この記事でわかること
- 肌の中でのレチノールとトレチノインの関係
- 日本での区分と、強さ・刺激の違い
- 妊娠中と個人輸入の注意、選び方
レチノールとトレチノイン、名前が似ていて、何が違うのか、トレチノインのほうがよく効くなら使ってみたい、と迷いますよね。
結論から言うと、レチノールは肌の中で働く形になる前の段階で、トレチノインは働く形そのものです。レチノールは日本の化粧品にも入れられますが、トレチノインは日本では医薬品の成分です。強さも刺激の出やすさも、手に入れ方も違うので、毎日のケアはレチノール、それ以上を望むなら皮膚科、と分けて考えましょう。
トレチノインは、レチノールが肌の中で変わった先の形
トレチノインは、レチノールが肌の中で2回形を変えた、いちばん最後の形です。レチノールはそのままでは働かず、働くにはレチノイン酸という形に変わる必要があるからです。
レチノールはビタミンAそのものです。肌の中で、まずレチナールに、さらにレチノイン酸に変わります。このレチノイン酸を、薬の名前で呼んだものがトレチノインです。ビタミンA酸とも呼ばれます。
枠で囲んだレチノイン酸を、薬の名前で呼んだものがトレチノインです。
塗る
に変わる
になって働く
レチノールとレチナールの間は行き来できますが、レチナールからレチノイン酸へは一方通行です。間にいるレチナールとの違いはレチノールとレチナールの違いにまとめています。
トレチノインは、変わる段階を待たずに働く形で、レチノールは変わる分だけ働きがおだやかになる、と考えると、この先の強さや刺激の話がつながります。
日本では、トレチノインは医薬品、レチノールは化粧品にも入る
日本では、トレチノインは化粧品に入れられない医薬品の成分で、レチノールは化粧品にも入れられる成分です。化粧品には医薬品の成分を入れられない決まりがあり、2つはその線の両側にいるからです。
同じビタミンAの仲間でも、日本での立場が違います。
レチノール
化粧品にも医薬部外品にも入る
トレチノイン
日本では医薬品の成分
厚生労働省は、トレチノインが化粧品基準でいう「医薬品の成分」に該当すると回答しています。そのため、日本の化粧品にトレチノインは入っていません。一方のレチノールは、医薬品の成分に該当しないと判断した品目に挙げられていて、化粧品に入れられます。
国の承認にも差があります。日本で一般名をトレチノインとする医療用医薬品は、劇薬と処方箋医薬品に指定された飲み薬のカプセルで、効能は「急性前骨髄球性白血病」です。肌に塗る薬として国が承認したトレチノインはありません。肌に使う場合は、医療機関が用意したものが、医師の診察のもとで処方されます。
同じビタミンAの仲間でも、レチノールは店で買える成分、トレチノインは医師が使う薬です。
シワへの効能が認められているのは、レチノールの医薬部外品
シワへの効能を言えるのは、レチノールを有効成分とする医薬部外品です。レチノールを有効成分とする製品で、国がシワへの効能を承認しているからです。
深いシワは、紫外線や年齢によって、角層よりずっと下の真皮という層で、肌のハリを支える線維が衰え、表面の溝が深く刻まれてできます。レチノールは肌の中でレチノイン酸に変わって働き、こうしてできたシワに対して、医薬部外品の有効成分として「しわを改善する」効能が認められています。
「しわを改善する」と言えるのは、承認を受けたレチノールの医薬部外品です。
図のように溝が浅くなる、と言えるのは承認を受けた医薬部外品だけです。一般の化粧品で言えるのは、効能評価試験をした製品の「乾燥による小ジワを目立たなくする」までです。
トレチノインでは、0.02%のクリームが、顔の細かいしわを和らげる処方薬として米国で承認されています。ただ、その説明書は、しわをなくしたり、光による肌の老化を元に戻したりするものではない、とはっきり書いています。強い薬でも、できることには限りがあるということです。
強さはトレチノインが上で、レチノールは20分の1〜約100分の1
強さは、働く形そのもののトレチノインが上です。レチノールは変わる段階を通る分だけ、働きがおだやかになるからです。
