この記事でわかること
- AHAが角層でしていることと、濃さによる違い
- 同じ%でもpHで強さが変わる理由
- 日焼けしやすさへの注意と、日本の決まり
グリコール酸や乳酸の化粧品には5%や10%などの数字が並んでいて、何%を選べばいいのか、濃いほどよく効くのか迷いますよね。
結論から言うと、AHAの強さは%だけでは決まらず、製品のpHとの組み合わせで大きく変わります。濃さを比べても見た目の変化は同じくらいだった一方で、濃いほど、酸性が強いほど刺激は強くなります。だから、%とpHをセットで見て、強すぎないものを選ぶのが安心です。まずは、AHAが肌の上で何をしているのかから見ていきましょう。
AHAは、角層の不要な細胞をはがれやすくする酸
グリコール酸や乳酸などのAHAは、角層の不要な細胞をはがれやすくする酸です。濃さの話の前に、角層で何が起きているのかを見ておきましょう。
肌のいちばん外側の角層では、デスモソームという留め具が細胞どうしをつないでいます。角層の細胞は、この留め具がゆるむことで、少しずつはがれ落ちていきます。
AHAは、角層の表面のこの留め具を分解し、不要な角層をはがれやすくすることが報告されています。乳酸を塗ると、肌のなめらかさが良くなったという結果もあります。
AHAは角層の細胞どうしのつなぎ目をゆるめ、不要な角層をはがれやすくします。
AHAは、角層の表面の留め具をゆるめる酸です。だからこそ、どのくらいの強さで働くかが大事になります。
濃さを比べても、見た目の変化は同じくらいだった
AHAの濃さを変えて比べた結果では、見た目の変化は同じくらいでした。化粧品に近い濃さでも、肌の変化は出ていたからです。
たとえば、乳酸5%と12%を塗って比べた結果では、肌のなめらかさやシワの見た目、表皮の変化は、5%でも12%でも同じくらいみられました。
また、グリコール酸8%か乳酸8%のクリームを使うと、どちらも入っていないクリームより、顔の評価が上がった人が多くなりました。ただし、日光による肌の変化の一部への効果は控えめでした。
8%のグリコール酸や乳酸を使うと、入っていないクリームより評価が上がった人が多くなりました。
医療機関のピーリングでは、20〜70%という桁違いの濃さのグリコール酸が使われます。これは医師が行う治療の話で、化粧品の濃さとは別のものです。
化粧品の濃さでは、濃いほうがよく効く、とは限りません。
刺激は、濃いほど、pHが低いほど強くなる
AHAの刺激は、濃さが上がるほど、そしてpHが下がるほど強くなります。pHは酸性の強さを表す数字で、小さいほど酸性が強くなります。
アメリカの化粧品成分の安全性評価では、同じpHなら濃さが上がるほど、同じ濃さならpHが下がるほど、肌への刺激が強くなると報告されています。ヨーロッパの科学委員会はさらに、pHこそが刺激にいちばん大きく関わる要因で、濃さよりも重要だとしていて、グリコール酸ではpHを3から7に上げると刺激が大きく減るとしています。
日本皮膚科学会のピーリングのガイドラインも、顔に塗る場合はpH3以上で濃さ10%以下ならほとんど反応がみられないという国の研究班の報告に触れています。いっぽうで、30%以上の高い濃さや、pH2以下の強い酸性では、むくみやただれ、かさぶたができる危険が高くなるとしています。pHを調整していないグリコール酸の液はpHが0.08〜2.75ほどと強い酸性で、ただれを伴う水ぶくれや傷あとを起こすことがあります。
化粧品や薬に近い濃さでも刺激は出ます。グリコール酸12%の水溶液をくり返し当てると、強い赤みが出て、肌から逃げる水分も増えました。乳酸12%を中和したアメリカの処方薬のローションでも、しみる感じや灼熱感、赤みが出ることがあるとされています。
刺激を抑えたいなら、濃すぎず、酸性が強すぎないものを選ぶのが基本です。
同じ%でも、pHと形で働きやすい量が変わる
同じ10%なら、どの製品も同じ強さだと思いますよね。でも、AHAは同じ%でも、pHによって働きやすい量が大きく変わります。
グリコール酸や乳酸は、pH3.8前後を境に、電気を帯びていない形と帯びた形がおよそ半分ずつになります。電気を帯びていない遊離酸という形が角層に入りやすく、pHが上がるとこの形の割合は急に減ります。計算上の目安では、pH3.5で約7割、pH4.5で約2割、pH5では1割を下回ります。
つまり、同じ10%配合でも、pH3.0なら働きやすい形は約8.7%分ありますが、pH5.0では約0.6%分しかありません。逆に5%配合でもpH3.5なら3%を超えます。実際の製品は乳液やクリームなので、この数字はあくまで計算上の目安です。実際に、5%のAHAでも、pH3.0のほうがpH7よりはるかに多く皮膚に吸収されたという結果があります。
