この記事でわかること
- 「入れない・逃がさない」バリアのしくみ
- バリアを支えるラメラ構造と4つの要素
- こわれたバリアが元に戻るしくみ
「肌のバリア機能」という言葉はよく聞くけれど、肌の何が、何から守っているのか、意外とイメージしにくいと思いますよね。
結論から言うと、バリア機能は、肌のいちばん外側のごく薄い角層が、外からの刺激を入れず、内側の水分を逃がさない働きのことです。その中心にあるのは、角層の細胞のすき間を埋める脂の層です。まずは、何を守っているのかから見ていきましょう。
バリア機能は「入れない・逃がさない」の両方向
バリア機能は、外から「入れない」ことと、内から「逃がさない」ことの両方を、同時にこなす働きです。表皮の役割が、外からの刺激が入るのを防ぐことと、体の水分が逃げるのを防ぐことの2つだからです。
「入れない」の相手は、物理的・化学的な刺激や、細菌、ウイルスなどです。表皮のいちばん外側の角層は、水をほとんど通さず、大半の細菌やウイルスの侵入を防いでいます。「逃がさない」の相手は、体の中の水分や栄養分です。
体の中と外の境目で、出入りの両方を管理しているのがバリア機能です。
主役は、角層の細胞間脂質がつくるラメラ構造
バリアの主役は、表皮のいちばん上にある角層で、なかでも細胞のすき間を埋める細胞間脂質です。厚さ10〜20マイクロメートルほどの角層が、入れない・逃がさないの両方を担っています。
すき間は、脂質と水の層の重なりです。
- 1角層細胞 レンガにあたる、平たい細胞
- 2細胞間脂質 モルタルにあたる。約50%はセラミド
- 3脂質の層 セラミドなどが2列に並ぶ
- 4水の層 脂質の層のあいだにはさまれる
角層は、角層細胞というレンガを、角層細胞間脂質というモルタルでつないだような構造をしています。細胞間脂質は角層の重さの約15%で、セラミド・脂肪酸・コレステロールがおもな成分です。セラミドは脂質ですが水となじむ部分をもっているので、水の分子と一緒に、規則正しく重なるラメラ構造をつくれます。
電子顕微鏡で見ると、このラメラ構造は規則正しい縞模様として見えます。バリアの話で大事なのは、レンガよりもモルタルの側です。
バリアは4つの要素で支えられ、うち3つはうるおいの要素と同じ
角層のバリアは、細胞間脂質・皮脂膜・角層細胞と天然保湿因子・弱酸性の肌表面の4つで支えられています。このうち初めの3つは、角層のうるおいを保つ3つの要素と同じ顔ぶれです。
この3つが、バリアの土台にもなります。
- 1皮脂膜 肌の表面をおおう、皮脂と汗の膜
- 2天然保湿因子 角層の細胞の中で、水を抱える
- 3細胞間脂質 細胞のすき間を埋めて、水分を逃がさない。約50%はセラミド
4つめは環境です。健康な皮膚の表面はpH5〜7の弱酸性で、角層の中でも、下のほうのpH約7から表面の約4.5〜6.5へと酸性に傾いていきます。この環境が、細菌やウイルス、真菌などが増えるのを防ぐ働きを助けていると考えられています。これは皮脂と肌のpHの話とつながっています。
つまりうるおいを保つしくみと、バリアのしくみは、角層の同じ要素が担っているのです。
バリアの状態は、逃げる水分の量で測れる
バリアが働いているかどうかは、角層を通って逃げる水分の量で測れます。モルタルが整っていれば、内側の水分は少ししか逃げないからです。
この指標は経表皮水分蒸散量(体の中から角層を通って、気づかないうちに蒸発していく水分の量)といい、汗とは区別されます。決まった面積から決まった時間に逃げる水分の重さで表し、1平方メートルあたり1時間に何グラムという単位を使います。
ふだんの値は、おなかや背中、太もも、二の腕で約5グラム、頬で約10グラムです。バリアの働きが落ちると、この値は大きくなります。逃げる量が少ないほど、バリアがよく働いていると読めます。
こわれたバリアは、若い人で3日ほどで約8割まで戻る
こわれたバリアは、角層が自分で元の状態に近づいていくことで戻ります。角層の下の層から、新しい細胞間脂質が送られてくるからです。
こわしたバリアが元に戻った割合です。
戻り方には年齢で差があり、高齢の人の表皮では、層板顆粒の中身が送り出される量が少なく、角層のラメラ構造の層も減っていたという結果があります。バリアは、こわれても下から材料が届いて、少しずつ組み直されるしくみなのです。
バリアの材料は、角層の下の顆粒層でつくられる
角層のバリアの材料は、そのすぐ下の顆粒層でつくられています。角層は、下から押し上げられてきた細胞でできているからです。
細胞間脂質は、おもに顆粒層の細胞でつくられて層板顆粒(脂質をためる小さな粒)にたくわえられ、細胞が角層へ移るときに、すき間に送り出されます。そのあと酵素の働きで形を変え、シート状のラメラ構造になります。天然保湿因子も、顆粒層でつくられるプロフィラグリンというタンパク質がもとになっています。
表皮の細胞は、基底層で生まれてからはがれ落ちるまで約45日かけて入れ替わります。バリアは、表皮全体の入れ替わりの中で、つくられ続けているのです。くわしくは表皮の4層の記事で解説しています。
まとめ
- バリア機能は「外から入れない」と「内から逃がさない」の両方向です
- 主役は角層。細胞間脂質が、脂質の層と水の層が交互に重なるラメラ構造をつくります
- 支える要素は細胞間脂質・皮脂膜・角層細胞と天然保湿因子・弱酸性の環境の4つです
- バリアの状態は、角層を通って逃げる水分の量で測れます
- こわれたバリアは、若い人で72時間で約8割まで戻ります。材料は顆粒層から届きます
バリアは特別な何かではなく、角層の細胞とすき間の脂が整っていることで働くしくみです。表皮全体が入れ替わりながら、毎日つくり続けています。
よくある質問
肌のバリア機能とは?
外からの刺激を入れないことと、内側の水分を逃がさないことの両方向の働きです。主役は、肌のいちばん外側にある厚さ10〜20マイクロメートルほどの角層です。
バリア機能の中心になっているのは何?
角層の細胞のすき間を埋める細胞間脂質です。セラミドなどの脂質の層と水の層が交互に重なる、ラメラ構造をつくっています。
バリア機能はどうやって測る?
角層を通って逃げる水分の量で測ります。経表皮水分蒸散量といい、ふだんは頬で1平方メートルあたり1時間に約10グラムです。
こわれたバリアはどのくらいで戻る?
20〜30歳の人では、24時間で約半分、72時間で約8割まで戻ったという結果があります。80歳を超える人では、24時間で約15%と、戻るのが遅くなります。
うるおいとバリア機能は関係ある?
関係があります。細胞間脂質・皮脂膜・天然保湿因子は、うるおいを保つ要素でもあり、バリアを支える要素でもあります。
この記事で参照した情報
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「角層」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「角層細胞間脂質」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「天然保湿因子(NMF)」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「表皮」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「経表皮水分蒸散量」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「皮脂」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「pH」
- 国立健康・栄養研究所「セラミド(N-アシルスフィンゴシン)」素材情報
- 北海道大学 皮膚科学教室 公開資料「皮膚の構造と機能 B.表皮」
- MSDマニュアル家庭版「皮膚の構造と機能」
- Ghadially R ほか「高齢の表皮の透過バリア」J Clin Invest 1995
この記事が入っているテーマ別まとめ