どれくらい弱いかは、資料によって数字が違います。研究の総説では、レチノールの強さはトレチノインの20分の1です。大学病院の形成外科の案内では、塗った場合のレチノールやその仲間のエステルは、レチノイン酸の約100分の1の作用です。
おだやかとはいえ、レチノールが働かないわけではありません。レチノールを塗った肌でも、トレチノインを塗ったときに近い変化が表皮に出て、赤みはほとんど出なかったという結果があります。
数字は資料で違っても、トレチノインが強く、レチノールがおだやかという順番は同じです。
赤みや皮むけも、トレチノインのほうが出やすい
強さと同じ順番で、赤みや皮むけもトレチノインのほうが出やすくなります。働きが強い形ほど、肌への刺激も出やすいからです。
研究の総説では、塗ったところのかゆみ、ヒリヒリ感、赤み、皮むけといった反応は、トレチノインのほうが、レチノールやレチナールより多く起こります。レチノールは、肌から逃げる水分や赤み、皮むけがかなり少ないことも報告されています。
米国の0.02%クリームの説明書では、ほぼすべての患者に皮むけや乾燥、ヒリヒリ感、赤み、かゆみなどの反応があり、32%で強い刺激が出ています。日光は避けるか最小限にし、日焼けしたときは落ち着くまで使わないよう書かれています。
レチノールでも、使い始めに赤みが出て不安になることはありますよね。そのときの対処はA反応が出たときの対処にまとめています。刺激が少ないのはレチノールと覚えておけば十分です。
妊娠中は、トレチノインの薬を使わない
妊娠中や妊娠の可能性があるときは、トレチノインの薬は使いません。おなかの赤ちゃんに影響する性質があると、薬の説明書に書かれているからです。
日本で承認されている飲み薬のトレチノインの添付文書には、警告として「本剤には催奇形性があるので、妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。」とあります。妊婦は使ってはいけない人、つまり禁忌にも入っていて、授乳も「授乳しないことが望ましい。」です。米国の0.02%クリームも、説明書で妊娠中は使わないよう呼びかけています。
医療機関でトレチノインを処方してもらうときは、妊娠中や授乳中、妊娠を考えていることを、必ず医師に伝えてください。化粧品のレチノールは医薬品とは区分が違いますが、同じビタミンAの仲間なので気になりますよね。迷ったら自分で決めずに、かかりつけの産婦人科医に相談するのが確実です。
トレチノインの個人輸入は、おすすめしない
トレチノインのクリームを海外から自分で取り寄せるのは、おすすめしません。品質や安全性が国に確かめられておらず、困ったときに救済も受けられないからです。
厚生労働省は、国内の製品と違って「個人輸入される外国製品にそのような保証はありません。」と案内しています。ここでいう保証とは、品質や有効性、安全性を法律にもとづいて確かめることです。正規の製品を装った偽造製品かもしれないこと、健康被害が出ても救済の対象にならないことも挙げています。医師の診察や経過の観察が必要な医薬品があること、取り寄せた医薬品を人に売ったり譲ったりすると法律に違反するおそれがあることも案内しています。
刺激が強く、妊娠への影響もあるトレチノインは、自分で濃さを選んで使い始めないことが大切です。皮膚科での使われ方はハイドロキノンとトレチノインの併用で紹介しています。
毎日のケアはレチノール、薬が必要なら皮膚科へ
毎日のスキンケアで取り入れるなら、選ぶのはレチノールです。化粧品や医薬部外品として買えて、刺激もトレチノインより少ないからです。
シワへの効能を求めるなら、「医薬部外品」の表示と、有効成分の欄に「レチノール」があるかを確かめましょう。一般の化粧品のレチノールは、条件つきの「乾燥による小ジワを目立たなくする」までの範囲で選ぶ成分です。使い始めは、肌の様子を見ながら進めます。
トレチノインは、レチノールで物足りないときに次に試す化粧品ではありません。しみやしわの治療として使いたいときは、皮膚科などの医療機関で相談し、妊娠の予定やほかに使っている薬も伝えて、日中は日光を避ける対策とセットで使います。