形の違いも%の意味を変えます。全成分表示にある乳酸Naやグリコール酸アンモニウムは、主に中和された形です。先ほどの乳酸12%のローションも、アンモニアで中和してpHを4.4〜5.5にしたもので、同じ12%でも中和していない強い酸性の液とは別物です。また、グリコール酸の原料は水溶液で流通するため、製品に原料を何%入れたかと、成分そのものが何%入っているかは違うことがあります。
AHAの%は、pHと形がわかって、はじめて強さを比べられる数字です。
使っている間とやめて1週間は、日焼けしやすくなる
AHAを使っている間は、紫外線で赤くなりやすくなります。だから、使う間は日焼け止めとセットで考えます。
pH3.5のグリコール酸10%を塗り続けると、紫外線で赤くなりやすさが18%上がり、紫外線による細胞のダメージも受けやすくなりました。この変化は、塗るのをやめて1週間たつと元に戻っています。ヨーロッパの科学委員会は、pH3.5で2.5〜4%という低めの濃さのグリコール酸でも、紫外線で赤くなりやすくなる可能性があるとしています。
AHAを使っている間と、やめてから1週間は、紫外線を防ぎます。
使う
しやすい
元に戻る
日焼け止め
アメリカの食品医薬品局は、AHA入りの化粧品に、使っている間と使うのをやめてから1週間は日焼け止めや衣類で紫外線を防ぐよう促す表示を勧めています。法律上の義務ではありませんが、公的な推奨です。低い濃さでも、使う間は紫外線対策をセットにしましょう。
日本の化粧品にAHAの上限はないが、グリコール酸3.6%超は劇物
日本の化粧品の基準には、グリコール酸や乳酸の配合の上限はありません。上限のない成分は、それぞれの会社が安全性を確かめたうえで配合するもので、何%でも安全という意味ではありません。国の承認を受ける医薬部外品では有効成分の分量も承認の中で決まりますが、国がまとめた薬用化粧品の有効成分のリストに、グリコール酸や乳酸は入っていません。
一方で、グリコール酸には別の法律の線があります。2016年7月15日から、グリコール酸を3.6%を超えて含む製剤は、毒物及び劇物取締法の劇物に指定されました。皮膚をただれさせる性質と目への刺激が理由です。この法律で劇物から除かれるのは医薬品と医薬部外品だけで、化粧品は除かれていません。
ピーリングの施術にも線があります。医師でない人が、しみやそばかすを取るために酸を塗って皮膚をはがすことを仕事として行えば医業にあたると、国が回答しています。エステの目安として知られるpH3.0以上・10%以下は国の研究班の判断で、法律の基準ではありません。
海外にも目安があります。アメリカの化粧品成分の安全性評価は、一般の化粧品は10%以下・pH3.5以上、専門家が短時間使って洗い流すサロン品は30%以下・pH3.0以上としています。ヨーロッパの科学委員会の見解はより厳しく、グリコール酸は4%以下・pH3.8以上、乳酸は2.5%以下・pH5以上です。どちらも安全のための目安で、効き目の上限ではありません。
選ぶときは、%とpHをセットで見る
AHAを選ぶときは、%の大きさより、%とpHの組み合わせを見ましょう。同じ%でも、pHで強さも刺激も大きく変わるからです。
ふだん使いの化粧品では、アメリカの10%以下・pH3.5以上や、ヨーロッパの見解のグリコール酸4%以下・pH3.8以上が一つの線になります。pHが書かれていない製品の%は、強さを比べる材料にはなりません。表示の「〇%配合」も、原料の量か成分そのものの量か、中和した形を含むかどうかで意味が変わります。配合量の%表示の読み方を知っておくと、数字の大きさだけに振り回されずにすみます。
使い始めたら、赤みやしみる感じが続くときは使うのをやめ、使っている間とやめてから1週間は日焼け止めで紫外線を防ぎます。しみやシワそのものが気になる場合は、化粧品の濃さを上げるのではなく、皮膚科に相談しましょう。
AHAは、%とpHをセットで見て、刺激の少ないものを続けるのがいちばんです。
まとめ
- AHAは、角層の細胞どうしの留め具をゆるめ、不要な角層をはがれやすくする酸です
- 乳酸5%と12%を比べた結果では、見た目の変化は同じくらいでした
- 刺激は濃いほど、pHが低いほど強くなり、同じ%でもpHで働きやすい量が変わります
- 使っている間とやめてから1週間は日焼けしやすいので、紫外線対策が欠かせません
- 日本の化粧品にAHAの上限はありませんが、グリコール酸3.6%を超える製剤は劇物です
%の数字だけを見るのではなく、pH、形、刺激の出やすさまでセットで見て、無理なく続けられるものを選んでみてください。
よくある質問
グリコール酸は何%がいちばんいいですか?
