この記事でわかること
- ハイドロキノンが、しみのできる流れのどこに働くのか
- 皮膚科の塗り薬と、化粧品のハイドロキノンの違い
- かぶれや肌が青黒くなる変化と、使うのをやめる目安
ハイドロキノンはしみに使う強い成分と聞くけれど、化粧品に入っているものを自分で使って大丈夫なのか、気になりますよね。
結論から言うと、ハイドロキノンはメラニンがつくられるのを止める成分で、化粧品として言えるのは「日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ」までです。皮膚科では肝斑というしみの塗り薬として使われてきましたが、赤みやかぶれが出ることもあるので、日焼け止めと一緒に、肌の様子を見ながら使う成分です。まずは、しみがどうやってできるのかから見ていきましょう。
しみは、メラニンがつくられてたまることでできる
しみは、紫外線を浴びてつくられたメラニンという色の粒が、肌の細胞にたまってできます。ハイドロキノンの働きを知るには、この流れのどこで何が起きているかを見ておくとわかりやすいです。
紫外線を浴びると、表皮のいちばん下にあるメラノサイトという細胞が刺激されて、メラニンをつくります。できたメラニンは、まわりの表皮の細胞に渡されます。メラニンがつくられすぎて肌に色がたまった状態が、しみです。
ハイドロキノンは、枠で囲んだ「メラニンができる」ところを止める成分とされています。
浴びる
できる
渡される
しみになる
ハイドロキノンが働くのは、この流れのいちばん初め、メラニンがつくられるところです。
ハイドロキノンは、メラニンがつくられるところを止める
ハイドロキノンは、メラニンがつくられるのを止める成分です。しみの元になる色の粒ができる段階に働くので、皮膚科では、しみの中でも肝斑というタイプの塗り薬として使われてきました。
日本皮膚科学会などがまとめた美容医療の診療指針は、肝斑の治療法として最も有効で十分に検討されてきたのは、ハイドロキノンを単独で塗る方法と、3つの成分を合わせたクリームを塗る方法だとしています。海外の研究のまとめも同じ結論で、3つの成分を合わせたクリームは、ハイドロキノンだけのものより肝斑を薄くしたという結果があります。肝斑にはレーザーが効かず、ハイドロキノンを塗るのが有効な治療法だという日本の皮膚科医の論文もあります。
アメリカでは、ハイドロキノンを4%含み、トレチノインとステロイドを合わせた塗り薬が、中等度から重度の肝斑に伴うしみを短い期間治療する処方薬として承認されています。ハイドロキノン入りで承認された薬は、この1品目だけです。その説明書は、使うのをやめるとたいてい再発するとしています。
ハイドロキノンは、メラニンの元から働く、治療の場で使われてきた成分だと覚えておきましょう。
化粧品として言えるのは「日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ」まで
化粧品に入っているハイドロキノンで言えるのは、「日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ」までです。皮膚科の塗り薬やアメリカの処方薬は、治療として使う医薬品の話で、化粧品とは区分が違うからです。
たとえば、肝斑に塗る方法が有効とされているのは皮膚科の治療としてで、処方薬の4%という濃度も、3つの成分を合わせた薬のものです。こうした数字を、化粧品のハイドロキノンにそのまま当てはめることはできません。
また、しみには種類があり、種類によって手入れや治療が違います。皮膚科でしみの相談をした人では、老人性色素斑が60%近く、顔面真皮メラノサイトーシスが12%で、肝斑は10%以下だったという報告があります。ハイドロキノンを塗るのが有効とされているのは肝斑なので、気になるしみはしみができるしくみを知ったうえで、皮膚科で見分けてもらうのが近道です。
化粧品のハイドロキノンは、日焼けによるしみを防ぐための成分として見ておくと、期待しすぎずにすみます。
日本の化粧品に入るようになったのは2001年から
ハイドロキノンが日本の化粧品に入るようになったのは、2001年以降のことです。この年から化粧品基準が、使ってはいけない成分を並べる方式に変わり、ハイドロキノンは配合禁止のリストにも配合制限のリストにも名前がないからです。
化粧品基準は2000年に告示され、2001年4月1日から適用されました。国内の皮膚科の論文も、この規制緩和のあとは化粧品成分としても配合されるようになり、使われ方がさらに広がったとしています。
名前がよく似たハイドロキノンモノベンジルエーテルは、まったく別の成分で、化粧品基準で配合が禁止されています。この成分は半世紀ほど前に日本で化粧品に配合され、白斑黒皮症という、色が抜けたり黒ずんだりする症状が出て使えなくなった経緯があります。