迷ったら、自分で使うのはレチノール、トレチノインは医師と一緒に、と覚えておきましょう。
まとめ
- レチノールは肌の中でレチナールを経てレチノイン酸に変わり、このレチノイン酸を薬として呼ぶ名前がトレチノインです
- 日本では、トレチノインは医薬品の成分で化粧品に入れられず、肌に塗る薬として承認されたものもありません
- レチノールは化粧品に入れられ、医薬部外品の有効成分として「しわを改善する」効能が認められています
- 強さはトレチノインが上で、レチノールは資料によって20分の1から約100分の1。赤みや皮むけもトレチノインのほうが出やすくなります
- トレチノインの薬は妊婦に使わず、個人輸入の医薬品は国の確認がなく救済の対象にもならないため、使うなら医師のもとで
レチノールとトレチノインは、同じビタミンAの仲間でも、化粧品の成分と薬という別の立場にあります。毎日のケアはレチノールで、それ以上を望むときは皮膚科に相談するところから始めてみてください。
よくある質問
レチノールとトレチノインの違いは?
働く形になる前か、働く形そのものかの違いです。レチノールは肌の中でレチナールを経てレチノイン酸に変わり、このレチノイン酸を薬として呼ぶ名前がトレチノインです。日本では、レチノールは化粧品に入れられ、トレチノインは医薬品の成分です。
レチノールとトレチノインはどっちが強い?
トレチノインのほうが強い成分です。レチノールの強さは、資料によってトレチノインの20分の1から約100分の1ほどです。そのぶん赤みや皮むけも、トレチノインのほうが出やすくなります。
トレチノインは日本の化粧品に入っている?
入れられません。厚生労働省は、トレチノインは化粧品基準でいう医薬品の成分にあたると回答しています。日本では肌に塗る薬としての承認もなく、医療機関が用意したものが医師の診察のもとで処方されます。
妊娠中にトレチノインは使える?
トレチノインの薬は妊婦には使いません。日本の飲み薬の添付文書では催奇形性の警告があり、妊婦は禁忌です。米国の塗り薬も、説明書で妊娠中は使わないよう呼びかけています。化粧品のレチノールも、迷ったら産婦人科医に相談しましょう。
トレチノインを個人輸入して使ってもいい?
おすすめできません。個人輸入の医薬品は品質や安全性が日本の法律で確かめられておらず、偽造品のおそれがあり、健康被害が出ても救済の対象になりません。使いたいときは皮膚科で相談しましょう。
この記事で参照した情報
- 厚生労働省 事務連絡「化粧品基準における医薬品の成分の該当性について」(平成20年8月14日)
- 厚生労働省「化粧品に配合可能な医薬品の成分について」(平成19年5月24日 薬食審査発第0524001号)
- PMDA 医療用医薬品 添付文書「トレチノイン カプセル10mg」(2025年8月改訂 第2版)
- 自治医科大学 形成外科学講座「トレチノイン(レチノイン酸)療法」
- 企業IR資料「有効成分レチノールによるしわを改善する効能効果の承認を日本で初めて取得」(2017年2月28日)
- Mukherjee S, et al. Retinoids in the treatment of skin aging: an overview of clinical efficacy and safety. Clin Interv Aging 2006;1(4):327-348
- Kang S, et al. Application of retinol to human skin in vivo induces epidermal hyperplasia and cellular retinoid binding proteins characteristic of retinoic acid but without measurable retinoic acid levels or irritation. J Invest Dermatol 1995;105(4):549-556
- 米国FDA FDALabel トレチノインクリーム0.02% 添付文書(2025年11月改訂)
- 厚生労働省「医薬品等を海外から購入しようとされる方へ」