成分辞典やさしい解説

ハイドロキノンとトレチノインの併用とは|皮膚科のしみ治療の仕組みと副作用の注意

あるコスメオタク・2026.10.06・更新 2026.10.21・成分解説
肌の悩みシミ

皮膚科のしみの治療で「トレチノインとハイドロキノン」という名前を聞くと、どんな治療なのか、化粧品のハイドロキノンでも同じことができるのか、気になりますよね。

結論から言うと、トレチノインとハイドロキノンの併用は、医師の診察のもとで行うしみの治療で、化粧品で同じことはできません。メラニンができるのを抑える成分と、表皮の入れ替わりを早める薬を組み合わせて塗る治療で、赤みや皮むけが出やすいので、日焼け対策とセットで行います。まずは、しみが肌の中でどうできるのかから見ていきましょう。

しみは、紫外線でできたメラニンが表皮にたまってできる

しみは、紫外線を浴びて作られたメラニンという色の粒が、表皮の細胞にたまってできます。2つの成分がどこに働くのかを知るには、この流れを先に見ておくとわかりやすいです。

紫外線を浴びると、表皮でメラニンが作られ、まわりの細胞に渡されます。渡されたメラニンがたまると、肌の上から茶色いしみとして見えるようになります。

ハイドロキノンは、枠で囲んだ「メラニンができる」ところを抑える側に働きます。

紫外線を
浴びる
メラニンが
できる
まわりに
渡される
たまって
しみになる

ハイドロキノンは、この流れの入り口に近い「メラニンができる」ところを抑える側に働く成分です。一方のトレチノインは、メラニンがたまっている表皮そのものの入れ替わりを早める薬です。

つまり、しみは表皮の中で起きていて、2つの成分はその流れの別々の場所に関わる、と覚えておきましょう。

併用は、医療機関で行うしみの治療

トレチノインとハイドロキノンの併用は、医療機関で医師の診察のもとで行う治療です。トレチノインは日本では化粧品に入れられず、しみに塗る薬として承認されたものもないからです。

トレチノインは、ビタミンAの仲間のうち、肌の中で実際に働く形を薬として呼ぶときの名前です。国の医療用医薬品の情報で一般名をトレチノインとする薬は、急性前骨髄球性白血病に使う飲み薬のカプセルです。名前の似たトレチノイン トコフェリルという成分の軟膏もありますが、別の成分で、しみに使う塗り薬ではありません。

そのため、この治療に使われるトレチノインは医療機関が用意したものです。施設で独自に調製したゲルを使う方法があり、大学病院の形成外科の案内でも、日本では認められていない薬だと断ったうえで、米国の製品に手を加えたものを処方しているとしています。

ハイドロキノンは日本では化粧品にも入りますが、化粧品として言えるのは「日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ」までです。治療の処方やアメリカの承認薬では、4〜5%のハイドロキノンをトレチノインなどと組み合わせていて、化粧品とは前提が違います。アメリカでは逆に、ハイドロキノン入りの市販品は承認を受けていない薬とされています。

同じ「ハイドロキノン」でも、この併用は化粧品ではなく医療の話だと分けて考えましょう。

組み合わせるのは、2つの働く場所が違うから

2つを組み合わせるのは、しみの流れの中で働く場所が違い、役割を分け合えるからです。ハイドロキノンはメラニンができるのを抑え、トレチノインは表皮の入れ替わりを早めます。

2つは働く場所が違うので、医療機関では組み合わせて使われます。

ハイドロキノン
メラニンを
抑える
トレチノイン
入れ替わりを
早める
しみの治療
医師の
もとで行う

トレチノインは、角質をはがし、表皮の細胞の分裂をうながして、表皮の入れ替わりを早める薬です。大学病院の形成外科の案内では、約2週間で表皮が置き換えられるとしています。

組み合わせの始まりは、皮膚科医が考えた、ハイドロキノン5%、トレチノイン0.1%、ステロイドのデキサメタゾン0.1%を合わせた処方です。どの成分も単独では十分に色が薄くならず、3つを合わせると満足できる結果が得られたと紹介されています。