%だけでは決まらず、pHとの組み合わせで強さが変わります。ふだん使いの化粧品では、アメリカの目安の10%以下・pH3.5以上や、ヨーロッパの科学委員会の見解のグリコール酸4%以下・pH3.8以上が一つの線になります。
AHAは濃いほどよく効きますか?
濃いほどよく効くとは限りません。乳酸5%と12%を比べた結果では、見た目の変化は同じくらいでした。一方で、濃いほど、pHが低いほど刺激は強くなります。
同じ%なら強さも同じですか?
同じではありません。pHが上がると角層に入りやすい形が減り、計算上の目安では10%配合でもpH3.0なら約8.7%分、pH5.0では約0.6%分になります。
日本の化粧品にグリコール酸の上限はありますか?
化粧品の基準に上限はありませんが、グリコール酸3.6%を超えて含む製剤は2016年から劇物に指定されています。劇物から除かれるのは医薬品と医薬部外品だけです。
AHAを使うと日焼けしやすくなりますか?
なります。pH3.5のグリコール酸10%を塗り続けると紫外線で赤くなりやすさが18%上がり、やめて1週間で元に戻りました。使っている間とやめてから1週間は紫外線対策をしましょう。
この記事で参照した情報
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「ヒドロキシ酸/α-ヒドロキシ酸」
- 厚生労働省「化粧品基準」(平成12年厚生省告示第331号)
- 厚生労働省「いわゆる薬用化粧品中の有効成分リストについて」(平成20年12月25日 薬食審査発第1225001号)
- 厚生労働省「毒物及び劇物指定令の一部改正について」(平成28年7月1日 薬生発0701第1号)
- 厚生労働省 薬事・食品衛生審議会 薬事分科会 毒物劇物部会 議事録(平成28年3月1日)
- 毒物及び劇物取締法(昭和25年法律第303号)第2条 e-Gov法令検索
- 厚生省健康政策局医事課長「医師法上の疑義について(回答)」(平成12年6月9日 医事第59号)
- 日本皮膚科学会「日本皮膚科学会ケミカルピーリングガイドライン(改訂第3版)」(日皮会誌118(3):347-355, 2008)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「ケミカルピーリング Q12」
- 厚生労働科学研究「エステティックサロンにおける身体危害の防止に関する調査研究」(平成13年度、主任研究者 大原國章)
- Cosmetic Ingredient Review(Andersen FA 編). グリコール酸・乳酸などAHAの安全性評価の最終報告. Int J Toxicol 1998;17(Suppl 1):1-241
- Fiume MM, et al. Alpha Hydroxy Acids. Int J Toxicol 2017;36(5_suppl2)
- EU 消費者向け化粧品・非食品に関する科学委員会(SCCNFP)AHAに関する見解 SCCNFP/0370/00(2000年6月28日採択)
- EU 消費者向け化粧品・非食品に関する科学委員会(SCCNFP)AHAに関する見解の更新 SCCNFP/0799/04(2004年5月25日採択)
- U.S. FDA「Alpha Hydroxy Acids」(2022年11月22日更新)
- U.S. FDA「Guidance for Industry: Labeling for Cosmetics Containing Alpha Hydroxy Acids」(2005年1月)
- Lac-Hydrin(12% ammonium lactate)lotion 添付文書(DailyMed、2008年1月改訂)
- Smith WP. Epidermal and dermal effects of topical lactic acid. J Am Acad Dermatol 1996;35(3):388-391
- Stiller MJ, Bartolone J, Stern R, et al. 8%グリコール酸・8% L-乳酸クリームの試験. Arch Dermatol 1996;132(6):631-636
- Effendy I, et al. 12%グリコール酸と0.1%トレチノインの比較. Acta Derm Venereol 1995;75(6):455-458
- Kraeling MEK, Bronaugh RL. In vitro percutaneous absorption of alpha hydroxy acids in human skin. J Soc Cosmet Chem 1997;48:187-197
- Kaidbey K, et al. Topical glycolic acid enhances photodamage by ultraviolet light. Photodermatol Photoimmunol Photomed 2003(抄録)
- Cambier B, et al. Formulating Glycolic Acid: Balancing Penetration, Irritation, and Therapeutic Outcomes in Dermatology. Cosmetics 2026;13(4):164
- PubChem「Glycolic Acid」(CID 757)
- PubChem「Lactic Acid」(CID 612)
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