを同じ条件で比べると、乳酸はほかの酸より刺激がはっきり少なかったという結果があるからです。
皮膚科などで行う濃いピーリングでも、しみの一種である肝斑の患者さんで、乳酸のほうがグリコール酸より副作用が少なかったという結果があります。ただし、これは医療機関で使う濃さの話で、化粧品とは別のものです。
どちらの結果も、乳酸がおだやかな側にあることを示しています。とはいえ、おだやかなことと、刺激がないことは違います。この点は、最後の敏感肌の章でふれます。
乳酸は、肌の天然保湿因子にも含まれる
乳酸は、肌がもともと持っている天然保湿因子の一部でもあります。角層の細胞の中で水を抱える天然保湿因子には、乳酸ナトリウムの形で乳酸が含まれているからです。
天然保湿因子は、化粧品の専門用語集で「皮膚に元来備わっている保湿成分の総称.」とされるもので、アミノ酸や尿素、ミネラルの塩、有機酸などからなります。皮膚の総説でも、乳酸は乳酸ナトリウムの形で、天然保湿因子の一部としてよく知られているとされ、肌の大切な天然保湿因子として挙げられています。
ただ、角質ケアに使われる濃さとpHでは、乳酸もグリコール酸と同じく、角質をはがれやすくする酸として働きます。角質がはがれすぎると、肌がもともと持っている水分をとどめる力はかえって下がる方向だと、用語集も注意しています。
成分表示の乳酸や乳酸Naは、角質ケアのためとは限りません。乳酸は製品のpHを整える目的でも入り、乳酸Naは乳酸を中和した形です。肌にある成分だから保湿になる、と考えず、角質ケアの製品では「角質をはがれやすくする酸」として見ておきましょう。
日本では上限なし。グリコール酸だけ3.6%超が劇物
日本の化粧品基準には、グリコール酸にも乳酸にも配合の上限はなく、扱いが分かれるのは劇物の決まりです。2つの違いは、化粧品の決まりではなく、別の法律で生まれているからです。
化粧品基準には、製品のpHについての決まりもありません。上限がないのは、何%でも安全という意味ではなく、それぞれの会社が安全性を確かめて配合する、という仕組みです。
一方、2016年7月15日から、グリコール酸を3.6%を超えて含む製剤は、毒物及び劇物取締法の劇物に指定されています。この通知はグリコール酸についてのもので、乳酸は入っていません。エステの目安として知られるpH3.0以上・10%以下は国の研究班の判断で、法律の基準ではありません。
海外の目安では、意外な違いもあります。ヨーロッパの科学委員会の見解では、グリコール酸が4%以下・pH3.8以上なのに対し、乳酸は2.5%以下・pH5以上と、乳酸のほうが低い濃さと弱い酸性を目安にしています。どちらも法律の上限ではなく、安全側に寄せた目安です。
日本で決まりの差があるのは、グリコール酸の劇物の線だけと覚えておきましょう。
アメリカの指針は、表示についての推奨
アメリカの食品医薬品局の指針は、AHAを含む化粧品の表示についての推奨です。指針そのものに、法的に守る義務を定めるものではないと明記されているからです。
中身は、使っている間に日焼けしやすくなることを、表示で知らせるための文言の推奨です。この指針は、アメリカの化粧品成分の専門家による評価も紹介していて、一般の化粧品では10%以下・pH3.5以上、専門家が使うサロン品では30%以下・pH3.0以上なら安全とする結論です。この結論は、のちの再評価でも変えずに確かめられています。
この条件は、グリコール酸と乳酸に共通です。
乳酸でも、使う間とやめて1週間は紫外線を防ぐ
乳酸の製品でも、使っている間とやめてから1週間は、紫外線を防ぎましょう。アメリカの食品医薬品局の表示の推奨は、AHA全体に向けたものだからです。
日焼けしやすくなることを示したのは、グリコール酸の試験です。グリコール酸を塗り続けると紫外線で赤くなりやすさが18%上がり、やめて1週間で差がなくなったという結果があります。4%という低い濃さのグリコール酸でも、紫外線への肌の反応が変わったという結果もあります。
グリコール酸の試験では、やめて1週間で紫外線への反応の差がなくなりました。
紫外線を防ぐ
防ぐ
差がなくなる
使っている間と、やめてから1週間は、日焼け止めや衣類で紫外線を防ぎ、日差しを浴びる時間を減らすよう勧められています。乳酸なら日焼けを気にしなくてよい、とは考えず、AHAを使う間は日焼け止めとセットにしましょう。
敏感肌なら乳酸を候補に、1つずつ試す
刺激が気になる人は乳酸を候補にしつつ、新しく始めるのは1つずつにしましょう。乳酸はおだやかな側ですが、しみる人もいる成分だからです。
実際、乳酸は、敏感肌かどうかを調べる試験で、しみる感じを起こすために使われる成分でもあります。10%の乳酸を小鼻のわきのしわに塗る方法です。AHAを使ったしみる試験では、敏感肌の人のほうが反応が多く出たという結果もあります。