役割分担としては、トレチノインはハイドロキノンが酸化して傷むのを防ぎ、表皮に届きやすくするとされています。ステロイドは、ほかの2つの成分による刺激を減らし、メラニンをつくる細胞の働きを抑えるとされます。さらにトレチノインには、ステロイドを塗ったときに起こりうる皮膚がうすくなる変化を打ち消す働きがあるという論文もあります。

どれか1つで押し切るのではなく、働く場所の違う成分で役割を分け合うのが、この組み合わせの考え方です。

日本の方法は、色を薄くしてから肌を落ち着かせる2段階

日本の医療機関で報告された代表的な方法は、色を薄くする段階と、肌を落ち着かせる段階の2つに分けて塗るものです。トレチノインは赤みや皮むけが出やすいので、色が薄くなったら刺激の少ない手入れに切りかえるためです。

日本の医療機関で報告された、2段階で塗る方法の流れです。

皮膚科で
しみを見る
色を
薄くする
肌を
整える
日光を
防ぐ

はじめの段階では、施設で調製した0.1〜0.4%のトレチノインのゲルと、ハイドロキノンに乳酸を合わせた軟膏を一緒に塗って、色を薄くしていきます。色が十分に薄くなったら、次の段階で、ステロイドをハイドロキノン、アスコルビン酸と一緒に塗って肌を落ち着かせます。

この方法では、老人性色素斑と炎症後色素沈着では80%を超える例で、扁平母斑では60%の例でうまくいったという結果があります。一方で、一時的な副作用は、従来の治療より強く出ることがあるとされています。

大学病院の形成外科の案内は、患者が自分で薬を塗る治療なので内容をよく理解していることが大切だとし、結果を保証するものではないとも断っています。しみの種類によっても治療は変わり、大学病院の美容外来の案内では、肝斑はビタミンCやトラネキサム酸の飲み薬とハイドロキノンを塗る方法などで治療し、真皮メラノサイトーシスには肌の色を薄くする塗り薬は効かないとしています。

どの方法が合うかはしみの種類しだいで、医師が見分けて選ぶものです。

アメリカの3成分のクリームは、肝斑を短い期間だけ手当てする薬

アメリカで承認されている3成分のクリームは、顔の中等度から重度の肝斑を、日光を避ける対策をしたうえで短い期間だけ治療する薬です。肝斑はやめるとたいてい再発するとされ、維持の治療には使わず、落ち着いたら治療をやめるものと決められているからです。

中身はハイドロキノン4%、トレチノイン0.05%、ステロイドのフルオシノロンアセトニド0.01%を1つにしたもので、アメリカでハイドロキノンを含む承認薬はこれだけです。

使い方も細かく決められていて、1日1回、寝る30分以上前に薄く塗り、日中はSPF30の日焼け止めと衣類で日光を防ぎます。口の端や鼻、目のまわり、傷のあるところには塗らず、肌を乾燥させる石けんや化粧品、アルコールの多いもの、収れん剤も避けるよう書かれています。

日本の美容医療の診療指針でも、肝斑の治療では、この3成分のクリームのような塗り薬が基本の治療として扱われ、レーザーなどは日光を避けることと塗り薬の次に使うものとされています。

承認された薬でも、使う期間と日光対策まで決められた治療だということです。

赤みや皮むけはよく起こるので、妊娠と日光に気をつける

いちばん多いのは、塗ったところの赤みや皮むけです。トレチノインは表皮の入れ替わりを早める薬なので、塗ったところに刺激が出やすいからです。

アメリカの3成分のクリームでは、赤み、皮むけ、軽いヒリヒリ感、乾燥、かゆみといった刺激が起こりうるとされ、試験では赤みが41%、皮むけが38%の人に見られました。研究をまとめた分析でも、報告された副作用の多くは、刺激やかゆみ、ヒリヒリ感など軽くて一時的なものでした。

アメリカの3成分のクリームの試験で、塗ったところに刺激が見られた人の割合です。

0% 25% 50% 赤み 41% 皮むけ 38% ヒリヒリ感 18% 乾燥 14% かゆみ 11%

妊娠については、トレチノインに赤ちゃんへの影響のおそれがあるとされています。アメリカの説明書は、胎児の死亡や発育の変化、生まれつきの形の異常などを起こしうる成分を含むとして、妊娠中は利益が危険を上回る場合にだけ使うとしています。日本の飲み薬のトレチノインは、妊婦には使えない薬です。これは飲み薬の決まりですが、妊娠中や授乳中、妊娠を考えている人は必ず医師に伝えてください。