一方で、ハイドロキノンは、厚生労働省がまとめたいわゆる薬用化粧品の有効成分リストには載っていません。日本の化粧品技術者の団体が、メラニンを抑える成分の例に挙げているのも、アルブチン、コウジ酸、エラグ酸、ルシノールなどです。日本の化粧品には、ハイドロキノンの濃度の上限も決められていません。
成分表の「ハイドロキノン」は、禁止されている成分とは別物で、医薬部外品の有効成分でもない、と読んでおきましょう。
気をつけたいのは、かぶれと、肌が青黒くなる変化
ハイドロキノンでまず気をつけたいのは、刺激とかぶれです。ハイドロキノンにはアレルギー性のかぶれを起こしうる性質があり、強くはないものの肌への刺激もあるという結果があるからです。
もうひとつ知っておきたいのが、外因性組織褐変症です。肌が徐々に青黒く変わっていく症状で、アメリカ食品医薬品局には、ハイドロキノン入りの市販の肌を白くする製品で、発疹や顔のはれとともにこの症状の報告が寄せられ、永続することがあるとされています。同じ機関は、1〜2%という低い濃度でもこの変化が起きることが示されているとしていて、処方薬の説明書も、この症状が出たら治療をやめるよう求めています。
アメリカでは、ネズミなどを使った試験でがんを起こす可能性を示す結果があったことと、この褐変症を理由に、肌を白くする薬でのハイドロキノンは処方薬に限るべきだという案が示されました。これは動物の試験をもとにした案です。
赤みや刺激が強く出たら、すぐに使うのをやめるのがいちばんの対策です。
使う間は日焼け止めをセットにして、変化が出たらやめる
ハイドロキノンを使う間は、紫外線対策をセットにして、肌に変化が出たら使うのをやめます。紫外線はしみの流れの入り口で、肌の変化は早く気づくほど対処しやすいからです。
ハイドロキノン入りの製品を使う間の、毎日の流れです。
日焼け止め
毎日見る
気づく
相談する
アメリカの処方薬の説明書は、日中はSPF30の日焼け止めと衣服で紫外線を防ぎ、日光を避けるよう求めています。化粧品でも、朝に使う場合はSPF20以上の日焼け止めを使うのが目安とされています。
塗り続ければよいというものでもありません。アメリカの処方薬は短い期間の治療に限って承認された薬で、状態が落ち着いたら治療をやめるものとされ、よい状態を保つための使い方は認められていません。ヨーロッパも、肌を白くするクリームとして長く使うと有害な作用が出ることが示されたとして、この用途を認めないことを決めています。
やめる目安は、化粧品すべてに共通です。厚生労働省は2014年、化粧品の使用上の注意に、赤み、はれ、かゆみ、刺激に加えて、白斑などの「色抜け」や「黒ずみ」を使用をやめる症状として書き足すよう求めました。こうした変化に気づいたら使うのをやめ、化粧品が合わないときの相談先に早めに相談しましょう。
朝は日焼け止め、毎日肌の様子を見て、変化が出たらやめて相談する、の流れを守れば安心です。
「禁止成分」「海外では全面禁止」は正確ではない
ハイドロキノンは禁止成分だと聞いて、不安になった人もいると思います。でも、日本で禁止されているのは名前の似たハイドロキノンモノベンジルエーテルで、海外の扱いも「全面禁止」ではありません。
ハイドロキノンそのものは、化粧品基準のどのリストにも載っていない成分です。ただしそれは、国が効き目や安全を保証したという意味ではありません。
ハイドロキノンは国によって扱いが大きく違う成分です。アメリカでは2020年9月23日から、承認を受けていない市販の肌を白くする製品は市場から撤去しなければならなくなりましたが、処方薬としては承認されています。ヨーロッパは2001年1月1日から肌を白くするクリームの用途を認めなくし、2013年の規則では、プロが使う人工爪の用途で使用時0.02%までを除いて、化粧品への配合を禁止しています。
「禁止」という言葉だけで判断せず、どの国で、どの製品の、どんな使い方の話かを見て読みましょう。
まとめ
- しみは、紫外線でつくられたメラニンが肌の細胞にたまってできます
- ハイドロキノンはメラニンがつくられるのを止める成分で、皮膚科では肝斑の塗り薬として使われてきました
- 化粧品として言えるのは「日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ」までです。配合禁止なのは名前の似たハイドロキノンモノベンジルエーテルです
- 刺激やかぶれのほか、肌が徐々に青黒くなる外因性組織褐変症が報告されています
- 使う間は日焼け止めをセットにし、赤み・かゆみ・色抜け・黒ずみが出たらやめて相談します。気になるしみは皮膚科で種類を見分けてもらいます
ハイドロキノンは、化粧品の話と皮膚科の治療の話を分けて考えると、期待しすぎず、怖がりすぎずに付き合える成分です。
よくある質問
ハイドロキノン入りの化粧品で、シミについて何が言えますか?