選ぶときは、成分名より、濃さとpH、そして重ねる数を見ます。日本の化粧品の多くは何%入っているかを書かないので、%やpHが書かれていなければ、強さは比べられません。ほかのピーリングやスクラブと重ねないところから始めると、肌の様子がわかりやすくなります。
使う回数について国や学会が決めた基準はないので、製品の使い方の欄に従うのが基本です。赤みやヒリつきが出たら使うのをやめ、続くときは皮膚科に相談しましょう。酸のピーリングと、粒でこするスクラブの使い分けは、ピーリングとスクラブの違いの記事で解説しています。
敏感肌なら、乳酸を1つだけ、使い方の欄どおりに。これがいちばん無理のない始め方です。
まとめ
- グリコール酸と乳酸はどちらもAHAで、分子量は76.05と90.08。小さいのはグリコール酸です
- 2つとも、角層にたまった古い角質をはがれやすくする酸です
- 同じ条件で比べると、乳酸のほうが刺激が少なかったという結果があります
- 乳酸は天然保湿因子の一部ですが、角質ケアの製品では角質をはがれやすくする酸として働きます
- 日本ではグリコール酸だけ3.6%超が劇物。どちらも使う間とやめて1週間は紫外線を防ぎます
グリコール酸と乳酸は、同じ仲間でも少しずつ性格の違う酸です。乳酸を選ぶときも、しみないと思い込まず、使い方の欄どおりに、肌の様子を見ながら使ってみてください。
よくある質問
グリコール酸と乳酸の違いは?
分子の大きさと、刺激の出方が違います。どちらもAHAで、分子量はグリコール酸が76.05、乳酸が90.08です。いくつかのAHAを同じ条件で比べると、乳酸のほうが刺激が少なかったという結果があります。
敏感肌にはグリコール酸と乳酸のどっちがいい?
比べるなら、刺激が少なかった結果のある乳酸が候補です。ただし乳酸は、敏感肌を見分ける試験でしみる感じを起こすために使われる成分でもあります。新しく始めるのは1つずつにし、赤みやヒリつきが出たらやめましょう。
乳酸は保湿成分ですか?
乳酸は肌の天然保湿因子の一部で、乳酸ナトリウムの形で角層にもともと含まれています。ただ、角質ケアの製品の濃さとpHでは、角質をはがれやすくする酸として働きます。保湿は、保湿成分の入った化粧水や乳液で補いましょう。
乳酸でも日焼けしやすくなりますか?
乳酸の製品も、紫外線対策の対象です。日焼けしやすさを示した試験はグリコール酸のものですが、アメリカの食品医薬品局の表示の推奨はAHA全体に向けたものです。使っている間とやめてから1週間は、日焼け止めや衣類で紫外線を防ぎましょう。
グリコール酸や乳酸は毎日使っていいですか?
製品の使い方の欄に従うのが基本です。使う回数について国や学会が決めた基準はありません。濃さやpHは製品ごとに違うので、赤みやヒリつきが出たら使うのをやめ、続くときは皮膚科に相談しましょう。
この記事で参照した情報
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「ヒドロキシ酸/α-ヒドロキシ酸」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「天然保湿因子」
- 厚生労働省「化粧品基準」(平成12年厚生省告示第331号)
- 厚生労働省「毒物及び劇物指定令の一部改正について(通知)」(平成28年7月1日 薬生発0701第1号)
- 米国食品医薬品局(FDA)「Guidance for Industry: Labeling for Cosmetics Containing Alpha Hydroxy Acids」(2005年1月)
- 米国食品医薬品局(FDA)「Alpha Hydroxy Acids」
- Fiume MM, et al. Alpha Hydroxy Acids. Int J Toxicol 2017(米国化粧品成分評価 再評価)
- Tang SC, Yang JH. Dual Effects of Alpha-Hydroxy Acids on the Skin. Molecules 2018;23(4):863
- Lactic Acid Chemical Peeling in Skin Disorders. Clin Cosmet Investig Dermatol 2024;17:901-909
- Hernández-Blanco D, et al. Prevalence of sensitive skin and its biophysical response in a Mexican population. World J Dermatol 2013;2(1):1-7
- Jang YH, et al. Comparision of results of sting tests using various kinds of alpha hydroxy acids on sensitive skin. Korean J Dermatol 2004;42(8):1005-1014