日光も大きな注意点で、治療中は日光を避け、日焼け止めと衣類で防ぐことが説明書で求められています。治療中から治療後まで日焼け止めを欠かさないことが、色素沈着や肝斑の再発を防ぐうえで大切だとされます。ハイドロキノンでは、肌が徐々に青黒くなる外因性組織褐変症も報告されています。

3成分のクリームならではの注意もあり、ステロイドが体に吸収されると、ホルモンを調節するしくみが一時的に抑えられることがあるとされています。添加物の亜硫酸塩がアレルギーのような反応を起こすことや、光で過敏になる薬との併用にも注意が書かれています。

刺激が出やすく、妊娠と日光に特に気をつける治療だからこそ、医師の診察のもとで行います。

個人輸入の薬は使わず、皮膚科で相談する

海外から個人で取り寄せれば手軽に試せそう、と思う人もいるかもしれません。でも、トレチノインやハイドロキノンの薬を個人輸入して使うのはやめておきましょう。厚生労働省は、個人輸入される医薬品は、品質や効き目、安全性について日本の法律にもとづく確認がされていないとしているからです。

ほかにも、正規の製品を装った偽物かもしれないこと、健康被害が出ても国の救済制度の対象にならないこと、医師や薬剤師でも成分や作用の情報を十分にもたず、副作用にすぐ対応できない場合があることが挙げられています。輸入した医薬品を人に売ったり譲ったりすることは認められていません。ほかの人の分をまとめて輸入することもできません。

トレチノインのように刺激が強く、妊娠への影響もある薬は、自分の判断で濃さを選んだり使い始めたりしないことが大切です。まずは皮膚科で、しみの種類を見分けてもらったうえで相談するのが安全です。

まとめ

トレチノインとハイドロキノンの併用は、しくみを知るほど「自分で試すもの」ではないとわかる治療です。気になるしみは、まず皮膚科で種類を見てもらうところから始めてみてください。

よくある質問

ハイドロキノンとトレチノインの併用は、化粧品でもできますか?

できません。医療機関で医師の診察のもとで行うしみの治療です。トレチノインは日本では化粧品に入れられず、ハイドロキノン入りの化粧品で言えるのは「日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ」までです。

トレチノインの塗り薬は日本で承認されていますか?

しみに塗る薬として承認されたものはありません。日本で一般名をトレチノインとする医療用医薬品は、急性前骨髄球性白血病に使う飲み薬のカプセルです。この治療では、医療機関が用意したものが使われています。

なぜトレチノインとハイドロキノンを組み合わせるのですか?

しみの流れの中で働く場所が違い、役割を分け合えるからです。ハイドロキノンはメラニンができるのを抑え、トレチノインは表皮の入れ替わりを早めます。トレチノインには、ハイドロキノンの酸化を防いで表皮に届きやすくする役割もあるとされます。

副作用にはどんなものがありますか?

塗ったところの赤みや皮むけがよく起こります。アメリカの3成分のクリームの試験では、赤みが41%、皮むけが38%の人に見られました。妊娠中・授乳中や妊娠を考えている人は、必ず医師に伝えてください。

トレチノインを個人輸入して使ってもいいですか?

おすすめできません。厚生労働省は、個人輸入の医薬品は日本の法律にもとづく品質や安全性の確認がされておらず、偽物のおそれがあり、健康被害が出ても救済制度の対象にならないと案内しています。

この記事で参照した情報

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この記事を書いた人:あるコスメオタク日本化粧品検定1級

中央大学大学院に通う大学院生。韓国コスメが好きすぎて、気になったアイテムは自腹で試して回っている一消費者です。スキンケアと、成分・制度の背景を調べるのが好きです。公的資料やメーカーの公式情報にあたって、「化粧品にできること・できないこと」を分けて書くことを心がけています。(運営方針)

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