化粧品として言えるのは「日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ」までです。肝斑に塗る治療が有効とされているのは皮膚科の治療の話で、化粧品の効能とは別です。
ハイドロキノンは肌の中で何をしますか?
しみの元になるメラニンがつくられるのを止める成分です。しみができる流れのいちばん初めに働きます。
ハイドロキノンの副作用には何がありますか?
赤みや刺激、かぶれが出ることがあります。アメリカでは、肌が徐々に青黒くなる外因性組織褐変症の報告があり、永続することがあるとされています。
ハイドロキノンは化粧品に配合禁止ではないのですか?
禁止されているのは、名前の似た別の成分のハイドロキノンモノベンジルエーテルです。ハイドロキノンそのものは、化粧品基準の禁止・制限のどのリストにも載っていません。
ハイドロキノンを使うとき、日焼け止めは必要ですか?
必要です。アメリカの処方薬の説明書は、日中はSPF30の日焼け止めと衣服で紫外線を防ぎ、日光を避けるよう求めています。
アメリカやヨーロッパではハイドロキノンは使えないのですか?
アメリカでは2020年9月23日から未承認の市販品は市場から撤去が必要になりましたが、処方薬は承認されています。ヨーロッパは2013年の規則で、プロ用の人工爪用途以外の化粧品への配合を禁止しています。
この記事で参照した情報
- 化粧品基準(平成12年9月29日 厚生省告示第331号)
- 厚生労働省法令等データベース 化粧品基準(条文表示)
- 厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年 薬食発0721第1号)
- 厚生労働省「いわゆる薬用化粧品中の有効成分リストについて」(平成20年12月25日 薬食審査発第1225001号)
- 厚生労働省「化粧品等の使用上の注意について」(平成26年5月30日 薬食発0530第2号)
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「メラノサイト」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「しみ」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「美白剤」
- 日本皮膚科学会・日本形成外科学会・日本美容皮膚科学会ほか「美容医療診療指針」(令和元年度厚生労働科学特別研究事業)
- 渡辺晋一「皮膚科医に役立つシミとシワの最新治療法」皮膚の科学 7(6):703-711, 2008
- 渡辺晋一「顔面の色素病変(シミ)の鑑別とレーザー治療」日本皮膚科学会雑誌 129(8):1619-1625, 2019
- 村上義之ほか「ハイドロキノンの安全性試験について」西日本皮膚科 68(2):185-194, 2006
- 滝脇弘嗣・藤本和代「ハイドロキノン モノベンジルエーテル(モノベンゾン)による汎発型白斑の脱色素治療」西日本皮膚科 68(4):403-407, 2006
- ロート製薬「スキンケア成分の知識:ハイドロキノン」(2023年4月25日)
- FDA「FDA works to protect consumers from potentially harmful OTC skin lightening products」(2022年4月19日)
- Federal Register 71 FR 51146「Skin Bleaching Drug Products For Over-the-Counter Human Use; Proposed Rule」(2006年8月29日)
- FDA 承認ラベル TRI-LUMA Cream(2014年3月改訂)
- 欧州委員会 Twenty-fourth Commission Directive 2000/6/EC(2000年2月29日)
- 欧州委員会 Commission Regulation (EU) No 344/2013(2013年4月4日)
- Rajaratnam R, et al. Interventions for melasma. Cochrane Database Syst Rev 2010(CD003583.pub2)
- McKesey J, Tovar-Garza A, Pandya AG. Melasma Treatment: An Evidence-Based Review. Am J Clin Dermatol 2020;21:173-225